夏の終わりの朝、少しだけゆっくり歩こう。
朝、窓を開けたとき。
「あれ?」
ほんの少しだけ、
空気が変わった気がする。
ついこの間まで、
朝から身体にまとわりついていた夏の暑さ。
窓を開ければ、
すぐに聞こえてきた蝉の大合唱。
それが今朝は、
ほんの少しだけ遠くに感じる。
夏が、
帰る準備を始めている。
そんな朝があります。
もちろん昼になれば、
「いや、まだ夏じゃん」
と言いたくなるくらい暑かったりするのだけれど。
それでも季節は、
私たちが気づかないところで、
ちゃんと次へ進んでいるんですよね。
道端を見ると、
長く伸びた草が朝露に濡れている。
空を見上げると、
真夏とは少し違う雲が浮かんでいる。
どこか遠くから聞こえていた蝉の声に、
いつの間にか秋の虫の声が混じり始める。
夏と秋が、
同じ場所にいる。
一年の中でも、
ほんのわずかな時間です。
夏の始まりは、
いつも分かりやすい。
暑くなって、
蝉が鳴いて、
青空が濃くなって、
「夏が来たなぁ」
と思う。
でも、
夏の終わりには、
はっきりした合図がありません。
ある朝突然、
「あれ……?」
と気づく。
夕方が少し早くなったこと。
夜風が少しだけ涼しくなったこと。
あれほど騒がしかった蝉の声が、
少なくなっていること。
季節は、
「今日で夏は終わります」
なんて言ってくれない。
だからこそ、
少し寂しいのかもしれません。
でも私は、
夏の終わりが嫌いではありません。
何かが終わってしまう寂しさの中に、
「また次が始まるよ」
という優しさがあるから。
考えてみれば、
私たちの毎日も、
季節と少し似ています。
元気いっぱいの日もあれば、
何もしたくない日もある。
頑張れる時期もあれば、
どうしても前へ進めない時期もある。
でも、
ずっと同じ季節はありません。
暑くて仕方なかった夏も、
いつか涼しくなる。
長く感じた夜にも、
ちゃんと朝が来る。
今いる場所が、
ずっと続くわけではない。
そう考えると、
少しだけ、
心が軽くなりませんか。
だから今朝は、
急いで一日を始めなくてもいい。
温かいコーヒーを飲む人も、
冷たいお茶を飲む人も、
朝ごはんを食べながら、
ぼんやりテレビを眺める人も。
ほんの数秒でいいから、
外を見てみてください。
夏の終わりの空は、
昨日と同じように見えて、
昨日とは少し違っています。
そして、
あなたもきっと同じです。
昨日できなかったことがあってもいい。
昨日失敗したことがあってもいい。
昨日少し落ち込んでいたとしてもいい。
朝が来たということは、
また新しい一日が、
あなたの前に置かれたということ。
真っ白な一日に、
最初から立派な予定を書き込む必要なんてありません。
今日は、
ひとつ笑えたらいい。
ひとつ「おいしい」と思えたらいい。
ひとつ綺麗なものを見つけられたらいい。
そんな一日でも、
十分です。
夏が静かに去っていくように、
嫌だったことも、
苦しかったことも、
いつか少しずつ遠ざかっていく。
そして空いた場所には、
また新しい季節がやってきます。
だから、
今朝のあなたへ。
今日一日を、
あまり難しく考えなくて大丈夫。
まだ暑い夏の名残を感じながら、
少しだけ近づいてきた秋を探してみてください。
風でもいい。
雲でもいい。
虫の声でもいい。
夕暮れでもいい。
ひとつ見つけるだけで、
いつもの一日が、
ほんの少し違って見えるかもしれません。
夏は終わっていきます。
でも、
終わるということは、
なくなることではありません。
今年の夏に笑ったことも、
汗をかいたことも、
誰かと過ごした時間も、
何でもない夕暮れも。
ちゃんと、
あなたの中に残っています。
だから寂しがりすぎなくていい。
夏に、
「またね」
と言って。
新しい朝に、
「おはよう」
と言えばいい。
さぁ、
今日も一日が始まります。
急がず、
比べず、
あなたの歩幅で。
夏の終わりの風をひとつ連れて、
今日という一日へ。
あなたにとって今日が、
小さな「よかった」をひとつ見つけられる一日になりますように。
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