
「能力者たちの謐沈独夜」
静寂が耳を劈くように重い夜。

ある少年は、心臓に鼓動を持たない。
生きている証である筈のリズムが欠落した胸の中には、冷たい風が吹き抜けるような虚無だけが居座って、勝負に勝っても何の焦熱も湧かない。

また、ある少年は、世界から雨音を奪われた。
降り注ぐ水滴が地面を叩く、あの安らかなノイズを知らない。そのノイズにはある痛々しい思い出が隠されていた。

また、ある少女の耳には、永遠に一秒の音が刻まれていく。
その音によって生み出される、身を焦がす焦燥感に苦しめられている。

また、ある少年は、瞳の奥に賞味期限を宿した。
愛する人の頭上に浮かぶ、残酷なカウントダウン。終わる瞬間を知りながら、続ける会話への寂しさに嫌気が刺している。

そして、ある少女は、脳裏に10秒後の悪い未来を映す。
救いたい感情と、それによって日常を失いたくない躊躇。見放した時の罪悪感と誰にも分かってもらえない苦しみを抱えている。
夜の底に沈みゆく彼らの、息が詰まるほど鮮やかな情景。
1話目:「プラカノンの浮遊心臓」
2話目:「無音の驟雨」
3話目:「秒針の零れる夜」
4話目:「夜の底で瞬く、君との時間」
5話目:「非常停止ボタンの向こう側」
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