
吉田修一著「国宝」のオーディブル版はまさに「国宝」級!2025,6,6映画公開記念レビュー(追記あり)
にわか吉田修一ファンで大河小説フェチの鍋音エバンです。
前に町田康の「口訳 古事記」を、オーディブル(Amazonのオーディオブック)での最高傑作!と紹介した。だが今回紹介する作品も……もはや朗読の域を超え芸術。ただただ圧巻。
それがこちら。
そう。ちょうど今週の金曜日から李相日監督・吉沢亮主演で公開になる映画の原作本(上下巻)である。
なぜメキシコ同時公開じゃないんだ!こちとら映画はいつ観れることやら。
仕方ない。それは老後の楽しみにとっておくことにして(って、どんだけ待つ気やねん)、まあソレまではこのオーディブル版で我慢することに……って、
いやいやいやいや!NO NO NO NO!
我慢どころか大・大・大満足っすよ!
映画観る人も観ない人も、本で読んだ人も読んでない人も、この作品をオーディブル版でも是非味わってほしい。
何が?どうして?その辺の紹介を
基本ネタバレ無しで Vámonos! (3000字)
吉田修一著「国宝」
俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ!
極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。
芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をW受賞、作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。
オーディブル レビュー
これは絶対audibleで聴くべき本
一歌舞伎ファンである。玉三郎と七之助の2人藤娘を舞台で見、玉三郎と菊之助(現在は八代目菊五郎 以下こちらの名で統一)の二人娘道成寺はシネマ歌舞伎で拝見した。その菊五郎さんの朗読!!声を大にして言いたい。これ以上の朗読者は考えられない。最高至高の当たり役!企画を考えた方、audible さんに一生涯感謝を捧げたい。すばらしい作品をありがとうございます。
多分文字で読んでも吉田修一氏の描く世界に浸れるとは思うが、ここでは芸の部分を「本物」にして私たちに提示してくれるので、自分のイマジネーションでは到達できない領域を味わせてくれる。またオーディブルではよく起こりがちな男性ナレーターが女性のセリフをいうときの違和感も全くない。女形役者だから、というよりこれも菊五郎氏本人の才能だろう。
終わってしまうのが惜しい。
トクちゃんやアキコさんなどのエピソードをもっと広げた全10巻ぐらいの長尺版を出してほしい。吉田先生、どうかどうかご検討を!
(2025/5/30読了)
note追記
吉田修一 ✕ 歌舞伎 ✕ 大河小説
夢の3大好物フルコンボ。
ごっつぁんです!(いやそれは相撲部屋)
ちなみにレビューで出た娘道成寺はこちら。
ここで舞っているうちのお一人、この5月に襲名したばかりの尾上菊五郎さんが朗読してるのだ(収録当時の名は尾上菊之助)。ネタバレになるんであまり内容には触れないが、この映像が脳裏でぶわあ!っと広がり鳥肌もん。
※2025/7/10追記(コメント欄でソフィー様が教えてくださいました!)
このシネマ歌舞伎『京鹿子娘二人道成寺』特別上映中(※8月現在全館終了しています)
朗読でありながら、要所要所で現れる歌舞伎の台詞まわし。これが女形(女性役)だけでなく立役(男性役)の声もいい!いやはや。うっとり。あーーー歌舞伎見たくなる!
お父さん(七代目菊五郎)が演じる女形がかつて大好きだった私としては、お父さんのようにそのうち立役になっちゃうのかな、とほんの少し寂しい気もしつつ、歌舞伎界ハコ推しでいつまでもどこまでも応援しますとも!
もちろん歌舞伎にこれまで縁のなかった人も十分楽しめる。事実オーディブルのレビューにはこの朗読の素晴らしさを讃えるものばかりがズラリと揃い踏み。
映画が監督のものなら、オーディブルは朗読者のもの、になっている稀有の作品である。これを味わない手はない。
だからと言って、作者吉田氏の素晴らしさが霞むことは、ない。
創造主である神は作品の細部の至る所に宿り、かつ大きく全体を包み込んでいる。
冒頭のシーン。料亭の庭の、雪。
そしてラストの銀座の濡れた路面。
温度。湿度。音。そして広がる色。
この情景を読んだだけでも、吉田氏の凄みをキリキリと全身で感じるのである。
うん。そのうち絶対目でも読もう。
そして、いつか映画も観よう。
菊五郎に会いに歌舞伎座や国立劇場行こう。
それまではオーディブルで聴きまくろう!
※2025/07/01追記
映画公開から約一ヶ月。映画の勢いが止まらない。おかげでこの記事も現在検索から訪問してくださる方が非常に多い。映画を見て原作に興味を持たれた方、原作に触れてからとまだ見てない方、どちらにもオススメのオーディブル版。オーディブル未登録さんも一ヶ月のお試しがあるので是非この機会に触れてみてはいかがだろうか(オーディブル お試しなどで検索してね!)。
似た昭和作品はコレ!
さて。それでは恒例(?)の独断と偏見&こじつけによって決定する、関連する昭和作品の紹介である。
今回はこちら。
演劇にすべてを賭ける少女・北島マヤ。その激しく一途な生き方が、熱い感動を呼び続ける! 少女まんが界に輝く、超人気大河ロマン!!
「ガラスの仮面」美内すずえ作
え?どう考えてもコレしかないでしょ。
コレもまた、少女漫画界に燦然と輝く超大河ドラマである。現在49巻。最後の巻が出てから10年も経っているが未完。読者はみんな少しの寂しさを抱えながら完結を待っている。美内せんせい、どうかどうかお願いします。
さて、二つの作品の共通点はこちら。
家庭的に恵まれていない主人公に芸の道サラブレッドのライバル
お互いの才能を認め、育まれる友情
才能ゆえに色々なイケズをされ舞台に立てない主人公
万菊=月影千草という「師匠」の直接指導でライバルともども芸を磨く
ライバルに降りかかる……不幸(ネタバレ回避のため自主規制)
ううむ。こうして見てみると、姉妹作としか思えなくなってきた。
まあ「国宝」の主人公喜久雄は凄い美形ってところは、こっちのマヤちゃんには当てはまらないけど。でも役に入ると彼女だって「絶世の美女」になれるんだもんね!
いかにも少女漫画な絵柄や薔薇が飛び交う背景に二の足を踏んで未読だ、という人もいるかもしれないが、それは日本語話者としてこの世に生まれた恩恵の一部をドブに捨てているようなものである。
読み始めて始めの数巻は香り立つ昭和臭やストーリー自体のクサさで無理!と思うかもしれない。しかしそこを越えれば絶対ハマる!
その分水嶺は「たけくらべ」あたりかな〜
劇中劇や、その稽古のところとか、別に劇団員じゃなくても一見の価値随所にアリあり。
私が好きな話は「二人の王女」のオーディションのところ(単行本23巻、文庫版14巻)。
北島マヤの天才っぷりがコレでもか〜コレでもか〜と描かれているのだが、それはそのまま作者、美内すずえ氏の天才っぷりの大洪水である。
そんな圧巻で緊迫したシーンのなか。
マヤが、架空の瓶を持って
「毒……」
と、もはやお約束の白目になって言うと、
ゾクーーーー
と、審査員がする、と言うコマで、
毎回つい笑っちゃうんだよね、という同志がいたら、ぜひコメント欄で教えてください。
※親父ギャグも日本の立派な伝統芸能です※
ここまで読んでくれて本当にありがとう。
Hasta pronto! また会えますように!
「国宝」
単行本(朝日新聞出版) – 2018/9/7
文庫 (朝日文庫) – 2021/9/7
吉田修一 (著)
オーディオブック
上・青春篇(21時間7分)
下・花道篇(22時間2分)
尾上 菊之助(ナレーション)
※21や22時間ととてつもなく長いようだが、これは通常版が終わると全編を今度は劇場で朗読しているような「特別音声版」が特典として付いているから。そこで実際は半分のどちらも約10時間である
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©️2025 naveotoevan 0027 吉田修一著「国宝」のオーディブル版はまさに「国宝」級!2025,6,6映画公開記念レビュー(追記あり)