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Photo bysaudade_noemia

英語ペラペラな3歳娘、なぜか「あさがお」を知らない。インター園3年目で見えた、バイリンガル子育ての盲点。

    ひらがな表の前で、娘がガッツポーズした日。

    ある夜、お風呂のひらがな表を指差して、娘がきっぱりと言った。

    「い!」

    おお、ついに来た。 3歳目前にして、ついに我が娘がひらがなを読めるようになったのだ。

    心の中でガッツポーズしながら、ふと娘の視線を追う私。

    …あれ。娘、文字じゃなくて、横の犬の絵見てない?

    そう。 「い・ぬ」だから、"い"。

    そう答えていたのだった。

    ひらがな自体は、まだ全然覚えていなかったらしい(笑) …めちゃくちゃ自信満々に答えるので、しばらく気付かなかったのが、また悔しい。

    これは、インター園3年目、3歳になったばかりの娘の、日本語習得の試行錯誤の話。 そして、英語が強い"風"の裏側にある、日本語の意外な穴の話でもある。


    2歳後半、口は達者。けど文字は別の話。

    うちの娘は、2歳後半から急に口が達者になった。

    親のセリフを瞬時に真似する。 夫が「アソパソマソ」(アンパンマンの「ン」を「ソ」に変えたやつ。古典) と適当に言えば即マネ。私が「もうやだ〜」と疲れた顔でつぶやけば、翌日「もうやだ〜」と返してくる。

    ザ・女の子、という感じで、言葉の習得スピードはたぶん早い方。 …のはずなのだが、これが文字となると、話は別なのである。

    特にひらがなの取得が、英語のフォニックスに比べて遅い気がしていた。 なぜだろう。元研究者の癖で、私はちょっと考え込んだ。


    フォニックスとの違和感。元研究者、仮説を立てる。

    娘の通うインター園では、英語の「フォニックス」を毎日やっている。

    "b, b, b, baby" "c, c, c, cat"

    1つの文字に、1つの音。 たとえば "b" は「ブ」という子音だけ。シンプル明快である。

    それに比べて、ひらがなは違う。 「あ」は「ア」(aの母音だけ)だけど、 「か」は「k+a」、「さ」は「s+a」と、子音と母音がセットになっている。

    ここで研究者だった頃の癖が抜けない私は、こう仮説を立てた。

    「1文字=1音」のフォニックスに慣れた娘にとって、ひらがなの「子音+母音セット」の構造は、ちょっと違和感あるのではないか?

    これが、ひらがな習得がフォニックスより遅れている理由かもしれない(あくまで仮説)。

    子供の脳の中で、英語と日本語の音の処理が、別々のシステムで動いていそうな気配。


    "い"事件、その本当の意味。

    それでも、根気強く教えるしかない。

    毎日のお風呂タイム、貼ってあるひらがな表を一緒に見ながら、 「ありの"あ"」「イヌの"い"」「ウサギの"う"」と読み上げる。

    そんな日々を続けていたある日、冒頭の事件が起きた。

    娘が指差して即答する。 「い!」「あ!」「さ!」

    おお、覚えた…!と感動していた私。 ところがよく観察すると、娘の視線は、文字じゃなく、絵を見ていた。

    つまり、こういう脳内処理だ。

    1. 文字の横の絵 (例:犬) を見る

    2. その絵の名前 (イヌ) を脳内で出す

    3. その名前の最初の音 ("い") を答える

    ひらがな自体は、まだ読めていなかった (笑)

    しかも、絵が分からない文字 (子供にあまり馴染みのない動植物等) のところでだけ詰まるので、それまで全然気づかなかったのである。 賢いんだか、賢くないんだか。

    ただ、これはこれですごい能力かもしれない、と思い直した。 音韻認識(言葉が"音の単位"でできていると気づく能力)は、ちゃんと育っているのだ。 ただ、それと文字認識は、別の話だったというだけ。

    子供の言葉の発達って、こんなふうに、いろんな能力がパズルみたいに組み合わさってできているんだなぁ。


    "じゅーす"の頭文字は、「じゅ」。3歳の発達段階。

    ここから、また地道な道のりが始まる。

    特に娘の名前を、紙に書いてなぞらせてみたり、シールを貼って遊んだり。 身近な人の名前のひらがなから、ひとつずつ。 「ままの"ま"」「ぱぱの"ぱ"」「じぃじの"じ"」。

    そうやっていくうちに、徐々に覚えていった。

    そして3歳になった今、濁点・半濁点の段階に入っている。

    「じゅーすの頭文字って?」と聞くと、娘は迷わず答える。 「じゅ!」

    「じ」じゃない。 「じゅ」。

    娘の中では、「じゅ」がひとつの音として認識されているらしい。 「じ」と小さい「ゅ」が組み合わさっている、という見方は、まだ出来ていない。

    これも調べてみると、3歳児の発達段階としてはよくあるらしい。拗音 (ゃゅょ) を分解して認識するのは、4-5歳から徐々に。 なるほどなぁ。

    濁点 (点々) と半濁点 (マル) も、面白い段階だ。

    「は」にマルがついた「ぱ」は分かる。 だって、「パパ」が大好きだから。「パパの"ぱ"」って即座に答える。

    でも、「は」に点々がついた「ば」は、まだ別ものとして捉えてる感じ。 「マルがついたら半濁った音になる」「点々がついたら濁った音になる」というルールは、まだ体系化されていない。

    身近な「パパの"ぱ"」を、ただ具体例として覚えているだけ、なのである。

    具体例で覚えて、徐々にルール化していく。 そういう順番で言葉を獲得していくんだなと、観察できる時期がたまらない。 元研究者の血が騒ぐ瞬間だ。


    行事は意外と◎。ただし、お花の名前で衝撃。

    ひらがなの遅さは、教えれば追いつく。 でも、インター園にはもう一つの「落とし穴」がある。

    意外だったのは、日本の行事は、思った以上にちゃんとできていたこと。

    七夕は短冊書いて飾る。 月見はお団子を食べる。 これは園が頑張ってくれている証拠で、感謝しかない。

    …ただ、「お正月って何の日?」「冬至ってなに?」となると、そこまでは分かっていない (まあ、3歳児なので仕方ない部分もある)。

    そして、もっと大きな「落とし穴」は、お花の名前だった。

    ある日、近所を散歩していて、私が花壇を指さして聞いてみた。 「これ、何の花?」

    娘の答え。 「Sunflower!」

    …おお、英語で答えてくれた(笑) よくよく考えると、娘の知ってる花の名前は、ひまわり、タンポポ、チューリップ、バラ、というラインナップ。 ぜんぶ、英語でも知っているし、日本語でも知っている。

    でも、ふと気付いた。 アサガオは?ツツジは?アジサイは?

    …全部、出てこない。 英語名すら、知らない。

    国際的に認知度の高い花は、両方の言語で覚えている。 でも、日本の路地や軒先に咲いている和の花たちは、娘の頭の中に、まだ存在していなかった。

    普通の保育園なら、お散歩中に 「ほら、ツツジが咲いてるね」って自然に覚えるはずの語彙群。 うちの娘の場合、出会っても、英語名すら知らないことが多い。

    これが、インター園の、もう一つの落とし穴だった。


    アジサイだけは、完璧に覚えた話。

    ただ、ひとつだけ、完璧に覚えた和の花がある。

    アジサイだ。

    うちの近所は、高齢者が多い、ちょっと懐かしい雰囲気の地域。 ある日、保育園からの帰り道、娘が近所のお宅のお庭に咲いているアジサイを、じーっと見ていた。 青、紫、ピンクの大きな花が、雨上がりの道に咲いていた。

    すると、お住まいの方が出てきて、 「あら、お花好きなの?」と、にこにこ笑いながら、わざわざ切って渡してくれたのだ。

    「これね、アジサイっていうのよ」って。

    娘は、嬉しそうに花を受け取って、 「ありがとう!」って小さく頭を下げた。

    それから、道端で同じ花を見るたびに、娘は誇らしげに叫ぶ。 「アジサイ!」

    絵本で何度教えても定着しなかった花の名前が、 たった一度の、地域の方との温かい出会いで、完璧に覚えた。

    これが、実体験の威力だなと、しみじみ思った。 そして、こういう温かい地域に住めていることに、ちょっと胸が熱くなったのであった。


    小学校入学までの、家庭の課題。

    絵本で教えれば?と思って色々試した。 四季の絵本、行事の絵本、和の植物図鑑——。

    けど、絵本だけだと実感が残らないらしい。

    「あさがおって、夏の朝に咲くんだよ」と言葉で言っても、 実物見ないとピンとこないのだ。

    これは、アジサイ事件が教えてくれた。

    だから、これからは、家庭でこれらを意識的にやることにした。

    • 🌸 散歩のたびに、和のお花の名前を一緒に

    • 🎋 細かい行事も家でやる (七夕も家で飾る、お月見団子も一緒に作る、等)

    • ⛩️ 日本らしい場所 (神社、植物園、お祭り) に意識的に連れて行く

    • 📖 日本語の絵本タイムを死守する

    小学校入学まで、あと4年。 この4年で、日本語の足腰——特に、和の世界の語彙を、ちゃんと作る。

    インター園を選んだ責任は、家庭の補完で取る。 全部やる、と決めたから。


    来年、笑い話になる日まで。

    3歳。 言葉の世界が、ぐんぐん広がっていく。

    「い」を犬の絵で答える時期も、 「じゅーす」の頭文字を「じゅ」と答える時期も、 今だけ。

    英語が強い"風"の裏側も、 日本語の足腰の弱さも、 そして、アジサイを覚えた小さな出会いも、 ちゃんと観察して、ちゃんと対応する。

    それが、インター園に通わせる親の責任で、 全部やるワーママの楽しみでもある。

    …と、しんみり締めようとしてみたものの、 来年あたり、ひらがな全部読めるようになった娘が 「ママ、覚えてる?私"い"を犬の絵で答えてたよね(笑)」 と言ってくるシーンを想像しただけで、もう胸が熱い。

    ドジ話も、笑える子育ての記録。 災い転じて、福となす。

    きっと来年は、「あさがおが咲いたよ」って、娘が教えてくれる日が来る。 そう信じて、明日も、家庭の補完を、地道に、楽しく、続けていこうと思う。

    おまけ:興味があると、言葉は爆速で覚える。

    最後に、ちょっと面白い余談。

    うちの娘は、今絶賛恐竜ブーム。

    お風呂に新しく貼った「お風呂の学校・恐竜版」を眺めながら、 「ティラノサウルス」「トリケラトプス」「ステゴサウルス」 …完璧に言える。

    ひらがなはまだ怪しいのに、なぜ。 恐竜の名前の吸収率が、ちょっとびびるレベルで早いのである(笑)

    子供の興味って、本当に大事だな、と思った瞬間だった。 和の花の名前も、娘の興味に乗せて教えられたら、もっとスッと入るのかもしれない。


    我が家で使っている、おすすめのグッズ。

    最後に、我が家で実際に使っているグッズを紹介します🌸
    (※Amazonアソシエイトに参加しています。)

    📘 はじめてずかん1000

    子育てのド定番。 動物や虫の名前は、これでかなり覚えてくれた。

    日英両方の音声が入っているので、うちの娘はたまに英語のクイズで遊んでる。 …私が想定していた使い方と違う気もするけど、まあいいか(笑)

    🌸 はじめてのずかん しょくぶつ (講談社の動く図鑑MOVE)

    和の花の名前を補強したくて買った一冊。
    大人が読んでも面白い、本格的な図鑑。

    ただ、ちょっと情報量が多いので、2歳のうちはまだ早かった。 小さい子には「はじめてずかん1000」みたいなシンプルなものから始める方が良さそう。 4-5歳になったら、また活躍してくれそうな予感がしている。

    🛁 お風呂の学校 (恐竜・ひらがな・カタカナ・数字)

    これもド定番のお風呂シリーズ。 日本地図、九九、恐竜など、色々なバリエーションがある。

    うちの子は今、恐竜ブームの真っ最中なので、迷わず恐竜版を選択。 …結果、ひらがな表の吸収より、恐竜の名前の吸収の方が圧倒的に早いという事態になっている(笑)

    子供の興味、おそるべし。


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