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お願い、迎えに来てね #032 (6-4) 善意の包囲網、沈黙の要塞

    第1部 諦念編|第6章


    Hello, again.

    ぼくのこたえは だれも 知らない
    うそはないのに だれも わからない

    無言の矢が 背中に 突き刺さる
    痛くはないよ 痛くはないさ

    スルスルと 脱ぎ捨てていく
    着ぐるみだけを そこにおいたまま

    冷たい輪郭に 救われない ぼくたちに
    きみだけが そっと手をあてる

    守っているのは だれ?
    壊してほしいのは なに?

    Hello, little girl.

    いつだって ほんとうだったよね


    ファミレスの駐車場で、貴樹たかきくんと知咲ちさが、もう帰るのか、カラオケに行くのか、はたまた、どこか候補があるのか、このあとの予定を相談している。ここに来るまでは疲れ切っていたみんなの表情も、おなかいっぱいになって満たされたのか、元気を取り戻している。だけど、もう10時近いから、いちおう女子の門限とやらを気にしてくれているみたいだ。

    そういうことは幹事の二人に任せて……というより、とてもじゃないけど口出しなんてできない。「まだ、どこかに行きたい」なんて言ったら、貴樹くんと一緒にいたいからって思われるもの。
    なるべく話に参加しないように、少し距離をあけて結論が出るのを待っていた。

    瑞來みずきくんが近寄ってきて、こっそり耳打ちする。

    「貴樹のとなり座る?」

    何言ってるの?
    そんなことできるわけないよ。

    そのひとことに、まるで発作が起きたみたいに、心臓がバクバクと胸を鳴らす。
    かき消すように、慌てて首を横にふった。

    「だって貴樹がハッキリしねえからさ」

    そんなふうに思ってくれてたんだ。おそらく、配車じゃんけんもあと2回。貴樹くんの近くに行く機会も、もう限られてしまう。瑞來くんは「みんなわかってるから」という顔をしている。

    そもそも今日のプチ同窓会は、義務放棄中の貴樹くんに業を煮やした知咲が、わざわざ下宿先の横浜から帰省してまで実行してくれたものだ。

    夏休みに、久しぶりに知咲と会ったとき「実際に逢って貴樹くんの気持ちを確かめたい」って、まるで自分のことみたいに憤慨してたんだよね。行動力のある知咲が貴樹くんに話を持ちかけたことがはじまりで。その時点で貴樹くんが断っていたら、それで終わるはずの計画だった。

    月桜るなが近寄ってくるかもしれない。月桜に責められるかもしれない。そんなこと簡単に想像がつく。それでもオッケーしてくれたんだから、二人きりはともかく、友だちと一緒なら月桜と会ってもいい、少なくとも避けられてはいない、というのが知咲の見解だ。

    男子メンバーは貴樹くんに任せてあった。わたしが参加予定のプチ同窓会の誘いを、結琉たけるくんや瑞來くんに伝えたはずだから、彼らだって、貴樹くんはわたしと会うのは嫌じゃないって思ってるはず。
    瑞來くんと同じ専門学校に通う瀬加くんだって、中学のときは野球部だったから、昔から貴樹くんや結琉くんのことも知っている。瑞來くんのことだから、瀬加くんにおおまかな説明くらいしているに違いない。

    望音のんちゃんや胡桃くるみちゃんは、詳しいことは知らない。プチ同窓会だと声をかけたけど、みんな中学のクラスメイトだもの。わたしが貴樹くんを好きなことはわかっている。

     こいつに答え出してやれよ。

    みんなの無言の圧が貴樹くんを襲っても、スルスルと受け流して、まったく動じない。誰にも貴樹くんの気持ちはわからない。


    みんなが助けようとするたび、彼が遠くにいってしまう。


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    なぜ、また出逢ってしまうの? 友だちでもなく、恋人でもない。手も握ったことさえないのに、離れても離れても、再びめぐり逢う……。 自分の感覚だけを信じて、見えない愛を徹底的に試された40年の軌跡。事実という骨組みに祈りを込めたオートフィクション。まずは固定記事からどうぞ。

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