
お願い、迎えに来てね #033 (6-5) 心を縛り付ける鎖
第1部 諦念編|第6章
Hello, again.
正しさの光が 容赦なく降り注ぐ
貫通した 小さな粒たちが重なって
いくつもの空洞を 広げていく
粉々に 砕け散るまえに
逃げ込んだ どこにもない場所へ
境界線の上で 鎖をつないで
どうか ぼくを 飼い慣らして
ここから 墜ちてしまわないように
ここから 消えてしまわないように
匙を投げた。
見捨てられた。
相手にしてもらえなくなった。
匙を投げられたのは、月桜なのか、貴樹なのか、はたまた二人なのか?
知咲と紗良ちゃんからの貴樹くんの評価は、これまでにないほど急降下していた。限りなくゼロに近い値から、マイナス領域に達したんじゃないだろうか?
直接会って確かめてみたい。そう意気がっていた知咲は、貴樹くんにすっかりと煙に巻かれてしまったようで、まるで自分のプライドを傷つけられたかのような敗北感を味わったみたいだ。
この、なんだかバカにされたような気分に陥るのは、高三の文化祭で既に経験済みだ。
一度ならずも二度までも!
知咲が憤慨するのもムリはない。
紗良ちゃんにいたっては、高一のときのノーコメントという前科に加え、今回の義務の不履行に、貴樹くんをクズ扱いして呆れ返っている。
そんな貴樹くんをいつまでも好きなわたしは、恋の病に冒された重病人扱いされている。ふたりがいうには、貴樹くんにとって月桜は、キープにもならないほど酷い扱いを受けている、キープみたいな存在なんだって。
寂しいときだけ電話してくる。
逢いたいときだけ誘ってくる。
抱きたいときだけ求めてくる。
キープってそういう存在のこと?
電話もなければ、誘ってもこない。
求められるなんて無縁の関係性。
キープの方がまだマシだよ。
いやいや。キープとか、そういうことじゃなくて。
これって、ただの友だち。
ただの同級生なだけなんじゃない?
じゃあ、さっさとふればいいのに。
どうして答え出さないの?
貴樹くんはずるいんだよ。
「ただの友だちだよ」って言いながら、心だけ月桜を縛り付けてる。自分は自由に好き勝手しながら、いざ女が欲しくなったときのために、見えない鎖で月桜のこと飼い慣らしてるんだよ。まあ今は、女になんか縛られたくないんだろうけどね。
そうかな?
貴樹くんはそんなんじゃないよ。
うまく言えないけど、貴樹くんがハッキリしないのは、もっとこう……
きれいサッパリ貴樹くんのことは忘れて、月桜はもっと楽しい恋をした方がいい。金輪際、貴樹くんのことを口にしたら、ほんとに絶交するからね。
知咲と紗良ちゃんからの絶交宣言はさすがに堪えた。ほんとうに、貴樹くんの名前を出しただけで絶交されそうな勢いだ。つらいけど、苦しいけど、貴樹くんの心から月桜がいなくなるくらいなら、たとえ飼い慣らされていようが、心を縛り付けていてほしい。誰もわたしの気持ちなんてわかってくれない。
わたしにしか見えない。どうして。誰にも見えない。
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