
お願い、迎えに来てね #036 (7-3) もう友だちには頼らない
第1部 諦念編|第7章
Hello, again.
億千年前の衝突 爆発したかたまり
飛び散った星の欠片
分厚い殻に閉じ込められたまま
震えてる きみが観測してくれるまで
宇宙の門を 命がけでぶち破って
言葉なんていらない 暗がりの向こうまで
傷跡の形が同じなら 生きていける
ふたたび始まる 長い孤独を
「好き」を封印すれば、友だちのラインをはみ出すようなことを要求しなければ、貴樹くんは仲良くしてくれる。
友だちなのか、恋人なのか、なんだかわからない曖昧な関係性に身を投じて、グラデーションの中でゆらゆら揺れていればいい。
貴樹くんと話したいなら、貴樹くんに逢いたいなら、貴樹くんと一緒にいたいなら、白黒つけない関係性に、決して不満をもたないこと。
それじゃ不安なんだよ。
電話しても迷惑じゃないかな?
逢いたいって言っても大丈夫かな?
だから許可がほしい。
権利がほしい。
安心がほしい。
その願いが叶わないのなら、もう貴樹くんのことは忘れたい。
どうすれば、この恋を終わりにすることができる?
恋人になれなくてもいい。
彼女じゃなくてもいい。
だけど、ファーストキスの相手は貴樹くんがいい。
はじめて肌に触れられるときも、それを許す男性は貴樹くんがいい。
はじめての人は貴樹くんであってほしい。
もう、あなたのことは諦めるから。
追いかけて困らせたりしないから。
せめて最後に……最後に……
はじめての男性になってほしい。
はじめてをあなたに捧げたい。
男の人と手を繋いだこともないわたしには、妄想の世界では簡単に体験できることであっても、現実には遥か遠く未知の世界のこと。
実際にそんなこと言い出すなんて、とてもじゃないけど、とてもじゃないけど、できるわけがない。
わたしは貴樹くんと何がしたいんだろう?
何がしたかったんだろう?
貴樹くんは、周りにひやかされるのが嫌なんじゃないか?
溢れそうなおもいを外に出さないようにすればするほど、どんどんぎこちなくなって。かえって周りに気づかれてしまう原因を作ってしまって……
貴樹くんは、束縛されるのも干渉されるのも大嫌いだから、できるだけ平気なふりして。そんなに好きじゃないふりして疲れ果てて……
わたしは貴樹くんにとって不快な存在なんじゃないか?
親から期待されるレールから降りた貴樹くんに、かつて自分がいた場所を思い出させてしまうんじゃないか?
そばにいたいと願うことは、貴樹くんを追い詰めてしまうことだから、我慢して我慢して……
わたしはこんなことがしたかったの?
貴樹くんの顔色ばかり伺う恋がしたかったの?
いつも笑っていたいよ。
普通の恋愛がしたいよ。
五年間もずっと好きだったのに。わたし、一度も誕生日におめでとうと伝えたことがない。バレンタインのチョコですら渡したことがない。
何度も気持ちを伝えたつもりだったけど、手紙だったり、友だち経由だったり、ちゃんと自分で伝えたことがない。
貴樹くんの目の前で、貴樹くんの顔を見て、貴樹くんの眼を見て、ちゃんと「好き」だって伝えたことがない。
貴樹くんのことを諦めるなら、この恋を終わりにするなら、せめて自分がやりたかったことを、ちゃんとやってから終わりにしたい。
もうすぐ貴樹くんの誕生日が来るね。
もう友だちには頼らない。
終わらせたいほど、最後の願いだけが濃くなっていく。
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