
お願い、迎えに来てね #003 (1-3) 偽物への告白、本物への絶望
第1部 諦念編|第1章
Hello, again.
いつも ニセモノを演じていたね
ぼくも ニセモノを演じていたんだ
「すごいね」って言われるたびに
ホンモノが 透明になって 消えていく
きみが きみを 守るために
ぼくが ぼくを 守るために
仮面がないと 歩けなくなっていたね
世界中で たったひとり
きみにだけは 醜いぼくを
ホンモノの ぼくを
見つけてほしかったんだ
あのときから、貴樹くんのことは、密かにずっと気になっていた。
あれ以来一度も、貴樹くんが橘くんの名前を口にすることはなかった。
半年が過ぎ、わたしたちは三年生になっていた。
「帰りの会が終わったら、四階の踊り場まで来て」
斜め後ろの席から、一瞬の隙をついて、貴樹くんがこそっと耳打ちしてきた。なんだろう? 人目を避けるように、誰もいないところにわざわざ呼び出すなんて。
今日は土曜日。半日だけの授業を終え、お弁当を手にした生徒たちが、早々と部活動へと散っていく。ちょっぴりドキドキしながら、人気のない校舎の階段踊り場に向かった。
「『これ渡して』って頼まれたから」
そこで待っていたのは、クラスメイトの黒崎くんだった。
頼まれたって、誰に? 貴樹くんに?
返す言葉を探しているうちに、黒崎くんは、「任務は果たした」と言わんばかりに、そっけなく背を向けていなくなってしまった。
可愛い猫の便箋に、いかにも中学生男子らしい、少し幼い文字たち。 そこに綴られていたのは、学級委員の高坂くんからの恋文だった。
冷酷無慈悲とは、わたしみたいな人間のことをいうのだろう。 意を決しての告白に、心はイチミリも動かなかった。
それどころか、軽蔑の眼差しさえ向けている。
どうせコイツは、作り上げたニセモノの月桜に恋してるだけ。 ほんとのわたしなんて何も知らないくせに。
なんでわざわざ、呼び出し係に貴樹くんを任命するの?
貴樹くんが声をかければ、不審がらずに来ると思ったから?
貴樹くんは、高坂くんの恋を応援してるって言いたいわけ?
貴樹くんにとって、わたしは恋愛対象じゃないってこと?
貴樹くんはこのことを知ってるの?
貴樹くんに、応援なんかしてほしくない。
わたしが他の男の子と付き合ってもかまわないなんて、思われたくない。
好かれるほど、「本当の自分」と違う気がしてくるのは、なんでだろう。
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