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ヘルニアは自然に治る?手術せず改善する割合と期間を整形外科医が解説

    こんばんは。整形外科医 Nです。
    僕は今日まで通常勤務なので明日からいわゆるシルバーウィークです。
    とはいえ、術後の患者さんなどは休み関係なく診ないといけないので完全にoffとはいきませんね。

    さて、今日はヘルニアについて少しだけ掘り下げてみようかなと思います。
    詳しい治療の選択や、臨床で実際どうしているかなど、具体的な判断は別の記事に譲ることとします。


    ヘルニアは自然に治る?手術せず改善する割合と期間を整形外科医が解説

    「ヘルニアって、一度飛び出したらもう戻らないんですか?」

    外来でよく聞かれる質問です。

    MRIで「ここが飛び出しています」と説明されると、ずっと神経を押し続けるように感じるかもしれません。

    でも実際は違います。

    腰椎椎間板ヘルニアは、自然に小さくなることがあります。しかも、大きく飛び出したヘルニアほど吸収されやすいことがあります。

    今回は、ヘルニアが症状の原因だと仮定して、「ヘルニアとは何か」よりも、その後どうなるのかに絞って解説します。

    ヘルニアは見た目が派手でも症状の原因でないことも多々ありますからね。

    ヘルニアの約7割は自然に小さくなる

    保存治療を受けた腰椎椎間板ヘルニアをまとめた2024年のメタ解析では、約70%でMRI上の自然吸収・縮小が確認されました。

    これは「7割の人が完全に治る」という意味ではありません。
    画像上、ヘルニアが引っ込む というだけです。

    ただ、

    一度飛び出した椎間板が、放っておくとそのまま一生残るとは限らない

    ということは知っておいていいと思います。


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    大きいヘルニアほど消えやすい

    ヘルニアには、飛び出し方によってprotrusion、extrusion、sequestrationなどのタイプがあります。

    自然吸収率はおおよそ、

    protrusion:約38%
    extrusion:約67%
    sequestration:約88%

    と報告されています。

    つまり、外へ大きく脱出したヘルニアの方が、むしろ自然吸収されやすい。

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    一見矛盾して見えますが、理由があります。

    なぜ自然に吸収されるのか

    椎間板の中は、もともと血流の少ない場所です。

    ところが髄核が外へ飛び出して硬膜外腔に出ると、血流のある組織と接触します。

    そこに新しい血管が入り、マクロファージなどの免疫細胞が集まり、飛び出した組織を少しずつ分解していきます。

    言い換えると、

    体がヘルニアを自分で片付けている

    ような状態です。

    そのため、外へ大きく脱出したヘルニアほど、免疫反応が起こりやすいと考えられています。

    痛みは「神経を押している」だけではない

    ヘルニアの痛みは、単純な圧迫だけでは説明できません。

    飛び出した髄核によって神経根周囲に炎症が起こることも、痛みの大きな原因です。

    つまり、

    機械的な圧迫+神経根周囲の炎症

    で症状が出ると考えた方が実際に近いです。

    だから、かなり大きなヘルニアでも症状が軽い人がいます。

    逆に、そこまで巨大ではなくても強い下肢痛が出ることがあります。

    MRIで確認できるヘルニアの大きさと、痛みの強さは必ずしも一致しません。


    特に有名な、お尻から脚にかけて走る痛み、いわゆる「坐骨神経痛」についてはこちらで詳しく解説しています。
    よくかけた記事だと思っているので(自画自賛)是非ご覧ください。


    外来ではどこを診る?


    MRIだけで判断しているわけではありません。

    まず見るのは、痛みやしびれの場所です。

    L5神経根(4番目と5番目の腰骨の間から左右に分かれていく神経)なら下腿外側〜足背、S1神経根(5番目の腰骨と1番目の仙骨の間から左右に分かれていく神経)なら下腿後外側〜足外側に症状が出ることが多いです。

    そのうえで筋力と反射を確認します。

    L5神経根障害では足関節背屈や母趾伸展、S1神経根障害では足関節底屈が弱くなることがあります。

    アキレス腱反射もS1神経根障害では低下することがあります。

    さらによく使うのが、

    SLR(Straight Leg Raising test)

    です。

    仰向けで膝を伸ばしたまま脚を上げて、普段と同じ臀部〜下肢痛が再現されるかを確認します。
    病院を受診した方ならされたことがあるのでは、と思います。

    単に太ももの裏が張るだけではなく、

    いつもの神経痛が再現されるか

    を見るのがポイントです。

    外来では、

    症状の場所、筋力、反射、SLRとMRI所見が一致しているか

    を見ています。

    MRIでヘルニアがあっても、症状と合わなければ「本当にこれが原因か?」を考えます。

    薬はどう使う?

    治療では、まず痛みの性質を見ます。

    腰痛や炎症性の痛みが強ければ、NSAIDsなどの鎮痛薬を使うことがあります。

    一方、

    「ビリビリする」
    「電気が走る」
    「焼けるように痛い」

    といった神経障害性疼痛の要素が強ければ、プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)を使うことがあります。

    ただし、

    「神経痛だからリリカやタリージェが必ず効く」というほど単純ではありません。

    坐骨神経痛を対象にしたRCTでは、プレガバリンはプラセボより明確な鎮痛効果を示しませんでした。

    なので実際には、

    痛みの性質を見ながら試し、効き目と副作用で判断する薬

    という位置づけです。

    特にこれらの薬は眠気やふらつきには注意が必要です。
    新しく内服開始する方は運転も控えてくださいね。

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    痛みが強ければブロックも選択肢

    内服だけでは痛みが強く、寝られない・歩けない・仕事に行けない場合には、神経根ブロックや硬膜外ブロックを考えることがあります。

    これらはヘルニアを溶かす治療ではありません。

    神経根周囲の炎症や痛みを抑え、自然経過を待ちやすくする

    のが主な目的です。

    硬膜外ブロックは正直容易な手技なのでどんなクリニックでも整形外科を標榜していれば出来ると思います。

    神経根ブロックは最近は安全の観点からimage(リアルタイムでみるレントゲン)で針の位置を確認しながら行うもので、比較的大きな病院で脊椎外科があるところでないと出来ないかもしれませんので、希望がある場合は事前に確認するのが良いと思います。

    ヘルニアが残っていても症状は治る

    これも大事です。

    MRIでヘルニアが完全に消えることと、症状が改善することは別です。

    炎症や神経周囲の腫れが落ち着けば、ヘルニア自体が残っていても痛みは軽くなります。

    そのため、症状がかなり改善しているなら、

    「ヘルニアが消えたか確認するためだけ」に再度MRIを撮る必要は通常ありません。

    MRIを撮る撮らないの選択については、こちらの記事でも詳しく解説しています。


    一番大事なのは「経過」

    外来でかなり重視するのは、

    良くなっているのか、変わらないのか、悪くなっているのか

    です。

    最初はかなり痛くても、1〜2週間ごとに歩ける距離が伸び、夜も眠れるようになっているなら、保存治療を続けやすいです。

    逆に、

    数週間たっても全く変わらない。夜も眠れない。仕事にも行けない。
    さらに筋力まで落ちてきた。

    こうなると

    「自然に吸収されるかもしれないから待ちましょう」だけでは済ませにくくなります。

    ヘルニアでは、大きさより“経過”を見る。

    これはかなり重要です。

    手術は保存治療の失敗ではない

    自然吸収する話をすると、
    「じゃあ手術はいらないんですね」
    と思われることがあります。

    でも、そうではありません。

    強い下肢痛が続いている場合には、手術によって症状を早く改善できることがあります。

    さらに、

    足の筋力低下が進む、足首や足趾が上がらない、排尿・排便障害がある、といった場合は、自然吸収を待つより神経機能を守ることが優先されます。

    また、

    医学的には待てても、痛みで何か月も仕事ができないなら、待つことがその人にとって最善とは限りません。

    医学的に待てるか。
    本人が待ちたいか。
    生活として待てるか。

    実際の治療では、この3つを分けて考えます。

    すぐ受診した方がいい症状

    特に注意したいのは、

    足の筋力が明らかに低下してきた、麻痺が進んでいる、尿が出にくい、尿や便が漏れる、股の間の感覚がおかしい、といった症状です。

    特に、

    排尿障害+会陰部の感覚障害

    がある場合は、馬尾症候群の可能性があります。

    この場合は早めの評価が必要です。

    腰痛でMRIを急いだ方がいいサインについては、こちらでもまとめています。
    診断・治療が遅れると手遅れになる場合があるので医療従事者でなくとも必ず知っておくべきです。


    まとめ

    腰椎椎間板ヘルニアは、一度飛び出したら一生そのまま、
    という病気ではありません。

    保存治療を受けた患者さんでは、

    約70%で画像上の自然吸収・縮小

    が報告されています。

    さらに、extrusionやsequestrationのように大きく飛び出したタイプほど、自然吸収されやすい傾向があります。

    ただ、治療方針を決めるうえで一番重要なのは、

    MRIで何mm飛び出しているかではありません。

    痛みが改善しているか。筋力が落ちていないか。生活できているか。

    ここを見ながら、

    内服でいくのか、ブロックを使うのか、もう少し待つのか、手術を相談するのかを判断します。

    MRI所見を治すのではなく、患者さんの症状を治す。

    ヘルニアでは、この考え方がかなり大切です。

    もう少し知りたい人へ

    自然吸収しやすさを予測する所見として、ヘルニアの大きさ以外にも、後縦靱帯を越えているか、上下へmigrationしているか、造影MRIでrim enhancementがあるか、といった点が研究されています。

    特にrim enhancementは、ヘルニア周囲への血管新生や炎症細胞の浸潤を反映している可能性があります。

    ただし、

    自然吸収を予測するためだけに造影MRIを撮る必要はありません。

    通常診療では、症状の推移、筋力、反射、SLR、生活への影響を見る方がずっと重要です。

    また、リリカやタリージェも「ヘルニアだから効く薬」ではありません。

    実際には、

    どんな痛みか、効いているか、副作用がないか

    を見ながら調整します。

    このあたりの、

    「薬をどう選ぶか」「ブロックはいつ使うか」「いつ手術紹介するか」

    は、また別の記事で詳しく書きたいと思います。

    引用文献

    1. Zou T, et al. Incidence of Spontaneous Resorption of Lumbar Disc Herniation: A Meta-analysis. Clin Spine Surg. 2024;37:256-269.

    2. Rashed S, et al. Systematic review and meta-analysis of predictive factors for spontaneous regression in lumbar disc herniation. J Neurosurg Spine. 2023;39:471-478.

    3. Mathieson S, et al. Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica. N Engl J Med. 2017;376:1111-1120.

    4. 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会監修. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. 南江堂.


    ※本記事は一般的な医学知識・目安としての情報提供を目的としています。診察を行わずに個別の症状について診断したり、具体的な治療方針を指示したりすることはできないため、コメント等での個別相談にはお答えいたしかねます。

    「こういう場合は一般的にどう考えるの?」「この治療にはどんな考え方があるの?」といった疑問があれば、コメントで教えてください。今後の記事テーマとしてできる限りお答えしていきます。

    気になる症状が続く、悪化する場合は医療機関を受診してください。

     
     
    現役整形外科専門医。 三次救急からクリニックまで幅広く経験しています。 小難しい話は抜きで、結論重視です。 腰痛・膝痛・子どもの怪我といった大きな悩みから、湿布は毎日貼っていいの?といった小さな疑問まで、エビデンスと臨床経験をもとに発信します。

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