
②白い糸は鳥になる――生成AIの編集とは
前回は、AIにはメンツがないからこそ、「相手の言葉に傷つきにくいこと」と「相手の意見に従わなくてもよいこと」という、二重の心理的安全性があるという話をした。
今回、私の例として、白い痰が無意識のうちに白い糸へメタファー化されていたことを、AIとの対話を通じて自分で発見したことを書いていこうと思う。
先日、ある作家のYouTubeを見ていて印象に残った話があった。その人は、「私は100%完成した原稿を書くのではなく、70%くらいの原稿を編集者に渡す」と話していた。
編集者とのやり取りの中で作品が完成していくというのである。
編集者はすごい!という話もしていた。
編集という仕事は、誤字脱字を直したり、文章を読みやすくしたりするだけではない。
その作品の可能性を見つけたり、作者自身も気づいていない部分を引き出したりする仕事なのだろう。
その話を聞いていて、最近の自分の生成AIとのやり取りを思い出した。
水の中で細く揺れていた白い痰が鳥になる
まず、「ワークライクバランス」というお題があり、その中では面白いことが書ける気がしないと言った。
こんな提案をされた。
もし私がこのテーマで面白く書くなら、テーマを一度忘れます。
例えば、
母の吸引を終えたあと、私はChatGPTを開いた。
で始める。
それを受けて、介護の朝について書き始めたのだ。
なんとなく日常を話しているうちに、
「白い痰が水の中で細く揺れている」というイメージが浮かび上がってきた。
さらに話をしているうちに、
「心の泡が細い糸のように、パソコンの中、スマホの中に収まっていくのだ。」というフレーズが出てきた。
ここからまた、何度も遣り取りを続ける。
そして「白い糸は、文字の中で小さな白い鳥になっているのかもしれない。」というフレーズが出てきた。
その時点での原稿は、こんな風になっていた。
「書き始めた時にはWorkだったものが、書き終わる頃にはLikeへたどり着いている。
その細い白い糸は、文字の中で、小さな白い鳥になっているのかもしれない。」
そしてその後、生成AIはこう言った。
あと、私が嬉しかったのは、「白い鳥」
が途中で急に出てきたのではなく、
ちゃんと
白い痰
↓
白い糸
↓
白い鳥
という連想になっていることです。
読者は無意識にその変化を追える。
これはかなり自然です。
あ、と気づいた。そして、こう直した。
さっきまで私を縛っていた、あの細い白い糸は、
小さな白い鳥になって、文字の連なりの上を、羽ばたきもせず、行き来しているのかもしれない。
出だしの白い痰と最後の白い鳥をつなげるつもりはまったく無かった。
生成AIとのやり取りがなければ、それが「さっきまで私を縛っていた糸」から解き放たれる白い鳥だとは、自分でも気づかなかったと思う。
他の色ではなく白い糸と書いた時点で、無意識化に白い痰の細いゆらぎからのイメージがあったのだろう。
最終的にエッセイは、白い痰が白い糸になり、白い鳥へ変わる表現になった。
生成AIは、私の潜在意識を読んだわけではない。
ただ、本人の気づかなかった連想を表に引き出したのだ。
自分の無意識が、痰を白い糸へメタファーとしていたことを、発見できたのだ。
これが、作者と二人三脚で作品を作っていく編集という仕事なのだろう。
次回は、生成AIと編集、そして私と三人のAI編集者との付き合い方について書いてみたい。
「生成AIの編集とは」シリーズ 全3回 今回は2回目
それ以外にも、こんな記事を書いています。AIという外部シナプスとの対話によって、一人の人間の内面が変容していく話です。