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犯人はアリバむを぀くらない 第4章『届かなかった正矩』

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    第4ç«  届かなかった正矩

    ――― 刺身サクラ巡査郚長 ―――

    ここは、枝林゚リカや玀田菊倪が殺された堎所を管蜄する繁華街の譊察眲から数キロ離れた、海蟺を管蜄するのどかな譊察眲。

    あたしは、キラキラした目で、「遞挙違反特別捜査本郚」ずいう看板を眺めおいる。

    「よっしゃ いっちょ、悪いこずをしおいる政治家を぀かたえたるでっ」

    あたしは、譊察官幎目の巡査郚長、チャキチャキの刑事だ。

    刑事課の䞭にもいろいろな係があっお、あたしは匷行係、いわゆる、殺人・匷盗・匷姊・匷制わいせ぀・傷害・暎行など、凶悪犯眪を担圓する係に所属しおいる。

    スリットが入ったミニスカヌトをよく着おいるもちろん某マンガのように、倪ももにナむフは隠し持っおないよ♪ので、譊察官ず思われないこずが倚いけれど、それを逆手にずっお、数々の犯人を぀かたえおきた。

    支持率の䜎䞋により内閣総理倧臣が総蟞職をしたため、あずヶ月ほどで、衆議院議員遞挙が行われる。

    そのため、遞挙違反を取り締たるべく、郜道府県党おにおいお、各譊察眲ごずに様々な捜査を開始すべく、「遞挙違反特別捜査本郚」、通称「遞挙特捜」が蚭眮された。

    遞挙特捜のメンバヌに初めお遞ばれた嬉しさから、あたしは意気揚々ず腕たくりをしお、遞挙特捜の郚屋の䞭に入っおいった。

    郚屋の䞭には、刑事課・生掻安党課・亀通課・譊備課・地域課・譊務課ごずにそれぞれメンバヌが遞出され、各々がむスに座っお眲長が来るのを埅っおいる。

    数分埌、ドアが開き、眲長が䞭に入っおきた。

    「たいど もうかりたっか

     みなさん知っおいるず思うけど、ミヌが眲長です。

     えっず、ほずんどの人が知っおいるず思うけれど、遞挙違反の取り締たりをする䞊で、泚意点を蚀うので、聞いおほしいの」

    泚意点っおどんなこずなんだろうか。

    あたしはワクワクしながら、メモをずる準備をした。

    「たず、点目」

    どんなこずでもメモをずりたっせ、眲長

    あたしの気合いは十分だ。


    「途䞭でパチンコに行かないこず。

     もちろんパチスロもダメよ」

    えっ、眲長、それはギャグで蚀っおるの

    それずも本気で蚀っおるの

    「点目。

     遞挙違反を芋かけたら、しっかり報告するこず。

     特に、駐圚所のみなさん、絶察に蚀っおよね♪」

    なになに、どういうこず

    駐圚所勀務の方々は、違反を知っおも、芋お芋ぬふりをするこずが倚いの

    「点目。

     実はミヌも、䜕が遞挙違反で、䜕が遞挙違反じゃないかよく分かりたせん、テヘペロッ☆

     分からないこずがあったら、刑事課に問い合わせおね」

    えっ、眲長も遞挙違反に関しおよく分かっおないの

    たあ眲長は、亀通課の出身だもんね。

    切笊は埗意だけれど、刑事関係のこずはうずくおも仕方ないよね。

    でも、眲長なんだから、「テヘペロッ☆」はやめようね。

    「点目。

     若い衆は、お䌑みはありたせん、芚悟しおね。

     家に垰っおからも、急な呌び出しずかしちゃうから、お酒は寝る前しか飲んじゃダメよ。

     あ、幎配の方のお䌑みはありたすよ」

    コラッ

    そこは平等にいこうよっ


    「点目。

     譊察手垳、絶察に持っお行っおよね。

     みんなよく忘れちゃうけど、あずで問題になっお謝らないずいけないの、ミヌなんだからね」

    譊察手垳、携行するのは圓然のこずなんだけれど、持っお行くのを忘れる人なんおホントにいるの

    「点目。

     立候補者の亀通違反を芋かけたら、速攻で亀通課に問い合わせおね。

     立候補者の亀通ルヌルは、普通ず少し違うから、泚意が必芁よ」

    えっそうなの

    あたし今初めお知ったよ。

    それ、遞挙特捜だけでなくお、眲員党員に蚀っおおいたほうがいいんじゃないの

    「点目。

     遞挙違反を芋぀けおも、勝手に逮捕しちゃダメよ。

     特に、莈収賄は絶察にダメ。

     すぐにこっちに連絡をしおね」

    どういうこず

    なんでその堎で逮捕したらいけないの

    意味分かんないんだけど。

    「泚意点は以䞊だわ。

     じゃああずは、刑事課長、たかせたわよ」

    ここで刑事課長にバトンタッチ。

    さたざたな捜査をする班に分け、班ごずぞの説明をし始める。

    あたしは、莈収賄を捜査すべく、生掻安党課で少幎事件を担圓しおいる、幎先茩の蘇我壮倪巡査郚長ずペアを組むこずになった。


    「サクラ郚長、よろしくな」

    譊察の䞖界では、巡査郚長の階玚にある人たちのこずを「〇〇郚長」ずいうように蚀うので、あたしはみんなから「サクラ郚長」ず呌ばれおいる。

    本来なら「刺身郚長」ず蚀われるべきなんだろうけれど、「さしみ」っおみよ字、ありえなくない

    だからみんなにお願いしお「サクラ郚長」っお呌んでもらっおいるのだ。

    ちなみに、䞀般䌁業だったら「平瀟員→䞻任→係長→課長→郚長」ずいう流れだから、「郚長」っお名の぀く人は、ものすごく偉いさんになっおくるけれど、譊察で蚀うずころの「郚長」は巡査郚長なので、䞋から番目の階玚。

    なんだか少ししっくりこない気分なのだ。

    「蘇我郚長、こちらこそ、よろしくです」

    お互いあいさ぀を枈たせ、芆面パトカヌに乗り蟌んで、目的の堎所に向かう。

    「しかし、眲長の蚀っおいた泚意点、意味分からないや぀倚くなかったですか」

    あたしは蘇我郚長に聞いた。

    「どこらぞんが」

    「たずは『パチンコやパチスロに行かないこず』っお、そりゃ行かんでしょ」

    「いや、あっしは前回の遞挙特捜でパチスロに䜕床も行ったよ」

    「マゞで」

    「先茩が匷匕に連れお行くんだもん、仕方ないっしょ」

    眲長が蚀った泚意点は、冗談じゃなくお本気で蚀っおたんだ

    あたしはビックリした。


    「じゃあ、぀目の『特に駐圚所のみなさん、絶察に遞挙違反蚀っおよね』ずいうのは」

    「ああ、アレね。

     駐圚所はね、遞挙違反で、誰か自分の管蜄内の人を぀かたえちゃったら、異動するのが䞍文埋なんだ。

     今いる駐圚所を気に入っちゃっおたら、異動したくないでしょ

     だから、遞挙違反を芋぀けおも、にぎり぀ぶしちゃう人がそれなりにいるわけ」

    もはや開いた口がふさがらない。

    「぀目の蚀っおるこずはだいたい分かるけど、぀目の『遞挙違反を芋぀けおも、勝手に逮捕しちゃダメよ。特に、莈収賄は絶察にダメ』っおのは」

    「たあ、それはおいおい分かるよ。

     今は知らなくおもいいんじゃね」

    蘇我郚長は、話を急にそらしお、奜きな女優の話をし始めた。


    ――― 蚈参健䞀郎 ―――

    枝林゚リカ・蟹田果歩・玀田菊倪の人が殺された。

    ずなるず、次は俺様の番か。

    俺様ず゚リカで、䞭孊校のクラスを支配しおいた。

    玀田菊倪は、俺様の子分。

    いい金づるだった。

    呜什すればいくらでも俺様に金をくれた。

    おかげで、いい思いをたくさんできた。

    蟹田果歩は、゚リカの子分。

    ゚リカの蚀うこずをなんでも聞いた。

    この人で、クラス䞭の奎らを順番でいじめたくった。

    特に、沖田音銙のずきは、ひどかった。

    ゚リカが特に荒れおいた時期で、俺様でもできないようなこずを、゚リカは平然ず沖田にやっおいた。

    俺様も゚リカも、そしお蟹田果歩も、玀田菊倪も狂っおいた。

    その結果、沖田は自殺した。

    遺曞がなかったので、正盎ホッずしたぜ。

    そしお、忘れおいた頃に、殺人事件が次々ず起こっおいった。

    これは偶然じゃない。

    人目、玀田菊倪が殺されたずき、予感は確信に倉わった。

    間違いなく俺様たち人をねらった犯行だ。

    おそらく犯人は、沖田の家族か芪戚だ。

    枝林゚リカが殺されおも、玀田菊倪が殺されおも、俺様は眠れなくなるこずはなかった。

    むしろ逆だった。

    犯人が次は自分を狙っおくる。

    そう考えるず、党身の血が沞隰するような高揚感を芚えた。

    俺様は恐怖しおいた。

    そしお同時に、その恐怖をどこか楜しんでいた。

    俺様は、これたでに殺された人ほど、簡単には殺られないぞ


    ――― 枝林悊子第1章で殺害された枝林゚リカの母芪 ―――

    私の倫、぀たり、゚リカの父芪は、゚リカが䞭孊校に入っおから、゚リカに性的虐埅を䜕床も繰り返し行っおいた。

    ゚リカの机の䞭に入っおいた日蚘をこっそりず読み、性的虐埅のこずに気づいた。

    しかし私は、それを知っおいながらも、倫のほうが私より力関係が䞊だったため、どうしおいいか分からず、芋お芋ぬふりをしおしたった。

    日蚘には、父芪から性的虐埅を受けおいたこずだけでなく、同玚生をいじめおいるこずたで曞いおあった。

    成瞟こそ䞊䜍をキヌプしおいたものの、゚リカの頭には、目立たない䜍眮ではあるが、箇所以䞊、円圢脱毛症ができおいた。
     

    そしお、゚リカは䞭のずきに、劊嚠した。

    「同玚生ず゚ッチしおできちゃった」
    ず゚リカは蚀っおいたが、間違いなく、父芪ずの子どもだろう。

    私ず䞀緒にすぐ病院に行っお䞭絶をした。
     

    この頃には、゚リカも手が぀けられないほど家で暎れるこずも倚く、私もよくケガをし、ファンデヌションでケガをした郚分を隠しおいるのが日垞だった。

    䞭孊校でも、呚囲にむゞメをしたくっおいたこずは、容易に想像できる。

    私はただただ、取り繕うこずだけに必死で、根本的な解決を䜕぀しようずはしなかった。

    近所から芋れば、成瞟のいい子どもがいる仲のいい家庭。

    しかし、真実は党く違っおいた。

    ごめんね、ごめんね、゚リカ。

    母さん、匱くおごめんね。

    私は遠く離れた実家の階で、倩井からぶらさげたヒモの先をたるく結び、そしお自らの銖をひもにかけた。


    ――― 月倜虹空犯人―――

    蚈参健倪郎。

    オレはコむツのこずを知っおいる。

    コむツもオレのこずを知っおいる。


    蚈参健倪郎のみよ字は、もずもず「庫船」だった。

    オレは人を殺したあず、音銙の遺曞に曞いおあった䜏所をたよりに、蚈参健倪郎のマンションに行っお身をひそめおいるず、出おきたのは、なんず庫船健倪郎だった。

    健倪郎が小のずきたでずっず孀児院で䞀緒に暮らしおきたのだから、芋間違うわけがない。

    健倪郎は小になっお、里芪に匕き取られるこずになった。

    「孀児院のずきの友達がりロりロしおいたら、里芪もさぞかし迷惑がるだろう」

    オレはそう思い、健倪郎ずはずっず連絡をずっおいなかった。

    みよ字が倉わったのは知っおいたが、どのようなみよ字に倉わったのかは知らなかった。

    そうか、「蚈参健倪郎」になっおいたんだな。

    みんなからいじめられ、よく泣いおいた健倪郎。

    い぀もオレが健倪郎のこずをかばい、健倪郎に「匷くなれ」ず口をすっぱくしお蚀っおたっけ。

    その健倪郎がどうしお

    たさか、もずもずオレが知っおいるダツが、オレの宝物である沖田音銙をいじめおいるずは思いもしなかった。

    正盎、健倪郎ずこんな圢で再䌚したくはなかった。

    でも、逃げるわけにはいかない。

    オレは翌日、健倪郎ず察峙する決心をした。


    ――― 刺身サクラ巡査郚長 ―――

    あたしは、この譊察眲の管蜄内から出銬する珟職の衆議院議員「酢倩助造」が、個人的に倧嫌いだった。

    ずいうのも、あたしが通っおいた高校は、酢倩助造が創蚭した新蚭の高校だったのだが、勉匷させるこず勉匷させるこず。

    半端じゃないほど勉匷させられたので、
    「あたしの青春を返せっ」
    ず校長宀でよく叫んでいた日々がな぀かしい。

    だから、できるこずなら、あたしはこの手で酢倩助造を逮捕したい。

    なのに、なかなか酢倩助造は、しっぜを出さない。

    「あ、あたしは酢倩助造を逮捕したいのにっ」

    思わず口から本音がこがれ萜ちる。

    蘇我郚長は携垯電話をいじりながら、冷静に答える。

    「いや、そりゃ無理っしょ」

    「なんで」

    「衆議院議員だぜ。

     地方議員ずは違うんだぜ。

     無理無理」

    理由は教えおくれず、やる気のなさそうに携垯電話をいじり続ける蘇我郚長。

    いや、蘇我郚長だけじゃない。

    この遞挙特捜に関わる譊察官党䜓の士気が、異垞なほど䜎いのだ。

    もずもず、譊察官になりたくおなっおいない人が倚いのは知っおいる。

    それでも、普段の仕事のずきは、みんなそれぞれ、ある皋床、おきぱきず行動しおいる人たちなのだ。

    なのに、遞挙特捜に入った瞬間から、ダル気のなさを党面的に出しおいく人が倚すぎる。

    いったい䜕故


    芆面パトカヌを目的地たで走らせる。

    もちろん、スピヌド違反で぀かたらないよう、制限速床をある皋床守っお運転しおいる。

    今の時代、亀通違反は、譊察官だからずいっお、決しお蚱しおもらえない。

    もしスピヌド違反なので぀かたえれば、反則金を払わないずいけないわ、眲長から倧目玉くらわされるわ、螏んだり蹎ったりの状態になっおしたうのだ。

    そんなこずを考えながら運転しおいるず、ノヌヘルで走っおいる原付を発芋。

    景気づけに぀かたえるか♪

    「ノヌヘル぀かたえるんで、先茩、車茉マむクよろしく」

    「っおお前、亀通違反の切笊持っおないだろっ」

    「気にしない気にしない」

    「いや、気にしろよ
     いいから、ノヌヘルを远いかけるんじゃなくお、目的地に行けっお」

    「えっ」

    「぀かたえたら、切笊を切るために亀番のダツらを呌ばないずいけないだろ。
     めんどくさい」

    「むダです、぀かたえたす アッカンベッ」

    舌を出し、サむレンを鳎らす。

    「おいコラッ、ただ赀色灯を倖に出しおないうちから、サむレン鳎らすなっ」

    「しっかり぀かたっおくださいね♪」

    「わっ、ドリフトかたすなっ」

    ノヌヘルの原付を぀かたえ、無線機を぀かっお亀番の譊察官を呌び、切笊を切っおもらう。

    「芋事なカヌチェむスだったでしょ」

    「車酔いしそうになったわ、おかげで」

    「りフフフ、レヌス経隓があるもんで、運転には自信ありたすわよ」

    あたしは再び目的地に向かっお、芆面パトカヌを走らせた。


    ――― 酢倩助造衆議院議員 ―――

    ワシは珟職の衆議院議員、酢倩助造である。

    近々、ワシは、海蟺にある「倉庫」で、暎力団「背䞭組」の組長さんに、ワシが盎々にワむロを枡す。

    なあに、ワむロなんお珍しいこずでもなんでもない。

    たあ昔ず比べるず、ワむロを枡さなくなった議員もいるけどな。

    今の若い者は知らないかもしれないが、昔は、暎力団がゎロゎロず囜䌚議員や地方議員になっおいたんだぞ、フォフォフォ。

    ワシからすれば、どうしおワむロを枡さないのかがよく分からん。

    ワむロを枡したほうが、圓遞する確率を高くできるのに。

    遞挙に関するニュヌスを芋おみろ。

    地方議員ならずもかく、圓遞した囜䌚議員は、ごくごくわずかな䟋倖をのぞいおは、党く逮捕されおおらんのじゃよ。

    これが䜕を意味するか分かるか

    譊察は、長い物に巻かれおるっおこずじゃ。

    「勝おば官軍」ずはよく蚀ったもので、「遞挙に勝おば、遞挙違反で぀かたるこずはない」ずいうのは鉄則なんじゃ。

    圓遞した本人が逮捕されおいるごくごくわずかな䟋ずいうのは、無所属であったり、党に入っおいおも芋限られおいるダツばかり。

    ぀たり、䞎党の䞭で暩力を握っおいるワシは逮捕されないっおこずじゃ。

    それが分かっおいるからこそ、倧胆な時間垯に、倧胆な堎所で、暎力団にワむロを枡せるのじゃ。

    組長さんにワむロを枡せば獲埗できる祚が増えるから、ワシは確実に圓遞するこずができるじゃろう。

    フォフォフォフォ、これでたた利暩を獲埗し、倧もうけするこずができる。


    ――― 蘇我壮倪巡査郚長 ―――

    今回の遞挙特捜、぀いおないなぁ。

    よりによっお、刺身サクラず䞀緒に動かないずいけないだなんお。

    いや、い぀もだったらいいんだよ。

    刺身サクラは仕事もできるし、ダル気もある。

    顔もかわいいし、ミニスカヌトもなかなかいいセンスしおいる。

    「日に回ある譊察眲での圓盎䜓制が䞀緒だったらさぞかし楜しかっただろうに 」
    ずすら思う。

    でもなぁ、遞挙特捜では、あたり䞀緒に動きたくないタむプなんだよね。

    だっお、刺身サクラは、ただ遞挙特捜初めおだから知らないだろうけれど、遞挙特捜は、普通の事件ず違っお、ダル気や経隓だけじゃどうしようもないのだから。

    そもそも、遞挙違反を぀かたえられるむチバンのきっかけっおのは、あっしら譊察官の捜査じゃなくお、遞挙違反をしおいる人の関係者、぀たり内郚からの通報だ。

    だから、あくせく捜査するよりも、内郚からの通報があるたでは、できればゆっくりパチスロにでも行っおいたいんだけれど、

    刺身サクラをパチスロに誘った日には、ブチ切れされお、絶察眲長に蚀われるだろうしなぁ。

    い぀も少幎事件で䌑日出勀したくりなんだから、遞挙特捜くらいゆっくりしずきたいわ。


    ――― 酢倩助造衆議院議員の議員秘曞 ―――

    もうあのじいさん酢倩助造には、ホトホト愛想が぀きた。

    い぀たでたっおも、カネ・カネ・カネ。

    今回の衆議院議員遞挙に圓遞するために、秘密裏で、暎力団にたでワむロを莈る予定。

    そこたでしお利暩がほしいのか、匷欲じいさんめ

    それがしは、もうあのじいさんには぀いおいけん。

    䞖の䞭倉わった。

    もう利暩のためにだけに政治家になろうずするダツは、速攻で蟞職すべきだ。

    あのじいさんを匕きずり䞋ろしおやる

    ただ、それがしの安党は確保しなければならない。

    そうしなければ、それがしの呜が危なくなっおしたう。

    暎力団ず深い぀ながりのあるじいさんだ。

    どこたででも裏切り者は远いかけおくるだろう。

    それがしにも家族がいる。

    それだけは、絶察に守らなくおはならない。

    そのためにも、それがしのできる最倧限の方法は。

    あっ、ちなみに、ワむロを枡す堎所、「倉庫」だったっけ、それずも「倉庫」だったっけ、頭がこんがらがっお忘れおしたった。


    ――― 刺身サクラ巡査郚長 ―――

    はい、これで今日の捜査はおしたい

    遞挙特捜の郚屋に戻っおきた。

    これから報告曞を曞いお、今日は垰るべ。

    パ゜コンでパチパチず報告曞を぀くっおいたずころ、内線電話がかかっおきた。

    「はい、遞挙特捜、サクラっす」

    「こちら電話受付です。
     『遞挙に぀いおずっおおきの情報がある』ずいう電話がかかっおきたので、぀なぎたす」

    「はいはい、ペロシク」

    譊察眲にかかっおきた電話を内線電話で぀ないでもらう。

    ずっおおきの情報っおなんだろう、ワクワクする


    「はい、こちら遞挙違反特別捜査本郚の刺身サクラず申したす。

     ずっおおきの情報ずは、いったいどのような内容なのでしょうか」

    「あの、それがしは、珟職の酢倩助造衆議院議員の遞挙事務所で぀ずめおいる者です」

    おおっ、遞挙事務所からの内郚告発か

    これは結構期埅しおもいいんじゃないの

    「さし぀えかえなければ、お名前を聞かせおいただいおいいですか」

    「それだけは、勘匁しおください」

    「あなたのお名前が倖郚に挏れるこずは䞀切ありたせんので、たた気が倉わったら蚀っおくださいね。

     で、どのような内容なのでしょうか」」

    「実は、明日の午埌時ころ、海蟺にある『倉庫』もしくは『倉庫』で、酢倩助造本人が、背䞭組ずいう暎力団の組長に、遞挙でばらたくためのワむロを枡す手はず予定になっおいたす。

     このような悪事は蚱せたせんので、電話したした」

    マゞかよ

    これっお完璧に莈収賄じゃん

    確かに海蟺には、空き倉庫が぀建っおいる。

    密䌚するには絶奜の堎所だ。

    「名前を名乗らないので、り゜の内郚告発だず思われたかもしれたせん。

     でも、本圓なんです。

     『倉庫』も『倉庫』も、県が所有しおいたす。

     ですから、譊察官が匵り蟌みをしたり、隠しカメラを蚭眮するこずは容易だず思われたす」

    県が所有しおいるのか、知らなかった。

    民間が所有しおいるのず比べるず、譊察にずっおすごく行動をずりやすいので助かるわ☆

    ただ、このような超重芁な情報を知っおいるずいうこずは。

    ちょっずカマをかけおみた。


    「お電話ありがずうございたす。

     これは、遞挙事務所で぀ずめおいらっしゃる方々の䞭でも、ごく少数の人にしか知られおいない情報のように思いたす。

     あたしの掚枬ですが、遞挙事務所で぀ずめおいらっしゃるのではなく、酢倩助造さんのご家族かご芪戚の方、もしくは議員秘曞の方ではいらっしゃいたせんか」

    沈黙が秒ほどあったあず、返答があった。

    「さすが譊察のお方だ。

     ずば抜けた勘をお持ちでいらっしゃる。

     それがしは、確かに秘曞の人でございたする。

     名前たではご容赊しおくださいたせ」

    ビンゎ

    やっぱりそうか

    匿名の議員秘曞からの通報であれば、かなり信憑性の高い情報だず遞挙特捜のみんなにも刀断しおもらえる。

    「分かりたした。
     議員秘曞の方が通報しおくださるくらいですから、酢倩助造さんは盞圓な悪事をこれたでに働いおきたのでしょうね」

    「党くもっおその通りです。

     それがしは本圓に嫌気がさしたした。

     これではこの囜は良くならない。

     是非ずも酢倩助造を逮捕しおください」

    「ご垌望に添えるよう、党力で捜査したす」

    よっしゃ これで酢倩助造を逮捕できる

    あたしはガッツポヌズを決め、刑事課長に、こずの詳现を䌝えに行った。


    ――― 蘇我壮倪巡査郚長 ―――

    刺身サクラが電話で話をしおいるのを、スマホを觊りながら隣で聞いおいた。

    いい情報をゲットしたみたいだな。

    ただ、ここからが、遞挙違反の難しいずころなんだ。

    これたでも譊察は、遞挙違反に関しお、いい情報を䜕床も入手しおきた。

    そしお、トカゲのシッポ切りは、䜕十回もやっおきた。

    だが、肝心の䞭枢郚分に切り蟌めおいない。

    それは、どうしおか

    刺身サクラも、明日になったらその理由が分かるだろう。

    それでも刺身サクラは、遞挙特捜で頑匵ろうっおいう気分になれるのだろうか

    あっしは、残念ながら無理だった。

    譊察に、そしお日本のシステムに絶望した。

    あっしや刺身サクラがい぀もしおいる捜査ず、遞挙特捜が行う捜査は、根本的に違うんだ。

    だから、みんなダル気をもっお頑匵ろうずしないんだ。

    今日はもう垰ろう。

    これ以䞊、遞挙特捜に残っおいおも、結果は同じだろうから。


    ――― 刺身サクラ巡査郚長 ―――

    議員秘曞から電話をもらった翌日、あたしは眲長宀にずかずかず入り蟌み、倧声を匵り䞊げお眲長に詰め寄った。

    「眲長、どうしお捜査ができないんですか」

    「萜ち着きなさい、サクラ郚長」
     

    副眲長や刑事課長にいさめられおも、どうしおも玍埗がいかない。

    「だっお、珟職の酢倩助造衆議院議員が今日の午埌時ごろ、暎力団『背䞭組』の組長に、『倉庫』か『倉庫』のどちらかで、ワむロを枡すずいう情報をゲットしたんですよ

     それなのに、どうしおこれ以䞊、捜査をしたらダメなんですか」

    「あのね、知らなかったかもしれないけれどね、サクラ郚長。

     普通の事件は、眲長であるミヌが指揮をずるんだけれど、遞挙違反の堎合は、譊察本郚にいる本郚長が指揮をずるわけなの。

     だからいくらミヌがを出しおも、本郚長がを出しおくれなければ動けないわけ。

     分かる、この぀らさ

     ミヌだっお、捜査したくおうずうずしおるの。

     これは䞖玀の倧スクヌプよ

     なのに、あの煮え切らない本郚長のせいで、捜査できないの」

    眲長が、気色悪いオカマ蚀葉を䜿いながら匁解しおくる。

    「そもそもなんで本郚長はを出しおくれないんですか」

    「本郚長はね、キャリアなの。

     譊察庁から来おいるの。

     ぀たり、政治家ずかの぀ながりも深いわけ。

     だから、今の本郚長が『酢倩助造』寄りの人間だった堎合、いくらいい情報を入手したずしおも、その情報をもずに逮捕なんおした日には、自分の立堎がなくなっおしたうわけ。

     酢倩助造は、なんおったっお䞎党よ、䞎党。

     しかも䞎党の䞭でも、かなりの力を持っおいる倧物䞭の倧物よ。

     逮捕しおしたうず出䞖にも及ぶし、いいこずが党くなくなっおしたうのよ。

     だから本郚長は、ここで酢倩助造を逮捕せずに恩を着せおおいお、自分の埗にする。

     遞挙違反に関しおは、絶察に、本郚長指揮にすべきじゃないずミヌは思っおいる。

     でも、誰も倉えようずしないし、そもそも、ノンキャリアの譊察官は、システムを倉えるこずができないの」


    「この事件、『倉庫』ず『倉庫』の䞡方に、隠しカメラを備え付けるだけで、簡単に酢倩助造を逮捕するこずができるんですよ」

    「分かっおる、分かっおるのよ、そんなこず。

     でもそしたら、ミヌの銖が飛ぶどころの話じゃすたないわよ。

     いい 暎力団もからんでいるのよ。

     ミヌは来幎、定幎退職よ。

     本郚長ができないものを、ミヌが匷匕に捜査するこずなんおできたせんっ」

    「この意気地なし眲長っ」

    「ふんっ、結婚しおいないさくら郚長に蚀われたくないですわ。

     あのね、結婚しおいるず、守るものがたくさん増えたすのよ。

     懲戒免職にでもなっおみなさい、ミヌは家族から䞀生口聞いおもらえないわ。

     それどころか、家族から捚おられおしたうわっ」

    「なによっ、あたしを行き送れの女みたいに蚀いやがっお

     あたしただよ

     だったらあたし人だけでも捜査したすっ」

    あたしは、怒りながら眲長宀から出ようずした。

    こんなの、おかしすぎる

    「ダメよ、そんなこず。

     埅ちなさいよ」

    眲長が止めようずしたけれど、あたしはおかたいなしに
    「埅ちたせん」
    ず蚀い返し、眲長宀から出る。

    「みんな、サクラ郚長をずめなさいっ」

    眲長が、マむクで叫んだ。

    眲長がマむクを通しお叫んだ内容は、党おの郚眲で聞くこずができる仕組みになっおいる。

    あっ、芆面パトカヌの鍵、党郚かくされた

    しかも、私の所有しおいる車、前埌巊右ずも車が眮かれおいお、動かすこずができない。

    あの意気地なし野郎


    「サクラ郚長は、今日日、剣道の皜叀でもしおいなさい。

     いでよっ、剣道段の獅子玫苑

     剣道の皜叀で、この小嚘を足腰立おないくらいしごいおあげおください。

     それから、自宅たで車で送り返しおしたいなさいっ」

    眲長は指をパチンず鳎らした。

    するず、剣道段の獅子玫苑譊郚補が登堎。

    「ずるいっ、こんなんありかよ」

    「フフフ、サクラ郚長を存分に教育しおあげおくださいね、獅子係長」

    ちなみに、譊郚補のこずは「係長」ず呌ぶのが譊察の垞識。

    「眲長分かりたした。

     来い、サクラ郚長」

    「行かない、あたし絶察に道堎に行かない」

    「アむス買っおやるから機嫌なおせ」

    「あたしゃ子どもか

     そんなんで行くず思っおるんか」

    「じゃあむケメン人玹介しおやる。

     これくらいで手を打お」

    「むケメン人

     それはどこの䌚瀟に぀ずめおいる人たちなの」

    「倧手広告代理店やテレビ局だぞ」

    「それでも今回だけはダメッ」

    「みなさん、サクラ郚長を匷匕に道堎ぞ連れお行っお

     そしお、倖から鍵をかけおしたいなさいっ」

    眲長の号什ずずもに、人がかりで道堎に連行され、本圓に倖から鍵をかけられおしたう。

    「出せっ、出せよ、この野郎っ」

    あたしはドアを䜕床も蹎ったが、倖に出るこずはできなかった。

    道堎の䞭には、獅子係長が、静かにお茶を飲んでく぀ろいでいる。

    譊察っおいったい、䜕のためにあるんだ

    暩力者に屈しおたら、䞖の䞭を良くできないだろっ

    あたしは床にしゃがみこんで、くやし涙を流した。


    ――― 蚈参健倪郎 ―――

    別に栌闘技をやっおいるわけじゃない。

    筋トレをしおいるくらいだ。

    でも、ケンカには自信がある。

    䞭のずきから党勝だ。

    栌闘技を習っおいるダツにも勝った。

    図䜓がでかいから、パワヌが違う。

    犯人が来おも、そうそう殺られる俺様じゃない。

    しかし、車で突っ蟌んでこられるずなるずやっかいだ。

    さすがに俺様でも、それを防げるほど頑䞈じゃないぜ。

    昌か倜か、い぀犯人がやっおくるのか分からない。

    犯人は人なのか耇数なのか、男なのか女なのか。

    ゟクゟクする。

    アドレナリンが分泌されおくる。

    もずもずいじめられっ子だった俺様。

    い぀も孀児院では、虹空君に助けおもらっおたっけ。

    人間倉われば倉わるもんだな。

    そう思いながら、䜏んでいるマンションの階たでたどり぀く。

    するず、芋芚えのある顔があった。

    幎ほど経っおはいるが、あの顔は忘れはしない。

    虹空君だ。


    ――― 月倜虹空犯人―――

    「よう、久しぶり。

     分かるか 孀児院で䞀緒だった月倜虹空だ」

    健倪郎は突然の再䌚に、驚きず嬉しさをかくせない様子だ。

    「虹空君、虹空君なのか

     ひさしぶりだなぁ、元気しおるんかい」

    「おう元気しおるよ。

     健倪郎はどうや」

    「こっちも元気しおるぜ」

    「健倪郎、みちがえるほどでかくなったな。

     昔は小さくお、い぀もいじめられおたからな」

    「昔の話だぜ、そりゃ。

     今では俺様に文句を蚀っおくるダツなんお、誰人いやしないぜ。

     䞭のずきから負けなしだ」

    「そうか、たいしたもんだな。

     健倪郎ず話をしたくなっおな。

     䞀緒に来おほしいんだ」

    オレず健倪郎は、人で南方向に向かっお歩き始めた。


    ――― 蚈参健倪郎 ―――

    ファミレスかどこかに行くずばかり思い蟌んでいたら、海蟺の近くの空き倉庫か。

    これは、もしかしお、もしかしおだな。

    「」ず曞いおある倉庫の䞭に入っおいく。

    隣にある「」の倉庫には、あやしい黒服のオッサンたちがゟロゟロず入っおいくのが目に入った。

    䜕をしおいるのか分からんが、あやしいオッサンたちだな。

    人、芋たこずのあるオッサンがいる。

    テレビにも出おたんじゃないのか

    たあ、俺様には関係のないこずだがな。


    ――― 酢倩助造衆議院議員の議員秘曞 ―――

    よしっ、予定通り、午埌時ピッタリに、背䞭組の組長である背䞭背倪郎が、子分どもず䞀緒に「倉庫」ぞやっお来おくれた。

    こちらは、酢倩助造ずそれがし、そしお議員秘曞人。
     

    どこに隠しカメラを蚭眮しおくれたかは分からないけれど、譊察のみなさん、しっかり頌みたしたぜ


    ――― 刺身サクラ巡査郚長 ―――

    午埌時が、無情にも過ぎおいった。

    あたしはただ道堎に軟犁されたたただ。

    獅子係長は、人黙々ず朚刀で玠振りをしおいる。

    やっず分かった。

    遞挙特捜のみんながダル気ない理由が。

    そりゃダル気でないわな。

    いい情報があっおも、捜査できないんだから。

    これじゃ、頑匵っおもなんにも意味ないもんな。

    みんな、このこずを知っおいたんだろうな。

    い぀もの事件は、こんなこずないんだけどね。

    ちゃんずしっかり捜査できるんだけどね。

    新聞に茉るくらいの倧物の犯人を぀かたえれたりもしたんだけどね。

    これからどうしようか。

    このたた、あきらめながら刑事を続けるのか、それずも、軟犁が解けたら、本郚長のずころに怒鳎りこみに行くか。

    本郚長のずころに怒鳎りこみに行っおも、結局䜕にも倉えるこずができないたた、蟞衚曞くこずになっちゃうだろうけどね 。

    あたしは久しぶりに、遠く離れお䜏んでいる䞡芪に䌚いたくなった。


    ――― 蚈参健倪郎 ―――

    虹空君が、倉庫の内偎から鍵をかける。

    これで、倖から䞭ぞは入れない。

    投光機たでご準備ずは、ずいぶん念入りだな。

    遠たわしに聞かれるのは奜きじゃない。

    こんなずころに連れおくる理由は぀だ。

    単刀盎入にこっちから聞いおやる。

    「あのさ、ぶっちゃけ聞いおいいかな

     虹空君っおもしかしお」

    「あっ、分かっおくれた

     話早くお助かるわ」

    ビンゎだったようだな。

    「そうか、やっぱりそうなのか。

     たさか虹空君があの人を殺した犯人だずは思わなかったわ。

     沖田の圌氏 それずも芪戚」

    「圌氏だ」

    「そっか、悪いこずしたね。

     虹空君の圌女だずは思いもしなかった」

    「なあ健倪郎、教えおくれよ。

     お前、昔、いじめられおただろ

     それでよく泣いおただろ

     なのに、どうしおいじめる偎に立おるんだ」

    「玍埗できない」ずいう衚情で、虹空君は俺様の目を芋おきた。

    俺様も、虹空君の目をしっかりず芋お、こう蚀った。


    「里芪に匕き取られおから、最初の幎間は良かったんだ。

     でもな、そこから里芪のやっおる䌚瀟の業瞟が悪化しちゃっおな。

     人間扱いしおくれなくなったんだぜ。

     俺様を殎っお蹎っお、殎っお蹎っお、それの繰り返し。

     メシも、床にぐちゃぐちゃになったのしか食べさせおくれなかった。

     口で食べろっおさ。

     たるで犬のような生掻だった。

     俺様も、最初は耐えるばかりだった。

     あざができ、歯が折れ、そしお骚折し、孊校でもそれが原因で、いじめられるようになった。

     友達だったダツラからも簡単に芋捚おられ、党員から無芖、芋お芋ぬふりをされた。

     ぀らかった。

     孀独だった」

    「だったら孀児院に来お、オレに盞談しおくれれば良かったのに」

    「虹空君に䌚いたかった。

     でも、そしたら、虹空君は優しいから、孀児院のずきみたいに、絶察になんずかしようずしお、危険なこずたでしおくれる。

     虹空君はすっげえ頌りがいがあっおいいダツだから、だからこそ迷惑をこれ以䞊かけたくなかった」

    虹空君は黙っお神劙な顔぀きで、俺様の蚀うこずを聞いおいる。

    「そこで、思い出したのが、虹空君の『匷くなれ』っお蚀葉だ。

     孀児院では、虹空君が守っおくれた。

     でも、ここでは、誰も守っおはくれやしない。

     虹空君が䜕床も『匷くなれ』っお蚀っおくれたのが、骚身にしみおよく分かった。

     俺様は、虹空君みたいに匷くなりたくお、筋トレをしはじめた。

     そしお、俺様をいじめおきたダツラにケンカを売っおいった。

     最初のうちは負けるこずもあったが、堎数を螏んでいくうちに負けなくなっおいった。

     なにしろ、死ぬ気でやったからな。

     遊び半分のダツらずは気合いが違うかった。

     その頃からガタむがでかくなりはじめ、幎でセンチくらい身長が䌞びおいった。

     䞭になる頃には俺様は、䞭孊校で無敵の存圚ずなり、里芪も俺様に暎力を振るわなくなった。

     この䞖の䞭、力が党おだ。

     力がなければ呚囲からいじめられ、力があれば呚囲からおそれられる。

     俺様には、敵か手䞋しかいねえ

     やるかやられるか、匱肉匷食の䞖界なんだ、この囜は」


    「倉わったな、健倪郎 」

    「虹空君は、孀児院の頃から、はっきり蚀っおすごかったよ。

     正矩感あふれお、困っおいる人がいたら、すぐに手を差しのべおいた。

     虹空君のたわりは、い぀も笑顔でいっぱいだった。

     今でもマゞで尊敬する。

     しかしなぁ、虹空君みたいな信念を貫き通すダツは、ほんのごくごく皀にしか䞖の䞭にいねぇんだ

     みんな自分の身をかわいがり、結局䜕もせずじたいなダツらがほずんどなんだ

     䞖の䞭、むゞメが原因で自殺しおいるダツは山ほどいる。

     でもな、虹空君以倖にな、本気で仕返しをしようずするダツは、誰人ずしおいねぇんだよ」

    「 それは違うぜ、健倪郎。

     お前は、ただただ䞖界を知らない。

     確かにほずんどの人間が、䜕もせずじたいで人生を終わらせおしたうようにオレも感じる。

     しかしな、そんな䞭で、䞖の䞭を倉えおいる人たちっおのは、マゞですげぇよ。

     そういうすげぇ人たちを芋おいるず、『オレなんおただただな』っおい぀も思う。

     オレも奚孊金をもらっお倧孊生になっおから、この囜に、初めおそういうすごい人たちがいるこずを知った。

     そしお、海倖ぞ行き、戊争や飢逓で、今にも死にそうな人たちを目の圓たりにした。

     日本では、なかなかそういう珟実を教えおくれないから、知らない人が倚いんだろうけどな」


    虹空君の瞳には、涙がたたっおいた。

    ぀らそうだった。

    ゆっくりず、虹空君は手をポキポキ鳎らしはじめた。

    そうか、もうすぐ始たるんだな。
     

    「虹空君がそう蚀うのなら、間違いないんだろう。

     俺様の知らない䞖界が、この䞖のどこかにあるんだろうな」

    「オレがもう少し早く健倪郎に連絡をずっおいたら、こんなこずにはなっおいたかもしれない」

    「そうかもしれないな」

    でも、再䌚するのが遅すぎた。

    もう俺様ず虹空君は、仲良かったあの頃には決しお戻れない。

    虹空君の、呜より倧切な宝物を奪っおしたったのだから。

    虹空君は、俺様を冷たく睚みながら構えた。

    あの構えは、おそらく空手だ。

    「虹空君、空手やっおるんだ」

    「黒垯だ。

     すぐに楜にしおやる」

    「無理だず思うぜ」


    俺様は、虹空君ず向き合った。

    空手の蹎りやパンチを出すこずのできる間合いをずらさないためにも、すぐさた郁倫君を嚁圧しながら䞀気に距離を瞮め、パンチを䜕発も出しおいく。

    俺様の戊法は、蚀っおみれば「重戊車戊法」であり、自分の巚䜓を最倧限に掻かしお前ぞ前ぞ突進しながら殎りかかっおいくスタむル。

    こうすれば、盞手は冷静さを倱っおしたうのだ。

    反撃するヒマを䞎えず、俺様はパンチを繰り広げる。

    盞手がガヌドしおようが、俺様のパンチはガヌドの䞊からでも十分効かせるこずができる

    虹空君のガヌドの䞊から䜕発もパンチを攟぀。

    虹空君は防戊䞀方だ。

    もう少し、もう少しでガヌドが開く

    ず、そのずき、匷烈な痛みが右のわき腹を襲い、俺様は倒れた。


    ――― 月倜虹空犯人―――

    「急所だ。
     そこに肝臓があるの、知っおるか」

    倒れた健倪郎の䞊から、オレは芋䞋ろしながら蚀い攟った。

    健倪郎は顔をゆがめおいる。

    「いい攻撃だったが、所詮高校幎レベルだな。
     基本がなっちゃいない」

    タバコに火を぀けお、䞀服する。

    わざず健倪郎が回埩するのを埅っおやった。

    これが最期だからな、健倪郎ず話をするのも。

    「さすが虹空君だ。

     これたで俺様が盞手しおきたダツラずは党然栌が違う。

     急所にピンポむントで蹎りが入るず、立っおいられないんだね」

    健倪郎が立ち䞊がる。

    健倪郎の右手には、い぀の間にかバタフラむナむフが握られおいる。


    「ハンデくらいちょうだいよ、虹空君♪」

    健倪郎は、バタフラむナむフを振り回しながら、先ほどの攻撃を繰り広げようずしおきた。

    ガヌドしおたら刺されおしたう

    バシッ

    健倪郎の巊足に、枟身のロヌキックを入れた。

    健倪郎は、ヒザから厩れ萜ちる。

    ロヌキックの痛みで、健倪郎の手からバタフラむナむフが地面に萜ちおいた。

    玠早く地面に萜ちたバタフラむナむフを遠くぞ蹎り飛ばす。

    「す、すげえな、虹空君。

     ロヌキックなんおこれたで䜕床もやられおいるけれど、党く効きやしなかった。

     本圓のロヌキックはこんなに効くんだな」

    健倪郎は痛みを必死で我慢しながら、なおオレに向かっおパンチを繰り広げおきた。

    コむツ、防埡力がハンパじゃねぇ。

    しかも、さっきより懐に飛び蟌んでくるスピヌドが䞊がっおいる

    グキッ

    バックステップをする前に、健倪郎に足を螏たれた。

    したった、逃げられない

    オレは健倪郎もろずも地面に倒れこんだ。


    受身をしおいたから頭は地面にぶ぀けずに枈んだが、健倪郎にマりントポゞションをずられおしたった。

    ガヌドの䞊からガンガン殎られる。

    錻ず口から血が流れ萜ち、地面に萜ちた。

    健倪郎の䜓重が重すぎる。

    ひっくり返せねぇ

    「この䜓勢から負けたこずは䞀床もないぜ」

    䜓重がのった健倪郎のヒゞがオレの腹郚に襲いかかった。

    胃液が逆流しそうになるのをなんずかこらえる。

    「終わりだっ」

    健倪郎が腕を高々ず䞊げ、フィニッシュブロヌを炞裂させようずしたずき、オレは、腰に携行しおいたナむフを取り出し、健倪郎の胞に突き刺した。

    グサッ

    健倪郎の巚䜓から力が抜け萜ちる。

    健倪郎は仰向けに倒れた。


    ――― 蚈参健倪郎 ―――

    ハアッハアッ。

    息が苊しい。

    そりゃそうだ、ナむフが俺様の胞に突き刺さっおいるんだから。

    どうやら刺されたのは心臓ではなかったようで、ただ呜はあるようだ。

    「い、虹空君、ひどいぜ。

     く、黒垯だっおのに。

     しょ、勝負は俺様の勝ちだぜ」

    「最初に急所を蹎ったずきに、そのたたボコボコにしおやればよかった。

     たさかこんなに匷いずはな。

     油断しおいた」

    「ハアッハアッ。

     ほ、耒めおくれお、光栄だ。

     ガハッ」

    口から倧量の血を吐いた。

    もう俺様の呜は、残りわずかに違いない。


    「こ、虹空君に勇気を出しお盞談すれば良かった。

     い぀からだろう、自分が嫌いになったのは。

     い぀からだろう、人の幞せを憎く思い始めたのは。

     臆病者だったんだな、俺様は。

     ホ、ホントにすたねえ 」

    意識が薄れお、うたくしゃべれない。

    「こっちこそ、健倪郎に䌚いに行けば良かった。

     ものすごく埌悔しおいる。

     悪かった、蚱せ、健倪郎」

    虹空君が涙を流し、俺様に謝っおくる。

    俺様はもう声を出すこずができなかった。

    虹空君の目を芋おうなづき、そしお目を閉じた。


    ――― ナレヌション ―――

    翌日、県の職員から、蚈参健倪郎が、「倉庫」の䞭で死亡しおいるずの番通報を受け、譊察は、殺人事件特別捜査本郚を蚭眮した。

    珟堎から血痕を採取しおみるず、蚈参健倪郎以倖の血液が遺留されおいたこずが刀明。

    しかし、それ以䞊の手がかりは党く出おこなかった。

    ああ無念、遞挙違反の捜査が、本郚長指揮ではなくお眲長指揮であれば、莈収賄事件をめぐっお、偶然にも、月倜虹空ず蚈参健倪郎がいた「倉庫」に隠しカメラを備え付けるこずができおおり、録画した映像から、月倜虹空が犯人だずすぐに分かったであろうに。

    酢倩助造は、これたでになく他の立候補者ず接戊を繰り広げたが、ワむロのおかげもあっおか、なんずか芋事に再遞を果たすこずに成功。

    その埌も、海蟺の空き倉庫での出来事のため、目撃蚌蚀は党く集たらず、残念ながらこの事件も、未解決のたた、時は流れお行った。

    第章 バッド゚ンド

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