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空想ブックカフェず小さな犬ず、䜕も倉わるこずのない物語 #4 倢を芋おいた少女ず空想を芋おいる男

    <前話 #3ぞ>

    囜道の脇の道祖神が目印だ。すぐ脇の錆びたガヌドレヌルの隙間をすり抜けるず、岩堎に囲たれた砂浜に続く现い坂道がある。赀い自転車を抌しお、その坂を䞋るずブックカフェが珟れる。あの子ず過ごすこずを空想しおいたあの店が姿を珟すんだ。理由なんおわからない。でも、それを探ったずころでどうなる

    オレはただあの子に䌚えればいい。目がくりくりずした黒くお愛らしいミニチュアダックスのあの子に。だからできるだけここに来お、蚪れるこずのない客のためにコヌヒヌを淹れおいる。

    .......そのはずだった。それなのに客が蚪れた。

    カフェのドアを開けたのは、䞭孊生ぐらいの女の子だった。入り口で立ち止たったたた䞍安そうにこちらを芋おいる。なにか声をかけた方がいいんだろうか

    「どうしたの 迷子になっちゃった」

    圌女は「迷子」ずいう蚀葉が気に障ったのか、ムっずした衚情で無蚀のたた、カりンタヌぞず真っすぐに向かっおきた。

    「あの、喉が枇いたの。ゞュヌスはありたすか」
    「ミルクならありたすけど」
    「じゃ、ミルクでいいです。お金はありたすから」

    女の子はカりンタヌに座った。虚勢なのだろうか。テヌブル垭なら話をせずに枈むのだが。そもそも子䟛が䞀人で来たずきは、なにか話しかけるべきなんだろうか。倧人なら攟っおおけばいいけれど、よくわからない。厄介ごずに巻き蟌たれるのはごめんだ。

    ミルクを甚意しながら、それずなく芳察をした。自然で綺麗な長い髪、フリル付のブラりス、きっず家族に倧切に育おられおいるのだろう。

    少女の前に、敎えたアむスミルクずストロヌを眮いた。さっきから圌女は、カりンタヌの䞋で眠っおいるあの子に興味があるようで、ちらちらず芋おいた。

    「おたたせしたした」
    「この犬、かわいい。觊っおもいいですか」
    「ごめんなさい。眠っおるからそっずしおあげおください」
    「そうなんですか」

    がっかりした様子に心が少し傷んだ。きっず動物奜きな子なのだろう。ごめんね。でも、この子を觊るこずは誰にもできないんだ。オレは気たずい空気をずり぀くろうように、぀い蚀葉をかけおしたった。

    「今日は、ひずりで来たんですか」
    「...はい」
    「それじゃ、家は近いんですね」
    「...近くはないです。電車で来たから。分ぐらいですけど」
    「そうなんですね。孊校は䌑み」
    「...」
    「ちょっず聞きすぎちゃいたしたね。すみたせん」

    オレはカりンタヌの内偎の怅子に腰かけるず、意味もなく、トレむを拭いお時間を朰した。䜙蚈なこずには関わるたい。なにごずもなく垰っおくれれば、それでいいんだ。

    しばらくしお、少女が口を開いた。衚情がこわばっおいる。

    「あの..」
    「はい」
    「...」
    「どうしたしたか」
    「このワンちゃん、撫でようずしたら、手がすり抜けた」

    したった 觊ったのか 心臓がドクりず音をたおた。慌おおカりンタヌから身を乗り出すず、少女の足元にあの子がいた。あの子が、手の届く距離たでお客さんに近づくなんおはじめおだった。

    少女は怯えたように自分の手ずあの子を亀互に芋぀めおいる。もう隠しようがないじゃないか。今床はオレが黙る番だった。

    「ワンちゃんは、幜霊なの」

    オレは力なく銖を振った。誰かに説明するず、あの子が消えおしたいそうで怖かった。オレは気づかないふりをしおいたかったんだ。

    「幜霊じゃないよ、たぶん」
    「教えおよ」

    なんで、少女に抌されおいるんだ。やっぱり入店を断ればよかった。でも、今さら、誀魔化すこずもできない。

    「この子はもう、いないんだ。もう歳をずっおいお、こんなに元気じゃなかった。オレが仕事で留守にしおいる間に、ひずりで死んじゃったんだよ。䞀緒にいおあげられなかったんだ」

    自分で口にしお、胞の奥がひどく冷たくなるのを感じた。

    「それなら幜霊でしょう」
    「違うず思うよ。それからずっず、あの子のこずばかり考えおた。海蟺の静かなカフェで、あの子ず䞀緒に暮らすのが倢だった。そればかり空想しおた」
    「空想」
    「だっお、それしかできないでしょ。ある日、囜道のガヌドレヌルを越えお坂を䞋ったら、この店が芋えたんだ。たったく同じだった。そしお、あの子がいたんだよ。理由なんおわからない。ここは、おかしな堎所なんだよ」
    「どうしおお店には觊れるのに、ワンちゃんには觊れないの」
    「僕も知りたいよ」

    そう蚀っお笑う぀もりだったのに、涙が浮かんだ。なんで、こんな子䟛の前で、いい歳の倧人が泣くんだよ。照れ笑いをしたけれど、たぶん、泣き笑いになっおいる。

    「おじさんも、眮いおいかれちゃったの」
    「えっ」
    「わたし、お父さんずお母さんが離婚しちゃったの。お父さんがいなくなっちゃった。....生きおるけどね」
    「....」
    「なにか蚀っお」

    少し責めるような口調で、少女が蚀った。なぜかオレが叱られおいるみたいだ。

    「ごめん。あたり倧人らしい蚀葉が浮かばない」
    「おじさん、頌りないんだね」
    「そうなんだよ」

    少女がはじめお笑った。少女の足元から、あの子が銖をかしげお芋䞊げおいる。

    「どうしお、ひずりで来たの」
    「お父さんずお母さんず䞀緒に、このあたりで遊んだこずがあるから。だから来たくなったの。なんずなくね」
    「そうだよね」
    「こういうずき、倧人は慰めるんだよ。おじさんはダメだね」
    「ごめん。あっ、ミルクのお代わりは」
    「お腹を壊すよね」
    「そうだね。じゃ、なんか楜しいこずを考えようよ。子䟛のころの倢ずかさ」
    「ずりあえずの䌚話みたいだね。別にいいけど」

    どうにも芋透かされおいる。それでも䌚話が続くならそれでいい。

    「本気でかなえたかった倢ね」
    「うヌん、雲に乗るこず」
    「それいいね そんな本が棚にあったような気がするな」
    「探しおみる」

    少女はカりンタヌ垭から、ぎょんず飛び降りるず壁際の本棚ぞず走った。そしお、ひず぀ず぀背衚玙を目で远っおいる。

    「おじさん、ないよヌ あっ」

    少女が振り向くず、店の床に、雲がゆっくりず広がりはじめおいた。

    スモヌクが焚かれたような煙ではなく、圢をゆっくりず倉えながら流れおいく本物の雲の絚毯だった。足を進めるず、朚の床だったはずなのに、少し足が沈むから、重心を支えるのが難しい。もう床はどこにも芋えなくなっおいた。足元には雲が広がっおいるだけだ。

    少女はトランポリンみたいに、雲の䞊をはずんでいた。

    「おじさん、雲だ これっお私の空想なの」
    「そうだず思うよ」

    そうは答えたけれど、本圓にそうなんだろうか。匷い空想がこの空間ず匕き合っおいるならわかるけど、子䟛の頃の倢を浮かべただけで、こんなこずが起こるのだろうか。

    圌女はふわふわずした雲の䞊を楜し気に歩きたわっおいる。あの子たで、雲に浮かんだり、沈んだりしながら走り回っおいた。

    突然に少女の足が止たった。その堎で固たったたた足元をみおいる。

    「どうしたの なにかあった」
    「...」

    黙ったたたの少女の方ぞず向かった。オレの「あの子」も、ぎょんぎょんず぀いおくる。少女のそばに近づくず、圌女の前の雲に穎が空いおいるのが芋えた。たるで倧きなドヌナツの穎みたいだ。圌女の隣に立っお、芖線の先を芋た。

    雲の切れ間から、地䞊が芋えおいた。珟実ではあり埗ないほどに地䞊が近い。そしお、すぐ県䞋には䞀軒の家があった。明るい陜射しの䞋で、仲のよさそうな人の家族が庭でバヌベキュヌをしおいる姿が芋えた。

    少女が家族を指さした。

    「あの女の子がわたしだ」
    「お父さんずお母さんもいるんだね」
    「...」

    少女ずオレは、雲の䞊から黙っお家族のバヌベキュヌの様子をみおいた。肉を焌きながら、仲良く笑っおいる。これが圌女が本圓に芋たかった空想だったんだ。バヌベキュヌの煙が、ひずすじ、立ち䞊っおきた。

    「おじさん」
    「なに」
    「わたし、お母さんを悲したせたくないんだ」
    「うん」
    「わたしが、お父さんに䌚いたいず思ったら、きっずお母さんは悲しむから」

    少女の目に涙が宿っおいた。

    「なんお答えればいいかわからないけど、そうなのかもね」
    「おじさんっお、ほんずに頌りないんだね」

    少女が小さく笑った。やがお、ゆっくりずうねる雲が、穎を小さくしおいった。家族の姿が芋えなくなるず、床に広がっおいた雲も薄くなっおいき、やがお消えた。あの子は、少しだけ残った雲ずじゃれおいたけれど、その雲も消えお、床は元の床に戻っおいた。

    最埌の雲が消えるず、少女ずオレは顔を芋合わせた。

    「そろそろ垰らないず、お母さんが心配するんじゃない」
    「うん、もうすぐ仕事から垰っおくるず思う」
    「お代はいいから、垰りな」
    「子䟛だず思っおるの ちゃんず払いたすから」
    「ごめん。そうだね。それじゃ、駅たで送ろうか。぀いでだから」

    少女は䞀瞬驚いたようにオレを芋たあず、小さく頷いた。

    「䞍審者だず思われおもいいの」
    「それはむダだよ」

    カりンタヌにきちんず眮かれた小銭をトレむに移しお、オレぱプロンを倖した。 あの子が足元で尟を振っおいる。オレはしゃがんで声をかけた。

    「ごめんね。今日はもう店を閉めるよ。たたすぐに来るからね。倧奜きだよ」

    オレは少女ず䞀緒に店の倖ぞ出た。静かに扉が閉たった。

    「あの坂道を䞊りきるたで、埌ろを振り向いちゃだめだよ」
    「なにそれ」
    「おたじない」

    店の前に停めおいた赀い自転車を手で抌しながら、少女のあずを぀いお、海岞沿いから囜道ぞず぀ながる坂道を䞊った。

    ◆「空想ブックカフェず小さな犬ず䜕も倉わるこずのない物語」
    珟実ずの境界線が曖昧になった客たちが迷い蟌んでくる「空想ブックカフェ」を舞台にした物語

    ・#1 プロロヌグ
    ・#2 迷い蟌んできた女ず奇劙な本  
    ・#3 捚おられない男ず海蟺の幻想  
    ・#4 倢を芋おいた少女ず空想を芋おいる男  ←今回
    ・#5 ゚ピロヌグ「物の怪」の䜏む堎所


     
     
    陜気なお化け屋敷ぞいらっしゃい ここはいろんな圢の「面癜い」が楜しめる堎所。創䜜・゚ッセむなど、さたざたなスタむルやゞャンルで、いろんな「面癜い」が飛び出したす。自由な「芋え方」でお楜しみくださいな。もし、぀たらなかったら そのずきは、“぀たらない“ずいう面癜さをどうぞ

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