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【S6|外伝】滲み出る言葉

    大事な同僚が、次の場所へ旅立った。

    別れ際、私は言った。

    「自分らしく、がんばって」

    考えて選んだ言葉ではなかった。
    用意していたわけでもない。

    ただ、自然に出た。


    あとになって、ふと思う。

    なぜ、あの言葉だったのだろう。

    「成功を祈る」でもなく、
    「また一緒にやろう」でもなく、
    「困ったら連絡して」でもない。

    自分らしく、だった。


    私は転職組だ。
    いまの会社は三社目。

    もう二十数年いる。

    外から見れば、
    「ずっと同じ場所」にいる人間だ。

    でもその間に、役割も、責任も、立場も、
    何度も変わった。

    土壌は何度も天地返しされている。

    そのたびに、
    少しずつ自分の輪郭も変わってきた。


    自分らしく、とは何か。

    若いころは、
    もっと尖っていた気がする。

    自分の正しさを証明したかった。
    負けたくなかった。
    認められたかった。

    でも長く続けていると、だんだんわかってくる。

    強がらなくてもいい。
    人と違ってもいい。
    居場所は、自分で耕せる。

    たぶん、その実感があの一言になったのだと思う。


    経験は、すぐには言葉にならない。

    地層のように重なり、沈殿し、
    気づかぬうちに自分の中に溜まっていく。

    そしてある日、必要な瞬間に、滲み出る。

    あの別れ際の言葉は、
    私が30数年かけて耕してきた時間の総和だったのかもしれない。


    言葉は、つくるものではなく、
    滲むものだ。

    だからこそ、
    その人の現在地が、そのまま出る。

    あの日の私は、
    あの言葉を言える地点に立っていた。

    それだけのことだ。


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    私が運営する「D4G Works」では、デザインを通じて社会や生命の営みをより良くする実践を進めています。
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    D4G Worksでは、うまく言葉にできない違和感から、一緒に考えます。

    → 言葉になる前のものを、構造として捉え直す


    ▼ 説明されない言葉の奥に、何が滲んでいるのか。

    ▼ 言葉になる直前の純度を、少しだけ残す。

    ▼ 何度も出る言葉には、本人より先に理由がある。


     
     
    デザイナー / D4G Works代表 猫も、AIも、介護も、牛丼も。だいたい何の話からでも、デザインを見つけます。 だいたい、違和感から考え始めます。

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