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母が胃癌になった話④〜退院、そしてその後〜

    〈前回のあらすじ〉
    ついに生検の結果が出て、母の胃の潰瘍が悪性だったと判明しました。

    次に腹腔鏡手術で腹腔内を見て、腹膜播種や膵臓との癒着がないか探ります。

    結果それらは認められず、胃の切除手術をすることが決まり、着々と手術予定が組まれました。

    ついに癌の切除手術が行われ、無事成功。

    母も入院生活を耐え忍び、順調に回復に向かっていました。

    そんな折、私は誕生日を迎え、一人イタリアンレストランにてセルフ祝いをするのでした…


    退院

    退院は6月最初の週末、6/6に決まっていました。

    私が誕生日のセルフ祝いをした2日後です。

    ところがその前日、母からこんなLINEがありました。
    「血液検査したら炎症があり、CT取って来た」

    CTを取った結果、
    「手術したところに膿があり、抗生物質を使って週明けまた血液検査する。それで良ければ火曜に退院になる」

    つまり、明日の退院は長引いてしまったようです。

    順調なようで、なかなか思うようにいきません…

    これは術後よくあるバグ(炎症)で、医師側としては、敗血症や感染症など事が大きくなる前に潰そうとしての対応です。

    私は
    「退院が長引いたのは残念だけど、早めに不具合が見つかってよかったよ」
    と返しました。

    週末、抗生物質を投与された母は、その副作用で下痢にも悩まされましたが、数値は順調に回復し、週明けの検査ではついにOKが出ました。

    そして火曜日(6/9)、いよいよ退院!

    病室へ迎えに行った私は、母を約10日ぶりの自宅へと連れ戻しました。

    術後の食事

    母が帰還すると、次の問題は自宅での食事です。

    退院した時点で、既に固形物は食べられるようになっているのですが、医師からは、とにかくゆっくり少しずつ食べるよう念を押されていました。

    そして最初のうちは、消化の良いものを選んで食べ、消化の悪いものはある程度期間を経て回復してから食べるよう言われています。

    では、具体的にどういうものが消化に良くないかというと、ざっくりと繊維質の多いもの、油を多く使って調理したもの(焼く、揚げるなど)です。

    例えば同じ野菜でも、葉物、キュウリ、トマト、ナスなどは即OKですが、ゴボウ、レンコン、きのこ類、海藻などはもう少し後になってからになります。

    麺類は、うどん、素麺は消化が良いので即OK、パスタ、中華麺は良くないのでまだダメ、蕎麦はその中間です。

    不思議なのは、芋類は即OKなのに、焼き芋は当面はNGとなることです。

    これは焼き芋は繊維が残りやすいからとかで、調理法によって同じ食材でも消化の良し悪しが変わるケースもあるんですね。

    焼き芋の季節が来る頃には、すっかり回復して食べられるようになるでしょう。

    また、母の大好きな甘い物も、少しずつなら食べていいと言われていますが、大福などの餅類はもう少し控えろとのことでした。

    これら食材を、即OK、1ヶ月後OK、3ヶ月後OKと期間ごとに振り分けられて表にした資料を、病院の栄養士から渡されていました。

    この資料の通りだと、消化の悪いきのこ、海藻、焼き芋、油で調理したものなどは、6カ月後OKになってるんですね!
    (ただしこれはあくまで目安で、一言に胃の術後と言っても全摘と部分切除のケースがあり、この資料は全摘した人がこれくらい慎重に行けば不具合は出ないだろうという最大公約数的な指標を載せたものかと思われます)

    それらを踏まえ、退院初日は、消化が良さそうで栄養価も期待できる、牛乳ゼリー、人参ポタージュ、オムレツ、ポテトサラダを作って出しました。

    母も久しぶりの自宅ごはんは嬉しかったようです。

    特にポテトサラダは、美味しいと喜んでくれました。

    ダンピング症候群(食べ物が上手く消化できずに腸に流れ込み、吐き気や目眩を起こすこと)が出ることもなく、初日の食事は無事クリアできました。


    …退院早々、母は日常生活に戻りました。

    入院前から医師に言われてる、よく食べよく動くを実践し、ゆっくり少しずつ、消化の良いものを選んで食べることだけを心がけ、食事もスムーズに進めていました。

    もともと食べることが好きな母は、普通の食事ができることになったことで、見る見る回復して行きました。

    そして数日後、甘い物も問題ないと見た私は、母のために和菓子を買ってきました。

    母が入院中、夢にまで見るくらい食べたがっていた和菓子です。

    消化の悪い餅菓子だけは避けて…

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    買ってきたのは、どら焼きと最中
    夏限定の蜂蜜レモンフレーバー


    退院後初となる和菓子は美味しかったようです。

    やはり甘い物が食べれると、母は生き生きしてきます(笑)

    病理

    退院後初の外来は、6/16でした。

    今日は血液検査し、術後の病理検査について結果を聞くことになります。

    診察時間になって診察室に呼ばれると、今日は初めて見る医師が待っていました。

    彼も若いですが、ちょっとチャラそう陽キャです。

    名前を見ると、手術完了時に連絡をくれた医師だとわかりました。

    ここで初めて、切除した腫瘍の映像を見せられました。

    広げられた胃壁には、小鉢状にえぐれた丸い腫瘍が居座っていました。
    大きさは約6cm四方だそうです。

    母は見たくなさそうな反応をしましたが、胃カメラ映像よりずっとハッキリ見えたそれは、ある意味芸術作品のようにも見えました。

    次に組織の断面図を見せてくれましたが、腫瘍は胃壁の奥底まで浸透し、一部突き破りそうになっていたのがわかりました。

    「この辺、(腫瘍が胃壁から)顔出してましたね」
    と、医師は胃壁に入り込んでいる腫瘍を指しました。

    危なかったなあ…
    よく胃の外に癌細胞が出なかったものだ…

    胃の組織と一緒に取り除いたリンパ節もあります。

    「このリンパ節に転移が見られ、一緒に切除しました。病理検査の結果、ステージは3aと診断されました」

    手術前に、ステージは2か3だろうと言われていたので想定内でした。

    そうすると、問題は術後の治療です。

    ステージ2または3の場合、手術後に再発防止のための化学療法を行うのが一般的です。

    体内に残っているかもしれない微細な癌細胞を完全撲滅させるために、比較的マイルドな抗がん剤を一定期間投与するのです。

    が、それについては医師はこう言いました。

    「年齢と女性であることを考えると、抗がん剤のメリットと副作用のリスクを秤にかけると、予防的化学療法を行うメリットはあまりありません。よって化学療法は行わず、経過観察とします」

    経過観察、つまり今後怪しいところがないか、定期的に検査を受けるということです。

    あまり抗がん剤はやりたくなかった母は、内心ほっとしたようですが、やはり再発のリスクは気になります。

    私は
    「化学療法を行わない場合、術後の再発率はどのくらいですか?」
    と尋ねました。

    医師「3割くらいですね」

    うーん、首位打者の打率くらいで再発しちゃうのか…

    逆に言えば7割は打たれないとも言えますが、安心していい数字とは言えませんね…

    ただ、後で調べたら、化学療法を行なったところで3割のリスクをゼロにできるわけではなく、何かあったら早めに潰すために経過観察を行うので、ここは納得せざるを得ませんでした。

    まさかの再入院

    …が、今日の問題はそこではありませんでした。

    「どうです?どこか違和感ありますか?」

    医師は神妙な顔で尋ねました。

    「今日の血液検査で、炎症の値が上がってるんですよ」

    あ〜、やっぱり出ちゃったか…
    これには心当たりがありました。

    …遡ること2日前、母はランチにスーパーの揚げ物弁当を買ってきました。

    そう、揚げ物は脂っこい、消化に良くない食品のエース級です。

    この時点で術後半月、食べるには時期尚早なのですが、ここまで順調に回復していたため、つい油断が生まれました。

    「まあ、ちょっとずつ食べれば平気でしょ」

    するとその日の夜から、もたれて気持ち悪いと言い出しました。

    今朝には少し落ち着いていましたが、やはり検査をするとしっかり数値に現れていたのです。

    「ちょっとチャレンジングでしたかねえ」

    話を聞いた医師も苦笑しました。
    そして、

    「胆のうが悪さをしているかもしれません。この後、CTを撮って詳しく検査します」

    ここでまさかの再CTでした。

    病理と今後の治療方針を聞いたら帰れるはずが、検査は午後に及んでしまいました。

    …CTを撮り終えて消化器科の窓口に戻って来ると、例によってそこからさんざん待たされました。

    診察室に再度呼ばれる頃には、夕方になっていたのです。

    医師はCTの画像を見て、どこが炎症起こしてるなどの説明をすると、
    「今、消化器科内科の先生にも相談したところなんですけど、胆管炎の疑いがあるというんですよ」

    続けて、
    「胆管炎は重症化すると危険です。敗血症になる恐れもあります。この状態で帰すことはできません。この後、緊急入院してもらいます」

    はあ?!退院してやっと日常生活に戻ったのにまた入院?

    「入院って、どのくらいですか?」
    私が尋ねると、

    「1週間くらいですね。場合によってはもっとかかるかも」

    おい、マジかよ?!

    既に日常に戻りかけていた今週は、いろいろ予定が入っていました。

    叔父夫婦がお見舞いにくることになっていたし、週末には、退院したら食べようと言っていた、私の後追いバースデーケーキを予約してあったのです。

    それらをすべてキャンセルし、急遽入院手続きに入りました。

    まさかの揚げ物弁当が、こんな波紋を広げるとは…
    油断大敵とは言いますが、私も止めに入らなかったことを後悔しました。

    本人は自宅に帰れないので、私が自宅に戻り、最低限必要な身の回り品をかき集め届けました。

    さすがに母も申し訳なさそうな顔をして受け取りました。

    「もし他に必要だったら、面会の時にね」
    今日は最低限用意するのが精一杯です。

    母が病棟に入ったのを見届けて一人で自宅に戻ると、既に18時を回っていました。

    ああ、なんて日だ…

    今日は何度病院と家を往復したか、ぐったりです。

    家では猫たちが、急に母の姿が消えたことに戸惑い、寂しがっているようでした。

    さすがにうんざり

    入院すると母は、抗生物質の点滴を投与されました。

    そして今度は、消化器科内科による厳重な検査が行われます。

    エコーと、強力な?胃カメラです。

    これによって、胆石や、術後の微細な異物がないか確認します。

    見つかった場合は、強力な胃カメラで取り除く(腸の方へ流す)のです。

    結果、それらは見つからず、抗生物質が功を奏し、症状は落ち着いてきました。

    順調に回復していたので、予定通りには退院できそうだということです。

    しかし私は、正直なところ今回の入院には、心配以上にいささかうんざりしていました。

    本人の「やらかし」によるところが多分にあったからです。

    入院中、次の面会で持って来て欲しいものと言って、10品目くらいリストアップして来たときはさすがにイラッときました。

    「本当に私ばっか頼るのやめてもらっていいですか💢」

    確かに他に必要なものがあったら面会時に、とは言ったけど、私はパシリでも運び屋でもないぞ!

    元はと言えば、油断して揚げ物なんか食うから要らん入院なんかすることになったんやないかい?!

    本人が一番辛いだろうけど、こういうことあると家族も巻き込まれるんだから、本当気をつけてよ…

    母に不自由させるわけにもいかないので、家の中で怒りを吐き出した後、頼まれたものを届けに面会に行きました。

    後から
    「今日はありがとう。JUNJUNしか頼めないからごめんね」
    とLINEが入っていました。

    今度こそ日常を取り戻す

    結局母は、6泊入院し、次の週明けに退院しました。

    数値は良くなったはずですが、手術後の退院時より元気がなく、一時は戻った食欲も減退していました。

    揚げ物事件に懲りて慎重になってるのかと思いきや、今回の入院中の食事が気分悪くなるほど不味く、トラウマになったらしいのです。

    前回すら普通のごはんが出たのに、今回は薄いお粥しか食べさせてくれなかったと言います。

    胆管炎の疑いがあったからか、減塩、油抜きを徹底されたようでした。

    食事にはより慎重を期しながらも、再び生活ペースを戻して行きました。

    そして6月最後の週末、ついに延び延びになっていた私のバースデーケーキを買ってきました。

    ああ、6月中に食べれてよかった…
    (既に一人でイタリアンでお祝いしてるんですが…)

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    バースデーケーキ
    今年は食べれる喜びもひとしお


    「美味しい!」
    久しぶりに母のこの言葉が聞けました。

    やはり母は、甘い物を食べると元気になるようです(笑)

    その日を境に、母の食欲も回復しました。

    とにかくゆっくり食べることと、食べ物の品目には気を遣いながら…

    そして、次の外来は6/30でした。

    今回も血液検査を受けます。

    数値がどうなってるか、ビクビクしながら診察室に呼ばれます。

    「今日は数値が良くなってます。問題ないですね」
    前回と同じチャラい陽キャな医師が言いました。

    「7月終わりにもう一度検査をしましょう。それと、癌の経過観察を3ヶ月に一度やりたいので、それは8月終わりかな。一度腫瘍マーカーを見たいですね」

    そして
    「食べ過ぎには気をつけてくださいね」
    と念を押しました。

    私が
    「一度やらかしてますから」
    とつぶやくと、

    「それ(揚げ物)だけのせいかはわかりませんけどね」

    想像ですが、術後のデリケートな胃に、術後のむくみとか傷とか揚げ物によるオーバーワークとか、小さな要因が重なり合って炎症が出たのでしょう。

    この後は、次回の外来予約だけして帰れました。

    「ああ、すんなり終わってよかった〜」

    5/1に始まった病院尽くめから、これでようやく解放された気がしました。


    …術後1ヶ月以上経ち、少しずつ食べれる食品も増えてきました。

    慎重を期しながらも、少しずつ試しています。
    少しずつゆっくり食べることを心がけながら…

    あれ以降、ダンピング症候群や気持ち悪さは出ていません。

    母の行動も、手術前のそれに戻りました。

    今は、秋に北海道に美味しいもの食べに行こうか?と話しています。

    「でも、エスコンで野球観たいから、北海道は野球シーズン中に行きたい。大丈夫?」

    「大丈夫大丈夫!」

    今後経過観察が控えていますが、今、ようやく日常生活を取り戻したと感じています。


    …突然の癌宣告で、我が家にとっては過酷な2ヶ月間となりましたが、今回母が元気なうちに治療できたことは、不幸中の幸いだったと思います。

    癌は適切な時期に適切な治療をすれば、充分治せる病気だからです。

    胃の違和感を覚えた時点で検査を受けたことは、母のファインプレーだったと思います。

    もし何か体に異変を感じていたら、早めに医療機関を受診してください。

    何もなければそれでよし、何かあれば、早めに見つかってよかった、ということになります。

    そして万が一癌が見つかったら、必ず標準治療を受けてください。

    今回の件があり、著名人から身近な人まで、癌になり治った人、治らなかった人のケースを一つ一つ見比べてみましたが、特殊な例もあるものの一番大きな違いは、ちゃんと標準治療を受けたかどうかでした。

    母も標準治療を受けて、今回復しています。

    標準治療が世界中のデータから導き出した最も信用できる治療で、保険適用の最も適正価格な治療です。

    そして、癌の標準治療は、日々目覚ましい進歩を遂げています。

    もし主治医の方針に納得できなかったら、セカンドオピニオンを求めるなどしてみましょう。

    一連の記事が、ご自身やご家族が癌にかかった人にとって、少しでも参考になれば幸いです。

    長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

    完

     
     

    JUNJUN

     
     
    横浜生まれの横浜育ち。 旅が大好きで、コロナ前まで世界50カ国を巡りました。 マルタへの語学留学の経験、総合旅行業務取扱管理者の資格あり。 旅行記事中心に書いています。 愛猫家 野球ファン(ひいきのチームは広島カープ) 猫との出逢いや、野球観戦が旅のコンセプトの一つです。

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