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💗『トナカイのバカンス』🎀#ファンタジー小説☺️#ほっこりストーリー📖#短編小説💝#柊紅葉✨#創作大賞2026


    世界中の子どもたちへプレゼントを届け終えた三日後のことだった。

    北極の氷の城には、豪快ないびきが響いていた。

    その主はもちろん、サンタクロースである。


    一年で最も忙しい夜を終えた彼は、

    暖炉の前の大きな椅子に座ったまま、

    まるで雪崩のような勢いで眠り続けていた。


    ――グオォォォォ。

    ――グガァァァァ。


    窓ガラスが震えるほどのいびきだった。


    その音を聞きながら、赤鼻のリーダー・ルドルフは仲間たちを見回した。

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    「よし」

    そう言って蹄を鳴らす。


    ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ドナー、ブリッツェン。

    長年共に空を駆けてきた仲間たちが、一斉に顔を上げた。


    ルドルフはニヤリと笑う。


    「諸君。これからは仕事じゃない」

    皆の耳がぴくりと動く。


    「重いソリもなし」

    「おお!」



    「鈴の音もなし」

    「最高!」



    「そして――」

    ルドルフは眠るサンタを指差した。



    「赤い服の巨漢もなしだ!」


    トナカイたちは歓声を上げた。

    もちろんサンタを嫌っているわけではない。

    だが一年中働き続けた後なのだ。

    少しくらい羽を伸ばしたかった。

    こうして彼らは、こっそり北極を脱出した。


    目指す先は――南国だった。

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    エメラルドグリーンの海。

    白く輝く砂浜。

    どこまでも続く青空。

    常夏の島に降り立った瞬間、トナカイたちは歓声を上げた。



    「暑っ!」

    「でも気持ちいい!」

    「雪がない!」


    普段は氷と雪しか見ない彼らにとって、すべてが新鮮だった。

    ルドルフはまず売店へ向かい、大きなサングラスを購入した。


    そして鼻に念入りに日焼け止めを塗る。


    「鼻だけは守らないとな」



    彼の自慢の赤鼻は世界的にも有名だ。

    うっかり日焼けで皮がむけたりしたら大変である。

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    一方。


    ダッシャーとダンサーは早速ビーチバレーに夢中になっていた。

    ボールが高く上がる。

    次の瞬間。

    二頭は信じられない高さまで跳び上がった。

    「うおおおお!」


    ドォン!


    凄まじいスパイク。

    観光客たちは口を開けたまま固まった。


    「今の見た?」

    「トナカイって飛べるの?」

    「いや、跳んだだけじゃない?」


    誰も正解には辿り着かなかった。

    魔法のおかげである。

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    コメットとキューピッドは、ヤシの木にハンモックを吊るしていた。


    揺れながら南国フルーツのジュースを飲む。

    「見てよ、この砂」


    コメットが蹄で砂を掻いた。

    さらさらと崩れる白い粒。


    「雪みたいに白いのに冷たくない」

    「不思議だねぇ」


    キューピッドは目を細めた。

    北極の氷の上しか知らない彼らにとって、砂浜は未知の世界だった。

    蹄が少し沈む感触さえ面白い。


    二頭は子どものように笑った。

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    そんな夢のような休暇も数日が過ぎた。


    ある昼下がり。


    ルドルフはビーチの売店でかき氷を買おうとしていた。

    マンゴー味にするか。

    イチゴ味にするか。

    真剣に悩んでいた時だった。


    隣の席に座る人物が目に入った。


    派手なアロハシャツ。

    麦わら帽子。

    白い髭。

    そして、やけに恰幅の良い身体。

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    ルドルフは固まった。

    「……まさか」

    老人はかき氷を一口食べる。


    「うん、美味しい」


    聞き覚えのある声だった。


    「……ボス?」


    老人はサングラスを少し下げた。

    青い瞳が現れる。

    そしてニヤリと笑った。


    「しーっ」

    ルドルフは頭を抱えた。


    「何やってるんですか!」

    「私は今、ニコラスという名の観光客だよ」

    「いや絶対無理があります!」


    老人――サンタクロースは楽しそうに笑った。


    「君たちがあまりにも楽しそうに準備していたからね」

    「寝てたんじゃ?」

    「三日も寝れば十分だ」

    サンタは胸を張った。


    「むしろ私の方が先に来ていた」

    「えぇぇぇ!?」


    まさかの先回りだった。

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    その夜。


    焚き火を囲んで皆が集まった。

    サンタもいる。

    トナカイたちもいる。


    波の音が静かに響いていた。

    誰も仕事の話はしない。


    プレゼントの数も。

    ルートの確認も。

    煙突のサイズも。

    何も話さない。


    ただ笑っていた。



    今年の失敗談。

    美味しかったお菓子。

    見たことのない景色。

    他愛もない話ばかり。

    それが何より楽しかった。


    サンタは波打ち際で昼寝をし。

    トナカイたちはサーフィンに挑戦し。

    何度も海へ落ちた。


    そのたびに大笑いした。

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    やがて一週間が過ぎた。


    帰る日が来た。

    朝焼けに染まる砂浜。

    ルドルフは海を見つめた。

    名残惜しさはある。

    だが不思議と心は軽かった。

    角には太陽の光がたっぷり蓄えられている。


    これなら次の冬も頑張れそうだ。

    隣に立ったサンタが笑う。

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    「さあ、帰ろうか」

    「もうですか?」

    「次のクリスマスまで、あと、一九五日くらいしかないからね」

    「それ十分長いですよ」

    皆が笑った。


    そして一斉に空へ駆け上がる。

    朝日に照らされた九頭のトナカイ。

    その後ろを追う赤い服の老人。


    彼らの姿は、やがて南国の青空へ溶けていった。

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    砂浜には、誰かが残した文字だけが残っていた。


    Merry (Delayed) Christmas!


    やがて寄せる波がその文字を優しく消していく。


    けれど、その夏の思い出は。



    サンタとトナカイたちの心の中で、

    いつまでも消えることはなかった。



    🎄🦌🌴✨ おわり 🎄🦌🌴✨



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    🌈柊紅葉ソング🌈




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    お元気ですか。 柊紅葉です💕 主に, 短編小説等を書いています。 私の作品の根底にあるのは、[作品の核となる感情や問い」です。 特に【作品名やシリーズ名】は、【具体的な描写や読後感】に、小さな変化が起こることを願って書きました。 是非、気軽にページを開いてみてください。

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