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いずしの゚リィ〈男の告癜、あるいは匕き際〉

    あらすじ

     倧孊時代、ラクロス同奜䌚のマドンナ・英梚ぞの恋心を封印するため、「誰も英梚に告癜しない」ずいう玳士協定を結んだ康介、順次、拓海。
     卒業から十数幎埌、䞉人はそれぞれ「゚リィ」ず呌ばれる女性ず恋に萜ちる。しかし恋人たちは、偶然では片付けられない共通点を芋せ始める。
     やがお䞉人の元に、恋人たちからの切迫した叫びが届く。その蚀葉に導かれるようにしお、圌らは同じ堎所ぞたどり着く。
     そこで䞉人は、自分たちの「゚リィ」が同䞀人物ではないかず疑い始める。そしお突き぀けられたのは、か぀お英梚を奪っおいった男の秘密ず、その背埌で呚到に仕組たれた蚈画だった。
     倱恋の蚘憶を抱えながらも再び絆を取り戻しおいく男たちを描く、ほろ苊くも枅々しい倧人の青春ミステリヌ。

    第䞀話から読む


    いずしの゚リィ〈男の告癜、あるいは匕き際〉

    ――カチッ。

     䞉人が忘れられなかった、あの音だった。固有の金属音が静たり返った郚宀に冷たく響いた。
     床に座り蟌んだ䜐々朚が、自嘲気味に口元を歪めながら右手をゆっくりず持ち䞊げおいた。その手の䞭でしっかりず握り締められおいる金属の塊が鈍い光を攟ち、その先に小さな火が揺れおいた。銀色のコリブリのラむタヌだった。

     康介の喉が鳎り、順次の顔から血の気が匕いた。拓海だけが、震える声でポツリず呟いた。
    「  その音  」

     か぀お䞉人から英梚を奪っおいった䜐々朚が、今はあのコリブリを手にしおいる。その珟実感のなさに軜い眩暈めたいを芚えながら、順次は喉の奥から声を絞り出した。
    「䜐々朚、どうしおお前がそのコリブリを持っおいる どうやっお手に入れた」

     䜐々朚は、感情の消えた目で、開いたドアの向こう――先ほど倧柄な男が草むらぞず逃げおいった方向を芋やった。
    「さっきの男から受け取った」

     康介は思わず䜐々朚ぞ詰め寄った。
    「受け取った じゃあ、゚リィの振りをしお俺たちをここに呌び出したのは、あの男か」
    「゚リィ 英梚じゃなくおか」
    「絵里奈だよ」
    「  知らんな。俺もあの男も、お前たちをここに呌び出しおいない」

     暪から順次が冷培な声を差し蟌んだ。
    「恵理子ずいう名前の女から連絡を受けおいないか」
    「すたんな。その名前にも芚えはない」

     拓海もおそるおそる聞いおみた。
    「゚リンギは」
     䜐々朚は怪蚝そうに眉をひそめた。
    「  キノコだろ」

     康介は蟟易のあたりに頭を抱えお叫んだ。
    「じゃあ誰なんだよ 俺たちをここに集めたのは」

     自分たちを呌び出したのは誰なのか、その疑問は解けないたただった。
     しかし、もう䞀぀芋過ごせない疑問があった。順次は自分たちの足元、コンクリヌトの床䞀面にバラたかれた䜕千䞇ずいう札束を指さした。
    「じゃあ、この、床に散らばっおいる金は」
    「  あの男に枡した報酬だよ」

     埃っぜい郚宀の空気が沈黙を芆った。長幎攟眮された郚宀の埃ずカビの臭いの䞭で、異様な札束の山だけが珟実味を倱わせおいた。
     拓海は目をこすり、か现い、けれど確かな拒絶を含んだ声を吐きだした。
    「  おかしいですよ。どうしおあの男がコリブリを持っおるず知っおいるんですか 狙い柄たしたみたいに、こんな堎所で  」

     䜐々朚はふっず自嘲気味に笑い、芪指を離した。カチッず音がしお、コリブリの火が消えた。そしお芳念したように蚀った。
    「知っおいるも䜕も  俺が、あの男に䟝頌したんだよ。このコリブリを盗み出しおくれっおな。ここなら、誰にも気づかれずに取匕できるず思ったんだ」

     順次は戞惑いを隠せないたた口を開いた。
    「䜕のために、そんな犯眪みたいなこずを」
    「  俺自身も最初は冗談だず思っおた。信じられないだろうが、このラむタヌには、ある囜を揺るがす䟡倀があるんだ。詳しくは蚀えんが、あるルヌトから頌たれお、倖亀カヌドずしお䜿うためにあの男に盗たせた」

     日差しを小さく反射する埃が舞う䞭、沈黙だけが重くのしかかる。
     䜐々朚は深く、長く、憑き物が萜ちたような息を吐き出すず、ゆっくりず膝を立おお立ち䞊がった。どこか吹っ切れたような笑みを浮かべながら、手の平でスヌツに付いた泥や黎かび、埃ほこりを静かに払った。
    「  これは秘密裏に行わなくおはいけなかった。完璧な蚈画のはずだったのに」

     䜐々朚は、しばらく黙り蟌み、長机の䞊に乗せられた錆び぀いたパむプ怅子をじっず芋぀めた。そこはか぀お、他愛もない雑談に興じおいた青春の特等垭だ。
    「久しぶりに、泥たみれのお前たちの顔を芋お  なんだか、急にバカバカしくなった。本圓に、目が芚めたよ」

     その声には、先ほどたでの匵り詰めた執着は消え倱せ、か぀おの穏やかで、しかしどこか冷培な䜐々朚のトヌンが戻っおいた。
    「よりによっお、お前たち䞉人が目撃者になるずはな。もう終わりだ。隠し通せない。  自銖するよ」

     康介、順次、拓海の䞉人は、呌吞の仕方を忘れたように、その堎で完党に身䜓を硬盎させた。
    「自銖だず」
    「䜕蚀っおんだ」
    「どういうこずですか」

     䜐々朚は、䞉人の問いが聞こえなかったかのように、優しい衚情でコリブリを芋぀めた。
    「このラむタヌは  お前たちに蚗す」
     愛おしそうに指先で匄んでいた銀色のコリブリを、也いた音を立おお長机の真ん䞭に眮いた。
     そのたた䜐々朚はゆっくりず歩き出し、床䞀面に散らばる数千䞇円の札束の䞊を通り過ぎおいく。札束には芖線すら向けようずしなかった。

     拓海は、静かに呟いた。
    「  英梚さんは 英梚さんは今、䜕しおいるんですか」

     䜐々朚は、立ち止たり䜎い声で応じた。
    「元気だよ。今頃は二人の嚘を連れお、近所の公園で遊んでいるはずだ」

     そのあたりにも平穏で、自分たちずは無瞁の家庭の情景に、郚宀の空気が凍り぀いた。康介が慌おお問いただした。
    「英梚はこのこずを知っおんのか」

     䜐々朚は頭を擡もたげた。
    「  知らないはずだ」

     䜐々朚の背䞭には、すべおを諊めた男の、奇劙なたでの朔さが挂っおいた。トタンのドアが小さく軋み、䜐々朚の足音が草むらの向こうぞず遠ざかっおいく。誰もその身䜓を止めようずしなかった。咄嗟に蚀葉を発するこずもできなかった。

     残された䞉人は、ただ呆然ずその背䞭を芋送るしかなかった。
     康介が、誰もいないドアの向こうぞ向かっお、掠れた声を挏らした。
    「  䜐々朚、あい぀、本圓にこのたた  」

     拓海が目を匷くしばたたかせ、䞍安げに順次の顔を芗き蟌んだ。
    「自銖するでしょうか、あの䜐々朚さんが  」

     順次は歪んだメガネを正すこずもせず、ただ長机の䞊を芋぀めたたた、重々しく口を開いた。
    「あい぀があそこたで蚀ったなら、本圓に出頭するだろう」

     床䞀面に散らばった札束の向こうで、長机の䞊のコリブリだけが、割れた窓から差し蟌む癜い光を济びお冷たく反射しおいた。


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    これはフィクションです。実圚の人物、団䜓ずは関係ありたせん。
    応揎よろしくお願いしたす。

    #いずしの゚リィ
    #創䜜倧賞2026
    #ミステリヌ小説郚門

     
     
     
    趣味でPython/JS/PHP/GAS/VBAを匄くるコヌド奜きな自転車乗り。仕事の合間に自転車愛をこじらせ「チャリクラ文孊」を執筆。か぀おは峠を攻めるヒルクラむム奜き、珟圚は愛車を「盆栜」ずしお愛でる日々。自動化・効率化、時々チャリずカメラ。日垞の詊行錯誀をゆるりず綎りたす。

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