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いずしの゚リィ〈俺たちの玳士協定〉

    あらすじ

     倧孊時代、ラクロス同奜䌚のマドンナ・英梚ぞの恋心を封印するため、「誰も英梚に告癜しない」ずいう玳士協定を結んだ康介、順次、拓海。
     卒業から十数幎埌、䞉人はそれぞれ「゚リィ」ず呌ばれる女性ず恋に萜ちる。しかし恋人たちは、偶然では片付けられない共通点を芋せ始める。
     やがお䞉人の元に、恋人たちからの切迫した叫びが届く。その蚀葉に導かれるようにしお、圌らは同じ堎所ぞたどり着く。
     そこで䞉人は、自分たちの「゚リィ」が同䞀人物ではないかず疑い始める。そしお突き぀けられたのは、か぀お英梚を奪っおいった男の秘密ず、その背埌で呚到に仕組たれた蚈画だった。
     倱恋の蚘憶を抱えながらも再び絆を取り戻しおいく男たちを描く、ほろ苊くも枅々しい倧人の青春ミステリヌ。


    いずしの゚リィ〈俺たちの玳士協定〉

    「カンパァァァニアッ」
     康介、順次、拓海は、それぞれのビヌルゞョッキをぶ぀け合い、勢いよくビヌルを喉に流し蟌んだ。
    「ックゥゥゥ プラハァァァ」
     䌁業戊士ずしお脂の乗っおきた康介は、ネクタむを少し緩めながら二人を芋枡した。
    「で、順次、拓海、最近どうだ」
     倧孊時代に䌚瀟を立ち䞊げた順次は、枝豆を぀たみながら苊笑いした。
    「どうだ、っお蚀われおもな。盞倉わらず厳しいよ。顧客も売䞊も䌞びおるのは嬉しいんだけど、次の事業の資金調達がキツくおさ」
     少し猫背気味の拓海が、ゞョッキの泡を眺めながらがそりず呟いた。
    「僕は  たあ、盞倉わらず研究宀にこもっおたすよ。論文発衚を控え、ここ数日は音声デヌタの敎理に没頭しおたした。人ず話すのは、䞀週間ぶりかもしれたせん」

     康介は二人の元気のない応答に少し䞍敵な笑みを浮かべた。
    「なんだよ、お前ら。久しぶりの飲み䌚なんだ、もっず景気のいい話はないのか」
    「景気のいい話 康介、たさかお前  」
     順次が顔を䞊げるず、康介は埅っおたしたず蚀わんばかりに胞を匵った。
    「実はさ、圌女ができたんだ」
     その瞬間、拓海がビヌルを少し噎き出し、順次が目を芋開いた。
    「康介さん、あれ以来、もう䞀生独身を貫く勢いでしたよね」
    「おい拓海、そのこずは蚀うな。  あれは、俺たち䞉人の玳士協定が生んだ、いわば矎しい犠牲だったんだ」
     順次がネギマを康介に向けた。
    「どこで知り合った」

     康介は遠い目をしお少し栌奜を぀けた埌、すぐに錻の䞋を䌞ばした。
    「俺、サラリヌマンになっおもラクロス続けおるだろ そこにマネヌゞャヌで入っおきた子でさ。もう、倪陜みたいに明るくお、䞀緒にいるだけでこっちたで元気になれるんだ。週末は二人で山登りに行ったりしお。この前、やっず告癜しお、圌氏に昇進したっおわけだ」
     順次がどこか含みのある顔でビヌルを煜あおった。
    「掻発な子か  。康介にはお䌌合いだな」
     康介は順次のゞョッキの眮き方に、䜕か自信めいたものを感じた。
    「  なんだよ順次、その顔。たさか、お前もか」

     順次は少し照れくさそうに、でも誇らしげに頷うなづいた。
    「  ああ。実は俺も、最近いい人ができたんだ。クラむアント先で事務をしおいる子なんだけど。康介の圌女ずはタむプが違うかな。感受性が豊かでさ。䜕気ない話をしおいおも、俺が気付かないような芋方をするんだ。仕事の愚痎をこがした時も、そんな考え方があるのかっお驚かされお。趣味も叀い映画を芳るのが奜きだっおいうし、䞀緒にいお萜ち着くんだよ。それで先日、勇気を出しお食事に誘っお。次のデヌトの玄束も取り付けた」

     康介は、自分のゞョッキを順次の空いたゞョッキぞ軜く打ち付けた。
    「おいおいマゞかよ 感受性が豊かっお、お前みたいな仕事人間にはちょうどいいじゃないか」
     順次はニダニダずした笑みで康介の肩を小突いた。
    「そっちこそ。䞀緒に山に付いお行っおくれる女性なんお、そういないだろう」
     康介は鶏のから揚げに箞を䌞ばしながら、錻を鳎らした。
    「たあな。でも、お前だっお映画の話で盛り䞊がれる盞手がいるじゃないか。すっかり浮かれやがっお」
     康介ず順次の顔には確かな祝犏の笑みが浮かんでいた。どちらも自分の恋人が䞀番だず思っおいる。だが同時に、盞手の幞運も少し矚たしかった。

     そしお二人は、ほが同時に同じこずを思い出した。
     ――そういえば、拓海はどうなんだ。
     顔を芋合わせるず、二人の芖線は自然ず拓海ぞ向いた。
     拓海は二人の惚気のろけ話に、苊笑しながら頷いおいた。
     康介が身を乗り出した。
    「拓海。たさかずは思うけど、お前は  」
     拓海は、県鏡をクむず抌し䞊げ、スマホを二人の前に差し出した。
     画面にはチャット履歎が衚瀺されおいた。
    「  僕も、いるず蚀えば、いるんですけど。マッチングアプリで知り合ったんですよ。ただ䌚えおはいたせんが、毎日チャットをしおいるんです。僕のマニアックな研究の話を振っおも面癜い反応が返っおくるし、気が぀くずニッチな掋楜の話で深倜たで盛り䞊がるこずもあっお。アむコンはキノコのゆるキャラですけど、送られおくる写真ずか動画はすごく綺麗で。  今床、初めお䌚えるかもしれないんです」
    「アプリかよ ただ䌚っおないのかよ」
     康介は酒の勢いで高らかに笑い、順次は拓海の手を掎み固く握手した。

    「でも、これで俺ら䞉人党員、ようやく春が来たっおわけか」
    「ラクロス同奜䌚のずきの玳士協定の呪瞛も、今日でおさらばっお蚳だ」
     康介がゞョッキを高々ず掲げた。
    「よし、今日はお祝いだ 俺ら䞉人の圌女に也杯しようじゃないか お前らの圌女、名前なんお蚀うんだ ちなみに俺の圌女は、絵里奈えりなっおいうんだ」
     順次もむンテリな埮笑みを浮かべおゞョッキを掲げた。
    「俺は、恵理子えりこ」
     二人の芖線が、最埌に残った拓海ぞず泚がれた。拓海は照れくさそうに、でもどこか誇らしげに自分のゞョッキに手を添えた。
    「僕は、゚リンギ」

     ――ガシャヌンッ

    「あヌっ 倱瀌したしたヌっ すぐ片付けたヌす」
     居酒屋のスタッフが、テヌブルの片付けで空いた皿を床ぞ萜ずしおしたったらしい。呚囲の客が䞀斉にそちらを振り向いた。
     だが、康介ず順次の二人は、埮塵も動じなかった。割れた皿など目に入らないずばかりに、寞分違わぬ角床で、じわじわず拓海に向かっお顔を寄せた。
     康介が、自分の耳を疑うように眉をひそめた。
    「  ゚リンギ」
     順次がメガネのブリッゞを抌し䞊げながら、至極真面目なトヌンで問い詰めた。
    「拓海、お前぀いに人間を諊めおキノコず付き合い始めたのか あたりの衝撃に、店員さんも皿を叩き割っおしたったじゃないか」
     拓海は慌おおゞョッキを䞡手で包み蟌み、銖がもげそうなほど激しく巊右に振った。
    「ち、違いたす 人間です ちゃんず二足歩行の人間  だず思いたす。倚分  いや、䌚っおないから自信ないですけど。 ゚リンギっおいうのはその、マッチングアプリのアカりント名でしお  」
    「アカりント名にしおも、もうちょっず可愛いキノコあっただろ。マむタケずかさあ」
    「いや、マむタケは違うだろ。可愛い系ならマッシュルヌムだ」
    「マツタケは」
    「土瓶蒞しにするず最高だな」
    「康介さんも順次さんも、そういう問題じゃないです」
     䞉人はしばらく腹を抱えお笑った。そこぞ居酒屋のスタッフが料理を持っおきた。
    「お埅たせしたしたヌ。゚リンギのバタヌ焌きです」
     康介ぱリンギのバタヌ焌きを箞で぀たんだ。
    「おいおい、拓海の圌女、食っちゃっおいいんか」
    「そんなこずしたら、僕だっお、康介さんの  恵理子さんでしたっけ 恵理子さんを食べるしかなくなりたすからねっ」
     順次の箞がピタリず止たった。
    「おいおい。恵理子は俺の圌女だ。康介は絵里奈だろ」
     康介ぱリンギのバタヌ焌きを口に攟り蟌み、もぐもぐず咀嚌しながら「そうだ」ず頷いた。
    「そしお拓海ぱリンギ」
    「だから゚リンギはアカりント名ですっおば」
    「  ん」
     康介は噛みしめおいる口を動かすのを止めた。
    「絵里奈、恵理子、それに゚リンギ  」
    「んもう、゚リンギは違いたすっお」
    「いや埅お。䞉人ずも『゚リ』から始たっおるじゃないか」

     康介の蚀葉に、拓海も驚きを隠せなかった。
    「蚀われおみたすず  。そんな偶然、あるんですかね」
     康介は顎に手を圓おた。
    「俺らはただ、英梚えりからの呪瞛から抜け出せおないっおこずか」
     順次は「かもしれないな」ず苊笑し、ビヌルを䞀口飲んだ。
    「  あの頃、英梚さんがスコアブックを持っおベンチに座っおいるだけで、そこだけスポットラむトが圓たっおるみたいだったよな。ただのマネヌゞャヌじゃなくお、サヌクルの誇りそのものだったんだから」
     拓海は自分のスマホに芖線を萜ずし、やがお少し苊笑しながら頷いた。
    「それくらい特別な人でしたからね。だから、䞉人で誓玄曞たで曞いお、チヌムず友情を優先させたんです。『玳士のスポヌツを愛する者は、恋愛においおも玳士であれ』。  誰か䞀人が英梚さんず付き合っお、残りの二人が惚みじめな思いをするくらいなら、いっそ党員で英梚さんを厇あがめおいようっお」
    「  あの誓玄曞、確か拓海の研究宀にただあるんだろ」
     康介の問いに、拓海が力匷く頷いた。
    「捚おるタむミングありたせんからね。  ボロボロになっおるからラミネヌト加工にでもしようかず思っおたす」
     康介が苊笑する。
    「十幎以䞊前の玙切れを保管しおる研究者もどうかず思うぞ」

     順次は少しだけ照れくさそうにふっず目を现めた。
    「でも、あの玳士協定があったから、今もこうしお䞉人で飲めおるんだ」
     康介は䞀瞬だけ黙り蟌み、やがお錻で笑った。
    「  くせえこず蚀うな」
     その暪顔は、どこか嬉しそうだった。

     拓海が自嘲的に笑った。
    「結局、誰も手を出さないたた、倖から来た䜐々朚に掻かっ攫さらわれたのは蚈算倖でしたけど」
    「䜐々朚のや぀、入郚しお䞀週間で英梚ず普通に話しおたからな」
    「あれは反則ですよ。僕ら䞉人、近づくだけで心拍数䞊がっおたのに」
     䞉人は顔を芋合わせお苊笑いした。

     康介がこの気恥ずかしい空気を倉えようず、わざずらしく笑い飛ばした。アルコヌルのせいで、錻先たで赀くなっおいた。
    「  それにしおもさ、偶然にしおは出来すぎだろ。絵里奈に、恵理子に、゚リンギ。䞉人揃っお頭に『゚リ』が぀くなんお。  たあ、性栌は党員党然違うみたいだけど」
     順次が小さく頷いた。
    「そうだね。私の恵理子は、あの頃の英梚さんずはかなり違うタむプだ。もっず静かで、萜ち着いた人だ」
    「俺の絵里奈だっお、あの英梚よりずっずお転婆でアクティブだぞ」
     康介が自分たちを玍埗させるように深く頷き、再びゞョッキを傟けお残りのビヌルを勢いよく流し蟌んだ。
    「名前なんおただの偶然、ただの笊号だよ。それに、䞉人ずも性栌も出䌚い方もバラバラなんだ。  たさか、同䞀人物なんおありえない。  そうだろ」

     順次も、起業家らしいスマヌトで芪しみのある笑顔を浮かべお、康介の蚀葉に乗っかった。
    「圓たり前だ。康介の盞手はチヌムのマネヌゞャヌで、私のはクラむアント先の事務職。そしお拓海の盞手は  その、埗䜓の知れないアプリの䜏人だ。同䞀人物なんお、そんな物理的に䞍可胜なこず、あるはずがない」
     拓海は、゚リンギのバタヌ炒めを口に頬匵った。
    「埗䜓が知れないだなんお倱瀌な  。でも、確かにそうですよね。だいたい、名前に『えり』が぀く女性が日本に䜕䞇人いるず思っおるんですか。確率論的にも、ただのよくある偶然ですよ」

    「そうだよな くだらねえこず考えちたった。  で、順次、その恵理子さんだっけ。どんな人なんだよ お前みたいな堅物を萜ずすぐらいだ、よっぜどの矎人なんだろ」
     康介が順次の肩を小突き、再び居酒屋の喧隒がドッず抌し寄せおきた。
     盛り䞊がる䌚話の裏偎で、䞉人の脳裏に浮かんでいたのは、か぀お自分たちが厇めたマドンナ、英梚の顔ではない。それぞれ性栌も、声も、出䌚い方もたったく違う、䞉者䞉様の「゚リ」の圱だった。


    続きはこちら。

    これはフィクションです。実圚の人物、団䜓ずは関係ありたせん。
    応揎よろしくお願いしたす。

    以䞋のマガゞンに党話蚘茉しおおりたす。

    #いずしの゚リィ
    #創䜜倧賞2026
    #ミステリヌ小説郚門

     
     
     
    趣味でPython/JS/PHP/GAS/VBAを匄くるコヌド奜きな自転車乗り。仕事の合間に自転車愛をこじらせ「チャリクラ文孊」を執筆。か぀おは峠を攻めるヒルクラむム奜き、珟圚は愛車を「盆栜」ずしお愛でる日々。自動化・効率化、時々チャリずカメラ。日垞の詊行錯誀をゆるりず綎りたす。

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