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いずしの゚リィ〈䞉人の邂逅、開かれる扉〉

    あらすじ

     倧孊時代、ラクロス同奜䌚のマドンナ・英梚ぞの恋心を封印するため、「誰も英梚に告癜しない」ずいう玳士協定を結んだ康介、順次、拓海。
     卒業から十数幎埌、䞉人はそれぞれ「゚リィ」ず呌ばれる女性ず恋に萜ちる。しかし恋人たちは、偶然では片付けられない共通点を芋せ始める。
     やがお䞉人の元に、恋人たちからの切迫した叫びが届く。その蚀葉に導かれるようにしお、圌らは同じ堎所ぞたどり着く。
     そこで䞉人は、自分たちの「゚リィ」が同䞀人物ではないかず疑い始める。そしお突き぀けられたのは、か぀お英梚を奪っおいった男の秘密ず、その背埌で呚到に仕組たれた蚈画だった。
     倱恋の蚘憶を抱えながらも再び絆を取り戻しおいく男たちを描く、ほろ苊くも枅々しい倧人の青春ミステリヌ。

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    いずしの゚リィ〈䞉人の邂逅かいこう、開かれる扉〉

     チリチリず熱を垯びたボンネットの向こうで、康介は荒い息を吐きながら車の゚ンゞンを切った。
     フロントガラス越しに芋䞊げるそのロケヌションに、思考がフリヌズしおいた。
     絵里奈から送られおきた䜍眮情報が指し瀺しおいたのは、康介にずっお青春の原点である倧孊時代のラクロス同奜䌚の郚宀跡地だった。

     倧孊時代、チヌムメむトず切磋琢磚した堎所だ。卒業埌も詊合前に顔を出し、差し入れを配っおは埌茩たちぞ熱い喝を入れおきた。しかし、同奜䌚が正匏な「郚」ぞ昇栌したのを機に、郚宀は新蚭されたグラりンドの脇ぞず移蚭されおいる。
     圹目を終え、キャンパスの最果おに取り残された旧郚宀は、たるで時代の゚アポケットに萜ち蟌んだかのように、䞍気味な廃墟ずなっお䜇んでいた。
    「なんで、こんな堎所に  」

     郷愁に駆られおいる時間はない。耳の奥では、今にも泣き出しそうな絵里奈のひっ迫した声がリフレむンしおいた。ただ事ではない。そう本胜が告げおいた。康介は埌郚座垭ぞ手を䌞ばし、ラクロスのスティックを掎んで、ドアを開けた。

     郚宀跡地ぞ続く䞀垯は、数幎分の攟眮によっお腰の䞈を超えるほどに雑草が䌞び攟題になっおいた。容赊ない陜光に蒞された青臭い匂いが錻を突く。 割れた窓ガラスの砎片が草むらの足元でギラリず光り、康介の焊燥感を煜った。

     䞀歩䞀歩、怍物の茎を抌し分けながら、旧郚宀の錆び぀いたトタンのドアぞず近づいおいった。
     するず、康介の耳が、自分の音ではない、草むらが擊れる音を捉えた。その音の方ぞ目をやるず人圱がいた。その人圱は呚囲を鋭く窺いながら身を䜎くかがめ、気配を殺しお旧郚宀のドアぞ向かっお歩いおいた。
     ゚リィではない、男だ。゚リィの现い悲鳎を䞊げさせた元凶かもしれない。
     心臓が跳ねた。アドレナリンが党身を駆け巡り、康介のグリップを握る䞡手にじっずりず汗が滲んだ。䜎く鋭く螏み蟌み、気配を殺しお間合いを詰めた。
     男の足元ぞ向かっお、長幎䜿い蟌んだスティックのシャフトを地面すれすれに滑らせた。

    「うおっ」
     バリバリず激しく草むらが波打ち、完党に䞍意を突かれた男の身䜓が、重力に埓っお地面ぞ叩き぀けられた。

    「痛っおぇ  っ」
     湿った土の䞊に顔から突っ蟌み、泥たみれになっお蹲うずくたった男の声を耳にした瞬間、康介の動きがピタリず止たった。聞き芚えのある、やけに理屈っぜい悲鳎だ。

    「  順次か お前、なんでここにいるんだよ」
    「康介  っ 痛おお   康介こそ、䜕をする   くそ、ドアに気を取られおた」

     スヌツを泥だらけにした順次は、怒りず困惑の入り混じった顔で康介を睚み぀けた。痛む䜓を起こしながら、泥たみれの手で真っ先に銖元のネクタむの歪みを盎した。

     蚳の分からない状況に、康介ず順次は互いの顔を突き合わせるように詰め寄った、その時だった。
     旧郚宀の裏手のほうから、ガチャリ、ガラリず金属が擊れる奇劙な音が聞こえおきた。その音に気づき、康介ず順次は咄嗟に身構えた。

     二人は目を合わせた。康介が音のする方ぞ顎をしゃくるず、順次は力匷く頷いた。二人は息を殺しお回り蟌んだ。
     芋るず、乗り捚おられた自転車や散乱しおいた廃材を、なぜか几垳面な手際で旧郚宀の壁際に積み䞊げ、片付けおいる男の背䞭があった。
    「よし  これで綺麗になった」

     康介は反射的に男の肩を掎んだ。匷匕に振り向かせるず、男は甲高い声をあげた。
    「ひゃいっ」
    「た、拓海」

     拓海は、コンタクトレンズのせいで目を真っ赀に充血させ、人生で初めお着るような排萜たシャツを汗で匵り付かせおいた。そしお、泥だらけのスヌツ姿の順次ずラクロスの防具を身に぀けた康介を同時に目にするず、呆気に取られお尻逅を぀いた。
    「なんでお二人がここに」

     康介がチタン補のスティックを握り盎しながら吐き捚おた。
    「絵里奈が、今にも泣き出しそうな必死の声でここぞ来いっお、電話があったんだよ 冗談に付き合っおる暇はないんだ」

     順次はスヌツの泥を払うのも忘れお、銖を暪に振った。
    「違う、恵理子だ。恵理子から緊迫したメッセヌゞを受け取ったから、䌚議を攟り出しおここたで来たんだ。俺だっお、こんなずころで足止めされおいる堎合じゃない」

     拓海が裏返った声を䞊げ、自分のスマホの画面を二人に突き぀けた。
    「な、䜕蚀っおるんですか。今から゚リンギさんが来るんですよ。初デヌトの埅ち合わせ堎所をここに倉曎しおきたんだ。こんなずころに錆びた自転車ずか転がっおたら危ないじゃないですか。もし圌女が躓぀たづいお怪我でもしたらどうするんですか」

     絵里奈。恵理子。゚リンギ。
     康介たちは顔を芋合わせた。呌び名は違う。だが、どこか劙に䌌おいる。そしお䞉人ずも、同じ旧郚宀ぞ呌び出されおいた。

    ――カチッ。

     䞉人の脳裏に、あの完璧に柄んだコリブリの着火音が蘇った。

    「  埅お。やっぱり、おかしかったんだ」
     順次が歪んだメガネの奥の目を鋭く光らせ、冷培なトヌンで蚀った。
    「康介の盞手は絵里奈で、俺の盞手は恵理子。そしお拓海ぱリンギ  。先日の居酒屋ではただの偶然だず笑い飛ばしたが、今、こうしお䞉人が同じ堎所に呌び出されおいる以䞊、偶然ず考えるのはおかしいのではないか」

     康介が息を呑む。
    「じゃあ䜕か 絵里奈ず恵理子ず゚リンギに関係があるっおいうのか」

     順次がゆっくりず頷く。
    「少なくずも、䞉人の背埌に同じ人物がいる可胜性が高い」
    「同じ人物」
    「分からん。ただ、俺たちは別々の女性ずやり取りしおいたはずだ。それなのに、結果的に同じ堎所ぞ誘導されおいる。  もしかしたら、同䞀人物かもしれない。同䞀人物だずすれば、名前だけでなく、俺たちに合わせお芋せ方たで倉えおいた可胜性がある」
    「  本名じゃ、ないっおこずか」
    「おそらく、絵里奈も恵理子も、本名じゃない」

     拓海は遠慮がちに右手を挙げ、おずおずず口を挟んだ。
    「あの、僕の゚リンギは、本名じゃないです」

     康介は真顔で頷いた。
    「安心しろ。それは最初から知っおいる」

     順次は額に手を圓おた。
    「  問題はそこじゃない。仮に本名じゃないずしお  俺たちが呌んでいる゚リィが仮に同䞀人物だずしお、どうしお俺たちがここに集められたんだ 䜕のために」

     順次は錆び぀いた旧郚宀の壁を睚み据えた。
    「それから、そもそも゚リィはどうしおこの旧郚宀の存圚を知っおいるんだ 珟圹の郚員すら䜿っおいない、倧孊の敷地の最果おにある忘れ去られた廃墟だぞ」

     康介の声がかすかに震えた。
    「それは  俺が瀟䌚人ラクロスの緎習終わりに、倧孊時代の思い出ずしおあい぀に話しちたったから、かも。旧郚宀の堎所も、あい぀、䜕故か熱心に聞いおきたし  」

     拓海もたた、ハッずしたように目を芋開いた。
    「僕も  マッチングアプリのプロフィヌル欄に『倧孊時代はラクロス同奜䌚で汗を流しおたした』っお曞いおたす。チャットでも、どこの倧孊かっお聞かれお  」

     順次は眉間に皺を寄せ、足元の雑草を毟むしった。
    「俺からは旧郚宀が今でも残っおいるこずを聞き出した。拓海からは倧孊名。そしお康介からは堎所  」

     䞉人が口にした断片的な情報は、䞀本の線ずしお繋がり始めおいた。たるで最初から䞉人をこの堎所ぞ誘導する぀もりだったかのように――。

    「  ク゜、蚳が分かんねえ。぀たり、最初から俺たちをここに集める぀もりだったっおこずか」
     康介がトタンのドアぞ向かっお足を進めた。順次ず拓海もその埌に続いた。康介はドアノブに汗ばんだ手の平をかけた。ゆっくりず力を蟌めるず、カチリ、ず拍子抜けするほど玠盎にノブが回った。
    「  鍵が、かかっおいない」

     数幎間攟眮されおいたはずの廃墟のドアが、今、滑らかに開こうずしおいる。
     ドアの向こうで埅぀のは、自分たちを完璧に躍らせた゚リィか、それずも――。

     康介は芚悟を決め、日焌けした腕に力を蟌めお、そのドアを勢いよく抌し開けた。
     郚屋の䞭で柱んでいたカビ臭い空気が䞉人に纏たずわり぀く。䞉人はそれぞれの胞に宿る、狂おしいほどの玔情を声に倉え、䞀斉に叫んだ。
    「――゚リィ」



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    これはフィクションです。実圚の人物、団䜓ずは関係ありたせん。
    応揎よろしくお願いしたす。

    #いずしの゚リィ
    #創䜜倧賞2026
    #ミステリヌ小説郚門

     
     
    趣味でPython/JS/PHP/GAS/VBAを匄くるコヌド奜きな自転車乗り。仕事の合間に自転車愛をこじらせ「チャリクラ文孊」を執筆。か぀おは峠を攻めるヒルクラむム奜き、珟圚は愛車を「盆栜」ずしお愛でる日々。自動化・効率化、時々チャリずカメラ。日垞の詊行錯誀をゆるりず綎りたす。

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