
『君と私とIF』第16話「不器用の果てに」
──放課後──
<駐輪場>
「中藤」──
帰ろうとチャリ置き場に来たところで、
後ろから呼び止められた。
(この声は・・・)
振り向くと、
小林
「武田くん・・・」
武田だ。
勇人
「・・・なんだ? 武田」
(眉間のシワすごいな・・・)
しかめっ面のまま、
目を逸らしてうつむく。
小林
「僕たち、
今から帰るとこなんだけど」
武田
「・・・」
無言のまま、
返答はない。
小林
「・・・もう帰ろう、勇人」
そう言うと、
荷物をカゴに詰め始める。
一方、
武田はそのまま動かない。
(・・・しゃーねーか)
そう思い、
振り向いた、その時。
武田
「・・・中藤!」
「・・・ちょっと、いいか?」
(・・・、随分思いつめてんな・・・)
荷物をカゴに詰め、
勇人
「なんだ?」
向き直る。
武田
「・・・ちょっと、ここじゃ・・・」
相変わらず、うつむいたままだ。
(・・・まぁ、確かに人目につくしな)
勇人
「そんなら、どこいく?」
小林
「勇人!」
鋭く制止する小林。
(まぁ、止めるよな)
勇人
「大丈夫だって」
「どの道、逃げられんだろ」
「お前が心配してくれるのは、
分かるんだけどさ」
軽くウィンクしてみせる。
(そんな心配そうな顔すんなよ・・・)
そのままうつむく小林。
(早いとこケリをつけてやらんとな)
武田の方に向き直る。
勇人
「待たせたな」
「行こうぜ」
・・・・・・
・・・
<校舎裏>
前を行く武田が、立ち止まる。
(ここなら、まぁ?)
背を向けたまま、
立ち尽くして動かない。
(・・・ん〜?)
勇人
「で、話って何だ?」
武田
「・・・」
勇人
「武田?」
武田
「・・・・・・かんねぇ・・・」
勇人
「ん?」
ようやく振り向く武田。
武田
「・・・分かんねぇよ!」
勇人
「分からんって・・・」
「呼んだのお前だろ?」
武田
「平方も・・・西川も・・・七海も・・・」
「桜澤まで、あんな・・・」
(いや、俺に言われても・・・)
武田
「なんで、みんなお前なんだよ!」
勇人
「いや、知らねぇよ」
「俺だって分からんし」
武田
「・・・」
「俺だって・・・」
「・・・」
再び、
苦しそうに黙る武田。
勇人
「・・・で?」
「お前はどうしたかったんだ?」
武田
「・・・」
「俺だって・・・」
「どうにかしたかったんだよ!」
(まぁ、それは分かる)
武田
「でも、何やっても滑って・・・」
「何言っても変になって・・・」
「気づいたら、俺だけ・・・」
勇人
「だったら、そう言えよ」
武田
「言えるかよ!」
勇人
「知らねぇよ!」
「言わなきゃ分かんねぇだろ!」
武田
「・・・」
「クソっ・・・」
バッとうつむく武田。
(目の辺りが光ったよな・・・)
勇人
「・・・まぁ、座ろうぜ?」
「疲れたわ」
そのまま校舎に近寄り、
壁にもたれて座る。
後に続いて、
ドカッと腰を下ろす武田。
うつむいたまま、
何も言わない。
(どうしたもんかね、こりゃ・・・)
そのまま、
お互い無言のまま。
空を眺める俺。
うつむく武田。
勇人
「・・・なぁ、武田」
武田
「・・・」
勇人
「実は、俺な」
「覚えてねぇんだわ、事故のこと」
初めて、
武田がビクッと反応し、
こっちを向いた。
構わず続ける。
勇人
「この前、
桜澤にも言ったんだけどな」
「事故のことは、
親から聞いてる」
武田
「・・・」
勇人
「お前は、
別に何もしてないんだろ?」
「だから、
もういいよ」
再び、
武田がうつむく。
武田
「じゃっ・・・じゃあ・・・」
「俺は・・・なんのために・・・」
嗚咽が漏れる。
(・・・)
(まぁ、こいつも・・・)
そのまま、
空を見つめていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
どれくらい経っただろうか。
武田
「・・・俺」
おもむろに、
武田が口を開く。
「俺、バカみてぇだな・・・」
勇人
「・・・そうだな」
フッと武田が笑う。
武田
「・・・それ、
慰めになってなくね?」
勇人
「そうだな」
つられて俺も、
フフッと笑う。
武田
「ふふっ・・・ははは・・・」
笑い出す武田。
二人で、
そのまましばらく笑っていた。
<駐輪場前>
小林
「勇人!」
小林が、
心配そうに声を上げた。
勇人
「おー、ワリィ」
「待たせたな」
小林
「それはいいんだけど・・・」
そう言って、
チラッと武田の方を気にする。
勇人
「まぁ、
なんとか、な?」
武田を見やる。
武田
「おお、
待たせて悪かったな、小林」
小林
「・・・そうなの?」
「それならいいんだけど」
まだ少し不安そうだ。
勇人
「おお、
武田が泣いて大変だったぜ」
武田
「おまっ?! それ言うか?」
苦笑いで応じる武田。
小林
「泣かしちゃったの・・・?」
勇人
「泣かしたってゆうか・・・?」
武田
「まぁ! 細けぇこたぁいいのよ!」
「お陰でスッキリしたぜ!」
勇人
「そりゃよかったな・・・」
「そんじゃ、帰りますか!」
武田
「おう!」
小林
「そうだね〜」
武田
「・・・小林」
小林
「ん?」
「何? 武田くん」
武田
「その・・・、
悪かったな、今まで」
小林
「・・・うん、もういいよ」
「勇人がスッキリしたなら、
僕からは何も」
武田
「・・・ああ」
(2人ともスッキリした顔だな)
勇人
「そんじゃな、武田」
「また来週!」
武田
「おう! また来週な!」
こうして、
俺たちは、
チャリ置き場を後にした。
──週明け・月曜朝──
<3ーC教室>
武田
「おー、中藤!」
「おはよ!」
勇人
「おう! おはよ!」
・・・・・・
・・・
( 第17話「追いついてきた現実」へ )
※初めての方は
▶︎ 第1話「はじまりの刻」
からお読みください。
▶︎ 「登場人物紹介」へ
※「この人、誰だっけ?」の迷子防止用です。
← 前話へ | 【第0話・記事一覧】へ