
『君と私とIF』第31話「帰り道」
<校門にて>
陽葵
「そんじゃ、
葵のことよろしくね〜、
中っち」
校門から、
満面の笑みで
右手をヒラヒラさせる
陽葵。
(いや、まぁ・・・)
(確かに、
俺がトドメ刺したのは
そうなんだけど・・・)
妙にワザとらしい笑顔が気になる。
勇人
「葵、
大丈夫か?」
うつむき加減で、
コクリと頷く葵。
勇人
「そんじゃ、帰ろっか」
そう言うと、
お互いチャリを引いて
並んで歩き出す。
(しかし、
あんなことになるとは・・・)
(ちょっと調子に乗りすぎた・・・)
チラッと、
隣を歩く葵の様子を伺う。
うつむいたまま、
無言でチャリを押している。
(気まずい・・・)
(何か話題は・・・)
勇人
「それにしても、
大分、日も延びたな」
葵
「そうだね。」
勇人
「5月も半ばになると、
17時半じゃ
夕方もこれからって感じだよな」
葵
「うん・・・。」
(会話が続かない・・・)
(最近は、
あのベンチで喋ってる時、
葵も結構笑顔だったり
したんだが・・・)
しばらく、
無言で歩き続ける2人。
(そう言えば、
陽葵の用事って
何なんだ?)
(あいつが葵のことを、
他人に任せるほどの用事?)
ふと、
先ほどのやりとりを
思い返す。
<3ーC教室にて>
それは、
後片付けも一段落し、
陽葵が葵を介抱して
落ち着いた頃のこと。
陽葵
「ちょっと、
中っち〜」
「あんた、
今日、葵のこと
送って行きなさいね?」
勇人
「え・・・?
俺・・・?」
陽葵
「あんたが
トドメ刺したんでしょうが」
「責任取りなさい?」
勇人
「はい・・・」
陽葵
「ホントは、
あたしが送りたいんだけど」
「ちょっと野暮用がね・・・」
「あんたは信用できそうだし」
「まぁ頼むわ!」
勇人
「・・・」
陽葵
「その代わり、
今日はこれ以上、
笑わせんなよ?」
「下手したら、
命に関わることも
あるんだからね?」
真剣な顔で釘を刺す陽葵。
勇人
「・・・はい」
そんなやりとりがあり、
今こうして
葵を送ってる訳だ。
(何なんだろうな、
野暮用って)
次第に日の傾きも増し、
夕焼け空が広がる。
(それにしても・・・)
相変わらずうつむいて歩く、
彼女のストレートロングの黒髪が、
夕日を受けて輝く。
(怒ってる・・・よな・・・?)
流石にあれはマズかった。
(葵にしたら、
イメージぶち壊しも
いいとこだもんな・・・)
あそこまで、
声を上げて笑う葵の姿は
初めてだった。
(クラスのヤツらも、
同じ反応だったし・・・)
(おし! ここは男らしく!)
勇人
「なあ、葵?」
葵
「・・・。」
勇人
「さっきは、
その、ごめんな」
「まさか、
あんなことになると
思わなくて・・・」
「ホントごめん」
「調子乗りすぎたわ」
尚も無言の彼女。
(やっぱり嫌われたよな・・・)
(まぁしゃーない)
(俺にしちゃ運が良かったんだ)
学校に復帰して、
進級をかけた補講の山を
こなしていた3月。
ボーッとする頭で
校内を彷徨い歩いて、
たまたま通りかかった
あのベンチ。
そこに、彼女はいた。
(お気に入りって言ってたっけ)
(もう行けねぇな)
(邪魔しちゃ悪いし)
そんなことを考えていると、
うつむいたまま、
おもむろに、
口を開く葵。
「ごめん・・・。」
一瞬、
静寂に包まれた気がした。
「そうじゃないの・・・。」
続ける彼女。
「私・・・」
「あんなに笑ったの・・・」
「初めてで・・・」
「凄く・・・」
「恥ずかしかったけど・・・」
顔を上げ、
「楽しかったの・・・。」
夕日を浴び、
微笑む彼女。
──ドキッ!
そして再びうつむく。
(綺麗だった・・・)
(ドキドキする・・・)
何も言い返せず、
ぼんやりそんなことを考える。
(空気が・・・)
苦し紛れに、
勇人
「ま・・・まぁ」
「可愛かったもんな、小林」
口を滑らせてしまった。
途端に、
チャリを支えたまま
うずくまる彼女。
「葵?!」
また肩がプルプルしてらっしゃる。
「・・・すまん、
つい・・・」
そのまま動けないご様子。
(ヤバい・・・)
(陽葵にコロされる・・・)
(どうすりゃいいんだ・・・)
勇人
「大丈夫か・・・?」
大きく肩で息を吸い、
ふぅ〜、ふぅ〜、と
ゆっくり息を吐く彼女。
(さっき、
陽葵に教わったヤツだ・・・)
途方に暮れていると、
スッと立ち上がり。
葵
「勇人のバカ。」
こっちを軽く睨み、
ほっぺを膨らませて
そう言う彼女。
(やべ・・・可愛い・・・)
そして、
固まる俺を残し、
再びうつむいて歩き始める。
(ドキドキが止まらん・・・)
(いや違う!)
(落ち着け俺!)
勇人
「待てよ葵」
「置いてくなって」
(これはフラグだ!)
(調子乗ると事故るヤツだ!)
追いつき、
勇人
「ごめんて・・・」
尚もスタスタと
歩き続ける彼女。
不意に立ち止まり、
振り向きざまに、
葵
「よろしい。」
「許します。」
そう言い、
ニコリと笑顔を向けると、
またうつむく。
少し赤く見えたのは、
夕日のせいだろうか。
(・・・ドキドキが、ヤバい・・・)
(心を無にしろ!)
(心頭滅却すれば火もまた涼し!)
次第に薄暗くなる中、
彼女の自宅への道は続いてゆく。
<葵の自宅前>
辺りはすっかり暗くなり、
街頭がぼんやりと照らす。
葵
「ここ。」
家の前で立ち止まり、
一言、そう言う彼女。
(ここか)
葵
「自転車、
置いてくるね。」
そう言うと、
チャリを押して、
ガレージの奥に消えてゆく。
(つーか俺・・・)
(来ちゃって、
大丈夫だったんだろうか・・・?)
不意に、不安に襲われる。
そこに戻ってくる葵。
葵
「それじゃ、勇人。」
「今日は、
送ってくれて、
ありがとう。」
「また、明日ね。」
にっこりと微笑む。
勇人
「お・・・おう」
「またな・・・」
微笑んだまま
手を振る彼女に、
手を振り返し、
(絶対気のせいだ!)
(勘違いするな!)
そう自分に
言い聞かせながら、
チャリで帰路を急いだ。
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※初めての方は
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※「この人、誰だっけ?」の迷子防止用です。
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