
『君と私とIF』第二章「動き出す教室」第13話「萌し(きざし)」
第二章 動き出す教室
第13話 萌し(きざし)
──翌朝──
<3ーC教室>
陽葵
「おー、中っちー」
「おっはよぅ!」
満面の笑みで、
元気よく挨拶してくる西川。
勇人
「お・・・おう」
「おはよう・・・」
──ざわめく空気
(男子の視線が痛い・・・)
女子たちが、
挨拶を交わし合う。
笑顔のまま、
仲良しギャルたちにも挨拶しながら、
自分の席に向かっていく西川。
(しかし、すげぇな・・・)
(全く気にする素振りがねえ・・・)
平方さんも挨拶を返し、
静かな、嬉しそうな笑顔が、
ふっと溢れるのが見えた。
(・・・良かったな)
彼女の笑顔を見ていると、
自然とそう思えた。
小林
「何があったの・・・?」
小声で聞かれ、
勇人
「ちょっとな・・・」
──なんと説明したもんか
チラッと西川の様子をうかがう。
(もう人集りできてるし・・・)
仲の良かったギャルたちが、
西川の周りに集まっている。
(昨日、あの後、
教室戻ってから
すごかったもんな・・・)
──昨日・昼休み──
<3ーC教室>
陽葵
「絵梨花ー、花音ー」
戻るなり、
一軍ギャルズに声をかける西川。
急に呼ばれ、
ビクッと振り向く2人。
陽葵
「ちょっといい?」
一瞬、
キョトンと顔を見合わせる2人。
すぐに向き直り、
絵梨花
「どした?」
花音
「なーに? ひまりん」
少し戸惑いが見える。
陽葵
「いやー」
「心配かけちゃったなーって」
苦笑いの西川。
絵梨花
「まぁ、そりゃね?」
花音
「ひまりん全然笑わないんだもん」
「心配したよねー?」
困った笑顔から、
陽葵
「ごめんて」
ニッと笑い、
「もう大丈夫!」
絵梨花
「そうなん?」
花音
「ひまりん復活?」
陽葵
「うん!」
ピースする西川。
坂下絵梨花も相沢花音も、
ようやく顔が綻ぶのが見えた。
(それから・・・)
休み時間ごとに。
──喋る!
──笑う!
──戯れる!
初めは戸惑っていた他の女子も、
次第に馴染みはじめ、
今朝に至っては、
お互い挨拶を交わし合っている。
(いや・・・)
(あいつ、
マジでハンパねぇな・・・)
──中藤ぃ・・・あんがとね──
昨日の、
たったそれだけの言葉。
(あいつも色々抱えてたのか)
今じゃ、
その陰も見えない。
(比べて・・・)
武田の横顔。
自分の席に座って俯いている。
(落ち込んでる・・・のか?)
(さすがの武田も、
アレには堪えたか?)
──鮮やかな平方さんの手並み
──崩れ落ちる武田
(あれは・・・なぁ)
今更ながら、
少しニヤけてしまう。
(しかし)
賑やかな女子。
静まったままの男子。
(対照的だな)
変化についていけず、
戸惑うように。
(まぁ・・・)
チラッと教室の後ろを見る。
(アレだよなぁ・・・)
椅子にもたれかかったまま俯く、
桜澤の姿が、
視界の隅に映る。
隣には大原。
その前には三浦。
片や、
キャッキャする女子たち。
片や、
お通夜状態の男子トップ3。
(そりゃな・・・)
小林
「勇人!」
勇人
「ん?」
急に小林に呼ばれ、
促されて前を見ると、
武田
「おい、中藤」
(うお?! いつの間に・・・)
──完全に不意を突かれた
勇人
「なんだ?」
武田
「お前さ・・・」
「平方の次は西川かよ・・・」
勇人
「あ?」
「何言ってんだ? お前」
武田
「だって、おかしいだろ?」
「昨日、あの後、
何があったんだよ・・・」
小林
「武田くん!」
声を上げる小林。
勇人
「何って・・・」
(麗しき女の友情を
見守ってただけだが・・・)
武田
「なあ、
なんでだよ・・・」
「なんでお前ばっか・・・」
食い下がる武田。
勇人
「いや、
俺も知らねえよ」
小林
「もうやめてよ!」
武田
「ふざけんなよ・・・」
(目がヤバい・・・)
「武田!」
横から高橋が割って入る。
七海
「そこまでにしなよ」
武田
「あ・・・?」
「七海・・・お前まで・・・」
高橋を睨む武田。
七海
「そういうことじゃないでしょ!」
「いい加減にして!」
負けじと言い返す高橋。
──その時、
「武田ぁ〜?」
窓の方から、
声が響いた。
西川だ。
陽葵
「あんたさぁ?」
うっすら微笑みながら。
「病み上がりの中っちに、
あんまり迷惑かけんじゃないよ〜?」
ハッキリ告げる。
(やっぱり中っち・・・)
──ギリッ
奥歯を噛み締める音。
武田
「・・・おぉ」
「わりぃ・・・」
スゴスゴと、
自分の席に戻る武田。
チラッと、
武田を心配そうに見つめる高橋。
それから、
女子たちの方へ戻っていった。
(すげ・・・)
チラッとこっちに
アイコンタクトをすると、
再び、
女子たちのおしゃべりに戻る西川。
その輪に、
高橋も合流する。
(頼もしい・・・)
小林
「すごかったね、
西川さん・・・」
勇人
「おお・・・」
そうこうしていると、
──キーンコーンカーンコーン──
朝の予鈴が鳴った。
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