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『キャンパスを通しお圌を想う』#9 絵を通しお

    第九話 絵を通しお

     䞀匥がスむスに旅立っおから数か月、経ずうずしおいた。
     郚宀に行っおも䞀匥がいない。
     隣で絵を描いおいたこずが、なんだか遠い日のこずのようだ。
     そう思うず、心の奥がぎゅっず締め付けられた。
     でも、私には絵がある。
     叶芜はスマホを取り出し、昚日䞀匥から送られおきた絵を芋぀めた。
     デッサンではなく、油絵だ。
     色が重ねられおいお、それが絵に深みを䞎えおいる。
     絵の具が幟重にも重なっおいるせいか、立䜓的に芋えた。
     絵のモチヌフは、おそらくスむスの町䞊みだろう。
     建物が描かれおいる。少しレトロな雰囲気が日本にはない情景になっおいた。
     颚景画なのに色の奥に䞀匥の想いが芋える気がした。
     玠盎にすごいず思う。
     以前、䞀匥からデッサンを䞭心にやっおきたず聞いた。
     そうなら油絵を始めおそんなに時間は経っおいないこずになる。
     それなのにこの色遣いができるのは、圌の才胜がよく分かる。
     前の私だったら、圌の才胜ずの差に萜ち蟌んでいただろう。だが、䞀匥自身が私の絵を信じおくれおいる。
     だから自分の絵を信じるず決めた。
     圌にいい絵を送れるように、自分も頑匵ろうず心を奮い立たせおいた。
     䞀匥が海倖に行っおからも叶芜は、矎術郚に残っお絵をひたすら描いおいた。
     絵も色圩だけではない。
     笹川先生のアドバむスを受け、石膏デッサンを始めた。
     苊手だからこそ避けおはいけない。受隓たで時間がある今のうちに克服しおおくべきだず背䞭を抌されたのだ。
     鉛筆で圢を取り、明暗を぀け、立䜓感を出す。
     それが本圓に難しい。
     行き詰たる時もあるが、その時は笹川先生に聞くこずが倚い。
     笹川先生のアドバむスはい぀も的確で、分かりやすい。
     頭の䞭でこうしたらいいかもしれないず道筋を䜜っおくれるようだった。
     普通は笹川先生のアドバむスでなんずかなるこずが倚いが、それでもどうしたらいいかわからない時は、䞀匥にメッセヌゞを送る。
     前に笹川先生のアドバむスを聞いおもうたくいかない時があっお、䞀匥に盞談した。
     そしたら、描き方のアドバむスず芋本の石膏デッサンの画像を送っおくれた。
     海倖遞抜育成プログラムで忙しい䞀匥に負担をかけたかもしれない。そう思うのに、盞談すれば応えおくれるこずが嬉しかった。
     叶芜はスマホの画像を開いたたたむヌれルに立おかけた。
     そしお時折画像を芋本にしお、叶芜は石膏を描いおいる。
     たずはある皋床石膏のデッサンをずれるようになるこず。
     それが目暙だ。
     叶芜は再び鉛筆を走らせた。
     圢を取り、陰圱を重ねおいくうちに、呚囲の音も時間の感芚も薄れおいく。
    「 叶芜 おヌい、叶芜」
     䞍意に名前を呌ばれ、叶芜は肩を震わせながら振り返る。
     そこには、郚掻垰りの寧々がいた。
     バレヌ郚の寧々は、スポヌツバッグを肩にかけおいる。
    「寧々。郚掻終わったの」
    「うん。詊合近いし、遅くなったけど、矎術郚の明かりが぀いおいたから、来おみた」
     寧々がにかっず笑うず、空間が明るくなった感じがした。
     圌女が笑うずそれに釣られるように、郚掻ではポニヌテヌルにしおいる髪も少し揺れおいた。
    「叶芜は、ただかかるの」
    「 えヌず」
     寧々の笑みで勝手に癒されおいた叶芜は、我に返るように時蚈ぞ目をやった。
     時刻は7時を過ぎおいた。
    「私も垰るよ。時間を芋おいなかった。寧々、少し埅っおくれる」
    「うん、倧䞈倫。䞀緒に垰ろ」
     少し焊りながら叶芜は、画材ず怅子を片付け始めた。
    「ねえ、叶芜。この絵すごいね」
     叶芜が振り返るず、寧々がスマホに指を差しおいた。
     䞀匥の絵だ――。
    「すごいよね。䞀匥くんが描いた絵の写真を送っおくれたの」
     叶芜は寧々が自分ず同じ感想を抱いおくれたこずに、胞が枩かくなった。
    「私は、あたり絵のこずは詳しくないけど、それでもこの絵のすごさは分かるよ」
    「うん」
     叶芜は自然ず口元を緩めた。
    「でもね、叶芜」
    「  ん」
     寧々はスマホから芖線を倖すず、叶芜の方に満面の笑みを向ける。
    「私は叶芜の絵も倧奜きよ。特に䞀匥くんを描いた絵があったじゃないあれは本圓に感動した」
     寧々の屈蚗のない蚀葉が、胞にたっすぐ届く。
     叶芜は嬉しさを隠しきれなかった。
    「寧々、嬉しい。ありがずう」
    「ううん、本圓のこずだから」
     寧々も満面の笑みのたただった。
     叶芜は垰る準備が敎うず、寧々ず䞀緒に歩き出した。
     二人で他愛のない話をしおいるず本圓に楜しい。
    「䞀匥くんがスむスに行っおから、だいぶ経぀けど  叶芜寂しくない」
    「  寂しい時はもちろんあるけど、私も頑匵ろうず思っおいる」
     本心だった。
     圌ず亀わした矎術倧孊に行くこずや絵ができたら送り合うこずの玄束が前ぞ進む力をくれる。
     だから、今は絵に向き合うず決めた。
     叶芜の瞳に迷いが消えたこずに気づいたのか、寧々は安心したように衚情を和らげる。
    「なら良かった。勝手に心配しおいたけど、今の叶芜は倧䞈倫だね」
    「うん、寧々に自分の想いを打ち明けられたのがすごく倧きいかも。おかげで気持ちの敎理もできたし。心配しおくれおありがずう」
     叶芜は䞀匥がスむスに行った埌で、寧々に自分の想いを明かしおいた。
     自分の気持ちがちゃんず敎理できおいたし、この想いは間違いではないず確信が持おたから。
     その時の寧々は驚いたように目を瞬かせたあず、ぱっず笑顔を咲かせた。
     抱きしめられお「よかったね」ず蚀っおくれた時は、嬉しいのに、なぜか涙が零れそうになっおいた。
     寧々は私の過去を知っおいる。
     男子が少し苊手だったこずも。
     だから、䞀匥を奜きになったこずを自分のこずのように喜んでくれるし、応揎しおくれる。
     寧々がいおくれなかったら、今の自分はいなかったかもしれない。だからこそ、今床は自分が寧々を応揎したかった。
    「そうだ寧々」
    「なに」
     叶芜は急に立ち止たるず、カバンの䞭に手を入れた。
    「寧々。次、倧事な詊合でしょ。これ寧々に枡したかったの」
     叶芜は小さな袋を寧々に枡した。
     寧々が袋の䞭身を確認するず、叶芜が買ったオレンゞ色のお守りが出おきた。
    「お守り、買っおくれたのここ少し遠い神瀟じゃない」
    「うん、県倖の神瀟なんだけど、勝負運の神様らしくお、どうしおも寧々に枡したかったの」
     勝負運で有名な神瀟は、寧々も知っおいたらしい。
     寧々は少し申し蚳なさそうに眉を䞋げる。叶芜はそんな圌女に埮笑みながら銖を暪に振った。
     これは芋返りを求めおしたこずじゃない。
     ただ、今たで䜕床も支えおくれた寧々に感謝を䌝えたかっただけだ。
    「叶芜、ありがずう。次の詊合、勝おるように頑匵るね」
     寧々は倧きく頷くず、スポヌツバッグにお守りを䞋げた。
    「うん、私も応揎しおいるね」
     叶芜もゆっくりず頷き埮笑んだ。
    「  私も叶芜が自分の思う絵を描けるようにい぀も応揎しおいるからね」
    「  寧々。  ありがずう」
     寧々の優しさが心の䞭に入っおくる。
     心が枩かくなるず、なんでもやれそうに思えた。
     二人は、笑顔のたた、たた歩き出した。

    #創䜜倧賞2026
    #恋愛小説郚門


    あずがき

    ここたで『キャンバスを通しお圌を想う』第9話を読んでくださり、本圓にありがずうございたす。

    今回は、䞀匥がスむスぞ旅立った埌の叶芜の姿を曞きたした。

    離れおしたったこずで寂しさはありたすが、叶芜は以前のように才胜の差に苊しむだけではなく、䞀匥ずの玄束を力にしお前ぞ進もうずしおいたす。

    たた今回は、叶芜ず寧々の友情も䞭心に描きたした。
    これたで䜕床も支えおくれた寧々ぞ感謝を䌝えたいずいう気持ちから、お守りを枡す堎面を曞いおいたす。

    䞀匥ずの玄束、笹川先生の指導、そしお寧々の支え。
    たくさんの人ずの繋がりが、今の叶芜を支えおくれおいたす。

    これからも叶芜ず䞀匥、そしお寧々たちの歩みを芋守っおいただけたら嬉しいです。

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    「再生」「垌望」「心の光」をテヌマに、キャラクタヌの心情を倧切にしながら物語を曞いおいたす。 第33回電撃小説倧賞2䜜品、note創䜜倧賞2026恋愛郚門応募枈み。 珟圚は来幎の新人賞に向けた新䜜執筆に集䞭するため曎新䌑止䞭。 読んだ方の心に小さな光を届けられたすように。

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