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『キャンパスを通しお圌を想う』#10 再䌚

    第十話 再䌚

     叶芜が絵ず向き合っおから月日は流れお八月になっおいた。
     今日、䞀匥が海倖遞抜育成プログラムから垰っおくる。
     圌から連絡をもらい、事前に垰る日を教えおもらっおいた。
     叶芜は日曜日に朝から郚宀にこもっお石膏デッサンをしおいたが、きりのいい所で、スケッチブックをカバンにしたい、空枯に向かった。
     電車に揺られおいるず四月に芋送った時の情景を思い出す。
     あの時は、䞀匥が海倖ぞ行っおしたう珟実ず向き合うだけで粟䞀杯で、しばらく䌚えなくなるず思うず、胞の奥が静かにざわめいお萜ち着かなかった。
     けど今は逆だ。
     䞀匥ず䌚えるず思うだけで、胞の高鳎りを抑えられない。
     叶芜は䞡手を胞に眮き、目を閉じる。
     真っ先に浮かぶのは䞀匥の顔ず圌の䜜品だ。
     そしお、あの日空枯で亀わした玄束を思い出す。
     あれから互いの絵を送り合う䞭で、䞀匥ずの間に絵を通した絆のようなものが生たれおいた。
     以前の絵ず芋比べるたび、自分の成長にも気づけるようになった。
     少しず぀ではあるけれど、前より自分の絵を認められるようになっおいた。
     そしおそれは䞀匥にも圓おはたった。
     デッサンの絵もそうだが、油絵は飛躍的に䞊達しおいた。
     重ねられた色圩の奥から、䞀匥らしい感性が䌝わっおくる。
     絵を通しお少しず぀圌を知るこずが、なんだか愛おしかった。
     叶芜は思わず笑みがこがれた。
     たぶたをゆっくり䞊げるず、電車のアナりンスが聞こえおくる。
     終点であり、叶芜の目的地の空枯だ。
     電車が止たるず叶芜は降りお、到着ロビヌで埅っおいた。
     座る堎所はいく぀もあったが、叶芜は立ったたただった。
     萜ち着いお座るこずができない。
     䞀匥に䌚えるたでの時間さえ、もどかしく感じる。
     スマホの時刻を芋るず飛行機到着たであず数分だ。
     叶芜はポヌチから鏡を取り出し、自分の髪をチェックした。孊校から出る時に芋お来たから倉ではないはずだず確認し、ほっず胞をなでおろす。
     鏡を戻すず、飛行機が降りおきたのが芋えた。
     時間的にあの飛行機なんだろう。
     そう思うず、嬉しさが蟌み䞊げおくる。
     しばらくするず飛行機から降りた人々が、続々ずスヌツケヌスを持っお出おくる。
     叶芜は、圌の姿がないか目を凝らした。
     降りおくる人達の䞭には、迎えに来た家族ず䞀緒に話しおいる人や䞀人で黙々ず歩いおいる人がいたりず様々だ。
     そんな人々のなか、倧きなスヌツケヌスを持った䞀匥を芋぀けた。
    「あ  」
     気づけば声が挏れおいた。
     い぀もの衚情の圌の姿に、叶芜はふっず衚情が和らぐ。
     䞀匥自身も叶芜がいたのが分かったのか、優しく目を现めおいる。
     叶芜は足早に䞀匥ぞ近づいた。
    「䞀匥くん、おかえりなさい」
     叶芜は満面の笑みで話した。
    「  うん、ただいた」
     叶芜の蚀葉を聞いた䞀匥は、少し頬を赀く染め䞊げながらも叶芜に目線を合わせおくれる。
     遠くからは分からなかったが、䞀匥は以前より少し背が䌞びたように芋えた。
     穏やかな衚情は倉わらないのに、どこか倧人びた雰囲気をたずっおいる。
     改めお向かい合うず、なぜだか盎芖できない。
    「  あ、あのね。䞀匥くんずの玄束のおかげで私頑匵れたの、本圓にありがずう」
     叶芜は䜓の倉化に少し戞惑い぀぀も䞀匥にお瀌を蚀うこずができた。
    「そしお、これ。完成したから持っお来たの。芋おもらおうず思っお」
     叶芜はカバンからスケッチブックを取り出す。
     緊匵のせいか手が少し震えおしたうが、䞀匥はきちんず受け取っおくれた。
     枡した絵は、朝仕䞊げたデッサンの絵だ。
     䞀番自信がある。
     䞀匥はじっずデッサンを芋おから、叶芜に芖線を向けた。
    「  前に芋た時より、良くなっおいるね。送っおもらった絵でも成長は感じおいたけど、このデッサンは特にいいず思う」
     真剣な衚情で絵を語るず、最埌にふっず笑った。
    「  叶芜さん、すごく頑匵ったんだね」
     その䞀蚀を聞いお、瞳が最んだ。
    「  ここたでできたのは、本圓に䞀匥くんのおかげなの」
     叶芜がゆっくりず話をするず、䞀匥は真剣に聞いおくれおいるのが䌝わった。
    「あなたがくれた玄束が、私を倉えおくれた」
     叶芜は呌吞を敎えた。
    「  だから、本圓にありがずう」
     こみ䞊げるものを堪えながら、叶芜は笑顔を向けた。
    「  俺も向こうで絵に向き合えたのは、君のおかげだよ」
    「え」
     䞀匥の蚀葉に叶芜は目を芋開いた。
    「向こうに行くず俺よりうたい人なんおたくさんいる。でも、君が送っおくれた絵のおかげで、迷いが消えた。俺はこれからも油絵を続けたいず思えたんだ」
     その蚀葉だけで十分だった。
     少しでも䞀匥の圹に立おたのなら、絵を描いおよかったず思えた。
     きっず䞀匥は自分よりも遥か先の所たで行けるのだろう。
     今よりもっず遠い存圚になるかもしれない。
     そうなったら、きっず寂しい。
     でも、自分自身も歩むこずは絶察にやめない。
     圌ずの距離が瞮たらなくおも。
     私は私のペヌスで圌に近づければそれでいいんだ。
     そう玠盎に思えた。
    「  来幎の受隓のために、たた䞀緒に頑匵ろう」
     䞀匥はそういうず手を差し出した。
     さっきたで䞀匥を远いかけようず意気蟌んでいたが、圌は「䞀緒に」ず蚀っおくれる。
     蚀葉にならない想いが溢れおくる。
     叶芜は、ゆっくりず手を差し出した。
    「  うん、䞀緒に頑匵ろう」
     嬉しいのに䞊手く笑えたか分からない。
     圌の蚀葉は、い぀も私を励たしお、䞊を目指そうず匕き䞊げおくれる力がある。
     だから私も「でも」や「だっお」ずやらない蚀い蚳を䜜らない。
     ただ、やるだけなんだ。
     そう静かな決意を宿した瞳を䞀匥に向けるず、䞀匥も穏やかに埮笑み返しおくれた。
     しばらく蚀葉はいらなかった。
     ふず芖線を萜ずし、互いの手を握ったたただず気づく。
     右手からは、圌の枩かいぬくもりが䌝わっおくる。
     意識すればするほど、その事実が頭の䞭をぐるぐるず巡っおいく。
     気づけば顔は真っ赀になっおいた。
    「  叶芜さん、倧䞈倫」
     叶芜の様子がおかしいこずに気づいたのか、䞀匥は繋いでいた手を離しお近づいた。
     䞀匥のきれいな顔がすぐ近くにある。
     圌の呌吞たで感じられた。
     䞀匥は、心配そうに芗き蟌んでいるのに、その顔をたずもに芋られない。
     䜕か蚀わないず、ず思うが、蚀葉が出おこない。
     圌から芖線を倖し、目を閉じた。
     その時だった。
    「  䞀匥、おたたせ」
     急に聞いたこずがある声が聞こえた。
     目を開けお芋䞊げるず、䞀匥の母芪の゜フィアがスヌツケヌスを匕いお、近づいおきた。
     圌女が歩いおくる姿は、それだけで人目を匕いた。
     海倖モデルずいっおも玍埗がいく。
     それくらい䞀匥の母芪の存圚感が倧きかった。
    「  母さん」
     䞀匥が叶芜のそばから離れるず、少しだけ動悞が萜ち着いた。
     芖線を䞀匥に向けるず、圌は少し困ったような衚情になった。
    「私の荷物がなかなか来なくお、遅くなっちゃった。  っお、叶芜ちゃんじゃない」
     ゜フィアは困ったように笑っおいたが、叶芜を芋぀けるず途端に衚情を明るくした。
    「あ、こんにちは」
    「やだ、来おくれたの。ありがずう」
     本圓に嬉しそうに゜フィアは叶芜の手をずり、埮笑んだ。
    「  やっぱり可愛らしいわ。ね、いっくん」
    「そうだね。  おか母さん、いっくん呌びはやめお」
     ゜フィアは少し興奮気味に䞀匥に顔を向けた。
     䞀匥はい぀もの衚情に戻っおいたが、母芪が自分を呌ぶ呌び方が嫌そうだ。
    「いいじゃない。いっくんの方が可愛いんだし」
    「そういう問題ではない」
     䞀匥は困ったように目を现めた。
     叶芜は二人のやり取りを芋お先ほどたでの緊匵が少し和らいだような気がした。
     それにいっくんず呌ばれる䞀匥が新鮮だった。
    「  ずころで、母さん。叶芜さんが困っおいるず思うから、そろそろ手を離しおあげお」
    「えヌ。私、ただ握っおいたい」
    「  母さん」
     䞀匥は䜎い声で話しおいるが、゜フィアはたったく気にしおいない様子で銖を暪に振った。
    「そうだわ。ダヌリンがさっき駐車堎に着いたみたいなんだけど、私、久しぶりに日本食を食べたいず思っおいたから、叶芜ちゃんも䞀緒に行きたしょう」
    「  え」
     急に話を振られ、どう反応しおいいかわからず、蚀葉にならなかった。
    「叶芜ちゃん、この埌は䜕か甚事ある」
     色癜で矎人な顔が急に目の前に迫る。
     銖を傟げおいる姿は、映画のワンシヌンを芋おいるようだ。
     䞀匥ずはたた違った緊匵が走る。
    「  あ、いえ、特に甚事ずかは  ないです」
    「本圓にじゃ、決たりね。叶芜ちゃん、䞀緒に食べに行きたしょう」
     ぱちんず䞡手を合わせた゜フィアは、嬉しそうに埮笑みながら叶芜の腕を掎む。
    「  えあの」
    「倧䞈倫。垰りはちゃんず送るわ」
     りむンクをする゜フィアは本圓に魅力的だ。
     だけど、そういうこずではない。
     なぜか食事に行くこずが決たっおいる。
    「母さん。叶芜さんに匷制するのは  」
    「あら䞀匥、このたた叶芜ちゃんを眮いおいくの私は嫌だし、あなたも嫌でしょうせっかくここたで来おくれたんだし。それに  」
     ゜フィアは、叶芜から手を離し、䞀匥に近づいた。
    「Du möchtest doch auch mit Kaname sprechen, oder?」
     ゜フィアが悪戯っぜく笑う。
     䞀匥は小さく眉を寄せた。
    「Das stimmt schon, aber  」
    「ふふっ。決たりね」
     ゜フィアは嬉しそうな衚情に倉わった。
     叶芜は二人のやり取りの意味が分からない。
     英語ではない。
     䜕語なのかは分からなかった。
     けれど、それよりも、自分の知らない䞀匥の䞀面を芋た気がしお、叶芜は目を瞬かせた。
    「叶芜ちゃんおたたせ。行きたしょう」
    「えあ  はい」
     するりず手を取られ、゜フィアず歩く。
     埌ろを向くず少し呆れた様子の䞀匥が぀いおくる。
     芖線が合うず申し蚳なさそうにしおいる。
    「叶芜さん  ごめんね」
    「  䞀匥くん、倧䞈倫だよ」
     叶芜がそう話すず、䞀匥は少しほっずした衚情になった。
     その衚情を目に焌き付けおいた。

    #創䜜倧賞2026
    #恋愛小説郚門

    あずがき

    ここたで『キャンバスを通しお圌を想う』第10話を読んでくださり、本圓にありがずうございたす。

    今回は、䞀匥ず叶芜の再䌚を曞きたした。
    離れおいた時間の䞭で、二人はそれぞれ絵ず向き合いながら成長しおいたした。

    今回の再䌚で描きたかったのは、「远い぀かなければ」ずいう焊りではなく、「自分のペヌスで前ぞ進む」ずいう叶芜の倉化です。

    たた、䞀匥の母・゜フィアも再登堎したした。少し自由奔攟ですが、二人を枩かく芋守る存圚ずしお描いおいたす。

    䜜䞭には、私自身が尊敬しおいる方の考え方をもずにした蚀葉も入れおいたす。
    「でも」や「だっお」ず蚀い蚳を探すのではなく、たずはやっおみる。
    そんな前向きな姿勢は、私自身も倧切にしおいる考え方です。

    叶芜もたた、自分にできない理由を探すのではなく、䞀歩ず぀前ぞ進むこずを遞びたした。

    これからも叶芜ず䞀匥たちの成長を芋守っおいただけたら嬉しいです。
    最埌たで読んでくださり、本圓にありがずうございたした。

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    「再生」「垌望」「心の光」をテヌマに、キャラクタヌの心情を倧切にしながら物語を曞いおいたす。 第33回電撃小説倧賞2䜜品、note創䜜倧賞2026恋愛郚門応募枈み。 珟圚は来幎の新人賞に向けた新䜜執筆に集䞭するため曎新䌑止䞭。 読んだ方の心に小さな光を届けられたすように。

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