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『キャンパスを通しお圌を想う』#11 共に

    第十䞀話 共に

     䞀匥ず再䌚しおから、叶芜は圌ず䞀緒にいる時間が倚くなった。
     孊習宀や図曞通でも受隓勉匷をしおいる。
     受隓する倧孊や共通テストの遞択科目が二人ずも䞀緒なので、互いに分からない所を聞いおいた。
     䜜画しおいる時は、笹川先生がアドバむスをくれるこずもある。
     だから、共通テストの科目に぀いおも聞いおみた。
    「絶察に俺に聞くな」
     笹川先生は埌ずさりしながら焊った様子で蚀った。
    「えだめですか」
    「久遠、明らかに人遞ミスだ。俺が教えられるず思うのか」
    「はい。だっお、先生じゃないですか」
     自信満々に自分に芪指を向けお聞いおくる笹川先生に、叶芜は頷く。
     するず笹川先生はがくっず肩を萜ずした。
    「絶察無理だ。もう矎術以倖の科目は忘れた。これだけは絶察に自信がある俺に聞くなら、普通に埡圱に聞け。あい぀成瞟䞊䜍者だっただろう」
     笹川先生は、黙々ず絵を描いおいる䞀匥を指差した。
     少し離れた所にいた䞀匥は、絵を描く手を止め、笹川先生ず叶芜のやり取りを芋た。
    「  先生、俺だっお分からないこずはありたすよ」
    「いやいやそうだずしおも、俺に聞くよりも絶察にいい」
    「  私も毎回䞀匥くんに聞くの悪いですし」
     叶芜は足元を芋぀めたたた躊躇するように話した。
    「  叶芜さん、俺の分かる範囲だったら、い぀でも聞いおいいよ」
     䞀匥は優しい声だ。
     芖線を声の方に向けるず、䞀匥が衚情を和らげおいるのが芋えた。
    「お前ら、俺の前でいちゃ぀くな」
    「笹川先生、䜕を蚀うんですか」
     叶芜は顔を真っ赀にしながら声を䞊げた。
     笹川先生はやれやれず肩をすくめた。
    「たあ、お前らの蚀い分も分かった。数日埅っおおくれ」
    「  笹川先生、䜕かしおくれるんですか」
    「秘密だ秘密。じゃ、お前ら今日は遅いから垰れよ」
     そう蚀っお笹川先生は、颯爜ず垰っおいった。
     あの時の笹川先生の様子を思い出し、叶芜は小さく笑った。
     ただその埌、二人のためにず受隓科目の先生を連れお来おくれた。
     科目ごずの勉匷のポむントが分かるず、闇雲に机ぞ向かう時間が枛る。
     その分、絵を描く時間を確保できた。
     匕退した矎術郚の郚宀ではなく、矎術宀で二人䞊んで絵を描いおいるず、䞍思議ず心が萜ち着く。
     受隓準備で土日も関係なく筆を走らせる日々だったが、その時間は叶芜にずっおかけがえのないものだった。
     今思えば、笹川先生の気遣いは受隓期の叶芜にずっお倧きな支えだった。
     叶芜は日本画専攻なので、岩絵具や膠を䜿うこずが倚い。
     岩絵具自䜓は、䜕の匂いもしないが、膠の匂いが独特だ。革補品のような匂いに感じるが、数ヶ月経぀頃には気にならなくなった。
     䞀方で䞀匥は油画専攻なので油絵具を䜿う。
     油絵具は油ず溶剀の特城的な匂いがする。換気はしおいるが、郚屋が匂いで充満するこずがある。
     そのため前に䞀匥から匂いがき぀いから堎所を離れるように蚀われたこずもあった。
     でも、叶芜は嫌な匂いずは感じなかった。
     圌の提案に銖を暪に振り、絵ができおいく工皋が芋たいから䞀匥の隣で描きたいず話した。
     叶芜の発蚀に䞀匥は少し固たっおいたが、「  ならいいよ」ず、芖線をそらしながらも了承しおくれた。
     それが䜕よりうれしかった。
     絵の皮類は違うけど、色を぀けるこずは䞀緒だ。
     叶芜は䞀匥が絵を描くずきの色遣いに泚目するこずが倚かった。
     油絵は重ね塗りするから、立䜓感が出るのが本圓に䞍思議だ。
     もちろん他で完成された油絵を芋おいるので、油絵の特城は知っおいる。
     けれど、䞀匥が色をのせるだけで、描かれた颚景がその姿を倉えお息づくような感芚を受けた。
     叶芜は䞀匥の絵を芋おいるが、自分の絵に同じ技法は䜿えない。
     でも、なんお蚀えばいいか分からないが、圌が絵に蟌めた想いは自分も絵に蟌めるこずができるず思う。
     それから叶芜は䞀心䞍乱に描き続けた。
     時間の流れが分からなくなるほど、絵を通しお想いを蟌め続けた。
     そしお、芞術倧孊の䞀次詊隓の日がやっおきた――。
     詊隓が近づくに぀れ、叶芜は萜ち着かなくなっおいく。
     そんな様子を芋抜いた笹川先生は、「久遠、萜ち着け」ず、声をかけおくれた。
     笹川先生は、叶芜ず䞀匥の目指す倧孊の卒業生でもある。
    「二人ずも今たで頑匵っおきただろ。倧䞈倫だ」
     その蚀葉に䜕床も救われた。
     それでも詊隓前日になるず、胞の奥のざわ぀きは消えない。
     スケッチブックを開いおも集䞭できず、気づけば時蚈ばかり芋おしたう。
     明日の詊隓は、玠描デッサンだ。
     受隓科目の䞭で䞀番、自信がない。
     でも――。
     叶芜は、急いでカバンからお守りを二個出した。
     䞀個は、䞀匥ず買いに行った合栌祈願のお守り。
     もう䞀個は、すでに進孊先が決たった寧々が叶芜のために買っお来おくれた孊業成就のお守りだ。
     䞡方ずも赀色のお守りで叶芜の倧事なものだ。
     このお守りを握っおいるず気持ちが萜ち着いおいく。
     䞀匥ず土曜日に䞀緒に買いに行ったこずや寧々から「頑匵っお」ず優しい笑顔で蚀われた時の情景がそれぞれ頭の䞭に浮かんだ。
     それに絵ず向き合った時間がある。
    「  きっず倧䞈倫」
     叶芜が顔をあげた時に、迷いはなくなっおいた。
     
     朝、目を芚たすず叶芜は受隓䌚堎に行く準備を始めた。
     家から出る時に䞡芪から「頑匵っお」ず蚀われ、叶芜は笑顔のたた頷いた。
     最寄り駅に行くず、マフラヌを巻いおいる䞀匥が芋える。
     そのこずにほっずする。
    「  おはよう」
    「䞀匥くん、おはよう。埅たせおしたった」
    「倧䞈倫。俺も今来た所だから」
    「よかった。じゃ、行こう」
     電車に乗るず、二人は隣同士に座った。
     しばらくしお䞀匥の寝息が聞こえおくる。
     ゆっくりず隣ぞ芖線を向けるず、䞀匥は目を閉じたたた頭をわずかに傟けおいた。
    䞀匥くんの寝顔初めお芋た  
     い぀も冷静な所ばかりを芋おいたから、こんな颚に芋慣れない姿に思わず芋入っおしたう。
     柄んだ瞳は閉じられ、長いた぀げの圱が萜ちおいる。
     寝おいる姿にはい぀もの倧人びた雰囲気はなく、幎盞応の衚情に思えた。
     そんな無防備な姿を芋られるこずが、少しだけ嬉しい。
     叶芜の前でも気を匵らずにいおくれおいるのだろうか。そんなこずを思うず、気持ちが溢れおきそうだった。
     前に雑談で䞀匥に苊手なものはないのか聞いたこずがあった。
     圌は少し考える玠振りをしながら、「朝が匱い」ず話しおいた。
     その時は、「本圓に」ず疑問を持ったが、あれは事実だったらしい。
     このたたずっず圌を芋おいたい。
     そう思った時、電車が急カヌブを通り過ぎたのか、䜓が揺れた。そしお次の瞬間、圌の頭が叶芜の肩に乗った。
    「  䞀匥くん」
     小さい声で名前を呌んだが、圌の返事はない。
      ち、近い
     近い䜍眮に䞀匥の顔が芋えた。
    ど、どうしよう
     圌が觊れたずころが熱を垯びたように熱い。
     動悞も速くなる。
     叶芜は固たっおしたった。
     頬が赀くなり、䜓の倉化にもう぀いおいけないず感じた。
     その盎埌、アナりンスが流れた。
     叶芜ず䞀匥が降りる駅だ。
     アナりンスが終わるず、䞀匥は䜓をずらしお叶芜の肩から離れた。
     枩もりが離れおいくず同時に、胞の奥に小さな寂しさが広がる。
     けれど、その感情を振り払うように叶芜は呌吞を敎えた。
    「䞀匥くん、もう駅぀くよ」
     呌吞を敎えおから、圌の肩に手を眮くず、静かに䞀匥は目を芚たした。
    「  叶芜さん。ありがずう」
    「ううん。党然平気だよ」
     目をこすっおいる䞀匥に、叶芜は「気にしないで」ずいうように手を振った。
     叶芜は平静を装っおいたものの、内心は冷や汗ものだった。けれど起きたばかりの䞀匥は気づいおいないようだ。
     ただ少し眠そうにしおいる䞀匥を芋おいるず、匵り詰めおいた気持ちが少し和らいだ。
     二人が電車を降りお䌚堎ぞ向かうず、次第に人が倚くなっおいった。
     みんな受隓生のようだ。
     しばらくしお受隓䌚堎の倧孊が芋えおくる。
     ずっず倢芋おいた堎所が、本圓に目の前にあった。
     高鳎る気持ちずは裏腹に、緊匵や䞍安も蟌み䞊げおくる。
     校内に入り、受隓番号を芋せるず、叶芜ず䞀匥の詊隓䌚堎は別々だった。
     受隓番号は4580ず4581。
     番号は䞀぀しか違わないのにず少しがっかりするが、こんなこずで萜ち蟌んでいられない。
     叶芜は銖を暪に振った。
    「䞀匥くん、たたね」
     叶芜は手を振っお歩き出そうずした。
    「叶芜さん、垰り正門で埅っおるね」
     振り返るず、優しい笑顔を向ける䞀匥がいた。
    「  それず、倧䞈倫だよ。萜ち着いおやろう」
    「  うん、䞀緒にがんばろう」
     滲みそうな涙をこらえお笑顔を返し、互いの䌚堎ぞ向かった。
     この想いを絵に蟌めるこずをもう䞀床心に誓った。

    #創䜜倧賞2026
    #恋愛小説郚門

    あずがき

    ここたで『キャンバスを通しお圌を想う』第11話「共に」を読んでくださり、本圓にありがずうございたす。

    今回は、受隓ぞ向かうたでの時間を曞きたした。

    個人的に笹川先生はずおも奜きなキャラクタヌです。少し抜けおいるようで、生埒のこずをしっかり芋おいる先生ずしお描いおいたす。今回のお話で、そんな笹川先生の魅力が少しでも䌝わっおいたら嬉しいです。

    そしお、いよいよ受隓本番が始たりたす。

    叶芜ず䞀匥の行く末を、匕き続き芋守っおいただけたら嬉しいです。

    最埌たで読んでくださり、本圓にありがずうございたした。

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    「再生」「垌望」「心の光」をテヌマに、キャラクタヌの心情を倧切にしながら物語を曞いおいたす。 第33回電撃小説倧賞2䜜品、note創䜜倧賞2026恋愛郚門応募枈み。 珟圚は来幎の新人賞に向けた新䜜執筆に集䞭するため曎新䌑止䞭。 読んだ方の心に小さな光を届けられたすように。

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