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小説『青に、名前を぀けるたで』 12動き出した時間


    ▶前回のお話はこちら→『第十䞀話 八月の錓動』
    ▶本䜜のあらすじ&登堎人物玹介はこちら


    第十二話 動き出した時間


    九月。
    倏䌑みが明けおからは怒激のように孊園祭準備が始たり、気づけば圓日を迎えおいた。色々あった倏なのに、こうしお新孊期を迎えおしたえば党郚が遠い出来事のように思えおくる。 

    校舎の倖にはテントやキッチンカヌが䞊び、廊䞋には色ずりどりの食り付け。校内は、生埒だけでなく、子どもから倧人たでが楜しそうに行き亀っおいた。

    「おい、綟人」

    教宀の入口から聞こえた声に振り返る。

    「なに」

    暗幕で仕切られた迷路のような教宀の奥からでは、呌び声の䞻の姿は芋えない。

    「なに、じゃなくお。お前こっち」

    声の方ぞ意識を向けかけお、綟人は目の前の小孊生ぞ芖線を戻した。 

    「ごめんな。あず、わかりそう」

    「うん」

    「どうしおも困ったら入口たで戻っおきお。ヒント出すから」

    綟人は解答甚玙を持った小孊生に笑いかけるず、重ねた机で䜜った壁の間をすり抜けるようにしお入口ぞ向かった。

    「受付亀代。䞀時間たったら次のや぀来るから」

    「おう、了解」

    入口に眮かれた机に座っおいた友人ず入れ替わる。

    「じゃ、噂のメむド喫茶、偵察しおくるわ」

    口元を緩たせながら、䞞文字でポップに描かれたチラシをひらひらず振る友人に、綟人は思わず笑いを噛み殺した。 

    「  行っおらっしゃい」

    どうやら、ただ知らないらしい。
    先に芗いおきた友人から聞いた話では、メむド服を着た接客スタッフは党員、男子柔道郚によるコスプレらしい。

    「お前奜みのメむドの名前、ちゃんず芚えお来いよ」

    スキップでもしそうな足取りで廊䞋を歩いおいく友人に声をかける。 

    「圓然だろ。抜かりないっお」 

    力匷く芪指を立おお笑う。その顔には、い぀もは芋ないえくがたで浮かんでいた。 

    友人を芋送ったあず、綟人は案内係の仕事に戻った。
    ゲヌムの説明をしたり、謎解きに苊戊しおいる人にヒントを出したり。友人同士で盛り䞊がるグルヌプずハむタッチを亀わし、スマホを預かっおシャッタヌを抌したりもした。 
    そんなやり取りを繰り返しおいるうちに、気づけば䞀時間があっずいう間に過ぎおいた。 

    「䞀条、亀代」

    次の担圓が入口に立぀。

    「サンキュ」

    綟人は受付を離れるず、ポケットから䜓育通の催し物のタむムスケゞュヌルを取り出した。
    もうすぐ、和倪錓郚のステヌゞが始たる。

    各教宀から聞こえる笑い声を暪目に、綟人は迷わず䜓育通ぞ足を向けた。
    照明が萜ずされおいお薄暗い䌚堎の䞭を背をかがめお進み、埌方の空いおいるパむプ怅子に腰を䞋ろした。
    和倪錓郚の前のプログラムは、被服郚によるファッションショヌだった。
    ステヌゞから䌞びるように蚭眮されたランりェむの䞊を、独創的な衣装に身を包んだ郚員たちが歩く。
    匟むような音楜に合わせお芖線やポヌズを決め、客垭からは時折歓声が䞊がっおいた。けれど綟人の意識はランりェむではなく、ステヌゞ䞊に䞋りた幕の向こうぞ向いおいた。

    ――“届け”。

    河川敷の倏祭りで芋た、菜々矎のぶれない芖線を思い出す。
    そのずき、倧きな拍手が湧き起こった。がんやりず幕の向こうぞ向いおいた意識が、ふず珟実ぞ戻っおくる。
    芋ればファッションショヌは終わり、二人組の攟送郚員がマむクを持っお立っおいた。
    数分のMCのあず和倪錓郚の玹介が入り、二人は舞台袖ぞずはけおいった。 
    暗がりの䞭、客垭が静たり返る。

    やがお、軜く高い音が䞀぀、䜓育通に響いた。
    それに重なるように、二぀、䞉぀。埐々に倪錓の音が重なり合い、幟重もの響きが客垭ぞ抌し寄せる。
    その響きに抌し出されるように、ステヌゞの幕がゆっくりず䞊がった。 揃いの矜織ず鉢巻き、手甲ず癜足袋を身に着けた十人ほどの郚員たちが数皮類の倪錓を打ち鳎らす。
    綟人の芖線は、スポットラむトに照らされた舞台の䞊をゆっくりず蟿り、最前列で止たった。 
    締倪錓に向かい、胡坐あぐらで座る菜々矎の姿に。 
    䌞びた背筋から振り䞊げられる撥ばちは、空ぞ䌞びおいく䞀本の光のよう。
    迷いなく打ち蟌たれる䞀打䞀打は、胞の奥に沈んでいた柱みを打ち砕いおいくみたいだった。 

    『生きお』

    『䞀緒に生きよう』

    菜々矎の響かせる音ずリズムが、そう蚀っおいるように聞こえた。
    力匷く、矎しいステヌゞだった。無意識に、芖界が滲みそうになるほどに。

    挔奏が終わり、ステヌゞの幕が䞋りた。
    倧きな拍手が䜓育通いっぱいに響く。叞䌚の二人がでおきお客垭にざわめきが戻る䞭、綟人は䜓育通の倖ぞ出た。
    䞭庭に蚭眮された自販機でスポヌツドリンクを䞀本買う。 ず、ポケットのスマホが震えた。

    『今どこいる』

    『屋台行かね』

    先ほど廊䞋で別れた友人の背䞭を思い出し、思わず口元が緩む。

    『先行っおお。あずで行く』

    短い返事を送信しおから、スマホをしたった。

    䜓育通の裏手ぞ芖線を向けるず、黒いTシャツ姿の郚員たちが寄りかたたっおいた。その䞭に菜々矎の姿を探す。
    特別な理由なんおなかった。ただ䞀蚀、声をかけたくお。 
    やがお郚員たちの茪がほどけた。菜々矎の姿を芋぀け、綟人は迷うこずなく歩み寄った。

    「折原」

    菜々矎が振り返る。䞀瞬だけ目を瞬かせお、ふっず笑った。

    「䞀条くん」

    「お疲れ。よかったら、これ」

    差し出されたスポヌツドリンクに、菜々矎は䞀瞬きょずんずした顔をしおから、「ありがずう」ず蚀っお受け取った。

    「やっぱすごいな、和倪錓。ちょっずハマりそう 」

    「あはは。入郚はい぀でも倧歓迎だよ。  っお、来幎受隓か」

    「だな」

    二人は顔を芋合わせお笑った。
    そのずき、

    「菜々矎ヌ」

    少し離れたずころから早玀の声が飛んできた。

    「私、クラスの出し物に呌ばれおるから行くね。たたあずで連絡する」

    二人を芋お䜕か蚀いたげに口元を緩めた埌、早玀は菜々矎の返事を埅たずに校舎ぞず歩いおいった。

    「え、ちょっず、早玀」

    「あ、ごめん。俺タむミング悪かった」

    「ううん  倧䞈倫」

    早玀の姿が芋えなくなり、しん、ず䞀瞬の沈黙が萜ちた。
    綟人は少し居心地悪そうに襟足ぞ手をやり、思い出したように口を開く。

    「俺のクラス、謎解きやっおるんだ」

    「ぞぇ」

    「簡単すぎお、あんた手応えないんだけどさ」

    菜々矎が笑う。

    「もし暇があったら芗きに来およ、午埌にでも」

    「ごめん、午埌もステヌゞあるんだ」

    菜々矎は少し申し蚳なさそうに蚀った。

    「それが終わっお、間に合ったら行くね。謎解き、楜しそう」

    綟人は笑っお頷く。再び短い沈黙が萜ちた。
    菜々矎が、照れたようにふず芖線を暪ぞ流す。

    「私が『付き合っお』っお蚀ったのにね」

    ドクン、ず綟人の胞が錓動を打った。

    「私のほうが、自分のこずでいっぱいだったのかも 」

    そう蚀っお笑った菜々矎の衚情は、どこか晎れやかで。
    その笑顔を芋お、胞の奥がちくりず痛んだ。
    それが埌悔なのか、寂しさなのか――わからなかった。 
    菜々矎は手にしたペットボトルを小さく掲げる。

    「ありがずう」

    「ああ、いや党然。じゃあ、たた」

    「うん。たたね」

    菜々矎は埮笑んで背を向けた。
    綟人は少しの間、その堎に立ったたた菜々矎の背䞭を眺めおいた。


    →『第十䞉話〈最終話〉 青に、名前を぀けるたで』ぞ぀づく


    ここたでお読みいただき、ありがずうございたした。
    次回、いよいよ最終話ずなりたす✚
    綟人の歩みを、最埌たで芋守っおいただけるず嬉しいです。

    ▶これたでのお話は䞋のマガゞンにたずめおいたす。よろしければ、ぜひ🌿


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    小説を曞いおいたす。䞻に長線、ずきどき短線や掌線も。ふずした瞬間の心の動きや、蚀葉にならない感情をそのたたの色で描きたい  ず蚀い぀぀、近頃は、お茶ずよりみちばかりですが ^^ ゆるりずお付き合いいただけるずうれしいです。 どうぞよろしくお願いいたしたす。

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