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ミルクティートレンドを考える|「茶葉ドリブン」の波は日本に来るか

    この記事には音声解説もあります


    中国には「新茶飲」と呼ばれる巨大なティードリンク市場がある。

    GAFUCAFEの大半の記事に出てくるこの言葉は、茶葉から淹れた茶を土台に、ミルク、果物、花、ヨーグルト、穀物、食感のあるトッピングなどを組み合わせ、店頭で一杯ずつ作る業態である。
    ミルクティーから発展したが、現在はフルーツティーやレモンティーなども含む広いカテゴリーになった。

    紅餐産業研究院によると、2025年の中国茶飲市場は1,870億元(約4.4兆円)、店舗数は44.9万店に達した。
    立秋には「秋天的第一杯奶茶」という秋の最初の一杯のミルクティーを贈ったり飲んだりする習慣がある。
    バレンタインデーのような毎年の販促日として定着しており、2025年には100を超えるブランド、少なくとも25万店が参加した。

    今回注目したいのは新茶飲の中で、茶葉が商品を選ぶ中心になっている動きである。
    この茶葉の種類や香りを商品開発とメニュー選択の中心に置くトレンドを本記事では「茶葉ドリブン」と呼ぶことにする。

    「茶葉ドリブン」の代表的なブランドとしては、CHAGEE、HEYTEA、Molly Teaといったブランドがそれに属する。

    日本から見ると新茶飲のミルクティーは、もしかしたら「ミルクティー」という言葉から「タピオカミルクティーの中国版」をイメージするかもしれない。
    しかし中国の「茶葉ドリブン」隆盛な新茶飲市場で、タピオカはすでにカテゴリーを定義する存在ではなくなっている。

    中国でタピオカは主役を降りた

    「茶葉ドリブン」な新茶飲のミルクティーと旧世代のタピオカミルクティーの違いは茶の扱いにある。

    タピオカミルクティーの主役はタピオカだった。
    飲む理由はもちもちした食感と見た目と甘さにあり茶は背景にあった。

    「茶葉ドリブン」の新茶飲はここを反転させた。
    例えばCHAGEEの商品カテゴリー名は「原叶鲜奶茶」、つまり茶葉から淹れた茶と牛乳を合わせるフレッシュミルクティーである。
    「原叶(茶葉そのもの)」と茶葉を商品名で強調している。

    同社の売上の約9割はこのカテゴリーが占め、客はジャスミン緑茶か大紅袍か龍井かという茶葉の違いで商品を選ぶ。
    2025年には、中国国内で生まれた取扱高の89%を主力のフレッシュミルクティーが占めた。

    メニューにはジャスミン緑茶、大紅袍、桂花烏龍、プーアル茶などが並び、どの茶を使うかが商品の違いとして前面に出ている。
    CHAGEEの主力商品にタピオカは存在しない。

    ちなみに日本でミルクティーといえばたいてい紅茶を想起するが、「茶葉ドリブン」な新茶飲では中国茶が主だ。

    紅餐産業研究院が130の茶飲・コーヒーブランドによる計1,992品の新商品を調べた報告書は、現在の商品開発をこう表現している。

    茶香奠基、花香提亮、果香賦能

    日本語にすれば「茶の香りが土台をつくり、花の香りが輪郭を明るくし、果実の香りが商品の魅力を広げる」という意味になる。

    2025年1月から7月に発売された新茶飲の新商品では、果物を使った商品が77.1%、花を使った商品が43.2%を占めた。
    茶葉を土台に、花や果物、乳製品をどう重ねるかを競う市場である。

    タピオカが中国から消えたわけではないが、数ある食感トッピングの一つとして残り、主役の座は茶葉に明け渡した。

    日本にはまだ波は来ていない

    日本ではどうか。
    ミルクティーと聞いてタピオカを思い浮かべる人はまだ多いのではないか。
    同時に「タピオカブームは終わった」という認識も共有されている。
    行列も専門店の乱立も去った。
    しかしその後、ミルクティーの次の主役はまだ決まっていない。

    中国の新茶飲チェーンで上陸したものはあるが、日本に根を張ったと言えるブランドはまだない。
    「茶葉ドリブン」の波は来ていないと言えるだろう。

    店を作る側には兆しがある

    ただし兆しがないわけではなく、今年に入ってから茶葉を主役に据えた店が相次いで生まれている。

    2026年4月4日、大阪・中崎町に「CHARMING」が開いた。
    紅茶、ジャスミン、烏龍、プーアル、金木犀烏龍、抹茶、ほうじ茶まで36種類以上の茶葉を揃え、客はその中から茶を選び、ミルクティーにするか、フォームを載せるかを組み立てる。
    CHAGEEの商品開発記事で「客はどの茶を飲むかで選ぶ」と書いたが、CHARMINGのメニュー構造はそれと同じである。

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    受付レジはなく注文はQRコードからモバイルオーダー
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    同じ4月には、横浜駅前に「CHAZHONG-茶种-」が開業した。
    店主が中国を巡って選んだ茶葉と茶器を使い、専用の茶器からドライアイスの蒸気が立ち昇る演出をする。
    メニューはジャスミン、烏龍、紅茶、緑茶の4種のミルクティーで、こちらも選ばせる軸は茶葉そのものだ。

    2026年8月に大阪でチュロス店からリニューアルしたばかりの「CHUMI」のメニュー構成も中国茶中心で、ストレートティーのベースにミルクやフルーツを掛け合わせるタイプだ。
    商業施設側も「厳選した茶葉を使用し、一杯ずつ丁寧に仕上げるティーブランド」と紹介している。

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    3店の規模も出自も異なる。
    それでも共通しているのは「茶葉ドリブン」である点だ。

    まだ数店舗の話なのでこれを市場の波とは呼べない。
    ただ店を作る側が同じ方向を向き始めた兆しではある。

    CHAGEEという固有名詞が検索され始めた

    店を作る側だけでなく、日本での認知にも変化が見える。

    2026年1月、韓国のアイドルグループIVEのウォニョンが中国でライブ配信中にCHAGEEを飲み、そのおいしさに驚く様子が日本でもSNSでバズった。
    CHAGEEは同年4月30日に韓国へ進出し、ソウルの江南、龍山、新村に3店舗を同時開業し、その状況は日本のニュースやSNSでもとりあげられた。
    韓国では出店前から「ウォニョンが飲んだミルクティー」として認知が広がっていた。

    以下のグラフは日本における「CHAGEE」と「タピオカミルクティー」のGoogle Trendsである。
    対象期間の最高値を100とした相対的な検索関心を示している。

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    このレイヤーの違う二つの言葉で比較する意味はあまりないかもしれないが、ほとんど検索されていなかった「CHAGEE」という固有ブランドの名詞が2026年に急上昇し、「タピオカミルクティー」というカテゴリ名を上回り出しているのは何かの象徴性を感じさせて面白い。

    ウォニョンの動画のタイミングで急拡大し、韓国出店のタイミングでさらに山ができている。

    日本に店がないブランドでも、韓国や中国を経由して先に名前が知られる。
    上陸前に商品への期待が作られる環境は整い始めている。

    ゴンチャが「茶」をさらに前へ出した

    日本市場で最も示唆が大きいのはすでに大きな顧客基盤を持つゴンチャの変化かもしれない。

    ゴンチャは2026年3月25日、「TEACRAFT」という新シリーズを立ち上げた。
    コンセプトは「こころ、ときめく、香りのお茶。」。
    第1弾の「ストロベリー&ローズ ダージリン」はダージリンとセイロンを合わせた紅茶にイチゴとローズの香りを重ねている。
    年5回、季節ごとに新しいブレンドを出す計画だ。

    茶に花と果実の香りを重ねる。
    紅餐産業研究院が中国の新商品1,992品から抽出した「茶香奠基、花香提亮、果香賦能」という設計と同じ構造である。

    推奨された飲み方も象徴的だった。
    発表会でイチオシとして振る舞われたのは、ミルクフォームを載せた一杯だった。
    タピオカも選べるが前面には出されていない。

    ゴンチャは以前から茶葉を店舗で抽出し、ストレートティーも販売してきた。
    今回の変化はもともと持っていた茶の価値を、商品名、香り、飲み方の中心へさらに押し出した動きである。

    この転換を促したのが顧客データだ。
    ゴンチャの会員制度は購入金額に応じてたまる「リーフ」の累計でランクが上がる。
    そのランク別にストレートティーの注文率を見ると次のようになる。

    会員ランク ストレートティー注文率
    初心者「ラバー」 4%
    中級者「マスター」 5%
    上級者「アンバサダー」 8%
    最上位「レジェンド」 12%

    https://toyokeizai.net/articles/-/940840

    最上位会員の注文率は初心者の3倍である。
    スタッフにも似た変化が起きるという。
    働き始めた頃はトッピングを多く載せるが、何度も飲むうちにストレートティーを選ぶようになる。

    この数字は7月にGAFUCAFEで紹介した甜啦啦の分析とも重なる。
    同社の商品開発責任者は、数千万人のデータを分析した結果として「定着率が高くリピート頻度の高いコアユーザーほど、最終的には茶本来の風味を主体とした商品を好む」と語っていた。

    日本と中国の異なるブランドから、継続客ほど茶本来の風味へ寄るという同方向の示唆が出ている。

    ゴンチャは2028年に400店舗、年間来店客数6,000万人を掲げている。
    日本最大級のティーチェーンがタピオカの外側へ商品の軸を広げている意味は大きい。

    中国ブランドの姿で来るとは限らない

    現在確認できる兆しは異なる場所から出ている。

    CHARMING・CHAZHONG・CHUMIという新しい店、CHAGEEへの検索関心、ゴンチャの継続客がストレートティーへ寄るデータ、そして大手カフェチェーンによるティー業態への投資である。

    スターバックスのティー特化業態「スターバックス ティー&カフェ」は、2026年4月末時点で全国30店舗まで広がった。
    タリーズも「&TEA」を展開し、2025年にはサンマルクカフェが「&茶」へ参入している。

    他にも、抹茶やほうじ茶、和紅茶など日本茶をベースとした「茶葉ドリブン」なミルクティー店は増えてきている。

    日本に「茶葉ドリブン」の波が来るとしても、中国ブランドの看板を付けて来るとは限らない。

    日本で親しまれてきた茶を選び、ミルクフォーム、果物、花の香りを組み合わせる。
    中国で磨かれたような商品の構造が、さまざまなルートから掛け合わされて「日本型の新茶飲」として立ち上がる可能性がある。

    CHARMING・CHAZHONG・CHUMIで見え始めているのは、その初期形態なのかもしれない。

    兆しを確信に変えるために動く

    現時点で日本に「茶葉ドリブン」なミルクティーの波が来るかは分からない。
    別々の場所から、同じ方向を向いた兆しが少しずつ出てきているというのが現段階で言えることだ。

    複数の都市で同じタイプの店が成立し、一度試した客が繰り返し購入し、大手チェーンでも茶葉別の選択が標準になった時、初めて日本にも波が来たと言える。

    もしかしたら最後まで波は来ないかもしれないが、私自身、ティードリンクブランドを立ち上げることを構想している立場として、この兆しに賭けたいと思っている。
    波が来てから動くのでは店をつくる時間が足りない。

    タピオカの次に何が主役になるのか。
    その答えを待つのではなくこちらから用意しに行きたい。

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    主な参考資料


    次に読む一本

    中国の新茶飲ブランドについてもっと詳しく知りたいならこの記事。
    C・D・E章が中国を代表する新茶飲ブランドの解説になっています。

    新茶飲のメニュー構造を詳しく知りたいならこちら。
    CHAGEEの30商品を分析し、メニュー構造を明らかにした記事です。


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    中国・アジア飲料市場リサーチャー。 事業開発/市場リサーチ歴17年。 中国・アジアのカフェ・ティードリンク市場を現地視察+事業開発視点で読み解き、店づくりや飲食ビジネスに使える示唆として届ける記事を毎週配信。 自身のティードリンクブランドの立ち上げ計画も進行中。 Xもやってます。

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