
今月のアジアカフェニュースまとめ4選 | 炒冰3時間待ちから、茉莉奶白の逆境を行列に変える手法まで(2026年7月)
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先月に引き続きXで発信した今月のニュースの中から、本質的なものや、一過性にとどまらず今度のトレンドに影響を与えるような、特に重要だと感じたものをピックアップしてまとめました。
今回は中国で、カフェやドリンク業態がドリンクの枠を超えた高単価メニューへ広がっている様子から、価格競争・出店競争を脱却して品質やブランド価値へと回帰する生存戦略、さらには炎上すらお祭りに変えるマーケティング手法や、お茶とフルーツティーの役割分担まで、中国カフェ市場の「今」を一気に概観できる内容になっています。
ぜひチェックしてみてください。
1. コーヒー・お茶の枠を超えた「客単価ハック」:ハンバーガー、ジェラート、炒冰まで
中国のカフェやティードリンクチェーンが、看板である飲料の枠を超え、高単価なフードやスイーツへ一斉に参入しています。
コーヒー戦の激化で成長が鈍化する中、人気スペシャルティコーヒーチェーンの「M Stand」は上海の人気レストランを丸ごと買収し、本格的なハンバーガーを導入しました。
これにより客単価を32元から50元へと大幅に引き上げ、夜の食事需要まで営業時間をフルカバーしようとしています。
ティードリンク界でも氷菓市場への参入が相次いでいます。
CHAGEEやHEYTEA(喜茶)は、同じフレーバーの看板ドリンクよりもあえて高い価格(18〜26元)を設定した本格ジェラートを猛プッシュし、ドリンク以上に売れる店舗も出てきています。
CHAGEEのジェラートは私も上海で食べました。


さらに今夏の最大のトレンドとなっているのが「炒冰(チャオビン=手炒りクラッシュアイス)」です。
マイナス数十度の鉄板で定番ドリンクをそのまま炒めてアイスに昇華させることで、開発リスクを抑えながら約600〜700円という高単価なスイーツ市場を開拓しています。
HEYTEAが上海に開いた「炒冰ラボ」には3時間待ちの大行列ができるほどの熱狂ぶりです。
ジェラートにしても炒冰にしても、最大のポイントは、ゼロから新しい味を作ったのではなく、長年売れ続けているブランドの定番ドリンクをジェラートや炒冰に昇華させている点です。
「馴染みの美味しさ」だから味の失敗(開発リスク)がない
ジェラートや炒冰という新しい食感とパフォーマンスで体験価値を加えられる
1食28〜33元(約600〜700円)という高単価なスイーツ市場をスマートに開拓
すでに愛されている自社ブランド資産のフォーマット(形)だけを変えて届けることで、低リスクで高単価・高利益を叩き出す見事な商品開発です。
コーヒー屋も茶屋も、看板商品の外側でどれだけ単価を稼げるかの流れがきています。
2. 激安・出店競争からの脱却と「品質・体験」へのシフト
キャンペーンやクーポンが重なると「1杯約60円(2.9元)」にまで至った過酷な価格破壊や出店競争の泥仕合から、大手が静かに降りようとしています。
「低価格」を最大の武器に1万店舗を突破した蜜雪冰城(MIXUE)系のコーヒーチェーン「幸运咖(ラッキーコーヒー)」は、新規出店ペースを意図的に絞り込み、質を最優先する戦略へ大きく舵を切りました。
北京や上海などの主要店に対し、総額約70億円(約3億元)を投じてプロ仕様の高性能コーヒーマシンを無償配布し、さらには有名スターを起用したり、ブランド周りを刷新した旗艦店をオープンするなど、ブランドイメージの向上に努めています。
一方で、高級路線の代表格だった喜茶(HEYTEA)も大きな決断を下しました。
かつて1店舗に15人のスタッフを配し、店頭でフルーツの手剥きを見せる過剰な演出や、デフレに呑まれた無理な値下げ・FC加盟展開によって、一時はブランド価値の崩壊を経験した彼ら。
2025年に加盟展開を停止し、不毛な値下げ競争からきっぱりと離脱して「引き算の美学」へと舵を切りました。
ド派手な安売り広告や過剰な演出を捨て、無駄な宣伝文句を排した白背景のミニマリズム(余白)で高所得層のラグジュアリー認知をハック。
一方で、ケールなどを使った大ヒット健康ボトルを連発するなど、圧倒的な製品開発力だけで「この価格に見合う」と消費者に納得させる「Apple化」を推進しています。
安さと出店だけで勝てるフェーズは終わり、これからは「品質と体験」の戦いへ自らルールを書き換えようとしています。
3. ピンチやトラブルすら機会に変えるドリンクブランドの巧みなマーケティング
システムエラーや法的トラブルといった危機すら、強烈な話題性とリピーター獲得の装置に変えてしまう中国チェーンの圧倒的なタフさを見せる事例が相次ぎました。
私も企業でマーケティング施策をいくつも企画実施してきましたが、その観点で見てもかなり学びになるマーケティングの事例です。
CHAGEE(霸王茶姬)はミニアプリの設定ミスで、本来9.9元のドリンクを「0元」で放出してしまい、深夜に数万人の注文が殺到する大パニックを起こしました。
しかし翌朝、彼らは真摯な謝罪とともに、対象者全員へ「0.01元(約0.2円)でドリンクと引換できる券を3枚」一律で配布する補填を発表しました。
・素早い謝罪と全員へ実質無料券を配り騒動を鎮静化し好感度もアップ
・「注文」というコミット行動をした熱量の高い客を引換券で逃さない
・3枚配ることで何度もお店に足を運ぶ習慣を作らせリピーター化
・完全無料ではなく「0.01元」の極小決済を挟み購買データを取得
最悪のシステム障害すら、好感度アップと優良リピーター獲得のプロモーションに一瞬で昇華させてしまうという、見事すぎるクライシスマネジメントです。
また、ティードリンクの「茉莉奶白(Molly Tea)」も、マーケティングの嗅覚とスピード感で2つの大きな話題を作りました。
1つは、新店舗の出店タイミングをわざと揃えて「100店舗同時オープン」という巨大なSNSイベントに仕立て上げ、3日間で50万杯以上を売り上げました。
インフルエンサーやコスメブランドとも連携し、単に「新しい店ができた」ではなく「お祭りが始まった」と思わせる施策が秀逸。
さらに同社は、四弁花ロゴを巡りルイ・ヴィトン(LV)から訴訟を起こされ、一審で約2.4億円(1030万元)の賠償を命じられるというピンチに見舞われました。
しかし、SNSでナショナリズムを巻き込んだ世論の同情が集まるやいなや、彼らはその日のうちにミニアプリのロゴを白黒からカラフルな花柄へ即座に変更。
「ロゴを変えろと言われたから変えただけ(でもさらに目立つようにした)」という確信犯的なアプローチでネット議論をさらに煽り、結果として各店舗に100人を超える大行列を作るお祭り状態へと変えてしまったのです。
CHAGEEにしろ茉莉奶白にしろ、単なるアクシデントや逆境を瞬時に(数時間も経たずに)イベントに変換してしまう、大企業とは思えない彼らのスピード感と企画力は見事です。
4. データが明かす「フルーツティー」と「お茶」の役割分担
絶え間ない新商品ループや集客不安のサイクルから抜け出すためのヒントとなる、非常に示唆に富む分析記事がありました。
甜啦啦(Tianlala/Sweet Lala)の商品開発責任者沈一鳴氏への取材記事。
2025年の中国ティードリンク市場の商品の7割はフルーツドリンクだが、同社が保有する数千万人のユーザーデータ分析によると、定着率が高くリピート購入頻度の高いコアユーザーほど、最終的には「お茶本来の風味」を主体とした製品を好むことが分かっています。
フルーツで美味しい組み合わせを作ることは「創造性」の戦いであり、短期的なバズを生み出しやすい一方で、他社に容易に模倣されるリスクを抱える。
対してお茶本来の良さを引き出す商品作りは、茶園の調達先の選定から抽出プロセスに至るまで、すべてのステップに大きなハードルが存在する「R&Dとサプライチェーン」の戦いで、求められる能力は別物になる。
フルーツは「新規顧客の獲得」、お茶は「既存顧客の維持」という明確な役割分担が存在し、お茶という参入障壁を基盤に持たないブランドは、人気を維持するために絶えず新製品を出し続けなければならず、永遠に「集客不安のループ」から抜け出せない、という分析は商品開発をしていくうえでの商品特性の本質を鋭く突いています。
以上、商品の多角化への挑戦、そして熾烈な競争下でブランドの本質を問い直す動きが感じられる1ヶ月のニュースでした。
海外のカフェニュースのまとめは毎月月末に公開予定です。
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