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「毒親育ち」は職場のモンスターに強かった。戦わずして勝利した「最強の武器」

    本日も読んでくださり、ありがとうございます。毒親育ちという過去は、ただの傷跡ではありませんでした。なんと、職場に現れたモンスターに強かった。戦わずして生き抜く『最強の武器』に変わったのです。今回は、そんな私の戦記です。

    「毒親の呪い」はかなり強力であり、しつこい。解毒にいそしみ、呪いを解いたと思いきや。ある日、「他人なのに、こんなに似てる人いる?」という、毒母そっくりさんが私の日常に出現した。

    当時、私は業務委託である会社で働いていた。社員と同じように席をもらっていたこともあり、社員に交じって仕事をして、和気あいあいとオヤツ交換をしたりしていた。

    そこに現れたのが、中途採用の毒美(仮名)だった。毒美は入社数日で、いきなり毒を噴射するモンスターだった。毒美もまた、被害者意識が強く「自分が正しい、悪いのはあなた」というロジックを繰り出しながら、他人を攻撃するタイプだった。

    私にとっては、お馴染みの攻撃手法である。動きは読めたが、毒母と職場というフィールドで対峙したことはなかったので、毒美の行動が読めなかった。とはいえ、毒美は「なぜ、今、そこでそうなる⁉」というトラブルを、日常的にふりまきはじめた。

    毒美が繰り出した「私は悪くない、悪いのはあなた」ロジック

    入社早々、毒美は自信満々だった。経験者枠とはいえ、入ったばかりでどうしたらあんなに自信満々にふるまえるのだろう? と不思議に思うと同時に、私は既視感を覚えた。これ、なんか見覚えがあるぞ。

    1週間後には、その既視感の正体に気付いた。そう、毒母に似ているのだ。謎に自信満々で「私にできないことが、あるはずがないじゃない」といった風情。実は間違っていることも、しばしばなのだけど。毒美もそういう態度で日々を過ごしていた。

    仕事には「その会社の独自のルールやフロー」と「ポータブルスキル」がある。前者は入社したての人は、誰もがビギナー状態。勤怠管理や情報共有ツールの使い方や、業務フローは会社によってかなり違う。そこは、すでにその会社で働いている人たちに教えてもらわなくてはならない。

    しかし、毒美はこれが理解できなかった。何故だ。さらに、ツールやフローの覚えも悪かった。にもかかわらずミスを指摘されると「私が分からないのは、分かりにくいせいだ」と早速、逆切れした。

    いやいや、関係各所と調整の上、最適化されているんですよ、という話である。そして、あなた以外は全員、理解しているのよ。

    ツールもフローもあやふやなので、毎日のように何かしらのミスを連発する。誰かに指摘されると「これは私の仕事ではないので」と、謎の理論で逆切れする。いやいや、誰の仕事というのではなく、仕事をするためのツールでありフローなんですよ、が通じない。

    毒美は早々に職場で孤立していった。そりゃそうだ。孤立した苛立ちからなのか、毒美の言動に攻撃性が増してきた。これも、私には既視感があった。

    毒母も疎外されることに、過剰に反応した。私が父と話して決めたこと(何だったか、忘れたが大したことじゃなかったと思う)に対して「聞いてないわよ。なんで、私を通さないのよ!」とキレこともあった。芸能事務所か。

    毒美もささいなことで、すぐにキレた。その様子に私以外のほぼ全員が、驚愕していた。私は「会社にこういう人がいる」ことには驚いたが、毒美のキレっぷりには、さほど驚かなかった。毒母との類似性に釘付けだった。

    赤の他人なのに、そっくりすぎる。
    いつも不機嫌そうな、口元の表情も似ている。

    毒美の「毒」に職場がどんどん汚染されていった。

    「毒」の耐性がない人が次々と中毒症状を起こす中、私はひとり強靭だった

    毒美の入社から3カ月ほどたったころ、繊細でもともと体もさほど丈夫ではない人が、毒にやられて体調を崩して休職。人員が不足したが、毒美がいる部署に異動を願うドMな人がいるはずもなく、上層部も新しい人を入れることをちゅうちょした。結局、「とりあえず、今いる人でがんばりましょう」ということになった。

    そもそも、毒美を採用したのは人手不足解消のためだった。1人入社した結果、1人休職では頭数だけでいっても意味がない。休職した人はチームワークもできたし、ツールもフローも理解していたので、実質はマイナスである。

    休職者の仕事を分担したことで、業務量が増えたこともありみんな、ダメージを食らっていった。「メンタル不調」を口にする人も出始めた。しかし、私はビクともしなかった。もちろん、ストレスには感じていたけれど。バイオハザードのアリス並みに「どういうわけか、大丈夫」だった。獲得免疫による強靭な耐性が、自分にあることを知った。

    毒美の尋常ではないキレっぷりから『彼女もまた、何かの呪いに縛られているのだろう』と思った。でも、だからといって同情したり、寄り添ったりもできなかった。強靭な耐性が私にはある。そして、それはトラウマでもある。

    私のミッションは残ったメンバーを守ることだ。誰一人、離脱させるものか。心の中でファイティングポーズを取った。私の目的は同僚のダメージを最小限にすること。チームを守ることだ。アリスを師と仰ぎ、手本にしよう。


    作戦その① 「毒美のトリセツ」を全体共有

    まず、残ったメンバーに毒母の知見をベースに考案した「毒美のトリセツ」を共有した。

    【毒美のトリセツ(抜粋)】

    • 戦うな: 話し合いで解決できると思わないこと。

    • 目的を絞る: 感情を捨て、業務遂行のみをゴールにする。

    • 密室を避けろ: 反論は必ず第三者のいる「会議」の場で行う。

    最初の項目は「戦うな」である。話し合いで解決したり、納得させたりできる相手ではない。

    毒美との対峙の目的は、業務の遂行のみとすること。キレられてキレ返すのは、火に油を注ぐようなものなので「キレ返すなら、第三者がいる場所にしろ」と伝えた。反論するときは、会議などのオフィシャルな場所に限定し、電話など密室のやりとりはするな、など。

    オフィスは作戦本部と化した。毒美のミスを指摘せざるを得ないときは、事前に「これから爆弾落とします」と個チャが飛び交うようになった。部署のチャットでバトルが起きることへの、心の準備のためだ。

    毒美の扱いには上層部も手を焼いていた。こんなモンスターをどうして入社させたのだ、ということが問題になっていたようだった。なんのための試用期間だったのかは、こちらが聞きたいぐらいだが、今はそこじゃない。この戦場を何とかしてくれ、と思ったがしょせん私は業務委託。前線を守ることに集中だ。

    ダメージを食らった同僚のケアにも注力した。何度も「毒美が変わることはない」「大事なのは業務を遂行しながら『ツラい、何とかしてくれ』を会社にいい続けること」「あなたは、悪くない」などなど。

    そんな話をしながら『こんなにも、みんな毒美にダメージをくらっているのか』と衝撃を受けた。あらためて、自分がそんな環境で生育してきたことを、突き付けられた。よく生き延びた。偉いぞ、私。


    作戦その② 反論は会議で、内容はロジカルに正論で

    チームの会議でも、毒美はしょっちゅう毒をまき散らした。毒美からの情報共有がないと作業を進められないことも多く、そのリマインドや共有内容の確認が毒の噴霧のきっかけになるのだ。

    例えば作業者のA子さんが「〇〇株式会社からの請求書は届いていますか?」と毒美に確認したとする。この確認が行われているのは、毒美が担当者として請求書を受領して、A子にパスした後に支払いの処理を取りまとめるためであり、A子に提出する期日を既に過ぎているからだ。A子の確認はもっともだ。

    しかし、毒美は「届いていたら、A子さんにお渡ししているので。お渡ししていないのは、届いていないということです」と返した。「私は悪くない構文」が上級者向けすぎて、みんな瞬時に理解できず、全員の頭上に「?」が浮かんでいた。もちろん私は一瞬で理解できた。

    やっと理解したA子が「では、いつ頃いただけそうですか?」と返した。当然の質問だ。すると毒美は「それは先方の都合なので、私に言われても」といった。うん、こういうときは「確認してご連絡しますね。ほんと、申し訳ない!」といっておけばいいものを、である。

    A子は「では、先方へのご確認が取れたら教えてください」と締めくくった。A子に心の中でサムズアップ。偉いぞ、よくこらえた。

    唐突に毒美が「フローの件なんですけど」と話し始めた。自分が分からないのはフローが悪い、ということで「変えたほうがいい」という提案である。しかも「できれば来月からやりたい」といい始めた。私の出番だ。

    「毒美さんがおっしゃるように、現在のフローが完璧だとは思っていません。しかし、社内の他部署だけでなく他社にも影響することです。ステークホルダーとの調整や手続きが必要なので、変えるには時間がかかります」

    「あんたの事情だけで、動かせないんだよ」ということを、ロジカルに正論でビジネスパーソンらしく表現。毒美が内容を理解したかは、定かではないが「攻撃された」と解釈しらしくキレられた。

    「私の提案や改善をクレアさんは、そうやっていつもすぐに反対しますよね⁉」

    せっかくの私のビジネスパーソンっぽい発言が、一気に学級会になった。部署の責任者に目配せするも、黙り込んでいる。役に立たねーな、と心の中で舌打ちをしてから私は口を開いた。

    「いえ、反対はしていません。『時間がかかる』ということを、お伝えしただけです」

    責任者が「どういう調整が必要になるのかを検討して、この件はまた」と締めくくり、会議が終わった。A子ほか参加者がゾンビを倒したアリスに、感謝の眼差しを送ってきた。


    毒美、孤立の末の出社拒否、そして退職へ。

    あっという間に社内での居場所をなくした毒美は、出社を拒否するようになった。リモートワークとのハイブリッドは許されてはいたが、フルリモートとなると話は変わってくる。上司や人事との面談を重ねたようだが、それでも毒美はフルリモートを貫いていた。

    そして、ある日。毒美が退職することを聞かされた。これにより、さらなる欠員が確定したが、全員が喜んだ。送別会もなく、最終日の挨拶もなく。毒美は入社してから2年もたたずに去っていった。

    毒美が退職した日の翌日は土曜日だった。週末はアラームをかけずに就寝するのだが、だいたいいつも6時30分ぐらいには目が覚めていた。しかし、この日は違った。なんと、起きたら昼近かったのだ。

    アリス爆睡。毒美との日々を乗り切ったが、かなりストレスをかかえていたようだ。週明けにチームのメンバーに爆睡したことを報告したら、「私は肌の調子が良い」「私はおなかの調子が良くなった」「すっきり目が覚めた」「腰痛がなくなった」など、みんなの調子がよくなっていた。恐るべし、毒美。


    毒親育ちという「武器」は、周囲を守る力にもなる

    毒美が退職した1年後ぐらいに、業務委託契約の満了により私もこの会社を去った。けれど、今も当時の仲間たちと会って、楽しい時間を過ごしている。毒美と対峙する日々はつらかったけれど、こうして縁が残っていくのだな、とシミジミしている。

    彼らは「クレアさんがいなかったら、耐えられなかった」といってくれる。それは、私が「毒親育ちであり、毒への耐性が高く、攻略法を知っていた」からだ。早々に休職してしまった人は復帰後に異動して、今は元気にやっていると風の便りに聞いた。

    毒母の分身と会社という場所で遭遇して、つくづく感じた。会社は上司がいたり、人事部があったり、ハラスメントホットラインがあったりして解決策があらかじめ用意されている。法令順守を盾に使える手段がたくさんある。そして仲間がいた。

    つまり私にとっては、毒美との対峙は「イージーモード」。まともに相手をせず、淡々と対処する戦略で「戦わずして勝利」を収めることができたのだ。

    家庭内には解決策がほぼないに等しい。期待できるのはご近所や親せきの目ぐらいだが、毒親の所業は発覚しづらくもあり、家庭内のことは介入も難しい。

    毒美との日々を、みんなが「頭がおかしくなりそうだったね」と振り返るたび、私は複雑な気持ちになった。

    毒親育ちのみなさん。みなさんは、それだけの戦闘を幼いころからしてきている。心が折れたり、生きづらさを抱えるのは無理もない。もしかしたら今、つらい思いをしているかも知れない。

    その痛みは心の傷は、誰かを傷つけないための、守ための「最強の武器」に反転できる。そして、今、職場の人間関係に悩んで、疲れているあなたへ。それはあなたのせいではなく、相手が『毒』を持っていることが原因なのかも知れない。

    ★毎週土曜日更新
    「Clear essay」Vol.1「『私がガマンすれば……』と思いがちな人に、伝えたいことがある」から読む

    ★読み切りエッセイはこちら
    →①毒親から受け取った『呪い』を解いたら、世界は驚くほど優しかった
    →②なぜ私の恋愛はいつも「突然の終了」を迎えるのか?
    →③毒親育ちのライフハック「全自動ガマン吸引モード」をやめたら、人生に「楽しい時間」が増えた
    →④「毒親育ち」は職場のモンスターに強かった。戦わずして勝利した「最強の武器」
    →⑤「いい子プレイ」はもう卒業! 毒親の呪い解除の特効薬は「断捨離」だった。


     
     

    Claire

     
     
    なんとなく「生きづらい」と感じていませんか? その正体は、育った環境で身についた『認知の歪み』かもしれません。「生きづらさの正体」を構造化して、武器に変えてきた経験から、あなたの人生が好転するヒントを言葉にして届けています。毎週土曜更新。

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