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壊れかけのエアコン物件から脱出! 「毒大家ハイツ」からの真夏の引越しラプソディ

    本日も読んでくださり、ありがとうございます。
    今回はちょっと趣向を変えて。「クレアの日常編」をお届けします。

    家賃値上げの要求を巡る、毒大家とのバトルの末に準備期間わずか3週間で引っ越したことを以前、エッセイでも書きました。

    このときの引越しで、断捨離がはかどったのですが物件探しにもドラマがありました。引越しをしたい、考えている人にもしかしたら役立つかもしれない、悲喜こもごもをつづります。

    「毒大家ハイツ」に越した日。思い返せば、その日から私はすでに後悔していた。便利な都心という立地と、その界隈としてはお手頃な家賃。築年数は古いけれど室内はリノベ済み。まあまあ、掘り出し物物件だと思ったのだが……。

    引越し当日に「大家です」とあいさつにきたオバサンは、犬を抱いていた。っていうか、ここペット不可物件では? と思ったが「かわいいですね」ととりあえず犬に「初めまして」とごあいさつ。すると「あ、ダメ! このコ噛むかもしれないから」。なぜ、噛むかも知れない犬を連れてくるのだろうか。

    その後もいろいろ「え?」という出来事があった。物件の修繕への対応が遅く、外廊下の電気が何カ月もつかないとか、室内灯がつかないといっても修理してくれなかった。そしていよいよ、エアコンが「効きが悪い」という症状を示し始めた。「壊れかけ」を許容できるのはラジオまでだ。

    季節は春。これから暑くなる時期に死活問題である。10年前の機種だったので、故障具合を見に来た業者さんも交換をおすすめしたが、「修理で」と毒大家は言い放った。業者さんと私はその日が初対面だったが『マジで?』とアイコンタクトを送り合った。

    その後、次の更新で賃料をアップしたいという通知が届いた。すかさず、私は「エアコンを交換、そしてほかの故障を直してくれない限り、応じかねる」と返答した。一般的な感覚ならば、ここから修理や交換の段取りが組まれるはず、だったが毒大家にそんな常識は通用しなかった。「ほかの部屋は新賃料で貸している」と議論は平行線だった。

    ならば、引越しするしかない。


    季節は春、不動産業界は超繁忙期だから? の嘘対応

    物件探しを始めた時期が悪かった。3月中旬、不動産業界は大忙し。電話で問い合わせると不動産会社のカマタ氏(仮名)に来店を促されたので、出向いた。「この物件がいいな、と思って」と示すと「確認します!」と威勢よく、電話をかけ始めた。

    「はい、はい。そうなんです。今日、内見できますか?」と通話するカマタ氏。しかし途中で「え? そうなんですか? いくつですか? え? 20? そうなんですか。確認して折り返します」といって電話を切った。

    『カマタ、芝居がデカいぞ』

    こちとら、毒親育ちである。エスパー並みの空気を読む力の持ち主である。そんなクサい芝居に騙されないぞ、と思いながら笑顔で「その物件、見られないんですか?」と白々しい芝居を返した。

    「いえ、内見はできるんですけど。電気の契約アンペアが20なんですよ、この物件」

    カマタ、嘘もたいがいにしろ。その物件、築10年未満だぞ。今どき20アンペアなんておかしいだろ。しかも、アンペア数は入居者が電力会社に依頼すれば変えられるだろ?

    「工事の関係で、電力会社での増設もできないらしくて」

    見え透いた嘘を! と思ったがこんな安っぽい嘘をつくカマタに頼みたくない。

    「そうなんですね。わかりました」

    と不動産会社を後にした。私が内見したいといった物件は、おとり物件だったのだろう。あのデカい小芝居は、先方と打ち合わせ済みのシナリオだったに違いない。


    超繁忙期の春だから? ミステリアスな霊感対応

    日を改めて2件目の不動産屋に電話。またしても来店を促されたが「別の不動産屋に行ったけれど、内見もさせてもらえなかった」としぶってみた。「ご案内できます!」というので「それなら」と足を運んだ。

    「私が担当させていただきます」と現れたコヤマ氏(仮名)は、デカい芝居で嘘対応したカマタと異なり、名刺をくれ宅建主任者の身分証も見せてくれた。内見のアポもさわやかにとっていた。「新人も同行させていただきます」とフレッシュな女子を連れてきて、コヤマ氏がハンドルを握り、内見ドライブに出かけた。

    築年数は古いが駅徒歩1分という好立地。毒大家とのバトルに疲れ果てていた私は『もう、ここでいいんじゃないか』と思った。駅に近いということは、電車の音がそれなりにする、ということで電車が通過する音もしっかり確認。

    「今すぐに決めなくても大丈夫ですので」

    コヤマ氏はそういい、早々に切り上げにかかった。立ち会ってくれた大家さんと思しき人にも「ほかも見て、ご連絡しますね」といった。え? この後、別の物件にはいかない予定では? と思ったが黙っていた。

    確かに私も設備の古さや、小学校の真裏という点が気になってはいた。小学校が春休みだったので、どのぐらい音が聞こえるか判断できなかったのだ。

    車に戻るや否や「ちょっと、この物件はピンときませんね」とコヤマ氏。え? 住むのは私だよ? ピンとこないってどういうこと? と思ったが「そうですね」と流した。行きは饒舌だったコヤマ氏が、黙りこくっている。駐車場が満車だったため、路駐対策に車内で待機していた新人の女子が「どういう物件だったんですか?」と先輩コヤマ氏に質問した。

    「うーん、あそこはやめたほうがいい」と意味深なコヤマ氏。

    後部座席でそのやりとりを聞いていた私は「!」となった。

    コヤマ氏。もしかして霊感が? あそこ、いたんですか? 空気を読む力を持っていても、霊感はなかった。残念。ただ、コヤマ氏が無口になったことは、しっかり感じていた。

    「また探してご連絡しますね」

    コヤマ氏とはその後、何回かやりとりをしたものの「ピンとくる物件」がなかったのか、具体的な案内はなかった。


    季節は夏に、暑さでもうろうとしながらネットで申し込むとモテ期到来!

    初夏を迎え大家との交渉は決裂し、法定更新となった。つまり、私は一生住み続けることができる権利を得たわけだ。しかし、エアコンの寿命がつきかけていた。そして、その年は梅雨からすでに暑く、7月を迎えてしまった。生きるか死ぬかの瀬戸際である。

    ネットで物件を検索し、よさそうなものを発見したので申し込みボタンをタップ。すると、その直後からじゃんじゃん電話がかかってきた。

    春の物件探しとは大違いである。

    とりあえず、電話に出てみると「ご連絡いただいた物件、本日、内見可能ですがいかがでしょうか?」といきなり、いわれた。電話をかけてきた不動産会社のオオツカ氏(仮名)は「現地集合でお願いします」と来店も求めてこなかった。

    2時間後に内見することになり、急いで支度。お気持ち程度しかエアコンが効いていないので、メイクをしているそばから発汗。こんな家、一刻も早く、おさらばである。

    汗だくで到着した私だったが、建物の前で待っていてくれたオオツカ氏も、汗だくである。「とりあえず、部屋に入りましょう」とオオツカ氏にいざなわれ、内見。新築ではないが、設備が充実していた。エアコンをフル稼働させるオオツカ氏。いっきに天国になった。

    久しぶりの「よく効くエアコン」である。本来、こんなに涼しくなるものなのだ、と感激。

    窓から空が見える。解放感も抜群。「空がいっぱい見えますね」「収納もこんなにしっかりある!」「わあ、浴室乾燥!」「火災報知器、5個もついてますよ?」と大はしゃぎしてしまった。そんな私を不思議そうに見るオオツカ氏。

    「今、竪穴式住居みたいな物件に住んでいるんで」

    思わず吹き出すオオツカ氏。そこで、私は毒大家の顛末をダイジェストで説明した。大塚氏は宅建保持者として「早く引越ししたほうがいいです」といってくれた。

    「ここに住みたいです!」

    オオツカ氏に宣言すると「では、お申し込みを」とスマホでの申し込みを案内された。なんとハイテクな。室内でポチポチと申し込みを済ませ、審査を待つことになった。


    審査通過後、3週間弱で引越しの準備

    私の事情にオオツカ氏が配慮してくれたのだろう。早々に審査通過の連絡がきた。

    「精神的天涯孤独」の私がどうやって賃貸物件を借りたのか、気になっている人も多いと思う。


    昨今、「保証人不要」の物件が増えているのである。保証会社にお金を払う必要はあるが、支払い能力のない高齢の親が保証人になるよりも、保証会社が選ばれる時代になっているのだ。ナイス、高齢化社会。

    そこからが、大変だった。引越しまで3週間弱しかなかったからだ。

    大急ぎで引越し業者に見積もり依頼と共に、不動産会社に退去の連絡。「エアコンが壊れたまま夏を迎えるのは、命にかかわる。退去通告は1ヵ月前ということは知っているが、見逃せ」という趣旨のメールを送った。

    引越し業者もなんとかみつかり、断捨離と荷造りに明け暮れる毎日。ちょうど新しい業務委託先の仕事がスタートしたばかりで、出社することも多かったので帰宅後の夜なべである。

    お気持ち程度しか効かないエアコンによる暑さに断捨離ハイが加わり、目に入るものがすべてゴミに見えるようになっていた。住民票の異動や郵便物の転送手続き。電気ガス水道の手続き。毎日、Wi-Fiだのなんだかんだと電話がかかってきて、もう誰と何の話をしているのか分からなくなっていた。

    引越し当日。お気持ち程度しか効かないエアコンのため、業者も私も汗だくだった。一丸となって「一刻も早く、終わらせよう」と謎のチームワークが芽生えた。「あと少しです!」「水分、とってくださいね!」と声かけも始まり、真夏の部活動のようだった。

    こうして、私は無事に窓を開ければ、空が広がる。そしてエアコンもしっかり効くし、壊れた設備がひとつもない部屋に引っ越すことができたのだった。

    引っ越した日の夜。空を眺めようと窓を開けたら、月がみえた。竪穴式住居時代には、あり得ななった眺望に、感動した。

    ★毎週土曜日更新

    ★読み切りエッセイ


     
     

    Claire

     
     
    なんとなく「生きづらい」と感じていませんか? その正体は、育った環境で身についた『認知の歪み』かもしれません。「生きづらさの正体」を構造化して、武器に変えてきた経験から、あなたの人生が好転するヒントを言葉にして届けています。毎週土曜更新。

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