
絵本小説④『そして空き家になった・・・実家で家族が食卓を囲むまで〜50代の娘の記録〜』父母の帰省と家族の食卓
【第4章:父母の帰省と家族の食卓】

引っ越しを決めて本格的に片付けをしていたとき、ふと、父母がこのマンションに引っ越してきてからの長い間、一度も家族全員で食卓を囲んでいないことに気づきました。
「モノも家具も多すぎて、家族が集まれる場所なんてない」
集まるなら外食しかないと、両親も私たちも思い込んでいたのです。
小さい頃は、祖父母の家や自宅に親戚がたくさん集まって楽しかったのに……。
「よし、ここで父母と娘夫婦と孫たち、家族みんなで食事をしよう!」
私はその願いを、この片付けの「夢(ゴール)」にしようと思い立ちました。

「家族で時間を気にせずいられるリビングを作りたい!」
その目的ができた途端、あれほど重かった片付けが、魔法のようにみるみる加速していきました。
「大丈夫、やってみなよ。できるよ!」
部屋の四隅からそんな声が聞こえてくるようでした。
「父母の家具を全部捨てる必要なんてない。みんなが座るために、この家具は残しておこう。」
残すもの、処分するもの、母の部屋に集めるもの……サクサクと一人でも、片付けと掃除が進んでいきました。

父の難病が判明してから5年。離れて暮らしはじめて3年経っていた父と母が、かつての我が家で再会しました。二人とも一人では歩けず、車椅子での帰省です。
そして、父母がこのマンションに住み始めて、一度も全員で集まることができなかったその場所に、父母、姉妹夫婦、孫たちの総勢11人が集まりました。

大勢が食卓を囲み、笑い声が響き渡りました。
姉の夫が
「こんなに人数が入るんだね。みんなで座れるし、時間を気にしなくていいのが本当にいいね」と感心しています。
離れて暮らしている父も母も、ほっとした様子です。
「私たちの家具、使ってくれているじゃない。捨てていないのね、うれしいわ。でも、前の家とは違うみたいに、ものすごく明るいね。」
施設でいつもイライラしていた母が、心の底から嬉しそうに
「住んでくれてありがとうね」
と言ってくれました。リビングが、家族の絆を結び直す再生の場に生まれ変わった瞬間でした。
〜おわりに〜
売ってしまっても、貸してしまっても、決して手に入らなかったはずの愛おしい時間。
大がかりなリフォームをしなくても、新しい家具を揃えなくても、心ひとつで暮らしは鮮やかに変えられる。家は、人生の幕を下ろす場所ではありません。そこにある思い出を重ねながら、家族が何度でも『今日』を再出発できる、心地よい風が吹き抜ける場所でした。
(終わり ①〜④完結)
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