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規格値と管理値の違い——社内基準はなぜ図面より厳しいのか

    「図面は±0.03なのに、うちの管理値は±0.024になってる。厳しすぎない?」

    現場でよく出る疑問です。図面より厳しい基準を社内で持つのは、一見ムダに見えます。

    でも、この内側の線がないと、不良は「出てから」しか気づけません。

    この記事では、規格値と管理値の違いと、管理値をどこに置けばいいかを、板厚2.50±0.03の工程で数字にして示します。

    規格値と管理値は、決めている人が違う

    まず、この2つはそもそも出どころが違います。

    • 規格値:お客さま・設計が決める。外れたら不良。図面に書いてある

    • 管理値:自分たちで決める。外れても不良ではない。外れたら手を打つ合図

    規格値は「合否の線」、管理値は「行動の線」です。

    管理値を外れた品物は、出荷しても問題ありません。 規格の中に入っているからです。ではなぜ線を引くのか——ここからが本題です。

    規格外は「めったに出ない」から気づけない

    記事210で調べた工程を使います。

    • 規格 2.50±0.03(2.47〜2.53)

    • 平均 2.5038、標準偏差 0.0084

    この工程で規格外が出る確率を計算すると、0.094%。

    1,069個に1個です。

    一見「優秀じゃないか」と思えます。でも裏を返すと、1,000個作らないと1個も出ない。 工程がじわじわ悪化していても、規格外が出るまで気づけません。

    そして規格外が1個出たときには、すでに手遅れです。その前の何百個かは、規格ギリギリで通っていた可能性が高い。

    管理値を置くと、何倍の頻度で気づけるか

    そこで、規格の内側に線を引きます。規格幅の**80%**の位置に置いてみます。

    • 管理値 ±0.024(2.476〜2.524)

    この線を外れる確率は 0.86%。117個に1個です。

                  外れる確率    頻度
    規格(±0.03)     0.094%    1,069個に1個
    管理値(±0.024)   0.86%      117個に1個

    気づける頻度が9倍になりました。

    不良が出る前に、9倍の頻度で「そろそろ危ない」と分かる。 これが管理値を置く理由です。

    管理値をどこに置くか

    置く位置は工程しだいですが、目安を出しておきます。

    規格の何%    管理値       外れる頻度
       80%      ±0.024     117個に1個
       75%      ±0.022      72個に1個
       60%      ±0.018      20個に1個

    ⚠ 狭くすればいいわけではありません。

    60%にすると20個に1個で引っかかります。1日20個作る工程なら、毎日1回は「異常」の報告が上がることになります。

    そうなると何が起きるか。「またか」と言って誰も見なくなります。 管理値が形だけのものになり、本当の異常も見逃されます。

    現場が対応しきれる頻度に合わせる。 これが実務上いちばん大事な基準です。

    • 1日100個の工程 → 80%(117個に1個=週1回程度)が現実的

    • 1日1,000個の工程 → もっと厳しくてよい

    • 手作業でばらつく工程 → 広めに取り、まずばらつきを減らす

    管理値を外れたときにやること

    線を引くだけでは意味がありません。外れたら何をするかを、先に決めておきます。

    1. その品物は止めない(規格内なので出荷してよい)

    2. 直前の何個かを追加で測る(傾向か、たまたまかを見る)

    3. 傾向なら条件を戻す(刃物交換、位置調整など)

    4. 記録に残す(あとで傾向を追える)

    ⚠ 管理値を外れた品物を「不良」として扱わないでください。 規格内なのに廃棄すると、本当のコストになります。管理値は品物の合否ではなく、工程への合図です。

    よくある間違い

    ❌ 管理値を図面に書く
    社外に出す図面に管理値を書くと、それが規格になります。お客さまは±0.024で受け入れ検査をするようになり、自分の首を絞めます。管理値は社内の帳票だけに書くこと。

    ❌ 管理値を「なんとなく」決める
    「規格の8掛けで」と決めるのは出発点としては構いませんが、その工程のばらつきを測ってからにしてください。ばらつきが大きい工程に厳しい管理値を置いても、外れっぱなしになるだけです。

    ❌ 平均のズレを放置したまま管理値を狭める
    この工程は平均が2.5038で、中心から+0.0038ずれています。先に中心を合わせるほうが、管理値をいじるより効きます。(記事210で扱いました)

    まとめ

    • 規格値は「合否の線」(外部が決める)/管理値は「行動の線」(自分たちで決める)

    • この工程の規格外は 0.094%=1,069個に1個。出てから気づいたら手遅れ

    • 管理値を規格の80%(±0.024)に置くと 117個に1個で気づける。頻度は9倍

    • 狭くすればいいわけではない。 60%なら20個に1個で、現場が反応しなくなる

    • 現場が対応しきれる頻度に合わせるのが実務の基準

    • 外れたら「止める」ではなく「追加で測る→傾向なら条件を戻す」

    • 管理値は社外の図面に書かない。 書くとそれが規格になる

    「なぜ厳しいのか」を「規格外は1,069個に1個しか出ないから」と説明できると、管理値が形だけのものでなくなります。


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