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3年越しの恋。鳩間島にどうしても行きたくて、台風と戦った旅

    2026年6月中旬。
    沖縄地方の天気予報は、晴れマークが並ぶようになった。

    俺は24日から6日間、八重山諸島を旅する計画を立てていた。

    ところが…
    出発の5日前、台風7号が発生した。
    旅への影響が気になったが、進路がなかなか定まらない。

    今回の旅の目的のひとつは、鳩間島を訪れることだった。一昨年も昨年も、台風が島への上陸を拒んでいた。

    台風がどう進むのか知りたかった。
    気がつけば、様々な予報をチェックするようになっていた。

    気象庁のホームページからはじまり、

    ECMWF(欧州中期予報センター)、
    GFS(米国国立気象局)、
    JTWC(米軍合同警報センター)、
    500hPa天気図(約5700m上空の天気図)。

    それまでの俺にとって、どれも縁のない言葉だったが、付け焼き刃の知識で、必死に台風の進路と海上の波のうねりを追いかけた。

    ずっと、予報はバラバラだった。
    予報円は大きく、台風が台湾方面へ向かうのか、それとも先島諸島に接近するのか、専門機関によって見解が分かれていた。

    出発の日が近づくにつれ、俺は一日に何度もスマホを開くようになった。

    出発前日になっても、なお、台風の進路は定まらなかった。
    衛星画像には、くっきりと台風の目が映っていた。

    (台風の目が、俺を睨みつけている…)

    急激に発達していることは、気象の知識がない俺にもわかった。

    不安を抱えながらも、鳩間島で過ごすための水着一式を旅行バッグに押し込んだ。

    そして迎えた出発当日。
    飛行機は次々と欠航が決まっていったが、俺は成田に向かった。
    自分の便は飛んでくれたが、機内はガラガラだった。
    機体を大きく揺らしながら、石垣空港に到着した。

    (なんとか、第一関門は突破したぞ…)

    空港で、すぐにフェリー会社のホームページをチェックした。
    今日の最終便は欠航。
    翌日も全便欠航予定になっていた。

    俺は、急いでフェリーターミナルに向かった。

    ターミナルに到着するやいなや、カウンターに走った。
    「午後、船は出ますか?」
    2社あるフェリー会社を何度も往復して、
    覚悟を決めてチケットを購入した。
    もし、引き返したら…その時はその時考えよう…

    全てを委ねた船が港を出た。

    港から離れた途端、すぐに大きく揺れだした。

    窓には雨粒がびっしり付いていて、空は低い雲に覆われていた。海面も細かく白波が立っていて、うねっているのがわかった。

    ドーン
    フワッ
    グラッ

    ドーン
    フワッ
    グラッ

    船は何度も
    前後に、
    上下に、
    揺れた。

    そのうち揺れが少し落ち着いてきて、スピードを緩め、ゆっくりと港に到着した。

    港には、台風が来る前に島を離れようとする人たちの大行列ができていた。
    俺は人の流れに逆らって、島のほうに進んだ。

    (嘘みたい…着いた…着いたよ…)

    感傷的になって、泣きそうだった。
    そのままフェリー会社が準備したバスに乗って、宿のある集落に向かった。

    翌日は全便欠航だった。
    島は人の気配がなく、とても静かだった。
    居酒屋はガラガラで、簡単にお店に入れた。
    窓の外から風に揺れる森を眺めていた。
    それから、オリオンを
    ぐびり
    と飲んだ。

    台風が通過したあとも、島は大荒れの天気が何日も続いた。
    スコールが永遠に感じる時間もあった。

    雷と、雨が地面を叩く音。
    そして、カエルの鳴き声を、宿の部屋で聞いていた。

    欠航が続いて、恋焦がれていた鳩間島には今年も行けずじまいだった。

    港から、遠くに見える島陰をぼんやりと眺めていた。

    手を伸ばせば届きそうなのに。

    今年も遠かったな。

    帰りの飛行機に乗る日、沖縄地方は梅雨明けをした。

    俺は、東京で自宅と会社を往復する日常に戻った。

    台風をきっかけに、新しい趣味を見つけた。

    『天気図の読み方がよ〜くわかる本』

    という本を一冊購入した。
    (こんなふうに天気を予想するんだな…)

    旅は思うようにいかなかった。

    それでも、本を読みながら、雨の西表を思い出していた。

    台風の進路を追いかける日々は楽しかった。

    実は旅のハイライトは、出発する前だったのかもしれない。

    そして、来年もし快晴だったら、

    「去年とは全然違うなあ」

    って感動するだろうし、
    またモンスーンだったら、

    「おかえり」「ただいま」

    って思うかもしれない。

    今回の旅で、西表との関係は、

    観光地と観光客

    から

    再会を約束する相手

    に変わったのかもしれない。


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    自分はだいたい、途中のまま生きている。 トレラン/歯列矯正/リハビリ/語学/旅 全部、途中 うまくいかなかった話を、よく書いている。 たまに、変な話も書く はてなブログでも書いています。 https://jesse0303.hatenablog.com/

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