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走馬灯を観る

    「走馬灯を観たね、せのさん。」

    まさか、こんな白昼堂々に観るもんやとは思わんかった。しかも俺の前世である君と一緒に。

    「どうだった?」

    すごいよね。こんなおもろい人生見たことないよ。フォレスト・ガンプの情けないバージョンやんか。

    「奇跡的だよね。」

    もう映画よりも支離滅裂な52年間やん。全部その場の思いつきやがな、何もかも。せやのに物語がちゃんと続いてるのがすごいよな。

    「笑えないシーンもあったけど、何となく愛しい映画。」

    せやな。何でやろな。俺ってさ、ほんま動物みたいやな。何か起きた時の反射がおもろすぎんねん。ムツゴロウさんの動物王国か思たわ、途中から。

    「でも、必ず誰かに助けてもらえた。」

    ん、ちょっと待って?

    「ん?」

    走馬灯を観てるって事は、もしかして俺、死にかけてる?

    「うん。せのさん、走馬灯ってどういう仕組みで上映されるかって、もう知ってるよね。」

    人が死の危機に接した時、今までの記憶を一瞬で分析して、危機を回避する術がないか探すあれやろ。

    「答えはあった?」

    音楽は良かった。広島から大阪に出る高速バスでかかってたカエターノ・ヴェローゾなんか特に。

    「そうじゃなくて。」

    無かった。まったく。ただ、もう映画自体終わりの方なんやなって思ったのは確か。

    「エンディングは何の曲だった?」

    まだ聴いてない。だって終わりじゃなかったし。

    「でもこのままじゃ本当に終わってしまう。」

    せやと思う。

    「せのさんが最後に触れた言葉って何?」

    “問題は、それが発生した時と同じ次元では解決できない”

    「せのさん。ひとつだけ聞いていい?」

    あい。

    「どうして五次元にいるのに、三次元のやり方にこだわろうとするの?」

    ...

    「教えたよね。あなたは本当はもう五次元にいるって。ここまで来ると不自然だよ。」

    それはあれか。東京の人が大阪に遊びに来て急に大阪弁を話し始めた時くらい不自然か。

    「せのさん。」

    あれやろ。五次元で生きるなら、主役だけやなしに、脚本も演出も監督もやれっていう、あれやろ。

    「やったことあるよね、脚本。」

    若い頃に一回だけ。

    「撮影を始めて。今すぐ。脚本も演出も、すべて。」

    ねえ。

    「?」

    主演は松田龍平がええんやけど。

    「あなたの映画でしょ。早く始めて。」

    さよか...

    (終わり)


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