
『水曜どうでしょう』祭グッズは、なぜ「参加するもの」なのか――「どうで荘」生配信潜入レポート|第89夜 特別編
今回は、第11章「サイコロ4」をいったん離れた特別編です。
2026年8月24日、YouTubeで「水曜どうでしょう祭いよいよ迫る!藤やんうれしー『最新情報』生配信!集え!」↗が配信されました。
実は今回、私はこの配信を自宅で見ていたわけではありません。

「どうで荘」スタジオを訪問(筆者撮影)
藤村Dと嬉野Dが生配信を行っていた「どうで荘」へ実際にお邪魔し、カメラの向こう側から、その様子を見届けてきました。今回は、祭グッズの紹介だけではなく、「どうで荘」で目の前にした配信の空気も含めた潜入レポートです。
いつもは画面の中にいる藤村Dと嬉野Dが、同じ部屋で次々と商品を手に取っていきます。
配信画面だけを見れば、祭の最新情報を届ける商品紹介です。しかし、その場にいると、二人が完成品を整然と説明しているというより、届いたばかりの商品を初めて触りながら、自分たちも面白がっているように見えました。
藤村Dが説明し、嬉野Dが手に取り、ときには「これは何ですか」と聞き返す。商品名や販売方法をきれいに読み上げるのではなく、目の前にあるものを二人で確かめながら進んでいく。そのやり取り自体が、『水曜どうでしょう』らしいグッズ紹介になっていました。

藤村Dと嬉野D(筆者撮影)
山梨での制作が、そのまま祭グッズになった
最初に紹介されたのは、藤村Dが「藤村忠寿商店」として展開する酒類です。
山梨で作った赤ワインと白ワインは、持ち帰る際の重さを考えてハーフボトルで用意されました。赤は山梨を代表するマスカット・ベリー、白は甲州を使用しています。
白ワインは生配信の直前に届いたため、まったく冷えていません。それでも二人がその場で試飲すると、嬉野Dからは「これはいかんぞ。ガブ飲みするぞ」という言葉が飛び出しました。
私もその場で見ていましたが、事前に決められた宣伝文句を話しているのではなく、本当に飲んで、その場で味を確かめています。冷えていないことまで隠さず、それでもおいしいと盛り上がるところに、生配信ならではの臨場感がありました。
さらに、ワインを作った後のブドウの搾りかすから作る「パミス」を炭酸で割った、パミスハイボールも初登場します。藤村Dと嬉野Dが実際に試飲し、「このくらいの濃さだろう」と意見が一致した濃度で商品化されたそうです。

ハーフボトルのワイン(筆者撮影)
ここで面白いのは、番組に登場した言葉やロゴを商品へ印刷しただけではないことです。
藤村Dが現在、山梨で過ごしている時間。そこで出会った人や技術。二人が実際に飲み、納得した味。それらが、そのまま祭グッズになっています。
『水曜どうでしょう』は、かつて4人が旅先で出会ったものを番組へ取り込んできました。現在は、ディレクター陣の日常で生まれた出会いまで、ファンと共有する商品へ変えています。
祭グッズでありながら、いまの藤村Dがどこで誰と何をしているのかが見えてくる。ワインもパミスハイボールも、二人の現在地を持ち帰るための商品なのだと思います。
完成したTシャツを売らない
今回のグッズで最も特徴的だったのが、Tシャツなどへ熱転写できる図柄です。
コンセプトは、4人が世界を旅したとき、現地の観光地で普通に売られていそうなステッカーやデザイン。温泉地の古い土産物を思わせるものから、ベトナムや韓国の街角にありそうなもの、有名なバンドのロゴを思わせるものまで、図柄ごとにテイストがまったく違います。
一見すると、どこかで見たことがある。しかし、よく見ると「HTB」や「水」の文字が入っている。すべて『水曜どうでしょう』のために作られたデザインです。

(筆者撮影)
ファンは会場で好きな図柄を選び、Tシャツの胸元や袖、背中など、好きな場所へつけられます。小さなものをワンポイントで入れてもいい。大きな図柄を中央へ置いてもいい。藤村Dが冗談で話していたように、すべて貼ってしまうこともできます。
つまり、公式は完成したTシャツを売るだけではありません。
用意するのは、素材と図柄と転写するための機械です。何を選び、どこへ置き、どんな一着にするのかは、買った人に委ねられています。
目の前には、色も大きさも異なる図柄が次々と並べられていました。一つずつ見れば小さなグッズですが、「これを胸元へ貼るのか」「背中へ並べるのか」と考え始めると、完成形は人によってまったく違います。
第83夜では、『水曜どうでしょう』最初のグッズが、ファンであることを示す「証」になったと考えました。まだ番組が北海道でしか知られていなかった時代、グッズを持つことには、同じ番組を知る仲間を見つける意味がありました。
今回の祭グッズは、その関係からさらに先へ進んでいます。ファンであることを示すだけではなく、ファン自身が公式グッズの制作へ参加するのです。
画面では分からなかった「触りたくなるグッズ」
転写用の図柄には、平らなものだけでなく、表面がフェルトのように盛り上がった立体版も用意されています。
生配信で嬉野Dが実物へ触れると、「盛り上がってる」「触りたくなりますね」と驚いていました。私も同じ部屋で実物を見ていましたが、これは配信画面だけでは質感まで伝わりにくい商品だと感じました。
平らなプリントだと思って見ると、実際には中央部分がモシャモシャと盛り上がっています。光の当たり方によって立体感も変わり、近くで見ると印象が違います。

(筆者撮影)
ワッペンだけを買い、自分が持ってきたシャツへつけてもらうこともできます。祭のために用意されたTシャツを買うだけでなく、普段から着ている服を『水曜どうでしょう』仕様へ変えることもできるのです。
インターネットで商品を選び、届いた箱を開ければ買い物が終わる時代に、今回は会場でなければ完成しない仕組みが用意されています。
どの図柄にするか迷う時間も、完成するまで待つ時間も、隣にいる人のデザインを見る時間も祭の一部になる。商品を効率よく販売するより、その場で悩み、選ぶ体験を優先しているように見えます。
グッズを作る場所そのものが、一つのアトラクションになっているのです。
「ちょっと公式っぽい」という魅力
今回の商品には、もう一つ共通する特徴があります。どれも公式グッズに見えることです。
「BABY IN CAR」や「DOG IN CAR」を思わせるステッカー、有名バンドのロゴを連想させる図柄、昔の観光地で売られていそうなデザイン。藤村D自身も、「全部、なんとかギリギリ『水曜どうでしょう』を連想させる内容だけど、ちょっと公式っぽい」と表現していました。
さらに、作家が一つずつ手作りしたイヤリングやピアスも登場します。図柄になっているのは、ウィリー、張り子の虎、番組に登場した人物を思わせる頭部など。左右で別のデザインを組み合わせることもできます。

(筆者撮影)
配信の現場で実物を見ると、一つひとつが想像していた以上に小さく、それぞれ少しずつ表情が違います。大量生産された均一なグッズというより、作家が番組の場面を小さな作品へ変えたような商品でした。
ロゴが大きく入った公式商品とは違い、知らない人が見れば、何のデザインなのか分かりません。しかし、知っているファンには、その小さな図柄だけで番組の場面が浮かびます。
作り手が番組を管理しすぎず、ファンが遊んできた感覚へ近づいていく。少し怪しく、説明されなければ分からないものまでディレクター陣が作ってしまうところに、『どうで荘』らしさがあります。
番組のグッズというより、ファンが勝手に作っていたものを、ディレクター陣が商品化したような雰囲気です。
なぜディレクターを推すグッズが成立するのか
藤村Dと嬉野Dを応援するための商品も紹介されました。
藤色の「藤女子」タオルと、嬉野Dを応援する黄色のタオル。二人がステージへ登場したとき、それぞれの色を振って応援するためのグッズです。
嬉野Dが一つずつコーヒー豆を描いたという「豆絞り」や、二人がさまざまなポーズを演じて撮影した写真入りのキーホルダーもあります。さらに、背面へ藤村Dと嬉野Dの顔を大きく配置したTシャツまで登場しました。
二人自身も「あの二人の顔さえ入っていなければ外で着られたのに」「ここでしか着られない」と笑います。

ディレクター陣公式グッズ(筆者撮影)
画面越しに見ていても面白い場面ですが、すぐ近くで二人が自分たちの顔入り商品を眺め、恥ずかしそうに笑っている姿を見ると、その奇妙さがさらに際立ちます。
通常、番組のディレクターは裏方です。名前や顔を前面へ出した応援グッズが作られ、ファンがタオルを振ることなど、ほとんどありません。
それが成立するのは、藤村Dと嬉野Dが単なる制作者ではなく、30年かけて番組の登場人物になったからでしょう。
大泉さんとミスターだけではなく、笑い声を響かせる藤村Dも、黙ってカメラを回す嬉野Dも含めて『水曜どうでしょう』です。ディレクター陣推しのグッズは、この番組が出演者と裏方の境界を消してきたことを、最も分かりやすく示しています。

配信の現場で感じた、祭が近づいてくる感覚
今回紹介された商品の一部は、8月28日から札幌駅のビックカメラで先行販売されます。ワインなども購入できますが、大型ワッペンの一部は祭会場限定。手作りのピアスやイヤリングも会場でしか販売されません。
先に買っておきたいものはビックカメラで確保し、会場では限定商品や転写体験を楽しむ。どこで何を選ぶかを考えるところから、すでに祭は始まっています。
配信の最後には、大泉さんがアーティストの一人として出演することも発表されました。会場では昼間から番組映像が流され、来場者と一緒に見るパブリックビューイングも予定されています。スタンド席の当日券も用意されるそうです。
生配信が終わるまで、私はカメラの外側で二人の話を聞いていました。
次々と現物が登場し、販売場所が発表され、大泉さんの出演やパブリックビューイングの話まで出てくる。それを同じ空間で聞いていると、画面で情報を受け取る以上に、「いよいよ祭が始まる」という感覚が強くなっていきました。
グッズを買う。酒を飲む。Tシャツを作る。タオルを振る。そして、大勢のファンと同じ映像を見る。
今回の商品は、祭が終わった後に思い出として眺めるだけの記念品ではありません。祭の会場で何をして過ごすのかを作るための道具です。
完成された商品を買うだけなら、全員の手元に同じものが残ります。しかし、自分で図柄を選べば、一人ひとり違うTシャツが生まれます。左右のアクセサリーを選び、応援する色を決めれば、それぞれ違う祭への参加方法が生まれます。
『水曜どうでしょう』は、視聴者へ完成された楽しみ方を押しつけてきませんでした。旅を見て笑う人もいれば、出演者同士の関係を見る人もいる。ロケ地を訪ねる人もいれば、番組に登場した言葉を日常で使う人もいます。
今回の祭グッズも同じです。
何を選び、どう組み合わせ、どう使うのかはファンへ委ねられています。公式が用意したのは完成品ではなく、遊ぶための材料でした。
そして今回、たった一人で生配信の現場へ入り、その空気を間近で感じたことで、グッズ紹介そのものが祭の“前夜祭”になっていたことに気づきました。
祭グッズが「買うもの」ではなく「参加するもの」になったとき、祭は開催日よりも少し早く始まります。
私にとっては、「どうで荘」の扉を開けた瞬間から、すでに祭が始まっていました。

販売されます(筆者撮影)
(※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)
次回、第90夜は第11章「サイコロ4」へ戻り、もみじ饅頭から始まった「甘いもの攻め」について考えます。
この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」「👤フォロー」で応援いただけると励みになります。
📌今回の内容を踏まえて、皆さんは……
A:自分で図柄を選べる「参加型グッズ」が気になりましたか?
B:ワインやアクセサリーなど「会場限定グッズ」が気になりましたか?
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