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『水曜どうでしょう』は、なぜ“未公開シーン”まで番組にできたのか|第85夜

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    前回の第84夜では、初回放送から音響効果を担当してきた工藤哲也さんの言葉を通して、4人の会話を邪魔しない「引き算の音」が、『水曜どうでしょう』の笑いを支えていたことを考えました。

    今回は、1997年12月3日に放送された「未公開シーンすべて見せますよぉ」を取り上げます。本放送では使われなかった映像を集め、大泉さんとミスターが紹介していく企画です。

    テレビ番組において、放送されなかった映像は、本来なら完成した番組の外側にあるものです。それにもかかわらず、『水曜どうでしょう』では、未公開シーンだけでも新たな一本の番組が成立しました。それはなぜだったのでしょうか。


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    HTBの制作サブで、奇抜な衣装の大泉さんとミスター
    (引用元:DVD「未公開シーン全てみせますよぉ」より)

    未公開映像は、完成品からこぼれた「余り」ではなかった

    「未公開シーンすべて見せますよぉ」は、「ヨーロッパ21ヵ国完全制覇」の最終夜が放送された後に編成されました。大泉さんとミスターがHTBの制作サブ、つまり副調整室に座り、これまでの旅で放送されなかった映像を紹介していきます。

    取り上げられたのは、「サイコロ3〜自律神経完全破壊〜後編」「ヨーロッパ21ヵ国完全制覇」「北海道212市町村カントリーサインの旅」などの未公開シーンでした。

    通常、番組から場面がカットされるのは、放送時間に収まらない、話の進行に必要がない、完成した構成から外れるといった理由があるからです。完成品だけを考えれば、使われなかった映像は役割を終えた素材ともいえます。

    ところが『水曜どうでしょう』の場合、カットされた映像にも、4人の会話や関係性が残っていました。企画を前へ進めるうえでは不要でも、4人がどのように時間を過ごしていたのかを見るうえでは、決して価値のない映像ではなかったのです。

    視聴者が見たかったのは、旅の結果だけではない

    未公開シーンだけで番組が成立した最大の理由は、視聴者が旅の結果だけを見ていたわけではなかったからだと思います。

    どの土地へ到着したのか。サイコロで何が出たのか。カントリーサインで次にどの町を引いたのか。それらは企画を進めるために必要な出来事ですが、『水曜どうでしょう』の面白さは、結果へ向かう途中にありました。

    目的地までの車内で交わされた会話、予定通りに進まないことへのぼやき、疲れによって変化する4人の空気。本編では時間の都合で外された場面にも、視聴者が見たい「どうでしょう班の時間」が残っています。

    だから、未公開映像は本編より価値の低いものにはなりませんでした。企画の筋から外れた時間であっても、4人がそこにいれば、『水曜どうでしょう』として見ることができたのです。

    過去の映像を、新しい企画へ作り替えた

    この回では、未公開映像を順番に流すだけではなく、「サイコロ1」から「サイコロ3後編」までを振り返り、大泉さんとミスターのどちらが運の悪い人物なのかを検証する企画も行われました。

    過去の旅を見直し、二人が不運な目に遭った場面を数えていく。その結果、7対4でミスターに軍配が上がります。ただ、大泉さんも自分が優勝すると思っていたほど、十分に運の悪い旅を重ねていました。

    ここで行われているのは、単なる総集編ではありません。すでに放送された旅に「どちらの運が悪かったのか」という新しい見方を加え、別の企画へ作り替えています。

    一度見た映像でも、視点を変えれば新しい笑いが生まれる。過去の出来事を本人たちが振り返り、自分たちで面白がることで、旅の記憶がもう一度、現在進行形の番組になったのです。


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    過去のサイコロの旅を振り返り、どちらの運が悪かったのかを検証する二人
    (引用元:DVD「未公開シーン全てみせますよぉ」より)

    制作サブまで、番組の舞台になった

    この回が収録されたのは、豪華なスタジオではなく、普段は番組制作を支えるHTBの制作サブでした。大泉さんとミスターは奇抜な衣装を身にまとい、そこから未公開シーンを紹介しています。

    新しい旅へ出るわけでも、大がかりなセットを用意するわけでもありません。過去の映像と二人の進行、そして普段は表に出ない制作現場があれば、一本の番組を作ることができました。

    『水曜どうでしょう』は、早い時期から「テレビ番組らしい場所」だけを舞台にしていませんでした。車内、ホテルの部屋、HTBの駐車場、そして制作サブまで、4人が何かを始めれば、そこが番組の世界になります。

    本来なら裏側である場所を隠さず、その簡素さまで笑いに変える。この境界のなさによって、視聴者は完成した番組だけでなく、番組が作られている場所へも少しずつ入り込んでいきました。

    予算がないことを、弱点として隠さなかった

    こうした未公開シーンの一挙放送は、大泉さんが番組内でぼやいていたように、予算の都合もあり、主に海外企画の放送前後に編成されることが多かったとされています。

    海外へ出れば、当然ながら制作費はかかります。その直後に、さらに大きな企画を用意することは難しい。そこで、すでに撮影した素材を使い、スタジオに近い場所で新しい回を作るという方法が選ばれました。

    しかし『水曜どうでしょう』は、その事情を豪華に見せかけようとはしませんでした。大泉さん自身が予算についてぼやき、未公開シーンを使う理由まで笑いの中へ入れてしまいます。

    予算がないという制作上の制約を隠すのではなく、それ自体を出演者と視聴者が共有する。すると視聴者は、用意された完成品を一方的に見るだけではなく、「今回は手元の映像で何とか一本作ろうとしている」と、番組制作の事情まで含めて楽しめます。

    制約を見せることで番組の価値が下がるのではなく、むしろ制作者との距離が近づいていく。『水曜どうでしょう』は、予算の少なささえ番組の個性へ変えていました。



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    番組終盤に視聴者プレゼントを紹介するお二人
    (引用元:DVD「未公開シーン全てみせますよぉ」より)

    本編と未公開の境界は、後から変わっていった

    この回で紹介された映像の中には、本放送ではカットされていたものの、後のDVD化に際して再編集され、改めて本編へ収録されたものもありました。

    つまり、『水曜どうでしょう』では、一度「未公開」とされた映像が、後から本編の一部へ戻ることがあります。どの場面が本編で、どの場面が余分なのか。その境界は、最初の放送だけで完全に決まるものではありませんでした。

    テレビ放送には、決められた放送時間があります。その枠に合わせるためには、どれほど面白い場面でも削らなければなりません。しかしDVDでは、その制約が変わり、放送時には見せられなかった時間を再び作品の中へ戻すことができます。

    未公開シーンの存在は、本放送が不完全だったことを意味するのではありません。同じ旅を、別の長さや別の視点から、もう一度楽しめる余地が残されていたということです。

    「何が起きたか」より「誰といたか」が残る番組だった

    未公開シーンまで番組として成立したのは、『水曜どうでしょう』の中心に、企画ではなく人間関係があったからだと思います。

    旅を進めるうえでは必要のない会話でも、大泉さんと藤村Dが言い合っていれば面白い。目的地とは関係のない時間でも、ミスターが妙なことを始め、嬉野Dが静かに撮っていれば、そこには4人の世界があります。

    企画の結果だけに価値がある番組なら、未公開映像は説明不足の断片にしかなりません。しかし、4人が一緒に過ごす時間そのものに価値がある番組では、どこを切り取っても関係性の続きとして見ることができます。

    だから視聴者は、完成された旅だけではなく、その周囲にこぼれていた時間まで見たいと思ったのでしょう。

    『水曜どうでしょう』にとって未公開シーンは、本編になれなかった映像ではありませんでした。放送時間の外側にも、まだ4人の旅が続いていることを見せてくれる映像だったのです。


    (※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)


    次回、第86夜では、「『水曜どうでしょう』カントリーサインの旅Ⅱで完成した『4人だけの世界』」について考えます。

    この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」「👤フォロー」で応援いただけると励みになります。


    📌今回の内容を踏まえて、皆さんは……

    A:本編として選ばれた場面だけを楽しみたい
    B:未公開シーンも含めて、その作品の世界をもっと見たい

    どちらに近いでしょうか。理由もあればぜひコメントで教えてください。
    (コメントには必ずご返信させていただきます)
    今後の『水曜どうでしょう』考察の参考にさせていただきます。


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    ■運営者(ユウナ)について

    このnoteでは『水曜どうでしょう』をテーマに執筆しています。以下の別アカウントでは、普通の会社員だった私が、FIREを達成するまでの資産形成の実体験を記録しています。

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