
『水曜どうでしょう』なぜオーストラリアの大自然より振り回される4人が面白いのか|第19夜
前回は、『水曜どうでしょう』初めての海外ロケ「オーストラリア大陸横断3,700キロ」について考えました。
予算を前借りして挑んだ大きな海外企画。本来なら、美しい景色や珍しい場所を紹介する旅番組になるはずでした。しかし実際には、レンタカーを借りるところから予定通りに進まず、立ち寄った場所も思うように楽しめない。
でも、その計算通りにいかない時間の中にこそ、『水曜どうでしょう』らしさが生まれ始めていました。そして旅は、いよいよオーストラリアの大自然へ入っていきます。

おもわず「もう帰ろうや」とぼやく大泉さん
(引用元:DVD「オーストラリア大陸横断3,700キロ」)
引き続き、オーストラリアの旅、初日の夕方17時30分頃、どうでしょう班はキャサリン渓谷国立公園へ到着します。
そこで4人を待っていたのは、コウモリの大群です。
普通の旅番組なら、ここはオーストラリアの雄大な自然を紹介する場面だったと思います。珍しい生き物や、日本では見られない景色を伝える時間になるはずでした。
でも『水曜どうでしょう』で印象に残るのは、その自然を見た大泉さんの「もう帰ろうや」という一言でした。
大自然のすごさよりも、それを目の前にした人が何を感じ、どんな言葉を発するのか。その予想できない反応こそが、どうでしょうらしい面白さになっていました。
ここが、普通の旅番組との大きな違いだったと思います。
オーストラリアの自然を「見せる」のではなく、その自然に振り回される4人を「見る」。
絶景そのものではなく、絶景の中で予定外の出来事に出会った時、人はどんな顔をするのか。何を言うのか。どう笑いに変えていくのか。
嬉野Dのカメラは、その瞬間を追いかけていたのだと思います。
さらにキャサリンのモールでも、どうでしょうらしい出来事が起こります。
大泉洋さんが食べたカレーが、しょっぱすぎる。
普通なら海外での食事シーンは、その土地の料理を紹介する時間です。どんな味なのか、どんな文化なのか、食べ物そのものが主役になります。
でも、どうでしょうでは違いました。主役になるのはカレーではなく、それを食べた大泉さんの反応でした。おいしい料理だけを紹介するのではなく、その場で起きたことをそのまま楽しむ。この感覚が、後の『水曜どうでしょう』につながっていったのだと思います。
翌日、本格的な大陸横断が始まると、オーストラリアの自然はさらに別の顔を見せます。
キャサリンから510キロ進んだ場所で4人を待っていたのは、壮大な景色だけではありませんでした。そこに現れたのは、大量のハエです。

(引用元:DVD「オーストラリア大陸横断3,700キロ」)
日本では考えられないほどのハエに囲まれ、ついにはミスターも我慢できなくなる。テナントクリークでは、ネット付きのスタッフハットで対策することになります。
普通なら、こうした出来事は旅のトラブルです。でも、『水曜どうでしょう』では、そのトラブルがそのまま見どころになります。なぜなら、予定外の出来事が起きた時こそ、人の素の反応が出るからです。
さらに暑さを伝えようとして、車のボンネットで生卵を焼こうとする場面があります。
成功すれば、オーストラリアの暑さを伝える分かりやすい映像になったかもしれません。しかし結果は、すぐに卵が流れてしまい失敗します。
でも、この失敗した瞬間まで含めて面白い。成功した結果だけを集めるのではなく、失敗する過程まで残す。視聴者は、完成された旅を見るのではなく、一緒に旅をしているような感覚になっていきます。
そして、その後に象徴的な場面が訪れます。
移動中、どうでしょう班は偶然、竜巻を目撃します。
普通なら、ここはオーストラリアの大自然を伝える貴重な映像になる場面です。しかし『水曜どうでしょう』では、少し違いました。
印象に残るのは、竜巻だけではありません。
それを発見した瞬間の藤村Dの「おいおいおい」という大きなリアクション。そして、その絶妙なタイミングに対して、大泉さんが「ディレクターにもっていかれた」とぼやく関係性でした。
ここに、この番組の面白さが詰まっていると思います。
普通なら、ディレクターは出来事を撮影する側です。でも『水曜どうでしょう』では、藤村D自身も旅を作る一人でした。大泉さんが反応し、藤村Dがさらに反応する。そして嬉野Dが、その空気ごと撮り続ける。
自然現象でさえ、4人の掛け合いのきっかけになっていました。

藤村Dの一言
(引用元:DVD「オーストラリア大陸横断3,700キロ」)
そして一行は、アリススプリングスへ到着します。
ここで改めて確認すると、すでに走った距離は札幌から静岡ほど。日本なら、それだけで十分すぎる大移動です。しかし、オーストラリア大陸横断3,700キロでは、まだ旅の途中でした。
普通なら疲れて当然です。でも、ミスターはまだ前を向いていました。翌朝向かうのは、この旅の大きな目的地、エアーズロックです。
ここまでの旅を振り返ると、起きている出来事自体は決して計画された名場面ではありません。
コウモリ、しょっぱいカレー、大量のハエ、失敗した卵焼き、偶然現れた竜巻。どれも予定表に書けるものではありませんでした。
でも、不思議と記憶に残っています。
それは、『水曜どうでしょう』が完璧な旅を撮っていたわけではなかったからだと思います。
予想外の出来事が起きた時、人はどう反応するのか。驚き、困り、時には怒る。でも最後には笑ってまた進んでいく。その姿こそ、この番組の一番面白い部分でした。
オーストラリアの大自然がすごかったから、この旅が面白くなったのではありません。
大きすぎる自然に振り回される4人がいたから、面白くなった。
その発見こそ、後の『水曜どうでしょう』につながる大きな要素だったのだと思います。
(※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)
次回(第20夜)は、「『水曜どうでしょう』大泉洋のホラ話から始まった4人のトークの原点」について考えていきます。
何百キロも続くオーストラリアの一本道。
何も起きない車内だからこそ生まれた、大泉さんの言葉と4人の掛け合いの始まりを読み解いていきます。
※この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」「👤フォロー」で応援いただけると励みになります。
📌皆さんは、オーストラリア大陸横断で好きなハプニングはありますか?
予定外だったからこそ面白くなった場面があれば、ぜひコメントで教えてください。
(コメントにはできる限りご返信させていただきます)
--
■運営者(ユウナ)について
このnoteでは『水曜どうでしょう』をテーマに執筆しています。以下の別アカウントでは、普通の会社員だった私が、FIREを達成するまでの資産形成の実体験を記録しています。