
『水曜どうでしょう』「雪面の飛び魚」と淡路島、再び始まった理不尽な旅|第36夜
前回の第35夜では、『水曜どうでしょう』が4人だけの勝ちパターンを見つけ始めていたことについて書きました。
旅そのものよりも、4人の関係性を見せる。観光地ではなく、移動時間や何気ない会話が面白くなる。そんな今の『水曜どうでしょう』につながる形が、少しずつ出来上がってきていました。
そして、その勝ちパターンを決定的なものにしたのが、今回から始まる「サイコロ3後編」です。
舞台は、まさかの淡路島。前回の旅で時間切れとなり、ゴールできなかったあの場所から、4人は再び旅を始めることになります。

(引用元:DVD「サイコロ3後編」より)
1997年3月7日。大泉洋さんは、今回も何も知らされないまま札幌から連れ出されます。前回の旅からわずか4日後。
またしても「何か知らない企画」が始まると思っていた大泉さんを待っていたのは、まさかの淡路島でした。
「サイコロで何処行くの?」
ネタばらしをされた時の、この一言がすべてを表しています。まさか、もう一度サイコロを振ることになるとは思っていなかった。しかも、あの淡路島から再スタートするとは想像もしていなかったのです。
後の解説で大泉さんは、「ほんとに何の企画をやるのか分からなかった」と語っています。
そして藤村Dも、この時の大泉さんが「あまりにもきれいに騙された」ので、その後もやめられなくなったと振り返っています。
今では『水曜どうでしょう』といえば、「騙される大泉洋」というイメージがあります。しかし、その原点はこの淡路島にあったのかもしれません。
この回を象徴するもう一つの名場面があります。それが、「雪面の飛び魚」です。

(引用元:DVD「サイコロ3後編」より)
雪解けの北海道は道がびしょびしょになる。だから大泉さんは、防水スプレーまで吹きかけて、この靴を履いてきました。本人はいたって真面目です。
ところがHTBへ入ると、制作部のメンバーが大笑いしたそうです。その時になって初めて、「自分の靴って面白いんだ」と気付いたと言います。
そして生まれた名前が、「雪面の飛び魚」でした。後の解説でも、大泉さんは「近所へ行く時はよく履いていた」と話しています。
今なら、テレビに出ると聞けば少しおしゃれをしようと思うかもしれません。しかし当時の大泉さんには、その感覚がありませんでした。
テレビに出ている感覚もない。大勢の人に見られている感覚もない。ただ、どうでしょう班の3人に見られているだけ。
だから、あの靴を履いてくることにも何の違和感もなかったのです。そして、それこそが『水曜どうでしょう』の面白さだったのかもしれません。
作られていないから面白い。素のままだから面白い。「見れば見るほどおもしろい靴ですね。」この何でもない一言が、30年経った今でも語り継がれているのは、その言葉の向こうに、当時の4人の空気がそのまま残っているからなのでしょう。
大泉さんは後に、「やらせじゃないのかと言われることもある」と笑いながら話しています。あまりにもきれいに騙されるからです。
しかし、その理由について大泉さん自身は、目の前のことを真剣に考えてしまうからだと語っています。
どう演じるのか。どう返すのか。その状況に入り込み、目の前のことに集中してしまう。だから、結果として騙されてしまうのです。
藤村Dは、それを「一流のバカ」と呼んでいました。
でも、私はこの話を聞いて、少し違うことを思いました。目の前の出来事に本気になれる人だからこそ、あれだけ豊かなリアクションが生まれるのではないでしょうか。
もし途中で、「これ、騙されているんじゃないか」と冷めてしまったら、『水曜どうでしょう』はここまで面白くならなかったと思います。
どんな状況でも本気で向き合う。だから、私たちは大泉洋という人を見ていたくなるのです。そして、その「きれいに騙される大泉洋」という構図が、この淡路島から本格的に始まっていきます。

(引用元:DVD「サイコロ3後編」より)
サイコロ3後編の第1夜では、あらゆる場面で「雪面の飛び魚」がいじられます。深夜バスの車内でも、靴のジッパーを上げたり下げたりして遊び、その音まで録音していました。
特別な事件が起きたわけではありません。観光地へ行ったわけでもありません。
それでも、ただ一足の靴だけで、みんなが笑っていられる。私は、この回に『水曜どうでしょう』という番組の本質が詰まっているように思います。
誰かを笑わせようとしているわけではない。ただ仲間同士で面白がっている。そして、その空気を私たちも一緒に楽しんでいるのです。
淡路島から再び始まった理不尽な旅。その中で、『水曜どうでしょう』は一つの完成形を見つけ始めていました。「騙される大泉洋」と、「それを面白がる3人」。
この関係が生まれたからこそ、『水曜どうでしょう』は30年経った今でも愛され続けているのかもしれません。
そして、そのすべての始まりには、一足の不思議な靴――「雪面の飛び魚」があったのでした。
(※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)
次回、第37夜は「トップ・ガンみたい」大泉洋がヘリに乗って見せた、最高のリアクションについて考えていきます。
この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」「👤フォロー」で応援いただけると励みになります。
📌今回の内容を踏まえて、皆さんは……
A:何も知らされないまま巻き込まれる旅のほうが面白い
B:予定を知ったうえで安心して旅をしたい
どちらに近いでしょうか。理由もあればぜひコメントで教えてください。
(コメントには必ずご返信させていただきます)
今後の『水曜どうでしょう』考察の参考にさせていただきます。
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■運営者(ユウナ)について
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