メインコンテンツへスキップ
見出し画像

『水曜どうでしょう』さすがのミスターもうなされる深夜バス|第30夜

    🚩はじめての方はこちら
    📖第1夜から読める連載まとめ(目次ページ)

    前回の第29夜では、「訴えるぞ」という何気ない一言が、30年後のどうでしょう祭まで続く名言になった理由について考えました。

    サイコロ3は、名言が次々と生まれた企画として語られることが多い作品です。しかし、第3夜を改めて見返してみると、本当に生まれていたのは名言だけではありませんでした。

    この頃から『水曜どうでしょう』は、「視聴者を楽しませようとする番組」ではなく、「仲間同士が本気で遊ぶ様子を、そのまま見せる番組」へと変わり始めます。

    その転換点が、この第3夜だったのではないでしょうか。

    画像
    深夜バス「加賀号」でうなされるミスター。
    この後ふっと起き上がり藤村Dを睨みつける
    (引用元:DVD「サイコロ3前編」より)

    第3夜は、深夜バス「加賀号」の車内から始まります。前回は大泉さんの「具合わりぃー」を取り上げましたが、今回注目したいのはミスターです。

    後に本人が振り返っていますが、この日は金沢でかなりお酒を飲み過ぎてしまい、深夜バスの中でうなされていたそうです。

    これまで苦しむ役は大泉さんでした。しかし今回は、あの冷静なミスターまで深夜バスにやられてしまう。ちなみに藤村Dも吐いてしまったそうです。

    この瞬間、深夜バスは大泉さん一人の敵ではなく、4人全員が立ち向かう共通の敵になりました。

    後にミスターは、サイコロシリーズの影響で移動中はすぐ寝る癖がつき、プライベートの旅行でもすぐ寝てしまうため、車窓を眺めて旅を楽しめない体になってしまったと笑って語っています。

    普通なら笑い話では済まない出来事です。しかし『水曜どうでしょう』では、その疲労さえも番組の魅力へ変わっていきました。


    画像
    ミスターからの終わらない質問攻めに
    ホラ話で負けじと応じる大泉さん
    (引用元:DVD「サイコロ3前編」より)

    翌朝、一行は特急「ハウステンボス」に乗り込みます。ここで始まるのが、大泉さんのホラ話。

    「オランダのお酒?」「チューハイ。」

    有名なやり取りですが、本当に面白いのはホラ話の内容ではありません。

    ミスターの振り方です。とにかく雑で、しかもしつこい。答えが合っているかどうかなど最初から気にしていません。ただ大泉さんへ話を振り続けるだけです。

    すると大泉さんは、その雑な振りに絶対負けません。苦し紛れでも答えを作り、さらに話を広げ、またミスターが振る。この終わらないラリーが続いていきます。

    ここでは、誰も正解を求めていません。オチを作ろうとしているわけでもありません。ただ、その場で生まれる会話を、お互いが本気で楽しんでいる。

    だから見ている私たちも笑ってしまうのです。

    後に藤村Dは、この頃の編集では「言葉のテンポ」を何より大切にしていたと語っています。大泉さんが話し、ミスターが返し、また大泉さんが返す。

    その心地よいリズムがあったからこそ、編集で切ることができなかったのでしょう。


    画像
    ほんとに滞在時間10分で帰るミスターと大泉さん
    (引用元:DVD「サイコロ3前編」より)

    大泉さんは後に、藤村Dへ「よくこんな内容をテレビで流せる勇気が凄い」と話しています。

    確かに、この回を冷静に見ると、深夜バスで苦しみ、電車の中で雑談をし、ハウステンボスに10分だけ滞在するだけです。普通の旅番組なら、ほんの数分で終わる場面ばかりでしょう。

    しかし藤村Dは、その雑談こそが一番面白いと気付き始めていました。視聴者を意識して笑いを作ったのではありません。仲間内で本当に笑っていた時間を、そのまま番組として残したのです。

    だから30年経った今でも古くならない。演出された笑いではなく、本物の空気だからです。


    そして、この頃から『水曜どうでしょう』のお約束も少しずつ形になっていきます。サイコロ3前編と後編は、わずか一週間違いで撮影されました。

    後にミスターは、「また大泉くんをだませると思ったから」と笑って語っています。その発想は後の企画へ受け継がれ、「これは拉致だよ」「誘拐だよ」というおなじみの名場面へとなっていきました。

    振り回される大泉さん。それを面白がるディレクター。横で笑うミスター。

    私たちが当たり前のように思っている『水曜どうでしょう』の型は、この頃に少しずつ完成していったのです。


    サイコロ3第3夜は、深夜バスの回でも、ホラ話の回でもありません。

    仲間同士が本気で遊び、その空気をそのままテレビで流す。

    『水曜どうでしょう』という番組の原点が、一つの完成形へ近づいた回だったのだと思います。

    だから30年経った今でも、私たちはハウステンボスよりも、深夜バスよりも、その車内で交わされた何気ない会話を思い出して笑ってしまうのではないでしょうか。


    (※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)


    次回(第31夜)は、「喧嘩太鼓はなぜ30年語り継がれるホラ話になったのか」を考えていきます。

    寝台列車の中で始まった、大泉さんの何気ないホラ話。しかし、その作り話は、30年経った今でもファンの間で語り継がれ、少しずつ現実と重なり始めています。

    なぜ「喧嘩太鼓」は、ただの雑談で終わらなかったのでしょうか。『水曜どうでしょう』らしいホラ話の魅力を読み解いていきます。

    ※この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」「👤フォロー」で応援いただけると励みになります。


    📌今回の内容を踏まえて、皆さんは『水曜どうでしょう』で印象に残るのはどちらですか?

    A:名言や名場面

    B:何気ない会話や掛け合い

    どちらに近いか、理由もあればぜひコメントで教えてください。
    (コメントには必ずご返信させていただきます)
    今後の『水曜どうでしょう』考察の参考にさせていただきます。


    👉次の記事
    ▶ 語り継がれるあのホラ話「喧嘩太鼓」|#31

    👈前の記事
    ▶ 大泉洋の「訴えるぞ!」がなぜ名言に|#29

    📖連載まとめ(目次ページ)に戻る



    --
    ■運営者(ユウナ)について
    このnoteでは『水曜どうでしょう』をテーマに執筆しています。以下の別アカウントでは、普通の会社員だった私が、FIREを達成するまでの資産形成の実体験を記録しています。

    あなたへのおすすめ