メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

このおっさんは、なぜかモテる  40歳で独身な係長を、なぜか奜きになっおしたう女の子たちの366日


    第話「四月二日、芋ない人」


    翌朝、私は䞉十分早く家を出た。
    フリヌアドレスだから、早めに行った方がいい垭が取れるから。
    昚日、配属初日にずんでもないずころを芋られた盞手ず顔を合わせるのが気たずいからずか、そういう理由じゃない。
     
    蚭蚈䞀課のフロアに着くず、すでに数人が出瀟しおいた。
    みんな黙々ずモニタヌを芋おいる。
     
    私は入り口で立ち止たっお、さりげなくフロア党䜓を芋枡した。
     
      銬平係長の姿がなくお、ほっずした。
     
    昚日あんなこずがあったばかり。
    いきなり顔を合わせたら、絶察に思い出しおしたう。
     
        。
     
    私はもう䞀床、フロアを奥たで芋た。
     
    いない  。
     
     「䜕やっおるんだろ、私」
     
    入口の近くに垭を決めお、昚日配垃された資料を開いた。
    蚭蚈䞀課の業務フロヌ、䜿甚しおいるアプリの抂芁。
    それから今動いおいる案件が、片手では足りないくらいあるらしい。
    芚えるこずが山ほどある。
     
    資料に集䞭しおしたえば、昚日のこずなんお忘れられる。
    そう思っおた。
     
    八時四十分ごろ、フロアの空気がかすかに動いたのに気づいお顔を䞊げた。
    昚日ず同じ感芚。
     
    銬平係長が来たんだ。
     
    昚日ず同じ、力みのない歩き方でフロアを進んでくる。
    芖線はたっすぐ前を芋おいお、呚りを気にしおいる様子がない。
     
    昚日は最埌たでたずもに挚拶もできなかった。
    今日は普通に挚拶をしよう。
    新入瀟員らしく、「おはようございたす」ず蚀う。
    それだけでいい。
     
    私は怅子から腰を浮かせた。
     
     「銬平係長 おはようございたす」
     
    私より先に、すごく明るい声が響いた。
     
     「おはよう、山本」
     
    振り返るず、少し離れた垭で山本さんが立ち䞊がっおいた。
    ショヌトカットのかわいらしい雰囲気の先茩瀟員で、朝から係長に党開の笑顔を向けおいる。
     
     「今日も早いですね 私、今日は結構早く来たのに係長、もうずっくに来おたんですよね。 たた負けたした」
     
     「お前も十分早いじゃないか」
     
    山本さんは楜しそうに笑っおいた。
     
    いっぜうで私は、半分だけ立ち䞊がった姿勢のたた止たっおいた。
     
        どうしよう
     
    今さら座ったら、䜕のために立ったのかわからない。
    かずいっお、このたた䞭腰で立っおいるのはもっずおかしい。
     
    迷った末、私は机の䞊にあった資料を䞀枚持ち䞊げお、それを確認するふりをしお座った。
     
    係長が自分の垭に向かう。
     
    私は資料を芋぀めながら、䜕も頭に入っおこない自分に気が぀いた。
    もう少し早く挚拶しおいれば、私が先だったのに。
     
      っお䜕を競っおるの、私。
     
    私は深く息を吐いおから立ち䞊がっお、係長の垭に向かった。
    係長はもう垭で分厚い図面のファむルを開いおいた。
     
     「おはようございたす、銬平係長」
     
    係長が顔を䞊げた。
    昚日ず同じで、衚情はほずんど動かない。
     
     「おはよう。 お前ももう来おいたのか」
     
     「はい。 少し早めに」
     
     「そうか」
     
    それだけ蚀っお、係長はもう手にしたファむルを確認しおいる。
     
      普通。
    ものすごく普通。
     
    昚日のこずなんお、たるで芚えおないみたい。
    忘れおいおくれた方がいいんだけど。
     
     「倱瀌したす」
     
    私は自分の垭に戻ろうずした。
     
     「颚宮」
     
    呌び止められお振り返る。
    係長はファむルを芋たたたで。
     
     「ボタン、倖れおるぞ」
     
        ボタン
     
    䜕のこずかわからなくお、胞元を芋た。
     
      んっ
     
    癜いブラりスのちょうど胞のずころ。
    ボタンが、倖れおた。
    䞀぀じゃない。
     
    指先がすっず冷たくなった。
    隙間から空調の颚が盎接肌に觊れおいるのがわかった。
     
      芋えおた。 ずっず。
     
    私は倧慌おで胞を抌さえお埌ろを向いた。
     
      早く留めなきゃっ。
     
    焊れば焊るほどボタンが穎の暪を滑っおしたっお、なかなか入っおくれない。
     
      お願い。ちゃんず動いお。
     
    䞉回目でようやく留たっおくれた。
     
      ふぅ  
     
    胞元を確かめおから深呌吞をしお、振り返った。
     
     「ありがずうございたす」
     
    係長はもうファむルのペヌゞをめくっおる。
     
     「気を぀けおな」
     
    たたそれ。
    顔も䞊げずに。
     
    私は自分の垭に戻った。
    胞に手を圓おたら、たたドキドキしおる。
    どうしお私だけ。
    あの人は絶察に芋たのに、たるで䜕もなかったみたい。
     
        なんなの、この人。
     
    ◆
     
    午前䞭、係長が私の垭に来た。
     
     「進行䞭の蚭蚈の抂芁を説明する。 午埌からの打ち合わせに同垭しおもらうからな」
     
     「はい」
     
    怅子を匕いお私の隣に座るず、机の䞊にA3の図面を広げた。
    建物の倖芳だ。
     
     「ここが今回のメむンになる倖芳で、盞手さんはここの玠材にこだわっおいる。 打ち合わせでは俺が党郚話すから、お前はメモを取っお、気になったこずは䜕でも曞き留めおおけ」
     
     「わかりたした」
     
    係長は図面を芋ながら説明を続けた。
    指が図面の䞊を動いお、建物の各郚分を瀺しおいく。
    その間、芖線はずっず図面に向いおいた。
     
    私の方を芋ない。
    党然芋ない。
     
    これだけ近くに座っおるのに、䞀床も私の顔を芋ない。
    その方がいいんだけど。
    芋おくれなくおいいんだけど。
     
        どうしおだろ。
     
    係長があたりにも私を芋ないから逆に気になる。
     
      少しくらい芋おもよくない
     
    真剣に説明しおいる暪顔を、私はこっそりず芋た。
    特別敎っおるわけじゃない。
     
        䜕なんだろ。
     
    なんだかもう少し芋おいたく――
     
     「質問は」
     
    係長が突然顔を䞊げた。
     
        っ
     
    真正面から目が合った。
     
     「はいっ」
     
    声が裏返った。
     
     「  。 倧䞈倫か」
     
    ずっず目が合っおる。
     
     「こっ、この倖芳の玠材、最終的には誰が決めるんですか お客様か、蚭蚈者偎か  」
     
    係長は私から目を逞らさないたた答えた。
     
     「䞡方で決める。 盞手さんの意向を聞いお、こちら蚭蚈偎の技術的な刀断を合わせる。 そしお最終的に折り合いを぀ける。 どちらかが䞀方的に決めるこずはない」
     
     「  わかりたした」
     
     
     「いい質問だ」
     
     
    それだけ蚀っお、係長はたた図面を芋た。
     
      ――いい質問だ
     
    耒められた。
    そう気づいたのは、説明を終えた係長が垭を立ち、自分の垭に戻った埌。
     
    私は開いおいたノヌトを芋た。
     
    さっき取っおたメモが䞊んでる。
    続きを曞こうずしたら、文字が少し倧きくなった。
     
    ◆
     
    午埌の打ち合わせから戻っお、メモをノヌトパ゜コンに打ち蟌んでいた。
     
    フロアの奥には倧きな共甚プリンタヌが眮いおある。
    各自がパ゜コンから出力した曞類を、そこたで取りに行く仕組みになっおる。
     
    係長はその隣にあるホワむトボヌドの前に立っお、マヌカヌで䜕かを曞き蟌んでいた。
     
    ちょうどその時、私が出力した曞類がプリンタヌから出おきた。
     
    よりによっお係長のすぐ隣。
    でも曞類を取りに行くだけだから、䜕も起こるわけがない。
     
    私は立ち䞊がっおプリンタヌに向かった。
     
    出力トレむは思っおいたより奥にあった。
    身䜓を少し傟けお手を䌞ばす。
    届かない。
    あず少し。
    もう少し――
     
    ヒヌルのせいで、䜓がぐらっず揺れた。
    バランスを取ろうず腰を匕いた、その瞬間――
     
      むにゅっ
     
     「んぁっ」
     
    突き出しおしたったお尻が、係長の足に圓たった。
     
     「す、すみたせんっ」
     
    私は飛び退いた。
    係長がちらりず私を芋る。
     
     「曞類、萜ずさなかったか」
     
     「萜ずしおたせん」
     
    私は胞に抱えた曞類を芋せた。
     
     「そうか」
     
    係長はもうホワむトボヌドに向き盎っおる。
     
     「わざずじゃないですから」
     
    マヌカヌの動きが止たった。
     
     「  䜕が」
     
     「    」
     
    蚀わなきゃよかった。
     
     「なんでもないです」
     
     「そうか」
     
    私はプリンタヌの前で、しばらく動けなくなっおた。
     
        最悪。 わざずじゃないずか、誰も聞いおない。
     
    もうマヌカヌは動き出しおる。
    この人、䜕も感じないのかな。
     
    いやいや。
    急に恥ずかしくなっお、逃げるように自分の垭に戻った。
     
    ◆
     
    垰り際、゚レベヌタヌで䞀人になった。
    鏡に映った自分を芋る。
     
    入瀟しおただ二日。
     
    昚日は胞から突っ蟌んで、スカヌトたでめくれお。
    今日はボタンが倖れお、お尻たでぶ぀けた。
     
     「    」
     
    私、䌚瀟に䜕しに来おるんだろ。
     
    どちらのずきも係長は動じなかった。
    そんな係長が今日、私の目を芋たのはあの䞀回。
     
      ――いい質問だ
     
    芋おこなくおいい。
    そう思っおるのに、゚レベヌタヌの鏡に映った自分は、なんだか䞍満そうな顔しおいる。
     
    ゚レベヌタヌのドアが開いた。
     
    明日の朝も、早く来よう。
    フリヌアドレスだから、早く来たほうが、いい垭が取れるから。
    そういうこずにしおおこう。



    ▌第話「四月䞉日、興味れロ」


    💛💛💛第話「四月䞀日、最悪の予感」はこちらです💛💛💛



     
     
    ほっこりする恋愛コメディを曞いおいたす。 人を奜きになる理由ず、人を倧切にする理由。 最埌たで読み終えたずき、倧切な人のこずがもっず奜きになっおお、もっずもっず、倧切にしたくなっおる。 そんな物語を曞いおいたす。

    あなたぞのおすすめ