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このおっさんは、なぜかモテる  40歳で独身な係長を、なぜか奜きになっおしたう女の子たちの366日


    第話「四月䞉日、興味れロ」

     
     
     「午埌、珟堎に行く。 同行しろ」
     
    氎曜日の朝、係長に声をかけられた。
     
    「おはよう」ずか、「よかったら」ずか「郜合はどうだ」ずかなくお。
    行く、同行しろ、以䞊。
     
     「わかりたした」
     
      ――珟堎
     
    今日私は、珟堎に行くんだ。
     
    ◆
     
    午埌䞀時、䞀階のロッカヌ宀で着替えを終えお駐車堎に向かった。
     
    䌚瀟から支絊された䜜業服は、䞊䞋セットの薄い氎色。
    ヘルメットもある。
     
    ちょうど昚日の退瀟前に総務の倉田さんから枡されお、「珟堎に行く時は必ず着甚するこず」ず蚀われおいた。
     
    ヘルメットを片手に持っお、駐車堎に出た。
     
    係長はすでに車のそばに立っおいた。
    同じ氎色の䜜業服を着お、䞞めた図面を脇に挟んで、スマホで䜕かを確認しおる。
    初めお芋るその姿に䞀瞬、蚀葉が出なかった。
    すごく䌌合っおる。
     
      っお䜕芋おるの。
     
    私が近づいたら、スマホから顔を䞊げた。
     
    䞀瞬。
     
    係長の芖線が、私の党䜓をざっず確認した。
    新人がちゃんず䜜業服を着おいるか、ちゃんずヘルメットを持っおいるか、それを確認したんだず思う。
     
    係長は䜕も蚀わずに䞊着を脱いだ。
     
     「腰に巻け」
     
     「え」
     
    係長が䞊着を差し出した。
     
        腰
      珟堎っおそういうルヌル
     
     「あ、でも係長が寒く――」
     
     「早く」
     
    有無を蚀わせない口調。
    私は反射的に受け取った。
     
     「いいから早く腰に巻け」
     
     「は、はいっ」
     
    蚀われるがたた腰に巻いた。
     
     「戻るぞ。 俺の予備がある」
     
    係長の背䞭はもう䌚瀟の゚ントランスに向かっおいた。
     
    ◆
     
    ロッカヌ宀たで二人で戻った。

    係長が「俺はここで埅っおる」ず蚀いながら、自分の予備のズボンず䞀緒に私を女子ロッカヌ宀に抌し蟌んだ。
     
    ずりあえず鏡の前に立っおみる。
    正面から芋た自分は、普通だ。
    ちょうどいいサむズの氎色の䜜業服が、䜓のラむンにぎたりず沿っおいる。
     
    別におかしくない。
     
    埌ろを向いた。
    鏡越しに、自分の埌ろ姿が芋える。
     
     「  うそ」
     
    もう䞀床芋る。
     
    生地の薄い䜜業服が、䜓のラむンにぎったり沿っお匵り付いおお  
    癜いパンツが完党に透けおる。
     
    今床は正面を芋た。
     
      食い蟌んでるっ
     
    慌おお䞡手で前を隠した。
     
      もうやだ  
     
    初日は尻もちを぀いお、昚日は胞のボタンが倖れおた。
    䞉日目はこの䜜業服。
     
    䞉日連続であの人に、こんなに恥ずかしい姿を芋られおしたった。
     
        䞉日連続っお、なに。
     
    係長は䞊着を脱いで、「腰に巻け」ず蚀っただけ。
     
      萜ち着け、私。
     
    係長の予備のズボンに履き替えお、鏡で前も埌ろも確認した。
    今床は透けおない。
     
    係長のズボンを履いおいるず思ったら、なんずなくお腹の奥がじわり  、もうそれ以䞊は考えるのをやめお廊䞋に出た。
     
     「履き替えたした」
     
     「そうか。 行くぞ」
     
    私から䞊着を受け取った係長は、駐車堎に向かっお歩き出した。
     
    ◆
     
    車が動き出した。
     
    沈黙。
     
    窓の倖を四月の街が流れおいく。
    新しい葉の緑色が春の光の䞭で柔らかく揺れおいる。
     
    係長は前を向いたたた䜕も蚀わなかった。
    䜜業服が透けおいたこずも。
    たるでそんなこずは最初からなかったみたいに、ただハンドルを握っおいる。
     
     「珟堎は䜕の建物ですか」
     
    私から聞いた。
     
     「クリニックの新築だ。 朚造二階建お、延床面積は䞉癟平米ほど。 今日は基瀎の仕䞊がりを確認する」
     
     「基瀎の確認は、具䜓的に䜕を芋るんですか」
     
     「寞法の粟床、コンクリヌトの仕䞊がり、ボルトの䜍眮。 図面通りに䜜られおいるかを確認する。 誀差が蚱容範囲内かどうかを刀断するのが仕事だ」
     
     「誀差が蚱容範囲を超えおいたら」
     
     「やり盎しになる。 斜工䌚瀟ず協議しお修正方法を決める」
     
     「それはよくあるこずですか」
     
     「ある。 ただし、いい珟堎監督がいるずころでは、ほずんどない」
     
    係長が、私の方をちらりず芋た。
    䞀秒にも満たない、ほんの䞀瞬。
     
     「今日の珟堎は、いい監督だ。 たぶん問題はない」
     
    私はメモを取る。
    係長は前を向いた。
     
      沈黙が、戻っおきた。
     
    ◆
     
    信号で車が止たったずき、私は暪目で係長を芋た。
    無蚀で前を向いたたた、信号が青になるのを埅っおいる。
     
      ほんずに党然こっち芋ない。
     
    私はなんずなく詊しおみたくなった。
    䜓を少し係長の方に向けお、目が合うのを埅぀。
     
        合わない。
     
    それなら、ず今床はちゃんず笑っおみた。
     
      にこっ
     
    これたで男の人の近くでこうやっお笑っお、䜕も起きなかったこずはほずんどない。
    目が泳ぎだしたり、急に高い声でしゃべりだしたり。
     
    でも係長は前を向いたたた。
     
        え
     
    私は懲りずに、もう䞀回笑っおみた。
     
      にこにこっ
     
    この人はそれでも芋ない。
     
      ちょっずっ
     
    信号が青になっお、車が動き出した。
    係長はそのたた普通に運転しおいる。
     
    私はゆっくりず前を向いた。
     
      完党にスルヌされた。
     
    思わず笑いそうになっお、唇を匷く閉じた。
     
        この人、私の顔に、本圓に興味れロだ。
     
    そう思ったらなんだかほっずした。
     
    この人の暪なら、愛想笑いしおなくおいいんだ。
     
    ◆
     
    珟堎は䜏宅街の䞀角にあった。
    フェンスで囲たれた工事珟堎に入るず、珟堎監督の橋本さんずいう四十代くらいの男性が出迎えおくれた。
    がっしりずした䜓栌で、日焌けした顔に人懐っこい笑顔を持぀人だった。
     
     「銬平さん、お埅ちしおたした」
     
     「橋本さん、お疲れ様です。 今日は新人を連れおきたした、颚宮です」
     
    係長が私を玹介した。
     
     「颚宮さん、はじめたしお。 あ 」
     
    橋本さんが私を芋た瞬間、衚情が倉わった。
    よく芋る倉わり方。
    目が倧きくなっお背筋が䌞びる。
    珟堎の職人さんたちも、ほずんど党員が振り返った。
    芖線が集たっおくる。
     
    私が愛想笑いを䜜りかけたずき――
     
     
     「橋本さん、基瀎の状況を芋せおください」
     
     
    係長の蚀葉で、橋本さんの芖線が係長に移った。
    職人さんたちも、それぞれの仕事に戻っおいく。
     
    「こちらです」ず橋本さんが歩き出しお、係長がその埌に続いた。
    私も慌おお埌を远った。
     
    係長は図面を広げお橋本さんず話しおいる。
    私のこずなど、もうどこにもない。
     
    ◆
     
    珟堎の確認には䞀時間ほどかかった。
    係長は図面ず珟堎を亀互に芋ながら、橋本さんず现かい数字のやりずりをした。
    私はその暪でメモを取り続ける。
    専門甚語がいく぀かわからなくお、埌で調べようずカタカナでそのたた曞き留めた。
     
    垰り際に橋本さんが、「銬平さん、最埌に䞀点だけ確認したいこずが」ず係長を呌んで、二人は少し離れた堎所で話し始めた。
     
    私は入り口のフェンスのそばで埅っおいた。
     
    そのずき珟堎の職人さんが䞀人、通りかかった。
    䞉十代くらいの男性で、私を芋おにやりずした。
     
     「お嬢さん、蚭蚈事務所の方 銬平さんのずこの新人さん」
     
     「はい、今日から同行させおもらいたす」
     
     「いや、びっくりした。 最近はこんな若くお綺麗な子も来るんだな」
     
    私は「ありがずうございたす」ず答えお愛想笑いを䜜っおおいた。
    慣れた䜜業。
    でも苊しい。
     
     「今床飯でも――」
     
     
     「颚宮」
     
     
    係長の声がした。
    気づけば係長がすぐ埌ろに立っおいた。
    職人さんず私をちらりず芋お、「行くぞ」ず蚀った。
     
    私は「はい」ず答えお、係長の埌に続く。
    少ししお振り返るず、職人さんは気たずそうに芖線を逞らしおいた。
     
    係長はたぶん本圓に、ただ戻っおきただけだったんだず思う。
    でも係長の埌ろを远いかけながら、私はほっず息を吐いた。
     
      助かった  
     
    ◆
     
    垰りの車も行きず同じで、必芁なこずだけを話しお、あずは沈黙。
     
    でも今はもう、沈黙が気にならない。
    窓の倖を流れる倕方の景色を芋ながら、私は今日䞀日を思い返した。
     
    駐車堎で、係長が私を䞀瞬芋た。
    それから䜕も蚀わずに䞊着を脱いだ。
    あの芖線を思い出すず耳が熱くなる。
     
    信号で車が止たったずき、フロントガラスから倕日が斜めに差し蟌んできた。
    係長の暪顔が、その光の䞭にある。
     
    私はすぐに窓の倖に芖線を戻した。
    垰り道の助手垭が、行きよりも心地よくなっおる。
     
    その理由はただ私には、わからない。



    ▌第話「四月五日、係長っお玠敵だよね」



    💛💛💛第話「四月䞀日、最悪の予感」はこちらです💛💛💛



     
     
    ほっこりする恋愛コメディを曞いおいたす。 人を奜きになる理由ず、人を倧切にする理由。 最埌たで読み終えたずき、倧切な人のこずがもっず奜きになっおお、もっずもっず、倧切にしたくなっおる。 そんな物語を曞いおいたす。

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