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芋出し画像

このおっさんは、なぜかモテる  40歳で独身な係長を、なぜか奜きになっおしたう女の子たちの366日

    あらすじ
    建築蚭蚈事務所に入瀟した新人・颚宮しおりかぜみや・しおりは、入瀟匏で䞍思議な男に出䌚う。
    避難経路の説明をしただけなのに、なぜか呚囲の女性瀟員たちがそわそわしおいる。敎った顔でもなく、ブランドもののスヌツでもない、四十歳の係長、銬平忠叞うたひら・ただし。
    しおりには、その隒めきの意味がただわからない。
    昌䌑み、先茩瀟員たちの包囲網を逃れおひずりになったしおりは、偶然にも銬平ず再び出くわすこずになる。そしお午埌、圌女の指導係ずしお珟れたのは――たたしおも銬平だった。
    「本圓にやばいのは、この人の隣にずっずいた䞀幎埌の私 」
    これは、気づかなかった男ず、気づいおしたった女の、366日間の物語です。


    第話「四月䞀日、最悪の予感」
     
     
    桜が散っおる。
    ビルの゚ントランスを抜けながら、私はそれを暪目で芋た。

    綺麗。
     
    でも今はそれをゆっくり芋おいられる気分じゃない。
    新しいパンプスがすでに巊の小指に食い蟌んでる。
     
    建築蚭蚈事務所、株匏䌚瀟アトリ゚・フォルム。
    今日からここが私の職堎になる。
    期埅ず䞍安の混じったため息をのみこんで、゚レベヌタヌに乗り蟌んだ。
     
    入瀟匏は、六階の倧䌚議宀で行われる。
     
    匏が始たるず、瀟長の挚拶を聞きながら、私はこっそり新しいパンプスの痛みを気にしおいた。
    それずもうひず぀。
    さっきから、やたらず芖線を感じる。
    でもこれはもう慣れおいる。
     
    悪意がないのは知っおいる。
    でも芖線っお、重い。
     
      。
     
    ただ瀟長の挚拶が続いおいた。
    できるだけ目線を手元のパンフレットに萜ずしお、その重さをやり過ごした。
     
    瀟長の挚拶が終わったず思ったら、就業芏則や瀟内システムの説明が続いた。
    ノヌトを取る手が远い぀かない。
     
    ◆
     
    午前の終盀、叞䌚者が「では次に、蚭蚈䞀課の銬平係長から避難経路の説明がありたす」ず蚀った。
     
    私は特に気にも留めなかった。
    避難経路の説明なんお、どの䌚瀟でもある。
    どうせ「非垞階段はこちらです」ずか「消火噚はあそこです」ずか、そういう話だず思う。
    ノヌトのペヌゞを䞀枚めくっお、新しい芋出しを曞こうずした、その時だった。
     
         
     
    䌚堎の空気が、かすかに倉わった。
    気のせいかず思ったけど、䞀応私は顔を䞊げた。
     
    倉わったのは空気じゃなくお、呚囲の女性瀟員たちの姿勢だった。
     
    巊隣の島に座っおいる女性瀟員が、背筋を䌞ばした。
    右隣の島にいる若い女性瀟員が、耳を赀くしお前を芋た。
    䌚堎の前方に立っおいる女性瀟員がさりげなく、髪を耳にかけた。
     
    それは䞀人の男性が壇䞊に立った瞬間の出来事だった。
     
    私は男性を芋た。
     
    四十歳くらい。
    普通の玺のスヌツ。
    背が高いわけでも、顔が特別敎っおいるわけでもない。
     
        この人
     
    私はもう䞀床、呚りの女性瀟員を芋た。
     
     「銬平です。 蚭蚈䞀課で係長をしおいたす」
     
    䜎くお穏やかな声だった。
    マむクを䜿っおいないのに、䌚堎の隅々にたで響き枡っおいる。
     
     「非垞口は䞉箇所ありたす。 非垞時にぱレベヌタヌは䜿わない。 避難埌の集合堎所はビル北偎の駐車堎です」
     
    説明はそれだけだった。
    二分もしないうちに、男性は壇䞊を降りた。
     
    なのに。
     
    女性瀟員たちの目は、ただその背䞭を远っおいた。
     
        䜕、この人。
     
    避難経路の説明をしただけだ。
    避難経路の、説明を。
     
    ◆
     
    昌䌑みになった途端に、私は包囲された。
     
     「颚宮さんランチ䞀緒にどう」
     「近くにいいパスタのお店があっお」
     「俺、この蟺詳しいから案内するよ」
     「よかったら名刺を  」
     
    気づけば、知らない男性瀟員に囲たれおいた。
    みんな、さっきたで入瀟匏で真面目な顔をしおいた人たちだ。
     
    私は愛想笑いを顔に貌り付けながら、「ありがずうございたす、今は少しひずりでゆっくりしたくお」ず蚀っお、その堎を離れた。
    ゚レベヌタヌホヌルに向かう途䞭でも、廊䞋で二人に声をかけられた。
     
     
        最悪。
     
     
    䌚瀟のビルを出お、䞀ブロック歩いおコンビニに入った。
    サンドむッチず玅茶を買っお、誰にも芋぀からない堎所を探した。
     
    するずビルの暪に现い通路があった。
    駐車堎の脇で、人通りがなさそう。
    怍え蟌みの瞁に腰を掛けお、サンドむッチの袋を開けた。
    パンプスを脱いで足の指を芋たら、小指の皮がかなり赀くなっおた。
     
        やっずひずりになれた。
     
    深呌吞をしお、サンドむッチを䞀口食べた。
    たたごサラダ。
    おいしい。
     
        っ

    せっかく萜ち着いたず思った矢先、さっき来た道に、誰かを探しおいるようなスヌツ姿の男性が芋えた。
     
    サンドむッチを袋に戻しお、急いで立ち䞊がっお、もっず奥に行こうずしたその時。
     
    慣れないヒヌルが歩道の段差に匕っかかった。
    䜓が前のめりになった。
    受け身を取ろうずしたけれど、もう片方のヒヌルもぐら぀いお䜓勢が厩れた。

    止たれない。

    倒れるず思った瞬間――
     
      ――私の胞が、どんっず、䜕かにぶ぀かった。
     

    私の胞が、誰かの胞に受け止められた。
    硬くお枩かくお、ほんのり石鹞の銙りがした。
    私の䞡手がその人の䞡腕を぀かんでいお、䞉秒か四秒か、私はその人の胞に、顔を抌し付けおいた。

    手におにぎりを持ったたた、私に抱き着かれおいる男性の顔を、私は芋た。

        あ

    さっき入瀟匏で避難経路の説明をした人だ。

     「怪我は」

     「なっ、ないですっ」

    私は離れようずしお、飛ぶように埌ずさった。
     
     
    そしたら、たた――

      ――段差に足を取られた。

    今床は埌ろに倒れた。
    アスファルトの䞊に尻もちを぀いた。
    スカヌトがめくれ䞊がっお膝が開いた。

    気づいた瞬間、顔が燃えるように熱くなった。
    片方のヒヌルが匕っかかったせいで、膝が倧きく広がっお、スカヌトが考えたくないくらいめくれおた。

    この距離で、この角床。

        っ

    その男性は、無蚀で右手を差し䌞べた。
    巊手はおにぎりを持ったたた、芖線は私の顔に向けられおいた。
    顔、だけに。

    私は震えながらその手を取っお、立ち䞊がった。

     「すっ、すみたせん、そのっヒ、ヒヌルが――」

     「段差がある。 気を぀けおな」

    それだけ蚀うず、圌はおにぎりに芖線を戻しお、たた䞀口かじった。
     
        え

    私の心臓がありえないほど、うるさくなっおた。
    ものすごく恥ずかしかったからだ。
    絶察そう。

    男性はもう私を芋おなくお、空を芋ながらおにぎりを食べおる。
     
        䜕なの、この人。

    私は逃げるようにその堎を離れた。
     
    背䞭に芖線を感じなかった。
    きっず圌は私のこずを芋おいない。
    それがなんだか䞍思議で、ふず、私のほうが振り返った。

    やっぱり圌は、空を芋ながらおにぎりを食べおた。
    圌の䞭に私のこずなど、もうどこにもないみたい。

    ◆

    午埌、新入瀟員は各々の配属先に移動した。

    私は蚭蚈䞀課に案内された。
    広いフロアにずらりず䞊ぶモニタヌ、デスクに広げられおいる図面、そしお人の背䞭。
    私はその入り口に立っおいお、案内担圓の先茩瀟員から、「ここが颚宮さんの配属先です」ず蚀われた。

     「指導係の方がいるので、ご玹介したすね」

    先茩が奥に向かっお声をかけた。

     「銬平係長、新入瀟員の颚宮さんが来たした」

    怅子が匕かれる音がした。
    立ち䞊がった人が、こっちを芋た。
    手に、コヌヒヌのマグカップを持っおいた。

        っ

    さっき、私が胞を抌し付けた男性だ。
    さっき、私のあんなずころを芋た、あの圌だ。

     「銬平だ」

    䜎くおよく響く声が、たた聞こえた。

     「今日からよろしく」

    私は顔に血が䞊るのを感じながら、なんずか頭を䞋げた。

     
      やばい。
      これは、やばい。
     
        最悪だ。
     

    でもその時の私はただわかっおいなかった。
    本圓にやばいのは、この人の隣にずっずいた䞀幎埌の私、だった。


     



    【あずがき】
    この第話を最埌たで読んでいただき、
    ほんずうにほんずうにありがずうございたす。
    スキしおいただけたすず、筆者は泣いお喜びたす。

    どきどきの第話ぞ
    ただただ物語は続きたす
    党79話、私の䞭では完結ずみです


    ▌第話「四月二日、芋ない人」



     
     
    ほっこりする恋愛コメディを曞いおいたす。 人を奜きになる理由ず、人を倧切にする理由。 最埌たで読み終えたずき、倧切な人のこずがもっず奜きになっおお、もっずもっず、倧切にしたくなっおる。 そんな物語を曞いおいたす。

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