
鼓動
もつれた足が絡まってうまく進めない
ぬかるんだ地面が嗤うように僕を摑まえる
鼓動が全身で鳴っている
うるさい
うるさいよ
ああでもそうだ
行かなくちゃ
棒のように既に感覚のなくなった足が
それでもまだ動く
そうだ
行かなくちゃ
間に合え
朝陽まで
息の吸い方も吐き方も忘れてしまった
愚かな僕の肺はそれでもまだ動く
行かなきゃ
間に合え
いつかどこかで聴いたような音が遠くで鳴っている
風の音なのか誰かの唄声か
もう何もわからない
確かなのは
鼓動が鳴っている
鼓動だけが
僕を動かす
汗も涙も鼻水も
ごちゃ混ぜになって後ろに流れて行く
もう感覚のなくなった脚が
気が触れたように忙しなく動く
気の触れた脚は絡まって僕を地面に叩きつける
何度も何度も
ああいいよ
かまうものか
嗤うなら嗤え
かまうものか
泥水も後悔も雨も嫉妬も欲も
嘲りも誹りも裏切りも侮辱も憎悪も排斥も
全部引き受けてやる
かまうものか
行かなくちゃ
嗤うなら嗤え
行かなくちゃ
東の空が白み始める
世界が目覚める
間に合え
間に合え
頭が割れそうだ
視界が揺らぐ
それでもまだ
鼓動は僕を解放しない
狂った脚が体を運ぶ
鼓動だけがそこにある
間に合え
朝陽まで
間に合え
君まで