
『悲劇でなく、喜劇を。』#21 月明かりみたいな人。
障害児なんて産んで、ごめんなさい。
全てに申し訳ない。
あんなに頑張ったのに。
私は旅立とうとする双子を
まだお腹の中にいて、と引き止めた。
あの時、みんなで消えていたなら。
いっそ2人といっしょに
消えてしまいたい。
そう言った。
月明かりは、
私の手を握って言った。
双子の命が生まれたときから
その命は誰のものでもないんだよ。
長男の命は長男のもの。
次男の命は次男のもの。
あなたには生きていてほしい。
誰にも、
誰かの命を奪っていい理由なんてない。
困ったように笑った。
私はその時、
たぶん泣き止んだ。
腕の中で、
まだ生まれて三か月ほどの三男が
しずかな呼吸を繰り返している。
柔らかなミルクの香りが
部屋の中に満ちていた。
この人が夫で、
この子たちの父で、
本当に良かった。
まるで
月明かりみたいな人。
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