
『悲劇でなく、喜劇を。』#12 キッチンの灯りと、消えてしまいたい私。産後鬱の底で三男を抱いていた夜。
診断後の、一番暗かった夜のことを書きました。
今、どこかで孤独を感じている誰かに届きますように。
【生まれた瞬間から背負わせた重荷】
三男が生まれて半年が経った頃、双子の兄たちの診断が降りました。
当時の診断名はPDD(広汎性発達障害)。
その事実を知った瞬間、
私の心に真っ先に浮かんだのは、
まだ何も知らない三男のこと。
「兄が二人とも、障害者」
何という重荷を、この子は生まれた瞬間から背負わされてしまったのだろう。
産んだことすら、申し訳ない。そんな風に思ってしまったのです。
【電気を消せない夜】
その頃から、私は電気を消すと眠れなくなりました。
主人が双子を連れて寝てくれ、私は三男とリビングに布団を敷き、キッチンの灯りをつけたまま横になる毎日。
目を瞑ると、底なしの不安が襲ってきます。
三男に、主人に、両親に。
そして、私の結婚と出産をあんなに喜んでくれた祖父母に。
みんなの悲しい顔を思い浮かべては「申し訳ない」と自分を責め、全部消したい、消えてしまいたい、という気持ちに支配されていました。
それは、完全な産後鬱でした。
【ポニョのホットミルク】
そんな震える夜、私を支えてくれたのは一杯のホットミルクでした。
はちみつを入れ、くるくるとかき混ぜる。
それは、双子が大好きだったアニメ『崖の上のポニョ』のワンシーン。
嵐が来た夜、お母さんのリサが子供たちを落ち着かせるために作る、あの温かいミルク。
家を一歩出れば絶望という名の嵐が吹き荒れているけれど、このミルクを飲んでいる間だけは、リサのように「大丈夫なフリ」ができた。
あの温もりと香りに、私は必死にしがみついていたのです。
【今の私から、あの頃の私へ】
今でも、心がざわつく夜にはあの香りを思い出して飲むことがあります。
当時の自分に、そして同じように暗闇の中で「ごめんね」と泣いているお母さんに伝えたい。
あなたは何も悪くない。
「申し訳ない」という鎖で自分を縛らなくていい。
あの日、キッチンの灯りの下で必死に生きようとしていた私は、確かに三男を守る「リサ」だったのだと、今は思うのです。
あの時、私の震える手を温めてくれたのは、キッチンの小さな灯りと、一杯のホットミルクでした。
今夜も、どこかで誰かが、温かいものを飲んで一息つけていますように。
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