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倧阪城は五センチ《 5 》 【創䜜倧賞2024】

    ヱリ

    《》《 2 》《》《》《》《》
    《》《》《》《10》《11》《最終話》
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    始めは、よく䌌おいる人がいるず、ただ思った。

    人波の向こう、さたざたなステンレス容噚が展瀺されたブヌスで、こちらに背を向けお同行者ず談笑する男の䜇たたずたいが奜たしかったので目を匕いた。
    宇治が珟実・・にいたら、あんな感じかもしれん
    埌ろ姿を芋぀めるうち自然ず笑みが浮かび、顔の方はどれくらい䌌おいるのだろうず興味本䜍で眺めおいるず、振り返った顔がマレヌバクによく䌌おいる。

    宇治だず分かっお、芋本品のディスプレむを敎えおいた指先から血の気がひいた。

    䌁業向けに行われるフヌドビゞネスの展瀺䌚に、わたしの䌚瀟は食品容噚の郚門で出展しおいたのだった。来堎者の立堎であるらしい宇治が、やたら䜓栌のいい䞊叞めいた男ず連れ立っお、こちらに向かっお歩いおくる。メヌカヌの人間か。それずも卞おろし業者か。幎明けに斜術を受けたのが土曜だったこずを思い出し、あの日が仕事始めなのだったら飲食業かもしれないず圓たりを぀けたずころで、

    「由鶎さん、ワむダフヌズさん来はった」

    新芏の顧客察応をしおいた倚郚ちゃんに鋭く声を掛けられ、ハッずしお振り返った。顔銎染みの担圓者が、癜髪混じりの立掟な眉を八の字に䞋げお笑いながら「ダギちゃんお぀かれちゃん」ずタクシヌを止める時のような手぀きで、こちらに向けた手のひらを振っおいる。付き合いの長い取匕先の接客は、わたしの圹目ず蚀うこずになっおいた。すがるように先方に䌚釈をしお、宇治に気づかれるこずのないよう、䜓の向きをしっかりず倉える。

    プラスチックや玙の代替だいたいずしお利甚できる、埪環型の新玠材で䜜ったテむクアりト容噚のシリヌズが、今幎床の新補品だった。

    背埌に気を取られながら、䜿甚しおいる新玠材が補造工皋においおも環境保党に貢献しおいるこずや、耐氎性や耐久性に優れおいるこずを説明する。物珍しそうにランチボックスやパりチ状のドリンク袋を手に取っおいた担圓者は、けれど珟状利甚しおいる補品よりコスト高であるこずを知るず、こちらをあやすような顔぀きで埮笑んで芋本から手を匕いた。

    䟡栌に厳しいワむダフヌズが、今回のシリヌズを䜿う芋蟌みは初めから無い。圢匏的に怜蚎を促し、カタログを手枡しお芋送るず、

    「あ。このドリンクパック、最初っから色が぀いおるんや」

    すぐ埌ろで知った声がしたので、心臓が跳ね䞊がった。咄嗟ずっさにカタログをもう䞀郚手に取り、銖掛けホルダヌに入れた出展者のIDカヌドず名刺を隠すように胞に抱く。

    「䟋えば、このドリンクパックの巊半分だけに、お客様の販売される商品の色味ず盞性の良い色の印刷をかけるんです。これだけで既存商品の印象がファッション性のあるものに倉わりたすし、右半分は容噚の底から口たでドリンクが可芖化されおいたすから、販売物に぀いおお客様に誀認させおしたうこずもありたせん」

    倚郚ちゃんがちょうどドリンクパックの案内を行っおいたので応察しおいるのかずも思ったけれど、「これ良くないですか」「どこで䜿うねん」「䞭厎町なかざきちょうの新店舗ずかで」案内ず䞊行しお宇治ず同行者の䌚話も聞こえおきたので、圌女が察応䞭なのは別の客なのだず分かった。腹を括くくり、けれど名刺はカタログでしっかりず隠したたた振り返る。宇治よりも手前に立っおいた、スヌツが隆起りゅうきするほど胞たわりに厚く筋肉の぀いた、䞉癜県さんぱくがんの倧男ず先に目が合う。

    「そちらは春から販売予定のシリヌズです。埪環型の新玠材を䜿甚しおいるので、導入するこずで䌁業むメヌゞにも貢献できる補品ずなっおおりたす」

    粟䞀杯の笑顔で声を掛けるず、男の暪で宇治が䞀瞬息を飲むのが芋えた。宇治の方ずは、怖くお目を合わせるこずはできない。わたしず歳の頃の同じくらいだろう倧男の方だけを芋䞊げお、マニュアル通りに補品説明を行った。

    「ふぅん。持続可胜なアレですね」

    こなれた衚情で盞槌をうちながらドリンクパックに手を䌞ばしかけ、けれど男はわたしの埌方の混み合う通路に芪しい人間の姿を芋぀けたらしく「カワベさん来おはったんですか」砎顔はがんしお手を軜く䞊げ、ブヌスから離れおしたった。歩き去る男を途䞭たで目で远い、それからゆっくりず正面に向き盎る。正月にホテルで芋たのず同じ、チャコヌルグレヌのスヌツに藍色のネクタむをした宇治が、気たずそうな顔぀きでわたしに頭を䞋げる。

    「すみたせん、案内しおくださっおたのに。続き聞かせおもらっおもいいですか」

    聞き銎染みのあるトヌンで䞁寧に詫び、芋慣れた笑顔を浮かべる宇治ず、その埌ろで先行予玄の手続きを進めおいるらしい倚郚ちゃんが、同じ芖界にいるこずに混乱した。「いえ、倧䞈倫です」ず答えおいる自分が䞀䜓どこに立っおいるのだか分からないたた、こちらも営業然ずした笑顔を返す。
    わたしの、宇治の、目線がボヌルを぀くようにほんの䞀瞬お互いの銖掛けホルダヌに萜ちおすぐに戻る。宇治の方は来堎者IDのみで名刺は入れおおらず、本圓の名前は分からない。胞に抱き続けおいるカタログを、さらに䜓に抌し付ける。

    「今日ぱリアマネヌゞャヌず回っおお。そこにおるヒョロっずした子です、若く芋えるでしょ。ええ奎なんですけど、原䟡意識䜎くお。その堎の思い぀きでやりたいこずやっおるだけなんで、数字の方は党然かな。カワベさんも絡むこずあったら、バキバキに鍛えたっおください」

    わたしの斜め埌ろで雑談をしおいる男の声が、人混みの䞭でもよく通った。宇治の耳も䞀蚀䞀句䜙さず拟ったのだろう。苊笑いしながらドリンクパックに目を移しお「色っお䜕色なんしょく展開なんですか」ず遠慮がちに蚊いおくる。
    「色はオヌダヌメむドです。色芋本の䞭から遞んで指定するこずもできたすし、販売されるドリンク画像をいただけたしたら、AIが解析した盞性の良い色をご提案するこずもできたす」
    ほずんど䞊の空で謳い文句をなぞるず、䞊べおいる芋本品の䞭から、いちばん印刷の凝っおいお䟡栌も高く぀くドリンクパックを、宇治が迷いなく遞び取った。

    数字のほうは、ほんたに、ぜんぜんかも知れんな。

    自分の冎えない営業成瞟を棚に䞊げながら、倧男の芋立おにこっそりず賛同する。宇治がい぀もよりもひずたわり小さく、凡庞がんようなものずしお映るこずで、珟実の人間ずしおの茪郭が際立っおいくようだった。ほんずうにいる人だったのだず思い、傷぀いた。珟実の宇治がいる堎所から、珟実の自分はあたりに遠い堎所にいる。最初から、ほんずうには関係するこずができない人だったのだず、そのこずを思い知らされお、着々ず傷぀いた。

    ドリンクパックの口元のチャックを、よく知った指が巊右に開く。第二関節のあたりたで差し入れ、カラヌ印刷のかかった郚分ず半透明な郚分を行き来しお透け感を確かめおいた指先が、容噚の内偎にふず觊れる。

    「印刷の郚分っお、ドリンク入れたら芋た目の色倉わりそうですね」

    半分ひずりごずのように呟いた宇治がこちらに顔を向けた瞬間、寒気のようなものが銖元に走り、ぞくっず僅かに肩をすくめた。「色、そうですね。倉わるず。若干は、倉わるず思いたす」動揺しお噛みながら答えるのを芋た宇治が、ふっず衚情を砕けさせお目を逞らし、決たり悪そうにドリンクパックを芋本棚に戻す。

    ばれるから、ふ぀うにしお。

    のどかな顔぀きで切実に囁ささやかれ、けれどその声の䞭に、斜術の時にだけ聞く焚き぀けるような響きも混圚しおいるこずに立ち眩くらんだ。䌚堎のざわめきずホテルのしずけさが、揚げ物や粉物の入り混じった俗ぞくめいた匂いず熱い玅茶の雅みやびやかな匂いが、服を着おいる宇治ずパンツだけの宇治が、蚘憶の䞭で耇雑に絡たり合い䞀緒くたになっおいく。どこでもない䞖界ず、わたしのいる䞖界が、容赊なく぀ながっお元の圢を倱い、裏返っお攟り出され、芋たこずのない颚景だけが広がる堎所に立ち尜くす。

    この人を奜き。

    青ざめながら思う。

    セラピストが連れおくるのはゎヌルではなく、四方から溶けお足堎の刻々倱われおいく、流氷の䞊だったのかもしれない。呆然ず氷に膝を぀いお突っ䌏しお、「この人からも、奜きになられたい」打ちのめされたように願った瞬間、ぐらりず頭から海に萜ちた。名刺を隠しおいたカタログを䜓から離す。

    「このQRコヌドから特蚭ペヌゞに行けたす。お客様の販売商品の画像をアップロヌドいただくこずで、簡易的にカラヌ蚺断をしお補品芋本を衚瀺できたすので、よかったら詊しおみおください」

    裏衚玙のQRコヌドを指し瀺しながら宇治に枡した。目の高さを䞀切倉えずに「ありがずうございたす」ず埮笑んで受け取った宇治が、すぐに芖線を䞊叞のほうぞず向けお歩き出す。
    わたしの名前を、意識しお芋ないようにしたのだず分かった。
    さっきたでは䜕があっおも芋られたくなかったものであるのに、いたは芋ないようにされたこずが悲しくおたたらない。このたった数分の間に、いったい䜕が起こっおしたったのか、自分でも党くわからない。

    「お知り合いでした」

    い぀から様子を䌺っおいたのか、接客の終わったタむミングを芋蚈らったように倚郚ちゃんに声をかけられる。顔を向け、笑いながら銖を振る。

    「あんなゎツい人わたしの生掻圏内におらんお」
    「ラガヌマンのほうやなくお。由鶎さんが喋っおた、背ぇ高い平和顔のほう」

    うっすら面癜がりながら宇治の埌ろ姿を目で远う倚郚ちゃんの様子を芋ながら、颚俗でい぀も指名しおる人だず正盎に答えたら、どんな反応をされるのだろうず考える。倚郚ちゃんに倣ならっお䌚堎出口の方向に振り返るず、姿勢ず歩き方のくせで、人混みの䞭でも宇治がどこにいるのだかすぐに分かった。同じスヌツを着た人間がひしめいおいおも、すぐに芋぀けるこずが出来そうだず思いながら、

    「いや、初めお䌚おうたけど」

    蚀っおブヌスに向き盎り、口の開いたドリンクパックを手に取った。チャックをしめお元に戻す。そうですか。ニダニダしながらも、倚郚ちゃんがあっさり匕き䞋がっおくれたこずに感謝をしお時蚈を芋るず、展瀺䌚終了たであず二時間だった。

    きょう、予玄取れるかな。

    しんずした頭で思う。仕事を䞊がったらすぐにアプリを立ち䞊げお、宇治の出勀状況を確かめようず思った。出勀しおいるようだったら、すぐに予玄の手続きをしようず思った。意味もなくカタログをめくり、展瀺プレヌトの角床を正しお回る。頭の䞭で退勀埌の動きだけを反芻しお、消化詊合のように展瀺䌚閉堎の時間を埅぀。



    #創䜜倧賞2024
    #恋愛小説郚門

     
     
     

    ヱリ

     
     
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