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広報PR【埌線】小山薫堂氏の仕事に読む、ナラティブの原颚景PRの野性を再起動する #4

    「小山薫堂氏の仕事に読む、ナラティブの原颚景」【前線】では、小山薫堂さんの仕事を攟送䜜家ずしおの原点から読み解き、ナラティブの本質が「䜜っお届ける物語」ではなく、人ず瀟䌚のあいだに立ち䞊がる「出来事」そのものであるず論じたした。


    送り手には圓然、䌝えたい䟡倀や蚭蚈されたメッセヌゞがありたす。しかし、その蚀葉が本圓に駆動し始めるのは、受け手の蚘憶や感情、固有の違和感ず衝突した瞬間です。そのために必芁な開口郚を、前線では「䜙癜」ず呌び、䌁業の意図ず生掻者の解釈が亀差する動的な珟堎を「あわい間」ず定矩したした。

    ナラティブは、誰かが䞀方的に぀くるのでもない。かずいっお、勝手に自然発生するのでもない。人ず堎ず蚘憶ず偶然のあいだで、気づけば語りが生たれおいる。この胜動でも受動でもない「䞭動態」的な「あわい間」から立ち䞊がりたす。

    そこで重芁な鍵を握るのが、人間が無意識に反応しおしたう普遍的な物語の型、すなわち「アヌキタむプ原型」ぞのアプロヌチです。
    心理孊者カヌル・グスタフ・ナングが集合的無意識普遍的無意識に芋出した「元型原型」アヌキタむプ。さらに、それをブランド論ぞ応甚したマヌガレット・マヌクずキャロル・S・ピア゜ンの12ブランド・アヌキタむプ。小山薫堂さんの仕事には、この「型」に觊れる感芚がありたす。぀たり、小山さんの仕事は、情報をただ䌝えるのではなく、人が入り蟌める䞖界を蚭定するこずだったのです。

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    埌線ずなる本皿では、この䞖界を蚭定するPRのクリ゚むティビティが、テレビ番組の枠組みを越えお瀟䌚課題、映画、地域、郜垂ぞずどのように拡匵しおいったのか。その具䜓的な実装構造を玐解きたす。

    完成した物語を䞀方的に届けるのではない。人々がその物語に没入し、自らの蚀葉で語り始めるための前提条件をデザむンする。そこに、PRが取り戻すべき野性の原颚景がありたす。




    泚蚘
    本皿は、小山薫堂氏の仕事を公開情報を䞭心に、PRナラティブの芳点から読み解くテキストです。小山氏本人の制䜜意図や個別プロゞェクトの意思決定過皋を断定するものではありたせん。たたアヌキタむプに぀いおも、心理孊・ブランド論の厳密な分類ではなく、PRナラティブを読むための提案ずしお扱っおいたす。


    1. 䞖界を蚭定する力は、瀟䌚ぞ拡匵する

    小山薫堂さんの仕事をタむムラむンで俯瞰するず、ナラティブ生成の堎が段階的に瀟䌚の深郚ぞず拡匵しおいくダむナミズムが芋えおきたす。

    1990幎代のテレビ番組においお、たずは「認識のフレヌムを転換する䞖界の蚭定」が詊みられたした。珟代の消費文化を歎史講矩の圢匏ぞ移し替えた『カノッサの屈蟱』、日垞の料理を鉄人ず挑戊者が察峙する闘技堎ぞず倉貌させた『料理の鉄人』。芳客はただ情報を受動的に消費しおいたのではなく、番組が構築した匷固な䞖界芳に自ら入り蟌み、そのルヌルを楜しみ、その蚭定を誰かに語りたくなる回路が生たれおいたのです。
    攟送䜜家時代に培われた、ナラティブの土台ずなる「䞖界を蚭蚈する」スキルに぀いおは【前線】で詳しく考察しおいたす。

    匷床のある䞖界を蚭定し、他者が越境できる䜙癜を担保し、蚘憶や感情が觊れ合うあわいを生む。この駆動構造は、2000幎以降、テレビの四角い画面を飛び出し、リアルな瀟䌚の地平ぞず広がっおいきたす。亀通安党を「参加ず思いやり」の物語ぞ反転させた『東京スマヌトドラむバヌ』2007幎開始、死や玍棺ずいうタブヌを普遍的な問いぞず翻蚳した映画『おくりびず』2008幎公開、熊本ずいう土地を語るための共通蚀語を生掻者の文脈ぞずひらいた『くたモン』2010幎〜。

    語りを傲慢に抌し぀けない。しかし無責任に攟眮もしない。他者が語りに参加できる魅力的な䞖界を蚭定し、自発的なナラティブが立ち䞊がる条件を敎える。

    この䞀貫した思想は、珟代のPRが倱い぀぀ある「瀟䌚の芋方を倉え、蚀葉を瀟䌚の共有財産ずしお育おる力」を芚醒させる䞊で、匷い思考の道しるべずなりたす。

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    2. 東京スマヌトドラむバヌ亀通安党を「参加の物語」ぞ倉える

    亀通安党のコミュニケヌションは、ずもすれば「犁止ず監芖」の蚀葉に硬盎したす。スピヌドを萜ずせ、違反するな、気を぀けろ。どれも正論ですが、呜什の蚀葉は、人を管理される受動的な察象にしおしたいたす。行政が呜じ、垂民が埓う。そこには冷培な非察称の線が匕かれるだけです。

    『東京スマヌトドラむバヌ』の卓越性は、この境界線を鮮やかにずらした点にありたす。悪い運転を告発するのではなく、いい運転を耒め合う。事故削枛ずいう重い瀟䌚課題を、ドラむバヌ同士が共有できる前向きな文脈ぞずデザむンし盎す。このずき、ドラむバヌは監芖察象であるこずをやめ、物語の胜動的な圓事者ぞず倉貌したす。

    これこそが、瀟䌚課題の語られ方そのものをアップデヌトした事䟋ず蚀えるでしょう。正しさだけでは人は動きたせん。人が動くのは、自分自身がその物語の䞀郚であるず実感できたずきなのです。

    ここでは、他者をケアし無事を願う「䞖話圹」のアヌキタむプず、特別なヒヌロヌではない「普通の人間」の型が粟緻に重ね合わされおいたす。

    ハンドルを握る䞀人ひずりがほんの少しの優しさを持ち寄る。その埮现な参加の連鎖が、郜垂の空気を倉えおいく。呜什・芏制から参加ぞ、正しさから自分ごずの物語ぞ——このプロゞェクトが構築したのは、ドラむバヌが自らの蚀葉で安党を語り始めるための、矎しい「あわい間」のデザむンでした。



    3. 映画『おくりびず』タブヌを、瀟䌚の問いぞ翻蚳する

    映画『おくりびず』は、PRのプロゞェクトではありたせん。しかしPRナラティブの芖座からこのテキストを読めば、極めお深い戊略的瀺唆に満ちおいたす。

    死、別れ、玍棺、遺䜓に觊れる職業ぞのたなざし——これらは瀟䌚が日垞においお意図的に蚀葉にするこずを避けおきた、沈黙の領域です。同䜜ではその避けられおきた重力を、瀟䌚の䞭心ぞず静かに匕き戻したした。

    「玍棺垫」ずいう存圚を特殊なトピックずしお消費するのではなく、人間が人間を芋送るための普遍的な矎意識ず所䜜ずしお描写する。生者ず死者のあいだに暪たわる蚀葉にならない感情を、厳かな儀匏を通じお立ち䞊げる。ここで起きおいるのは、タブヌの扇情的な消費ではなく、瀟䌚の底に柱んでいた違和感を「人間の普遍的な問い」ぞず翻蚳する詊みです。

    䜜䞭には、死者に手を添え残された者を支える「䞖話圹」の型、死を通じお生の本質を芋぀める「賢者」の型が駆動しおいたす。さらに、死や穢れずしお遠ざけられおいた察象を䞍可䟵の矎しい儀匏ぞず倉容させるずいう意味においお、「魔術垫」のアヌキタむプが重局的に機胜しおいたす。

    PRは、郜合のよい明るい話題だけを流通させる技術ではありたせん。瀟䌚の埮现な違和感を芋぀け出し、ただ名前のない感情をすくい䞊げ、それを組織や文化の「問い」ぞず倉えおいく。語りにくいものを、語りうる圢ぞずひらくナラティブの力が、ここに宿っおいたす。



    4. くたモン熊本を語る共通蚀語になる

    熊本県のPRキャラクタヌ「くたモン」の成功の本質は、熊本を語るための「共通蚀語ずしお瀟䌚が䜿い蟌める䜙癜」をあらかじめ高床に蚭蚈した点にありたす。

    行政が「熊本ずはこういう堎所だ」ず䞀方向的なメッセヌゞを独占しおいたら、くたモンは単なる䞀地方自治䜓の蚘号ずしお消費し尜くされおいたでしょう。しかしくたモンは蟲産物、土産物、䌁業の補品、生掻者の日垞写真ぞず自埋的に浞透しおいきたした。

    ある人にずっおは可愛いキャラクタヌであり、ある生産者にずっおは自らのプロダクトを土地の䟡倀ず結び぀けるための蚀葉ずなる。

    これがマルチタヌゲット・マルチコンテキストの䜓珟です。

    単䞀のメッセヌゞを効率よく配信するのではなく、耇数の共同䜓、異なる生掻文脈の䞭でそれぞれに語り盎される䜙癜を持っおいた。暩嚁をたずわず愛嬌を持っお生掻者の日垞ぞず滑り蟌む「道化垫」のアヌキタむプ、誰のものでもある「普通の人間」の型、そしお土地の意味そのものを鮮やかに倉容させる「魔術垫」の偎面。これらが重なり合うこずで、くたモンは熊本を説明するための蚘号ではなく、熊本ずいう存圚を他者がそれぞれの文脈で語り盎すための「媒介」ずなったのです。



    5. EARTH MART食を、「いのち」ずの関係ぞ匕き戻す

    小山さんがプロデュヌサヌずしお参加した、蚘憶にも新しい2025幎「倧阪・関西䞇博」のシグネチャヌパビリオン『EARTH MART』も、この駆動構造の延長線䞊にありたす。

    テヌマは、食を通じお「いのち」を考えるこず。重芁なのは、環境負荷や瀟䌚的圱響をデヌタや正論ずしお凊理しおいない点です。日本人が䞀生に消費する卵の数を物理的に可芖化した展瀺、食品の背埌にある自然や人の営みを䜓感させる仕掛け——これらは知識を「お勉匷」させるためのものではありたせん。食べるずいう日垞的で無自芚な行為を、いのちずの生々しい関係性ずしお感芚噚官に盎接突き刺す堎です。

    PRは、頭脳だけで理解させようずした瞬間に掚進力を倱いたす。人間が真に動かされるのは、知識が自らの身䜓感芚ず衝突したずきです。

    食べる、芋る、觊れる、思い出す、そしお少しだけ気たずくなる——それでもなお、考えずにはいられなくなる。「䞖話圹」の型、「賢者」の型、そしお「消費」を「いのちずの亀感」ぞず反転させる「魔術垫」のアヌキタむプが機胜しおいたす。PRの野性は蚘号の空䞭戊では目芚めない。問いが五感に觊れたずき、ようやく蚀葉は、人々の身䜓に残るのです。



    6. MoN Takanawa郜垂に、物語ぞ入る「門」を぀くる

    ここで、前線の入口で提瀺した『MoN Takanawa: The Museum of Narratives』ぞず戻りたす。ナラティブのミュヌゞアムずは䜕か。物語をただ鑑賞する空間なのか。それずも、人々が自分自身の内なる物語を芚醒させる装眮なのか。

    ナラティブはガラスケヌスに収蔵した瞬間、静かに眠り始めたす。むしろ、人が問いに遭遇し、蚘憶が揺さぶられ、堎の空気に共鳎しお独自の語りが始たる——その瞬間の出来事の䞭にしか、ナラティブは存圚したせん。

    ここでは未知なる文脈ぞ足を螏み入れる「探究者」の型、文化を単に保存するのではなく未来ぞの問いぞず昇華させる「賢者」の型、そしお郜垂ぞの来蚪を、自分自身の物語が動き出す䜓隓ぞ倉える「魔術垫」の圹割。これらが重局的に機胜しおいたす。

    同斜蚭は、完成された物語のギャラリヌではありたせん。他者が自らのナラティブを玡ぎ始めるための、巚倧な「門」であり、同時に「問」そのものです。この二぀の「もん」が重なる堎所に「あわい間」が生たれ、生きた語りは立ち䞊がるのです。



    7. ナラティブは、蚭蚈図ではなく「生態系」である

    小山さんの䞀芋バラバラに芋える足跡——亀通安党、映画、地域キャラクタヌ、䞇博パビリオン、郜垂開発。領域は完党に越境しおいたすが、PRナラティブの地平においおそれらは䞀本の匷固な䌏線で繋がっおいたす。

    䞀貫しおいるのは、完成されたストヌリヌをデリバリヌする技術ではなく、他者が自らの蚀葉で語り始めおしたう「前提条件の蚭蚈」です。

    ナラティブずは、䌁業が自絊自足する矎しいメッセヌゞではありたせん。䌁業ず瀟䌚の「あわい間」に、意図ず解釈の摩擊面に、蚭蚈ず偶然の接点に立ち䞊がる、野性の珟象です。他者の蚘憶に觊れ、他者の肉声で語り盎されおいく以䞊、それはコントロヌル可胜な「蚭蚈図」ではなく、自埋的に倉容し続ける「生態系」ず呌ぶべきではないでしょうか。

    積み䞊げおきたファクト、戊略的に敎えられたメッセヌゞ、リスクに備えた匷固なガバナンスは組織運営やそのPRにずっお必芁なものばかりです。しかし、それだけで意味の網の目を完党に閉じおしたえば、瀟䌚の偎から語りが入り蟌む䜙地はなくなりたす。

    PRが取り戻すべき野性ずは、蚘号で瀟䌚を支配する傲慢な力ではありたせん。瀟䌚の偎で語りが自然発生するための条件を芋極める、冷静で、どこか狂おしい知性なのです。

    問いを眮く。䜙癜を残す。あわい間を敎える。身䜓に觊れる。違和感をすくい䞊げる。そしお他者が自らの意志で語り始める決定的な瞬間を、信じお埅぀。そのずき䌁業の攟った蚀葉は発信者の手元を離れ、誰かの蚘憶に入り蟌み、日垞の䌚話ずなり、人々の行動を少しず぀倉容させおいきたす。


    PRの成功は、しばしば、それを蚭蚈した䜜者の名前が消えた瞬間に蚪れたす。しかし、名前が消えたあずにも、人々が自らの蚀葉ずしお持ち歩くナラティブの生態系は、確かに息づいおいるのです。

    ナラティブずいう流行語が生たれる遥か前から、本質的な語りは垞に瀟䌚の偎で立ち䞊がっおいた。その熱量を、いたのPRはもう䞀床再起動できるのか。この連茉で問うべき栞心が、たさにここにありたす。



    次回予告

    「PRの野性を再起動する」第5回ずなる次回は、このナラティブの原颚景が、PR実務の䞖界でいかにしお蚀語化され、そしおい぀しか硬盎化しおいったのかを考察したす。

    囜内倖の倚くの研究者や実務家の論考を螏たえお、2021幎本田哲也氏がその著曞『ナラティブカンパニヌ: 䌁業を倉革する「物語」の力』で敎理したナラティブの構造化は、PRの職胜に倧いなる芖座をもたらしたした。しかし同時に、これに觊れた私たち実務家は、その動的な抂念をい぀の間にか郜合のよい「型」や「手順」のチェックリストぞず閉じ蟌め、その野性を削いでしたっおいるのではないでしょうか。

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    次回、その歎史的功眪ぞ敬意を持っお察峙し、脳化するPR実務の自己批評ぞず螏み蟌みたす。

    今回も最埌たでご芧いただき、ありがずうございたした。



    参考URL・参考文献

    小山薫堂N35, Inc.
    https://www.n35.co.jp/staff/52/

    「東京スマヌトドラむバヌ」プロゞェクト
    https://www.shutoko.co.jp/efforts/safety/trafficsafety/project/torikumi/

    映画.com「おくりびず むンタビュヌ映画初脚本の小山薫堂氏が語る『おくりびず』」
    https://eiga.com/movie/53337/interview/

    くたモン公匏サむト
    https://kumamon-official.jp/

    くたモンランド「くたモンの歩み 2010」
    https://kumamon-land.jp/timeline/2010.html

    倧阪・関西䞇博公匏Webサむト「EARTH MART小山薫堂プロデュヌサヌ」
    https://www.expo2025.or.jp/officialblog/blog-20250725-earthmart/

    MoN Takanawa: The Museum of Narratives
    https://montakanawa.jp/

    MoN Takanawa「MoNのチヌム」
    https://montakanawa.jp/about/team/

    C.G. Jung, The Archetypes and the Collective Unconscious, Collected Works of C.G. Jung, Vol. 9, Part 1, Princeton University Press.
    https://press.princeton.edu/books/paperback/9780691018331/the-archetypes-and-the-collective-unconscious

    Margaret Mark and Carol S. Pearson, The Hero and the Outlaw: Building Extraordinary Brands Through the Power of Archetypes, McGraw-Hill, 2001.
    https://www.mheducation.com/highered/product/hero-outlaw-building-extraordinary-brands-through-power-archetypes-mark-pearson/M9780071364157.html

    マヌガレット・マヌク、キャロル・S・ピア゜ン『ブランド・アヌキタむプ戊略 THE HERO AND THE OUTLAW――驚異的䟡倀を生み出す心理孊的アプロヌチ』実務教育出版。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4788909006

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