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広報PR【前線】小山薫堂氏の仕事に読む、ナラティブの原颚景PRの野性を再起動する #3

    「ナラティブ」前倜、PRは䜕を語っおいたのか。

    シリヌズ「PRの野性を再起動する」では、掗緎されすぎた珟代のPRが、「身䜓性」ず「䜙癜」を芋倱い぀぀あるず論じおきたした。では、それらの芁玠は実際の優れた仕事の䞭で、どのように実装されおいたのか。その問いを玐解く䞊で、私にずっお避けお通れない存圚が、攟送䜜家・脚本家の小山薫堂さんです。

    2000幎代初頭より玄10幎にわたり、私自身が小山さんずご䞀緒したプロゞェクトに぀いおは、業務䞊の理由から具䜓的には觊れるこずができたせん。ここで扱うのは、䞀般的に広く知られおいる小山さんの仕事です。

    銖郜高速道路のプロゞェクト『東京スマヌトドラむバヌ』2007幎、映画『おくりびず』2008幎公開、熊本県PRキャラクタヌ『くたモン』2010幎〜、倧阪・関西䞇博シグネチャヌパビリオン『EARTH MART』2025幎、そしお高茪ゲヌトりェむシティに開通した耇合型ミュヌゞアム『MoN Takanawa: The Museum of Narratives』2026幎たで。時代をたたぐ小山さんの仕事を手がかりに、通底するPRのクリ゚むティビティの原颚景を芋぀め盎したす。

    「ナラティブ」ずいう蚀葉が実務においお䞀般化する前から、すでに珟堎には「語りが瀟䌚に立ち䞊がる」仕事があったのです。



    1. PRずいう匿名性のクリ゚むティブ瀟䌚の新しい垞識を創る

    振り返れば、私が小山さんずプロゞェクトをご䞀緒させお頂き始めた2000幎頃のPRは、今ほどそれを蚭蚈した個人名が前面に出る職胜ではありたせんでした。広告クリ゚むティブのように誰が手がけたかが華々しく語られるこずは皀で、PRパヌ゜ンは、垞に匿名性の高い堎所に眮かれおいたした。

    問題は「それを誰が䜜ったか」ではなく、その蚀葉が「い぀の間にか瀟䌚の蚀葉になっおいる」ずいうこず。これこそが、PRずいう仕事の本質を衚しおいたす。

    PRの本圓の成功ずは、しばしば䌁画者や蚭蚈者の名前が消える瞬間に蚪れたす。䌁業の発したメッセヌゞが自瀟の所有物であるこずをやめ、自治䜓の掲げたスロヌガンが生掻者の日垞䌚話に溶け蟌む。ある䌁画が、誰かの思い出や行動、あるいは新しい習慣に入り蟌んでいく。そうなったずき、PRは単なる「情報発信」を超え、「瀟䌚の新しい圓たり前」「瀟䌚の新しい垞識」を誘発する仕事ぞず、その姿を倉えおいきたす。

    これに぀いおは、PRずしお発出した蚀葉の䞀郚が、「流行語」ずしお扱われる事も少なくないこずからもお解り頂けるでしょう。


    小山さんの仕事をPRの芖点から読むずきに凝芖すべきも、たさにその点なのです。「圌が䜕を発明したか」ずいう属人的な事実以䞊に、䌁業や地域の蚀葉がどのように人々の蚘憶ぞ滑り蟌み、他者の口元で自埋的に語り盎されるようになったのか。
    そこに、ナラティブずいう抂念が語られ始める前の原颚景がありたす。



    2. MoN Takanawaナラティブは「問い」から始たる

    ただ蚘憶に新しい2026幎3月、高茪ゲヌトりェむシティに開通した文化創造・発信拠点『MoN Takanawa: The Museum of Narratives』2026幎。小山さんが総合プロデュヌサヌを務めるこの斜蚭の存圚は、本皿の入口ずしお象城的です。

    ミュヌゞアムずは本来、完成された䜜品や䜓系化された知識をガラスケヌスに収め、来通者が静かに鑑賞する堎所です。しかしそこに「ナラティブ」ずいう蚀葉が冠された瞬間、意味の䜍盞が倉化したす。ナラティブずは保存される客䜓ではなく、人が䜕かに觊れた瞬間に自分自身の内偎で立ち䞊がる「出来事そのもの」だからです。

    着目したいのは、ナラティブを完成した物語ずしお提瀺するのではなく、「問いが開く堎」ずしお空間を機胜させる感芚です。物語を抌し぀けるのではなく、問いを眮く。人がそれに觊れ、蚘憶が揺さぶられ、独自の語りが始たっおいく――この順序が重芁です。

    PRも党く同じ構造を持ちたす。
    䌁業がどれほど矎しいストヌリヌを産み萜ずしおも、それだけではナラティブになりたせん。生掻者がそこに自らの実感を重ね、瀟䌚が別の文脈で語り盎し、思いがけない堎所で意味が増殖しおいく。その動的なプロセスを経お初めお、蚀葉はナラティブぞ転化したす。ナラティブは、展瀺するものではなく、発生するものなのです。



    3. 䜙癜から「あわい」ぞ䞭動態ずしおのナラティブ生成

    圓シリヌズ第2号では、メッセヌゞが瀟䌚で育぀ためには他者の経隓が入り蟌む「䜙癜」が必芁だず論じたした。ただし䜙癜ずは、単なる空癜や受け手ぞの䞞投げではありたせん。

    そこは、䌁業の意図ず受け手の解釈が觊れ合い、ずれ、ぶ぀かりながら、新しい意味を垯びおいく堎所です。蚭蚈されたメッセヌゞが生掻の蚘憶ず衝突し、堎の空気や偶然の接続によっお、予定しおいなかった新しい意味が生たれる。この、意味ず意味が亀差し語りが自ずず立ち䞊がる領域を、ここでは「間あわい」ず呌びたいず思いたす。

    「あわい」ずは、責任の所圚をがかす曖昧さではありたせん。䌁業ず瀟䌚、蚭蚈ず偶然のあいだで、ナラティブが生成される動的な珟堎です。「䜙癜」が意味を持ち蟌むための開口郚であるならば、「あわい」は語りが立ち䞊がる生成の舞台ず蚀えたす。

    優れた䌁画は、誰かが䞀方的に補造するものでも、完党に自然発生するものでもありたせん。人ず堎、蚘憶ず偶然のあいだで「気づけば語りが立ち䞊がっおしたっおいる」状態を導くこず。

    この感芚は、胜動でも受動でもない「䞭動態」の論理に極めお近いものです。自ら䜜るずいうより、立ち䞊がる。語らせるずいうより、語りが生たれる条件をそっず敎える。PRのクリ゚むティビティずは、匷い蚀葉で瀟䌚を支配するこずではなく、瀟䌚が自分の蚀葉で語り始めおしたう「あわい」を蚭蚈するこずに他なりたせん。

    具䜓的には、䌁業が「正解」をすべお語り切るこずをあえお止める「匕き算」の勇気を持぀こず。ブランドの䞻匵を100䌝えるのではなく、あえお20を未完成のたた瀟䌚に投げ出し、受け手が自分の文脈で補完する䜙地を譲歩する。この䞀歩匕く姿勢こそが、結果ずしお「語らされる」のではなく、「語りが生たれる」ずいう、KPIを超えた熱量を生むのです。

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    4. 攟送䜜家ずいう原点䞖界を「蚭定」する仕事

    小山薫堂さんのPR的アプロヌチを読み解く䞊で欠かせないのは、圌の本職が「攟送䜜家」であるずいう事実です。倧孊圚孊䞭に『WIDE SHOW 11PM』日本テレビよみうりテレビで攟送䜜家ずしお掻動を始めお以来、小山さんはテレビずいうメディアを通じお、語りが立ち䞊がる「堎」を぀くり続けおきたした。

    小山さんが䌁画・構成に関わった深倜人気番組『カノッサの屈蟱』1990幎1991幎フゞテレビでは、珟代の消費文化や流行をそのたた解説するのではなく、「歎史講矩」のフレヌムワヌクぞず移し替えたした。教授が厳かに講矩を進めるずいう䞖界芳の䞭で、芖聎者は笑いながら、瀟䌚の芋方そのものを鮮やかに曎新されおいく。ここで起きおいたのは情報の䌝達ではなく、認識のフレヌムの倉換です。


    あるいは䞀䞖を颚靡した料理察決バラ゚ティ番組『料理の鉄人』1993幎1999幎フゞテレビ。料理ずいう日垞的な営みを、架空の団䜓「矎食アカデミヌ」䞻宰による真剣勝負のドラマぞず倉貌させたした。「矎食アカデミヌ」所属の料理人は鉄人ずなり、食材はテヌマずなり、厚房はコロシアムを圷圿ずさせるキッチンスタゞアム競技堎ずなる。確固たる蚭定があるからこそ、人はその䞖界に没入し、自ら問い、䌚話を始めたくなりたす。


    小山さんの仕事は、ロゞックで説明する前に、たず䞖界を「蚭定」したす。
    商品を機胜的に説明する前に、瀟䌚がそれをどう芋ればよいのかずいう芖座を蚭蚈する。䌁業の掻動をただ䌝える前に、その掻動がどんな䞖界芳の䞭で茝くのかずいう前提を眮く。メッセヌゞを䞀方的に届ける前に、他者が語りに参加できる魅力的な堎を぀くる。

    攟送䜜家ずいう「培底した裏方」の仕事こそが、瀟䌚の芋方をドラスティックに倉えおいく。ここに、私たちが再起動すべきPRクリ゚むティビティの原点がありたす。



    5. 1990幎代から2026幎ぞ拡匵するナラティブの射皋

    小山さんの仕事をタむムラむンで俯瞰するず、圌が実践しおきたナラティブ生成の射皋がより鮮明になりたす。

    1990幎代、『カノッサの屈蟱』や『料理の鉄人』ずいうテレビ番組においお、「䞖界をどう蚭定し、芳客をどう招き入れるか」の思考実隓が繰り返されたした。その思想は2000幎代以降、メディアの枠組みを超えお瀟䌚実装されおいきたす。

    銖郜高速道路の『東京スマヌトドラむバヌ』2007幎〜では、亀通安党を「取り締たり」から「参加ず配慮」の物語ぞ。映画『おくりびず』2008幎では、死や玍棺ずいうタブヌ芖されがちなテヌマを、他者を芋送るずいう普遍的な問いぞ翻蚳した。『くたモン』2010幎〜では、地域を語る共通蚀語を瀟䌚ぞひらき、倧阪・関西䞇博の『EARTH MART』2025幎では、「食べる」ずいう営みをいのちの埪環ずしお五感で問い盎す。そしお2026幎、『MoN Takanawa』においお、ナラティブそのものを郜垂に開かれた問いずしお構造化するに至りたす。

    テレビから道路ぞ。映画から地域ぞ。䞇博から郜垂ぞ。

    媒䜓も目的も倉遷しながらも、底流には䞀貫した思想がありたす。完成された物語を䞀方的に届けるのではなく、人々がその䞖界に入り蟌み、自分の蚀葉で語り始めるための「前提条件」をデザむンするこず。

    ここに、私たちが立ち返るべきナラティブの原颚景があるのです。



    6. 人は、無意識の「型アヌキタむプ」に反応する

    小山さんの仕事がこれほどたでに駆動する理由を掘り䞋げるず、人間が本胜的に反応しおしたう「物語の型」ぞの卓越した感芚に行き着きたす。

    それは、単なる分類のためのフレヌムワヌクではありたせん。5章で述べた「蚭定」を、個人の嗜奜を超えお、人類が共通しお持っおいる「抗えない反応のスむッチ」ぞず接続するための装眮です。

    心理孊者カヌル・ナングは、個人の経隓を超えた集合的無意識の奥底に、神話や普遍的な象城ずしお繰り返し珟れる「原型アヌキタむプ」を芋出したした。この思想を珟代のブランド論ぞず応甚し、実務的なフレヌムワヌクずしお䜓系化したのが、マヌガレット・マヌクずキャロル・S・ピア゜ンによる『The Hero and the Outlaw』McGraw-Hill、2001幎です。䞡者は、「英雄」「魔術垫」「賢者」「道化垫」ずいった12の物語の型ブランド・アヌキタむプが、人の蚘憶や感情を匷く揺さぶる構造を瀺したした。

    小山さんのクリ゚むティビティを読み解くカギずしお、このアヌキタむプ原型の芖点はずおも有効です。

    たずえば『料理の鉄人』は、単なる調理番組ではありたせん。料理人を「鉄人英雄」に祭り䞊げ、厚房を「競技堎闘技堎」ぞ、食材を「詊緎」に倉え、審査を厳かな「儀匏」に仕立お䞊げたした。そこには「英雄」「支配者」「魔術垫」のアヌキタむプ原型が重局的に機胜しおいたす。結果、料理はレシピの解説であるこずをやめ、挑戊ず倉容の物語ぞず昇華されたのです。

    知的ながらも培底的にふざけ、それによっお瀟䌚の芋方を反転させる『カノッサの屈蟱』には、「賢者」ず「道化垫」が同居しおいたす。

    人は、芋たこずもない奇抜なアむデアだけに熱狂するわけではありたせん。むしろ人類が叀くから共有しおいる「物語の型」に觊れたずき、自らの蚘憶や感情をそこぞ滑り蟌たせるのです。叀い型が、珟代の䌁画ずいう新しい噚の䞭で息を吹き返すからこそ、他者は迷わずその䞖界ぞ没入できるのではないでしょうか。

    ナラティブが熱を垯びる瞬間には、人間の深局心理を突くアヌキタむプ原型の駆動があるのです。※


    ※ここでのアヌキタむプ解釈は、小山氏本人の制䜜意図を断定するものではありたせん。ナング心理孊およびブランド・アヌキタむプ論をベヌスに、公開された仕事をPRナラティブの芳点から読み解くための批評的仮説ずなりたす。


    7. ナラティブは、語らせるものではなく、立ち䞊がるものである

    ここたでみおきた通り、小山さんの仕事から抜出できるナラティブ生成の原理は、次のように芁玄できたす。

    1. 匷床のある䞖界を蚭定し、他者が越境できる「䜙癜」を担保する。

    2. 䌁業の意図ず生掻者のリアリティが亀差する「あわい」を蚭蚈し、語りが䞭動態的に立ち䞊がる条件を敎える。

    3. そしおその語りを人間の深局にある「アヌキタむプ」ぞず接続し、持続的な熱量を誘発する。

    この䞀連のプロセスは、珟代のPR実務に察する匷烈なパラダむムシフトを迫っおいたす。私たちは぀いナラティブを「自瀟で぀くり、コントロヌルし、浞透させるもの」ず錯芚しがちです。もちろん、戊略的な蚭蚈やリスク管理は実務の前提ずしお䞍可欠です。しかし、それだけでは蚀葉は瀟䌚ぞ開かれたせん。ナラティブは䌁業の手元で完結するものではなく、人ず堎、蚘憶ず偶然のあいだで「立ち䞊がっおしたう」ものだからです。

    PRに求められる真の職胜ずは、粟緻なメッセヌゞ管理技術に閉じこもるこずではありたせん。䞖界を倧胆に蚭定する力。矎しい䜙癜を残す力。他者ずの境界である「あわい」を凝芖する力。そしお、人の奥底にある型に觊れる力。

    PRをはじめコミュニケヌション党般の議論においお、「ナラティブ」ずいう蚀葉が瀟䌚実装された蚘号になる遥か前から、本質的な語りは垞に瀟䌚の偎で立ち䞊がっおいたした。それを可胜にしおいたのは、䌁業の郜合を䞀方的に抌し぀ける自己䞻匵ではなく、問いを眮き、堎をひらき、他者の蚘憶が越境できる蚭定を甚意する、野性的なクリ゚むティビティにほかなりたせん。



    次回予告

    次回は、このナラティブ生成の原理が瀟䌚の䞭でどのように拡匵されおいったのか、各論ぞず䞀歩螏み蟌みたす。

    『東京スマヌトドラむバヌ』から『くたモン』、そしお『MoN Takanawa』ぞ。攟送䜜家ずしお培われた「䞖界を蚭定する力」が、いかにしお道路、映画、地域、郜垂の䞍条理や違和感を「瀟䌚的な問い」ぞず倉換し、人々を圓事者ぞず倉貌させおいったのか。

    「小山薫堂氏の仕事に読むナラティブの原颚景」埌線にもご期埅ください。

    今回も最埌たでご芧いただきありがずうございたした。



    参考URL・参考文献

    小山薫堂N35, Inc.
    https://www.n35.co.jp/staff/52/

    MoN Takanawa: The Museum of Narratives
    https://montakanawa.jp/

    MoN Takanawa「MoNのチヌム」
    https://montakanawa.jp/about/team/

    國分功䞀郎『䞭動態の䞖界──意志ず責任の考叀孊』医孊曞院、2017幎
    https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/87748

    國分功䞀郎『䞭動態の䞖界──意志ず責任の考叀孊』新朮文庫、2025幎
    https://www.shinchosha.co.jp/book/103542/

    C.G. Jung, The Archetypes and the Collective Unconscious, Collected Works of C.G. Jung, Vol. 9, Part 1, Princeton University Press.
    https://press.princeton.edu/books/paperback/9780691018331/the-archetypes-and-the-collective-unconscious

    Margaret Mark and Carol S. Pearson, The Hero and the Outlaw: Building Extraordinary Brands Through the Power of Archetypes, McGraw-Hill, 2001.
    https://www.mheducation.com/highered/product/hero-outlaw-building-extraordinary-brands-through-power-archetypes-mark-pearson/M9780071364157.html

    マヌガレット・マヌク、キャロル・S・ピア゜ン『ブランド・アヌキタむプ戊略 THE HERO AND THE OUTLAW――驚異的䟡倀を生み出す心理孊的アプロヌチ』実務教育出版。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4788909006

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