
マチアプ婚の40代DINKs、マンションを買う(8話目)
前回のお話はコチラ
「一度、プロに見てもらおうか」
かねてより妻とは、
「一度プロ目線で資金計画を見てもらいたいよね」
と話していた。
今回は、ファイナンシャルプランナー(以下FP)に相談したときの話を書こうと思う。
とはいえ、今回相談したのは“完全に中立なFP”ではない。
4話目で訪れたマンション施工会社と提携しているFPだ。
正直、こうした無料相談には少し警戒心もあった。
どうしても提携先の物件に寄せたアドバイスになるのではないか、という先入観があったからだ。
本来なら、日本FP協会のような中立機関で有料相談を受けるべきなのだろう。ただ、忙しさと“まあいいか”という気持ちが勝ってしまい、今回は見送った。
まずは、自分たちのお金の管理に「外の視点」を入れること。
それが今回の目的だった。
FPのIさんという人物
担当してくれたのは、30代後半の男性・Iさん。
双子の子どもがいて、私と同じ県に戸建てを購入しているという。
ブルー系のスーツに、ボストン型のメガネ。
柔らかい物腰の中に、どこか営業としての芯の強さを感じさせる人だった。
20代の頃に戸建て営業をしていたこともあり、自身も戸建てを購入したらしい。
戸建て営業は戸建てを買い、
マンション営業はマンションを買う。
どうやら、そういう世界らしい。
名刺にはいくつもの資格が並んでいた。
MDRT成績資格会員
2級FP技能士
宅地建物取引士
証券外務員2種
中でも「MDRT成績資格会員」は、生命保険・金融サービス分野で高い実績を持つ者に与えられる国際的な資格とのこと。
あとから気づいたのだが、「不動産事業部長」という肩書きもついていた。
30代でこのポジション。なかなかの迫力だ。
一方の私はといえば、
名刺を受け取っても気の利いた一言も出てこないタイプである。
たぶん、こういうところで差がついていくのだろう。
我が家のリアルな家計
事前に、以下の情報をまとめておくよう依頼されていた。
金融資産
借入
収入
支出
余剰金
我が家は「お小遣い制」ではなく、
共通の財布と貯金を妻が管理し、残りは各自で自由に使うスタイル。
堅実な妻にはそれなりの蓄えがある。
一方で私は、結婚するまでほぼ貯金ゼロ。
3年ほど前に始めたつみたてNISAと、わずかな暗号資産があるくらいだ。
借入は、私のプライベートローンが10万円強。
これは住宅ローン審査前に完済が必須。
40代・子なし共働きで、世帯収入は平均程度。
家賃や生活費を差し引くと、月の余剰金はそれぞれ3〜5万円ほど。
この時点で私たちは、
「初期費用400万円の大手デベロッパー物件を買えるのか?」
という問いに答えを求めていた。
※その物件については6話目で書いています。
「全然いけそうですね」
Iさんは、私たちのメモをひと通り見たあと、
開口一番こう言った。
「全然いけそうですね」
正直、嬉しさよりも先に疑念が浮かんだ。
──本当に?
というのも、前日まで散々ChatGPTに相談し、
「その物件は厳しい」という前提で考えていたからだ。
私たちが知りたかったのはむしろ、
「じゃあ現実的なラインはどこか」だった。
1時間ほどの相談は、終始ポジティブな空気のまま終了。
後日、詳細な資料をもとに再度説明してもらうことになった。
一度で終わると思っていた私は、内心少しだけ面倒に感じていた。
とはいえ、相手もビジネスだ。
ここからが本番なのだろう、と思った。
二度目の面談、そして拍子抜け
一週間後。
雨の中、電車で40分かけてIさんの会社を訪れた。
この時点で、提携マンションを購入する意思がないことは営業担当に伝えていた。
そのため、今回は個人的にIさんとやり取りし、直接訪問する形になった。
結論から言うと——
今回も、あっさり終わった。
用意されていたのは、A4で10枚ほどの資料。
定年まで働いた場合の収支見込み
つみたてNISAの継続有無による差
妻の貯蓄を投資に回した場合のシミュレーション
どれも、内容は一貫してポジティブ。
例の大手物件も「ペアローンなら余裕をもって購入可能」との見解だった。
身構えていた私は、完全に肩透かしを食らった。
営業の気配と、身の上話
最後は少し雑談をした。
Iさんのご両親が熟年離婚した話。
その際、弁護士の手配などをIさん自身が担ったという話。
40代という年齢を考えると、
どこか他人事とは思えない内容だった。
こういう話には、妙に心が寄る。
後日、IさんからLINEが届いた。
物件が決まったら連絡がほしい
物件に応じた商品提案をする
ようやく「営業らしさ」が顔を出した瞬間だった。
ポジティブすぎる違和感
今回の相談を通して、
資金計画の考え方そのものは確かに勉強になった。
ただ同時に、どうしても拭えなかった感覚がある。
——あまりにもポジティブすぎる。
安心させることも、仕事の一部なのだろう。
だがその裏に、「商品ありき」の構造が透けて見える気もしてしまう。
マンション提携のFP相談とは、
きっとこういうものなのだ。
そう理解しながらも、
私たちはまだどこかで疑っている。
「本当に、このまま進んでいいのか」と。