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【授業実践#31】1学期まとめ!「公共ってこんな授業だったんだ!」|高校1年生144人が教えてくれた"本当の学び"

    はじめに|「公共」は知識を覚える科目ではありません

    今回の記事は1学期の授業の「まとめ」のような記事になります!

    先日、高校1年生・公共の授業では、1学期の最後にまとめのふり返りを提出してもらいました(ロイロノートで提出)。

    ふり返りの問いは次の2つです。
    ①1学期の公共の授業の内容で学んだこと・考えたこと(200字以上)
    ②1学期の公共の授業を受けた自分自身の変化・成長(200字以上)

    4クラス・144名分のふり返りを読み終えた今、改めて実感したことがあります。それは、公共は知識を覚える科目ではなく、社会をどう見るか、自分をどう見るか、他者とどう生きるかを考える科目だということです。

    私の普段の授業は、2つのパートで構成しています。

    前半約15分は「時事理解」。
    ニュース記事やニュース動画を題材に、今社会で起きている出来事について考えます。

    後半約35分は「教科書内容理解」。
    1学期の公共では、青年期や宗教、思想、哲学といった倫理分野を扱いました。

    「時事理解」と「教科書内容理解」で共通している点があります。
    それは、どちらのパートでも、生徒たちに「正解が一つではない問い」「価値観が分かれる問い」を投げかけていることです。

    生徒たちは次のような流れで取り組みます。

    ①問いに対して、生徒たちはまず自分一人で考えます(個・2分)。
    ②次に、ペアワークで意見を共有します(協働・1分)。
    ③そして見事?乱数で指名された2名が全員の前で発表します。
    ④クラスメイトの様々な意見を聞き、自分の意見を書き直したり、書き足したりします。

    ↑↑の①~④の流れについて、「時事理解」と「教科書内容理解」のそれぞれで行っています。

    私が授業を通して大切にしているのは、生徒たちが自分なりの「解(意見)」を出すこと、そして自分とは違う「解(意見)」を受けとめることです。

    この繰り返しこそ、私の授業の「軸」と言えます。
    だから、授業後に生徒たちが、「あー考え過ぎて頭が疲れた……」と言ってくれたら最高なわけですね笑

    難しい問いに対して、全力で、頭をフル回転させて考えてほしい。
    このような思いで1学期の授業を積み重ねてきました。


    ①1学期に扱った「時事理解」|13本のニュースと13の問い

    1学期に扱った「時事理解」の記事は次の13本です。
    それぞれの記事について、問いを投げかけました。

    ①米CIA、極度に用心深かったハメネイ師をどのように殺害したのか
    問い:国家による暗殺や攻撃は、どこまで正当化されるのだろうか。

    ②退職する新入社員続出、初日に代行依頼殺到
    問い:“向いていない仕事”は、すぐに辞めるべきか。それとも続けるべきか。

    ③「戦艦大和」撃沈81年
    問い:特攻という状況の中で、関係した人々は「選べなかった」と言い切ってよいのだろうか。

    ④ロシア、大学生を兵役募集の標的に
    問い:ロシアの大学生たちは、この状況の中で「自分で選んでいる」と言えるのだろうか。

    ⑤「ブルーカラー」に脚光、米国では“ブルーカラービリオネア”も
    問い:これからの社会で“価値がある人”とはどんな人だろうか。

    ⑥仕事のやる気、「3連休の分散型」が保ちやすい
    問い:「頑張り続けられる環境」とは、どんな環境だろうか。

    ⑦「あしに おなまえかいて、ママ」、灘中学校の入試問題で”ガザを題材にした詩”
    問い:この詩の言葉は、現代の戦争や国際政治の「どんな見え方」に疑問を投げかけているか。

    ⑧「個人的な友情」使わずハグなし、「トゥキディデスの罠」(米中首脳会談)
    問い:国家同士に「友情」は成立するのだろうか。

    ⑨Google、無休で働くAIエージェント「Gemini Spark」発表
    問い:AIが“仕事”を代わりに行う時代に、人間にしかできないことは何だろうか。

    ⑩「少年法で守られるから大丈夫」が闇バイトの誘い文句に
    問い:人は、厳しく罰することで悪を防げるのだろうか。それとも、人は教育や環境によって変われる存在なのだろうか。

    ⑪「神様助けて」津波で同級生12人が犠牲、心の叫びつづった少女
    問い:「経験していない出来事」を「自分事」として考えることはできるのだろうか。

    ⑫キャンプ場女児行方不明、母が振り返る”子どもの消えた家族”に起こる現実
    問い:人はなぜ、事実が分からないうちから「分かった気」になってしまうのだろうか。

    ⑬皇室典範改正、首相「早急に
    問い:あなたはこれからの天皇制をどうしていくべきだと考えるか。

    ↑↑13本の「時事理解」のいくつかについては、【授業実践】の記事で紹介しています。よろしければご覧ください!

    また、「時事理解」の設計方法については、↓↓の記事に纏めています(有料ですが……m(_ _)m)


    ②1学期に扱った「教科書内容理解」|13単元と17の問い

    1学期の「教科書内容理解」では、次の倫理分野の13単元を扱いました。
    ここでも、それぞれの分野で「考える問い」を投げかけました。

    ①私たちの生きる現代社会
    問い:これからの社会で「生きやすい人」とはどのような人だろうか。

    ②青年期について考えよう
    問い:これからの人生で「自分はこうありたい」と思う姿はどのようなものか。

    ③悩むことについて考えよう
    問い:あなたが今抱えている“悩み”は、本当は何を求めていることから生まれているだろうか。

    ④ジェンダーについて考えよう
    問い:あなたは「男らしさ」や「女らしさ」は必要だと考えるか。

    ⑤学ぶことについて考えよう
    問い:AIが何でも答えを出してくれる時代に、人間はなぜ学ぶ必要があるのか。

    ⑥社会参画とキャリアについて考えよう
    問い:あなたはどのような形で社会に関わりながら生きていきたいか。

    ⑦宗教について考えよう
    問い:自分と異なる宗教や価値観を持つ人と、どのように共生していくべきか。

    ⑧日本の思想について考えよう
    問い:『黄泉がえり』や『ツナグ』といった映画は、なぜ世代を超えて人の心を動かすのだろうか。

    ⑨日本の伝統と文化について考えよう
    問い:なぜ日本文化は世界の人々を惹きつけるのだろうか(また、世界の人々に伝わりにくい部分は何か)。

    ⑩よく生きる 古代ギリシャの思想
    問い:人は「正しく生きること」と「幸福に生きること」を両立できるか。

    ⑪人とは何か 古代中国の思想
    問い①:あなたは、孟子の「性善説」と荀子の「性悪説」、どちらの考え方に近いだろうか。
    問い②:人を「基本的には善である」と考える社会と、「放っておくと悪に向かう」と考える社会では、どのようなルールや制度の違いが生まれるだろうか。
    問い③:今の社会や学校は、孟子・荀子のどちらの考え方に近いだろうか。また、それはなぜだと思うか。

    ⑫動機と結果 近代西洋の思想
    問い①:結果は悪くても“良い行い”と言えることはあるだろうか。
    問い②:「良い行い」とは、動機が正しいことが重要か、それとも結果が良いことが重要か。

    ⑬公平と正義 現代の思想
    問い①:なぜ「悪い人」ではなく「普通の人」が危険なのだろうか。
    問い②:国家が“正義”を掲げて行う戦争は、正当化されるだろうか。

    ↑↑13単元の「教科書内容理解」のいくつかについても、【授業実践】の記事で紹介しています。よろしければご覧ください!


    ③そして迎えた1学期最後のふり返り

    このように、生徒たちには1学期を通して13本の「時事理解」と13単元の「教科書内容理解」の全部で30の問いについて本気で考えてもらいました。

    毎時間、自分なりの答え(意見)を全力で・必死に考え、ペアワークで相手に伝え、相手の考えも受けとめて、もう一度考え直してみる。

    こうした積み重ねの結果が、今回の144人分のふり返りです。

    ふり返りを読み、生徒たちの成長・変化に心からの敬意を抱くとともに(私自身が高1の頃より全然すごいです…笑)、授業者の自慢(笑)としては「狙っていたことが実現できている!」という「手ごたえ」も実感しています。

    夏休み明けの2学期、そして3学期。
    この生徒たちはもっと考えられる。もっと深く対話できる。もっと社会の出来事を自分事として捉えられる。そんな期待や楽しみを今から抱いています。

    ここからは、144人のふり返りの中から、特に印象に残った「言葉」をそのままの形で紹介します。


    ④ニュースを見るようになった!

    144人のふり返りで、最も多かった変化がこの「ニュースを見るようになった!」でした。

    私が特に嬉しく感じたのは、社会を知ろうとする姿勢そのものが生徒たちの中に育ち始めていることです。

    ・公共の授業でニュースを見ることが要因で毎日朝にニュースを見るようになりました。なので前の自分よりも世界のニュースのことをよく知るようになりました。

    ・私は、この授業を通して毎朝新聞を読むようになりました。今までは、見出しだけ読むだけだったけど絶対に一日一記事以上読むようになりました。

    ・公共を受けて、今まで以上にニュースを見るようになりました。今までも結構ニュースを見てはいたんですが、ニュースの見出しだけをざっくり見るのではなく、詳しく調べることが多くなったと思います。

    ・授業を通して、社会の出来事にもう少し関心を持とうと思った。授業でニュースの解説をされる度に、「自分は社会について何も知らない」と自覚していた。

    ・ずっと見てこなかったニュースを見始めました。ニュースを見て世界に目を向けれたらいいと思いました。

    生徒たちの「1学期のふり返り」より

    当たり前ですが、ニュースを見ることが「目的」ではありません。
    社会の出来事に関心を持ち、知ろうとし、考えること。そのための一歩を踏み出してくれたことが嬉しく感じました。


    ⑤「知る」から「考える」へ!

    ニュースを見るようになってくれたら、次に生まれるのは「疑問(問い)」です。

    授業では毎時間、「あなたならどう考える??」と問いかけ続けてきました。その結果なのか、生徒たちの言葉にも変化が表れています。

    ・ニュースを見ても、自分ならどう考えるかを考えるようになった。

    ・授業の最初にやるニュースを見て問いに答えるので、今まではただニュースを見るだけだったのが自分の中で問いが生まれたりそのニュース自体が正しいのかどうなのかも考えることができるようになった。

    ・今までは深く考えないでそのニュースをありのままに受け入れていたけど、しっかり自分で本質を見極めるようにすることが大切だということがわかりました。

    ・ニュースを見ても「可哀想」「悪い」だけではなく、「なぜそうなったのか」や「〜をすればどこが起こるから無理なんだな」など自分の考えがレベルアップした気がします。

    ・色々なニュースだったりを見てわからないことをわかろうとして結果的に事実とは違うことで盛り上がってしまって誹謗中傷などが起こってしまうことが分かったので、もしわからないことに自論を持っても、誰かに言ったり発信するのではなくて自分の中だけで留めないといけないなと思いました。

    生徒たちの「1学期のふり返り」より

    私が授業で投げかけている「問い」について、「これが『正解』の考え方だよ」と言うことは絶対にありません。
    「考えること」「自分の意見を持つこと」「他者の意見も受けとめること」の重要性を繰り返し伝えてきました。

    生徒たちの言葉からは、「知る」で終わらず、「考える」まで進めるようになった様子が伝わってきました。


    ⑥自分自身との向き合い方も変わった!

    1学期前半では、青年期や悩みについて学びました。
    「悩みとどう向き合うか」を考える単元です。この単元から、↓↓の記事で纏めたように、パフォーマンス課題にも取り組んでもらいました。

    こうした一連の学びは、多くの生徒にとって、自分自身を見つめ直す時間になったようです。

    ・欲求不満によって自分が悩んでいることも言語化することができてより悩みに向き合えるようになったと思う。

    ・私は1学期の公共の授業で最も変化したのは、自分自身の悩みや他者との関わり方に対する考え方です。

    ・自分が不安やイライラを感じたときにただ処理できなくても自分は今マージナルマンなのだと冷静に自己分析できるようになりました。

    ・自分の葛藤を客観的に捉えられるようになり、少し心が軽くなった。

    ・公共の授業を受けて、自分の考え方や物事の見方が少し変わったと思います。これまでは、人の行動を見てなんでそんなことをするのだろうと思うことが結構あったけど、授業で防衛機制や人それぞれの価値観について学んで人の行動にはそれぞれには理由があることを知りました。

    生徒たちの「1学期のふり返り」より

    高校生の時期に限らず、人生の「悩み」は、すぐに解決するものではありません。
    ただ、「今の自分」を少し客観的に見られるようになるだけで、心の持ち方は大きく変わるのではないか…と感じています。


    ⑦違う意見を受け止められるようになった!

    私の授業では、「自分とは異なる意見に出会うこと」を特に大切にしています。
    生徒たちのふり返りには、そうした出会いを受けた変化についてもたくさん書かれていました。

    ・自分と全く反対の意見の人もいるんだなということがわかったので、自分がこれから生きる社会では違う意見を持つ他人との共存とか、自分や相手の考え方のメリット・デメリットについてよく考えたいと思いました。

    ・まず相手の話を聞いて、それから自分の意見や質問などの対話をするの大切だと考えました。

    ・他人の考えを参考にしながらも自分の考えを主軸にした上でのいろいろな考え方を参考にするという型が自分にはいいかなと思いました。

    ・私は1学期の公共の授業を受けた自分自身の一番大きかった変化は、他人の意見もしっかり聞けるようになったということです。

    ・みんなが自分とは、違う考え方だと分かったし、それを尊重してあげれることも出来たと思う。

    生徒たちの「1学期のふり返り」より

    「自分の意見を持つこと」と「相手の意見を受けとめること」。
    この2つは、決してどちらか一方ではなく、両方とも非常に重要です。
    だからこそ、私は毎時間ペアワークを続けています。


    ⑧公共は「人生」とつながっていた!

    最後に紹介したいのは、生徒たちが公共を「人生」と結び付けて考えていたことです。これは特に嬉しかったですね笑

    ・今学期は、自分の将来の人生について、古代の人々の思想を通して考えた。古いものだと今から二千年以上前に提唱された思想であるが、現代社会でも十分通用する考え方である。むしろ、現代社会の根幹に古代思想が存在しているといえるかもしれない。…哲学は、人間が人間として存在する限り、『不変の真理』であり続ける。

    ・ダラダラと生きるのではなく、よく生きられるようになりたいです。

    ・公共の授業を受けて特に変わったこととして、自分自身の心が少し軽くなったということが一つあります。たくさんの人が自分自身のような心の問題を持っている、あるいは持っていたということを知ることで、自分だけじゃないから他人との感情を分かち合い解決へ向けていこうということが考えられるようになりました。

    ・授業で東日本大震災のまとめた動画を見た時、自分ではまだ巨大で津波が来るほどの地震を受けたことがなくて、少し怖くなった。…公共の授業で私はたくさんのニュースや動画が心に残っていて、これまでのことを活かしてこれからの成長に繋げていき、ちゃんとした大人になっていきたい。

    ・授業を通して、社会の出来事にもう少し関心を持とうと思った。…今は社会の中で当たり前に広がっている価値観の原点を知ることは、社会人としての自分の基盤になると思う。

    生徒たちの「1学期のふり返り」より

    公共の授業では、生徒たちに知識事項を覚えてほしくて授業をしているわけではありません(もちろん、知識事項を覚えることも大事ではあります…笑)。

    社会をどう見るか。自分をどう見るか。他者とどう生きるか。
    生徒一人ひとりがそうしたことを考える「きっかけ」をつくりたいと考えています。


    最後に…|「考え過ぎて疲れた…」がこれからも続くように

    144人分のふり返りを読み終えて、1学期の授業一つひとつを「真剣勝負」してきてよかったなあ!と率直に感じています。
    よく頑張った、自分!笑 偉いぞ、自分!笑(←持続可能な授業づくりのためにも、自分への「ご褒美」は大切ですよね笑)

    生徒たちはまだまだやれます。
    もっと深く考えられる。もっと自分の言葉で語れる。もっと異なる価値観を受けとめられる。もっと社会を「自分事」として捉えられる。

    夏休み明け2学期の授業でも、私の「軸」は変わりません。

    2学期は経済分野に入りますが、私が生徒たちに投げかける「問い」は、これまでと同じように「正解が一つではない問い」・「価値観が分かれる問い」です。

    その問いに本気で向き合い、自分なりの「解(意見)」を出し、相手の「解(意見)」を受けとめ、もう一度考える。

    こうした積み重ねを続けていきたいと思います。

    そして、授業が終わった後、生徒たちから「あー考え過ぎて疲れた……」という感想が聞こえたら最高です笑 こんな授業を、2学期も積み重ねていきたいと思います。

    本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

     
     
    私立中高一貫校の教員、2人の子ども(小2・年長)の父親です。社会人21年目(企業2年→教員19年)、学年主任10年目です。 「正解」よりも、「問い」を磨いて、考えるプロセスを大切に。教育・授業・子育て・人生について、考えたことを記事にまとめています。

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