
over the spring ——輝くアイドルと新人看護師の労働讃歌——【31】
『 over the spring』 (柴結衣)
朝、目覚めて、ドームの端から見た景色を思い出す。高いところから眺めた海のように一面スカイブルーで染まったドーム。青い輝きが脳裏に鮮明に焼き付いて残っている。
気持ちがいい朝だなと思いながら、キッチンに行って、お湯を沸かす。夜に準備しておいた朝ごはんを急いで食べて、顔を洗う。急いで軽くメイクをして、外に出る。
どれだけ生活が変化しようともイヤホンの中で鳴っている音楽は就職してから一度も変わっていない。たとえ舞が大きなところでライブをやっても、私自身が辛くなって仕事が嫌になってもいつでもこの時間には序曲overtureと『over the spring』が流れている。
交差点で赤信号が見えて立ち止まる。目の前を車が排気ガスを撒き散らしながら、走っている景色も、その中を歩く自分も変わらない。魔法の世界から抜けた私の日常はいつものようにゆっくり進む。だけど、確実に同じ秒針の重さで進んでいる。夢の世界から覚めた時にまた目の前のことを頑張ろうと思えていた。
青信号を知らせる音が辺りに響く。その音をイヤホン越しに聞いて、顔をあげ、また病院に向けて歩き始めた。
『over the spring』
over the spring 季節を飛び越えて
小さな歯車の私を その手でそっと包んで
stay by my side 震える肩に
初めての「意味」が降り積もっていく
名もなきものに 一つずつ魔法をかけるように
あなたがくれた名前を抱きしめて歩き出す
every nameless flower 咲き誇る世界へ
この春を越えて I’ll find the light with you